きちんと教育し、余裕を持たせることの大切さ

周王朝の名宰相・管仲の富国強兵政策の基本は「まず与えること」だったらしい。「衣食足りて礼節を知る」という言葉もある。人は余裕ができて初めて礼儀や節度をわきまえることができるという意味である。飢えているものに礼儀を説いても意味はなく、生活にゆとりが出れば道徳意識はおのずと高まり、人々の心が豊かになればその国も豊かになり、結果国も強くなる。

富国強兵と比べるのはやや大げさな話にも思えるが、この話を読んで、似たようなことは強いデザイナーやエンジニアを作るうえでも言えることと感じた。

そこまでスキルレベルの高くない人に、自分の頭で考えさせ、自分の力でやってもらおうと挑戦させることは、時に称賛されることもある。しかし、あまりにも準備不足の挑戦は、依頼者の期待とは反対に、焦りやプレッシャーからその人を追い込んでしまい、無用な苦手意識や「自分には無理かもしれない」という挫折感を味合わせてしまう可能性もある。

一方で、最初はある程度基礎的な知識や技術を教えたうえで、その後自身の力でいろいろやってもらうのはどうだろうか。適度な難易度での挑戦と成功を体験できるのではないだろうか。

そうやって経験を積んでもらうと、次第に余裕が生まれ、教えた側も思い浮かばなかったようなアイディアややり方を身に付ける可能性が出てくる。経験者との切磋琢磨も生じ、結果、各人のレベルアップから、チーム全体のレベルアップに繋がっていく。

私自身も、入社したときはスキルレベルが異常なまでに低かった。入社の基準も満たしておらず、自分も不安だったが、採用した会社側も不安だったに違いない。最初の頃の仕事では自身で考えることなんてできず、頭が真っ白の状態で実装していた。言われたことをこなすのに必死で、効率性や整合性を考える余裕もゼロだった。

だが、徐々にできるようになってくると、気持ちに余裕が生まれた。言われた仕事に対しても、こうしたほうが良いのではと考えたり、応用を効かせたりができるようになった。

教育と称しながら、あまり指導もせず、いきなり仕事を丸投げするような職場も多いと聞く。「やって慣れろ」「そこから這い上がってこい」という方針なのかもしれない。そのうえで「これは自分の頭で考える訓練だ」という。

しかし、特に新卒や未経験者の指導においては、闇雲に難易度の高い仕事に挑戦してもらうことよりも、基礎的な知識やノウハウをキチンと提供し、最低限の余裕を持たせたうえで挑戦してもらう環境を作ることの方が大切なのではないかと思う。

当社は2年連続で新卒社員が入社しており、来年もまた一人新卒を迎え入れる予定である。先輩として、教育係としての私の経験も、3年目になる。多少のプレッシャーも成長の上では欠かせないと思うが、今までの経験でいえば、少しゆとりを持たせ、好奇心を刺激させるような指導の方が結果的にWin-Winな関係になりやすいと感じている。

もちろん業務の中でそのバランスを取り、実行すること自体が難しいのだが、上記を再度意識し、希望と不安が入り混じりがちな新卒社員をきちんとサポートしていきたいと思う。