良いデザインには「関係性のデザイン」が不可欠

先日、とあるプロジェクトの打ち合わせに行った。設計資料、参考サイト、素材や原稿、スケジュールなど、確認事項が多かったため、想定では1時間を超えると考えていた。しかしながら実際には45分ほどで終了した。「打ち合わせはできるだけ1時間以内」を標榜している私たちとしては、理想的な時間に収まった。

そのお客様は、ベイジのサイトに書かれている内容に共感し、お問い合わせをしてきた方だ。設計やデザインのみならず、先だって行っていた顧客獲得のためのweb上の戦略やストーリー、コンテンツの提案にも非常に納得感を持っており、webに関する多くの判断を任せていただいている印象がある。だから打ち合わせも 「問題ありません」「いいですね」「その通りです」といった発言が中心で、議論が紛糾することもなく、スムーズに進行した。

こうした顧客との関係性がきちんとデザインできていると、仕事は非常にしやすくなる。「関係性をデザインする」という意識をもって仕事をすることは、アウトプットとしてのデザインに向き合うことと同等か、それ以上に重要なことだとも感じる。

私たちの会社では、顧客との「関係性のデザイン」は、顧客選びの段階から始まっている。最初に問い合わせが来ても、予算やスケジュールだけでなく、顧客と良好な関係が築けるか、といったことも仕事を請けるかどうかの判断に含まれている。顧客が私たちを選ぶように、私たちもいくつかの条件のもとに顧客を選んでいる。こうした下準備があるから、デザイナーはデザイン作業に没頭することができる。

もちろん、スケジュールが多少タイトだったり、担当者が途中で変わってしまったり、協力会社と顧客の板挟みで思うように動けなくなったり、といったことで少々進め方が難しくなったことはある。しかし、自らのここ数年の仕事を振り返ってみても、悩んでいるのは「どうすればデザインのクオリティが上がるのか?」ということがほとんどで、顧客との関係性そのものが原因でストレスを感じたケースは思い当たらない。

他の制作会社に話を聴くと、必ずしもこういう状況ばかりではないようだ。顧客との関係性構築に失敗し、発注者と業者の上下関係が厳しく、あるいはそもそもの信頼感がなく、何を提案しても否定的に見られ、その結果一つ一つの作業工数が肥大化し、プロジェクトメンバーは疲弊し、最悪なケースでは炎上プロジェクトになってしまう。

もちろん、要因は一つではないだろうが、明確な基準を持った顧客選び、受注後のリーダーシップ、丁寧なタスク管理や基本的なコミュニケーション、一貫したフェアで客観的な視点などといったことの積み重ねによる「関係性のデザイン」が不足した結果、顧客との良好な関係が築けず、上記のようなトラブルの起点になりやすいのではないかと感じる。

もちろん「関係性」は顧客だけに留まらない。ともに仕事をするチームメンバーとの「関係性のデザイン」も不可欠だ。デザイナーの中には、コミュニケーションが上手でなく、良好な人間関係を築くのが苦手な人もいるが、こういう人は往々にしてそもそものデザインスキル以前に、「関係性のデザイン」が苦手であり、それ故に仕事の質に安定感がなくなるのではないだろうか。

最近の私は、単にデザインをするだけでなく、顧客やチームメンバーと交渉しながら仕事を進めることが多い。そういう身としては、アウトプットとなるデザインの質のことばかりを考えるのではなく、良いデザインの背景に「関係性のデザイン」も必要であると捉え、こちらのデザイン力もしっかりと身に付けていきたいところである。