デザイナーにとって「作る」と同じくらい大切なこととは?

会社によって仕事のスケジュール感はまちまちだ。3~4ヵ月ごとにプロジェクトが変わるような環境もあれば、1週間単位でコロコロと変わる環境もある。そんな環境の違いがデザイナーに与える影響は、とても大きいように思う。

私は20代の頃、代理店からの案件を多く請け負う会社にいたことがあるが、タイトなスケジュールで尚且つ納品日の後ろ倒しを相談する余地もなく、とても苦労した経験がある。それと比べてベイジは3~4ヵ月、もしくはもっと長くかかるプロジェクトもあり、しかも直クライアント。スケジュールも相談しやすい関係性で成り立っている仕事が多いため、とても働きやすい。

こうした環境は非常にありがたいものの、逆に新たにゼロからデザインを作る機会も少なくなっている、とも言える。レイアウトも配色もビジュアルの方向性も何も決まっていないところから、デザインの方針・システムを考えていく作業。面白さもあるが、このあたりを考え抜いてデザインを作り上げるのはとても大変な仕事だ。これを繰り返した数は、デザイナーの力量に直結する。

ではスケジュール感がタイトな環境でないと力が付かないのか?という話にもなるが、実はあることを意識的に繰り返すことで、成長スピードは早めることができる、と私は考えている。そのあることとは「捨てる」ということだ。

何を捨てるのか

デザインはいくつもの前提条件や制約を潜り抜けて作るもの。自分が良いと思ったものも、上司やお客様に見せた時に「〇〇を踏まえると良くないのでは」「〇〇の条件の時にうまくいかないのでは」といったフィードバックを受けることが必ずある。そんな時、今まで作ったアイデアを大胆に捨て、新しいアイデアを改めて生み出すことが求められる。つまり捨てるものとは「今まで自分が積み上げたアイデア」のことだ。

捨てることに慣れていない人は、少しでも調整範囲を少なくしよう、少ない手間でフィードバック終えよう、と考えてしまいがちだ。ただでさえ今の形を作るのにも時間がかかったのに、また改めてゼロから考えるなんて絶対に提出に間に合わない、と考える。しかしここで大胆にアイデアを捨てられない間は、納得してもらえるアイデアに到達しずらい。

難しいというべきか、面白いというべきか、捨てるべき状況の時に「捨てない」と決めて追加したアイデアは、実は相手にそのことを見透かされてしまうのだ。再提出された人は「あれ、あまりよくなってないな…」と心の中で感じる。これを繰り返すと相手からの信頼を徐々に失ってしまい、結果的にさらに自分の首を絞めることになる。

短期間でプロジェクトが切り替わる環境では、必然的にアイデアを捨てる機会も多くなる。長期間プロジェクトが変わらない人でも捨てるシーンはあるものの、頻度としては少ないはずだ。そんな状況にいる人ほど意識的に「一回今までの考えをズバッと捨てよう」という行動を積み重ねないと、仕事も早くならないし、クオリティも上がらないと、私は思う。

最後に

働く環境に求める条件は人によって違うもの。一概に制作スケジュールが長い・短いだけで決めるものではないので、どちらが働く環境として正解という話でもない。しかしこの「捨てる」を何度も乗り越えてこそ、経験値が積みあがるという事実は間違いない。

一時的にフィードバックが重なって苦しい状態に立たされた時、「あ、今が捨てる機会なのかもしれない」と考えられると、そこが一段階自分をレベルアップさせる機会につながるのではないだろうか。