こだわりを「捨てる」勇気

デザインは二度と同じものは作れない、ある種不可逆的な行為だ。無限の可能性の中から取捨選択を繰り返し、 考え得る組み合わせを精査しながらあるべき姿を目指していく。

そうなると陥りがちなのが「こうでなくてはならない」、「ここは譲れない」と意固地になってしまうこと。

思考がまとまり、表現が洗練されていくのは良いことだが、時間と労力をそれなりにかけて決めたからと大切にするあまり「これ以上のものはない」と頭が凝り固まってしまう。

その結果、そこから行き詰まったり、指摘されたり、異なる意見が出たりするとなかなか思考の転換ができない。

しかし、少し俯瞰して他者の視点から冷静になって考えてみると、自分のこだわりは大して重要ではない思い込みであることも多い。また、自分が思うほど「問題」は意外に問題ではなかったりする。

自分が作ったデザインに対して距離が近くなりすぎて客観的な視点を失うと、重大な欠陥やほかの可能性に気が付けなくなってしまう。自分が心血注いで作ったものに愛着を持ってしまうのは仕方ないが、デザイナーとして自分のデザインに対して「親バカ」になりすぎてはいけない。

「かわいい子には旅をさせよ」ではないが、デザインをいい意味でかわいがりすぎないことも大事である。可能性は無限に広がっている。

こだわりを持つことと同じくらい「ま、そういうこともあるよね」とこだわりを捨てられる人間でありたい。