企業の採用マーケティングを支援している株式会社ベイジでは、採用活動の参考になる有益なリサーチを定期的に行っています。
その活動の一環として、「ITエンジニアの転職実態調査」を、2024年12月から2025年1月にかけて実施しました。
ITエンジニアの採用競争は近年ますます激化しており、特に20代〜30代の採用難易度は高まる一方です。東京ハローワークによる2024年7月の調査によれば、ITエンジニアの新規求人倍率は3.19倍で、完全に売り手市場の状況です。
また、経済産業省の「IT人材需給に関する調査」の予測によれば、2030年には最大で約79万人のエンジニアが不足するとされており、企業側においては優秀なエンジニアの獲得に向けた戦略的かつ長期的なアプローチが不可欠となっています。ITエンジニアの採用に悩む企業の皆様にとって、本調査が有益な参考情報になれば幸いです。
なお、記事内では中途採用全体の傾向として、以前実施した「中途採用における採用サイト利用実態調査(2024年度版)」の結果も引用しています。ご興味があれば、こちらもあわせてご一読ください。
ITエンジニアの転職先としては、一般の事業会社と、SI会社/システム開発会社/ITコンサル会社などのような支援会社の2種類に大別されます。ここでは実際に、直近の転職ではどんな会社からどんな会社に転職しているかを調べてみました。
これによると、「事業会社から事業会社」への転職が圧倒的に多く、6割超(63.6%)となっています。支援会社から事業会社への転職を含めると7割を超える数字(72.87%)に達し、圧倒的に事業会社が人気であることが見て取れます。これは、エンジニア採用に力を入れているIT系の事業会社が増えているためだと考えられます。
また、あらゆるサービスにおいてITが経営・事業の大きな課題になっており、金融、製造、流通、不動産のような、かつてはITと縁遠く思える業種でも、ITエンジニアを積極的に採用する流れになっています。このこともエンジニアにおける「事業会社人気」に拍車をかけていると考えられます。
今回の調査の中では、エンジニアが持っているキャリアイメージが垣間見える質問も、いくつか行いました。まず、転職を経験したうえで、さらに今後の転職をする可能性を聞いてみました。
「2〜3社で経験を積みたい」と回答したエンジニアが約4割(42.55%)に上り、「あと1社~」(28.25%)を加えると、7割超(70.8%)のエンジニアが、今後も転職をする想定で働いているようです。このような傾向から、エンジニアに対しては、「当社で働くと次の転職でも有利になる」といったメリット訴求が必要であると考えられます。
また、1つの会社でどのくらいの期間働くことを想定しているかも聞いてみました。
その結果、約6割(62.73%)が、5年以内のスパンで転職を想定しているようです。エンジニアに対して入社メリットの訴求をするときは、「5年以内に享受できるメリット」という観点で話をしないと、価値を感じてもらえない可能性があります。
また、将来はどのようなポジションに付きたいと考えているかも、併せて調査しました。
エンジニアのキャリアとして、「マネージャーか、プレイヤーか」というのはよく議論されますが、これを見ると、それぞれの数字が拮抗しており、ほぼ半々であることが分かります。このような結果を考えると、エンジニアに対してはプレイヤーとしてのキャリアパスと、マネージャーとしてのキャリアパスの、両方を示せた方が魅力を感じてもらえるエンジニアが増えると考えられます。
また、エンジニアだとフリーランスや起業も選択肢になりやすいですが、それらを考えているのは全体の6.5%で、決して多くはありません。そこで、さらにフリーランスとしての独立や起業を考えていると回答した人に、会社員に戻る可能性と、その条件を聞いてみました。
半数近く(46.67%)が会社員に戻る可能性があると答え、戻る理由は収入と時間に集中していました。このような結果から、エンジニアの多くは独立や起業をそこまで選択肢に入れておらず、入っている人も、半数は会社員に戻る可能性があると考えている、といえます。エンジニア全体として、5年を区切りとして転職を何度か行う想定ではあるものの、独立や起業というよりは会社員であり続けたい、という志向が強いと言えます。
エンジニアはどのような時に転職を考えるのでしょうか?エンジニアが転職に至る背景も、今回の調査の中で調べてみました。
これによると「給与が低い」(41.68%)と「仕事量や残業が多い」(35.01%)が圧倒的に多い、という結果となりました。その後に、「人間関係の悪化」(26.34%)、「評価制度への不満」(23.31%)と続いています。
このことから、「給与が低く忙しい職場」では、エンジニアの離職率が高まり、また採用においても魅力がない職場とみなされる、といえます。
特に給与に関して、dodaの2025年2月の情報によれば、ITエンジニアの平均年収は約462万円で、同社の一般的な平均年収よりもすでに36万円高い傾向にあります。また、ITエンジニアの年収は年々上がっており、さらに優秀なエンジニアでは1000万円を超えるプレイヤーも存在します。給与は他の一般的な職種よりも高く設定しないと、採用には不利に働くと考えられます。
なお、別角度の質問として、転職したものの、前職で満足していたポイントも聞いてみました。
これを見ると、「給与」(24.7%)、「仕事量」(25.82%)、「人間関係」(27.82%)、「働き方」(26.69%)などの主要項目が拮抗していることが分かります。つまり、技術職であるエンジニアにおいても、どれか一つの要因の満足・不満だけで転職するかどうかを決めているわけではなく、総合的に判断している、といえます。
ここまでの前提があったうえで、エンジニアは、新しい職場に何を求める傾向があるかを、調査してみました。
ここでも、転職動機のトップ2となっていた収入(43.33%)と労働時間(41.85%)の改善への期待が、非常に大きくなっています。そしてその2つを超えるほど、「仕事にやりがいを感じられること」(44.71%)への期待が高いこともうかがえます。
また、期待とは裏腹の不安についても、調査しています。
転職の不安についても、収入(37.09%)と労働時間(35.62%)が上位に入っています。ただし、不安に関してはより幅が広く、人間関係や社風、知識や経験が活かせること、やりがいや配属なども、ほぼ同じ水準で不安要因になっています。
当社が行った全職種共通の中途採用向けの調査では、不安と期待の項目にはやや乖離がありました。一方でエンジニアに関しては、不安と期待の項目の序列に大きな差がなく、不安と期待が表裏一体の関係になっています。これは例えば、会社説明会や採用サイト、採用ピッチ資料などで、不安を解消するコンテンツを見せれば見せるほど、相対的に期待も高まっていく、という関係だといえます。
なお、近年の企業が重要視している「パーパスやミッション」「社会的意義」に関しては、期待・不安ともに、エンジニアの関心度はさほど高くないようです。つまり、企業理念や社会的意義を強く押し出しても、それ自体が強い引きにはならない可能性があるということです。
これに限らず、企業が重視しているポイントと、求職者が重視しているポイントには、常に一定のズレがあります。企業側が勝手に思い込むのではなく、自社の社員にインタビューやアンケートを取りながら、求職者の期待や心理に直結するコンテンツやメッセージを、できるだけ伝えていく必要があります。
転職活動におけるエンジニアの情報収集の実態を把握するにあたり、そもそもエンジニアは転職活動の中で、どのようなことに負荷の高さを感じているかを、調べてみました。
これで見ると、どれか一つの回答が飛びぬけているわけではありませんが、「情報収集」(49.74%)がもっとも負荷が高いとの結果となっています。また、そのほかの「候補企業のリストアップ」(46.45%)も、「面接の準備」(49.48%)も、その途中過程で行われるのは情報収集となるので、活動全般で情報収集が大きな負荷になっていることが伝わってきます。企業側としては、エンジニアの情報収集の負荷を軽減できるような配慮も求められていると言えます。
続いて、エンジニアがどのような情報源を参考にして情報を集めているかを、調べてみました。
その結果、「企業口コミサイト」(38.56%)が最も多く、「採用サイト」(34.14%)、「プロダクトやサービス(事業内容)」(34.06%)が続いています。
これを見ても、エンジニアは企業の公式情報だけでなく、口コミサイトやオンラインコミュニティなど、非公式の情報にも多く触れている実態がわかります。その背景としては、「公式情報にはポジティブな情報しか掲載されていない」「実際に働く社員の生の声を知りたい」「ネガティブなことも含め、よりリアルな情報を知りたい」といった心理が働いていると考えられます。
近年は企業口コミサイトの影響が増しており、弊社の採用支援活動の中でも、口コミサイトのネガティブな評判について、採用担当者から相談を受けることは日常茶飯事です。
しかしながら、企業口コミサイトとほぼ同じ割合で採用サイトを見ているのであれば、口コミの悪い評価の中でも、「客観的に見て事実と異なる内容」「すでに改善されている内容」については、その反証になる情報を採用サイトに掲載することも有効だといえます。
ポイントは、ネガティブな情報に直接反論するのではなく、過去の課題を認めつつ、改善状況や現在の制度・仕組みをフラットな目線で紹介することです。後述の「エンジニアが好む採用サイト」の設問でも、都合の悪い情報も正直に載せていることを好意的に受け取る結果が出ており、「当社はここができていないが、改善しようと努力している」と謙虚で正直な姿勢を見せることが、むしろ好印象につながる可能性もあります。
これと関連して、そもそもエンジニアが魅力的に感じる企業の傾向も、改めて調べてみました。
最も多く挙がったのは、「社員がやりがいをもって働けていること」(45.93%)、続いて、「事業に将来性が感じられること」(41.53%)、「給与が高いこと」(38.65%)、「人間関係が良好なこと」(37.44%)という結果となりました。
興味深いのは、「業界内で知名度の高いエンジニアがいること」(23.74%)が一定数の支持を集めている点です。これはモノづくりをするクリエイター職に共通して見られる傾向で、エンジニアは「誰と働くか」も企業選びの重要な要素と捉えていることを示唆しています。技術的に優れたエンジニアが在籍していることは、技術者同士の学びやスキルアップの機会が豊富と捉えられ、その企業の魅力を高める要因となっています。
こうした傾向を踏まえると、SNSや技術ブログ、イベントなどで、エンジニアを主役にして情報発信することも、採用競争で有利になると考えられます。さらには、オープンソースや技術コミュニティでの貢献を企業として推奨することも、それを推進する経営者やエンジニアがいることの裏付けとなり、エンジニアへの強いアピールポイントになりそうです。
求人媒体や紹介会社など、エンジニアが転職活動の中で、企業と知り合うために使っている人材系サービスの利用状況についても調べてみました。
エンジニア以外も利用している一般的な求人媒体の中で、エンジニアの利用が多かったのは、「doda」(36.4%)となりました。続いて「Green」(33.1%)、「Wantedly」(29.03%)という結果となりました。このあたりは、エンジニア以外の一般的なIT職と大きな差はないようにも見受けられます。
人材紹介会社などの転職エージェントに関しては、1位がリクルートエージェントで42.98%と頭一つ抜け出しており、2位にIT人材に特化したレバテック30.24%、やはりITに比較的強いワークポートが29.9%となっています。転職エージェントに関しては、大小様々な企業が乱立していますが、このアンケートにおいて「その他」が1.99%に留まっていることを考えると、エンジニアが活用している転職エージェントはいくつかに絞られていると考えられます。
また、近年は求職者に直接メッセージを送るダイレクトリクルーティングが一般化してきていますが、そのプラットフォームとしては、1位が「LinkedIn」(21.84%)、「YOUTRUST」(21.49%)と、SNS的な機能を持つプラットフォームが上位を占める結果となりました。
しかしながら、続く「dodaダイレクト」(20.19%)、「Wantedly」(19.84%)、「ビズリーチ」(19.24%)とは僅差となっており、多様化の様相を呈しています。
スカウトは、GreenやWantedlyのように、求人媒体の一機能として提供されているケースもあれば、ビズリーチのようにスカウトがメインであるものの一般的な募集要項からのエントリーも可能になっているケースもあり、求人媒体との境界線がかなり曖昧になっています。企業が自社の採用活動に活用する際には、スカウト機能を使うことを前提で検討しておいた方がいいでしょう。
なお、昨今はエンジニアに特化した人材サービスも多く存在しますが、利用者数という観点だけでいえば、他の職種も含む業界大手のサービスに軍配が上がっています。ただ、弊社の支援先企業では、大手をメインで活用しつつ、エンジニアは特化型サービスを使う、という併用パターンも多く見受けられます。
人材系サービスについて「これを使えばOK」という鉄板の組み合わせがあるわけではありません。自社の状況や求める人材イメージについて、各社工夫を凝らしているのが実情です。自社の状況も鑑みて、複数のサービスを使ってみて、まずは相性を試してみるとよいでしょう。
転職活動以前に、日常的な仕事の中でエンジニアと接点を持つにはどうすればいいか?という観点から、エンジニアがよく使っているSNSやブログプラットフォームなどを調べてみました。
もっとも多かったのが「X(Twitter)」(37.87%)、そのあとは「YouTube」(31.98%)、「Instagram」(29.46%)、「Google検索」(24.1%)と続いています。
また、QiitaやZenn、note、はてなブログのようなプラットフォームを使っているユーザーでもトータルではかなりの数に上ります。また、約2割(20.1%)のユーザーが、企業発信のテックブログを見ていると回答しています。
X(Twitter)はエンジニア同士のコミュニケーションツールとしても機能しており、企業からエンジニアへの情報発信の場としても最適です。エンジニアからのフォローが多いアカウントを持っていると、エンジニア採用も有利になると考えられます。
また、この調査からは、「同僚との会話」(18.37%)、「イベント情報サイト」(22.96%)など、オンラインではない交流を通じた情報収集にも積極的な姿勢がうかがえます。一般的にエンジニアは「個人で黙々と作業をする職種」と思われがちですが、実際には、外に向けて積極的にコミュニケーションを取る傾向が見て取れます。エンジニア同士の情報交換や出会いを促進するようなイベントを開催することも、エンジニア採用に有利に働くと考えられます。
続いて、転職意向が顕在化してから内定に至るまでのスピード感を調べてみました。まずは、転職を意識してからエントリーするまでの調査です。
「3か月から半年未満」(32.84%)がボリュームゾーンとなっており、比較的じっくり時間をかけてエントリーする企業を見定めていることがうかがえます。「1か月~3か月未満」(27.04%)も含めると、6割近い(59.88%)エンジニアが1~6か月でエントリーする会社を選んでいる、といえます。
併せて、エントリーから内定までのスピードも調べてみました。
「1か月以内」(29.29%)が最多となり、それより短い期間のすべてを合わせると、約7割(71.75%)が、1か月以内に内定をもらっているという結果になりました。エンジニアの選考は1か月以上かかると、他社を選んでしまうリスクが急速に高まるため、全体的に早くなる傾向にあります。
ただ、エンジニアの場合、選考フローに技術課題が組み込まれるなど、選考期間が長くなることもあります。どうしても求職者に待ってもらう時間が発生する場合、選考に関する情報をきちんと公開して期待値を合わせつつ、選考プロセス中のフォローアップも強化できるといいでしょう。
選考に関する情報公開やフォローアップというのは、例えば以下のような情報を募集要項や採用サイトに載せておく、といったような対策です。
企業側としては選考を慎重にしたいものですが、後述のように、エンジニアは売り手市場で、優秀な人ほど多くの企業からオファーが来る状況になっています。見極めは慎重にしつつも、できるだけスピーディーに選考することを心がける必要があります。
続いて、エンジニアが企業選びをするときに、どのような観点を重視しているかを調査してみました。
「勤務地」(39.17%)、「給与」(35.62%)、「得意領域・強み」(34.4%)が上位を占め、後は「働き方」(29.64%)、「業界」(28.16%)、「技術スタック」(27.3%)が続きました。
勤務地に関しては、エンジニアの場合はリモートワークが一般化しているため、「どの程度のリモート勤務が可能か?」という観点から、働き方とセットで考える傾向にあります。勤務地や働き方に関する情報は、曖昧な表現を避け、できるだけ具体的に記載した方が採用ミスマッチを防げるでしょう。
続いて、転職時のエントリー社数についても調査してみました。
「4~5社」が28.77%、「2~3社」が25.91%と、併せて5割以上(54.68%)のエンジニアが2〜5社にエントリーしている、という結果になりました。全職種を対象にした別のアンケートでは、1社〜3社が約7割(68.47%)という結果だったため、エンジニアは一般的な職種よりもやや多くエントリーしていることがうかがえます。
言い換えると、エンジニアは他職種以上に多くの企業を比較検討しているため、働くメリットや価値を分かりやすく言語化して伝えないと埋もれやすい、ともいえます。
また、エントリーした企業のうち、転職活動で初めて知った企業はどのくらい含まれているかについても、調査してみました。
エンジニアの人気企業ランキングなどを見ると、上位には誰もが知る有名企業が並んでいることが多いです。しかし、転職活動前から「すべて知っていた」と回答したエンジニアは約2割(18.8%)にとどまり、残りの約8割(81.2%)のエンジニアは、転職活動中に初めて対象となる企業を知っています。
つまり採用活動において、知名度がある企業が有利なのはエンジニアに限らずいえることですが、この結果を見ると、あまり知られていない企業であっても、上手に接点を持てれば、採用に繋がるチャンスは十分にあると言えます。
では、エンジニアとはどのようなチャネルが接点になっているのでしょうか?
この調査によると、「求人媒体での検索」(38.39%)と「インターネット検索」(37.11%)、転職媒体(35.94%)が上位を占めました。ただ、エージェントやヘッドハンターも割合として少なくはなく、いずれも拮抗していると言えます。
知名度がない企業は、採用サイトや採用オウンドメディアを充実させることで、コストをかけずに自己応募を増やそうとしがちですが、この結果を見ると、それだけでは不十分ということが分かります。「インターネット検索」も一定存在しますが、弊社の支援経験では、SEOが採用に寄与するのは職種や地域など、特定の条件に限られています。知名度のない企業ほど、求人媒体やエージェントを頼らないと、エンジニアとは接触できないというのが、現実でしょう。
一方で求人媒体やエージェントに頼りっきりでは、獲得競争が激化している現状があり、採用コストがかかり続ける一方になります。会社の知名度を高めるためのSNSやオウンドメディアを使った採用広報、採用ブランディングに投資の何割かを振り向けて、中長期的に採用に強い会社作りも、並行して行っていく必要があると言えます。
続いて、エンジニアに限らず求職派が高確率で訪問する採用サイトについて、その利用動向を調査しました。
「転職活動で初めて知った会社」というのは、その会社についての情報が少ない状態だと思われますが、「全然見なかった」はわずか1.87%、「4〜6割は見た」以上の回答の総計でも83.89%と、ほとんどのエンジニアが転職活動の中で採用サイトを見に行っていると言えます。そのため、採用サイトを用意していない、採用サイトが充実していない、というだけで、採用活動が不利になる可能性もうかがえます。
また、どのようなタイミングで採用サイトに訪れるかも調査してみました。
「エントリーの直前」(44.45%)が最も多く、「会社を知った後」(38.13%)、「カジュアル面談の前」(34.14%)がそれに続いています。これは当社が独自に行った他職種も含む転職時の採用サイト利用動向の結果と比べると、会社を知った後の割合が少なく、選考中や内定承諾前に見る可能性がより高い、という傾向があります。
もともと、エンジニアに限らず、採用サイトは会社を知った後やエントリー直前以外でも見ることを前提とし、特に選考中や内定直前の求職者が見たいコンテンツをなるべく用意した方がいいという話があります。エンジニア向けに採用サイトを作る時は、特にその性質を強めた方がいいといえます。
続いて、訪問回数も調べてみました。
訪問タイミングが分散していることから、訪問回数も複数になると予想されましたが、それを裏付ける結果となりました。「1回だけ」が11.62%で、残りの約9割(88.38%)が、複数回訪問したと回答しています。
また、同様に訪問時間についても質問をしてみました。
「10分程度」(44.65%)が最も多いという結果になりました。5分~10分という捉え方をすれば、約7割(72.65%)にのぼります。一般的なウェブサイトの1訪問あたりの滞在時間が3~5分程度であるのに比べれば、より長時間滞在するといえます。これはエンジニア以外の調査でも同様で、興味がある会社の採用サイトはじっくり見るという、当たり前のことが改めて証明された形です。
これらの結果から、採用サイトの訪問は一度だけではなく、転職活動の各ステップで何度も訪れる可能性が高いこと、それを前提に、長時間滞在や再訪問を促すような充実した内容にした方が、採用において有利に働く、と考えるのが適切でしょう。
なお、訪問回数や滞在時間などの情報は、アクセス解析でも確認できます。ただ、アクセス解析で全体平均だけ見ていても分からないこともあります。より大事なのは、訪問者全体の傾向ではなく、自社にマッチする訪問者の傾向です。これを把握するには、社内アンケートや社員へのインタビューなど、対象者を絞った定性的な調査の方が有効であると弊社では考えています。
続いて、エンジニアの多くが、採用サイトにどんな情報を求めているかを調べてみました。
一般的な職種では、募集要項のニーズが最も高く、仕事内容がそれに続く、となることが多いですが、エンジニアの場合、「業績情報」(37.15%)が最多となり、「企業情報」(31.47%)を募集要項並みに知りたがっている、という結果となりました。
ここまでの調査でも、エンジニアが転職する際には、給与や働き方が重視される傾向が見て取れましたが、採用サイトに関しては、そこからさらに踏み込んで、会社の持続性や成長性を見極めるために訪問する傾向があることが分かります。
エンジニアが5年以内に転職することを見据えて、その時に市場価値が高まる会社を選ぶ、という傾向もありますが、上位に入っている「業績情報」「経営計画・事業計画」は、そのことを裏付ける情報として見たがっている、といえるかもしれません。また、多くの転職サイトなどでは、ここまで詳しい企業情報は載っていないので、情報を深堀する目的で、採用サイトに訪問していると言えます。
このようなことから、エンジニア採用が目的の採用サイトにおいては、経営や事業に関する情報をしっかりと掲載しておいた方が、エンジニアからの関心が高まりやすいと言えます。
なお、一般的な職種でもニーズが高い「募集要項」(36.32%)、「仕事内容」(28.55%)も上位に入っており、募集要項をきちんと用意してすぐ見つけられるようにしておくこと、実際の仕事内容をできるだけ具体的に、リアリティをもって伝えることは、エンジニアかどうかは関係なく、採用サイトであれば当然のように求められることにも留意しましょう。
知りたい情報がある、ということ以外に、どんな採用サイトであれば、エンジニアに良い印象を持ってもらいやすいかについても、調べてみました。
「具体的な情報が多い」(33.94%)が最も多く、「都合の悪い情報も正直にのせている」(33.03%)が僅差に、次いで募集要項や情報の多様さ、社員やオフィスの写真、インタビュー、簡潔な企業情報、丁寧な企業理念などの条件が続いています。
「情報収集の実態」での、企業口コミサイトが多く参照されている事実からも、エンジニアは「情報の具体性」と「裏表のないリアリティ」を求める傾向があります。この2点が満たされた採用サイトであれば、エンジニアに良い印象を抱かれる可能性が高まると言えます。
正直にありのまま伝えることについては、企業としては抵抗感があり、ポジティブな面だけを伝えたいと思うかもしれません。完璧な企業など存在しないため、どの企業も求職者や社員にとってあまり良くない条件を抱えているものです。しかしながら、エンジニアをはじめとした求職者は完璧な企業を求めているわけではなく、「この会社の課題は何なのか?」を正確に把握し、期待値を適切にコントロールし、入社後の失望や落胆をできるだけ減らしたい、という心理が働いていると想定できます。
だからこそ、「正直に包み隠さず話している企業」に共感を覚え、好意が増すと言えます。また、他社が都合の悪い情報を載せていないからこそ、率先して正直に開示すれば、他社との差別化に繋がっていくでしょう。このような姿勢を示すのもまた、採用ブランディングの一環です。企業側としての「したい/したくない」「損する/得する」に安易に流されず、どういうコミュニケーションを取るのがエンジニアにとって誠実であり、信頼獲得につながるかという観点から、長期的、包括的に考える必要があると言えるでしょう。
この調査結果は、自由に転載していただいて構いません。ただし、画像を用いる時は、当社ロゴが入ったグラフ画像をお使いください。また、テキストなどで引用する場合は「エンジニアの転職実態解剖2025年度版(株式会社ベイジ)」という記述と、本ページへのURLやリンクを併記いただけると幸いです。
ベイジではこのようなリサーチを含む、エビデンスを重視した採用支援を行っています。お客様の業種業態特性や採用課題に合わせたリサーチの設計も可能なため、採用に関してお困りのことがあれば、是非お気軽にご相談ください。
本記事の「エンジニア採用」をテーマに、数多くのエンジニアの採用に成功しているクラスメソッド株式会社と共催セミナーを開催します。エンジニア採用に課題を抱える方、内定後によその企業に行かれることが多いなど、獲得競争が激しいエンジニア採用の実例を解説いたします。企業の人事・採用関係者の方は、ぜひご参加ください。
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