シン・新卒採用マーケティング – マーケティング思考で切り拓く採用活動

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「母集団が年々減る」
「エントリー数が伸びない」
「内定辞退が増えた」
「若手が2~3年で離職し中堅層が育たない」

新卒採用でこうした悩みを抱える企業が増えています。変化の激しい採用市場では、旧来の手法に頼るだけでは、求める人材の獲得はますます困難になっているためです。

本記事では、お悩みを解決に導く鍵となる「マーケティング思考」を用いた採用手法について解説します。母集団形成から内定後のフォローアップまで、選考フェーズごとに実践する施策やポイントをご紹介。採用マーケティングの基本を理解し、自社の新卒採用をアップデートするアイデアを持ち帰ってください。

新卒採用を成功させる「採用マーケティング」とは?

そもそも「採用マーケティング」とは何でしょうか?
昨今採用ブランディングや採用広報など、似たような言葉をよく目にしますが、私たちベイジは「採用マーケティング」の特徴を以下のように定義しています。

候補者を「顧客」と捉える視点

学生を単なる応募者ではなく、自社という「商品・サービス」を選んでくれる可能性のある「顧客」と捉えています。彼らが就職先に何を求め、どのような種類の情報に興味を持ち、どんなプロセスを経て入社するか(求職者のジャーニー)を考えます。

自社を「商品・サービス」として捉える視点

自社の理念・事業内容・社風・働く環境・キャリアパスなどを、学生にとって価値のある「商品・サービス」として捉え直し、その魅力を最大限に引き出して伝えます。ただし、魅力を一方的に伝えるのではなく、学生が知りたいことに応えながら自社の魅力を伝えることが重要です。2つの重なる部分を定義し発信することが、学生に選んでもらうために重要です。

なぜ新卒採用に、マーケティング思考が不可欠なのか?

では、なぜ採用マーケティングが昨今取り上げられる機会が増えたのでしょうか。それは、従来の活動では欲しい人材の獲得が難しくなったことがキッカケの1つといわれています。

かつて主流だった大手就職ナビサイトへの掲載を中心とした採用活動は、多くの企業が同じ土俵で戦うため、学生からの発見性が低下しやすくなっています。また、学生の情報収集手段もナビサイト/口コミサイト一辺倒から多様化し、企業の公式情報だけでなく、複数の就職活動口コミサイト、会社や社員のSNS、企業のオウンドメディアやYouTubeの動画コンテンツなど、多くの情報源からリアルな情報を求める傾向が強まっています。

このような市場・学生の変化に対応できず従来の手法に固執していては、ターゲット学生に自社の魅力が届きにくくなる一方です。他の企業が異なるアプローチをしている場合、かえって採用競争で不利な状況に陥るリスクすら存在します。

市場・学生の変化が激しいなか、学生が求める情報を把握し、自社の魅力を伝わる方法を考える採用マーケティングという考えが注目を集めるようになってきました。

マーケティング思考が新卒採用にもたらす4つのメリット

私たちはマーケティング思考が新卒の採用活動に与えるメリットはたくさんあると考えていますが、その中でも特筆すべきは以下の4点と考えています。

  • 狙うべきターゲットがハッキリする
    • 新卒入社して活躍している人を参考にターゲットを決める
    • 自社が求める人物像(ペルソナ)を明確にし、そのペルソナがどのような特性(性格/経験/姿勢/協調性/仕事に求めることetc)をもつか把握する
    • ターゲット学生が利用するチャネルやメディアを活用し、効率的にリーチできる場所を特定する
  • ターゲットに刺さる自社の魅力を定義できる
    • ターゲットにとって自社のどの要素(業務内容/職場環境/企業風土/人など)が魅力に映るかを分析・定義する
    • 自社の魅力を定義したら、ターゲットに魅力を言語化・視覚化して伝える
    • ターゲットがいるメディアで魅力を伝えることで、適切なターゲットにリーチをしながら興味を引きつけることが可能となる
  • ミスマッチを防ぎ、入社後活躍しやすい人の獲得に繋がる
    • 「自社で活躍している新卒」が参考になるので、ミスマッチが起こりにくいターゲット策定が可能となる
    • 自社の魅力に共感し深く理解した上で応募する学生が増えるため、入社後のミスマッチを防ぐ可能性を高められる
  • 結果的に採用コスト・初期の教育コストの効率化ができる
    • 一般的な施策ではなく、自社の採用ニーズに合わせた施策を実施することになるため、効果の高い施策にリソースを集中することができます(効果の薄い採用施策へのコストを削減)
    • 2-3年で離職する社員数を減らせた場合、採用・教育にかけたコストが回収しやすくなる

特に「狙うべきターゲットがハッキリする」「ターゲットに刺さる自社の魅力が定義できる」この2つは、採用戦略の根幹ともいえる大方針です。この2つを整理することで採用活動で一貫して伝えるメッセージ策定にもつながり、採用サイト・採用媒体・広告・スカウトメールなどの各施策で発信する情報にも影響を与えます

伝えるメッセージが一貫していることで制作にかかるコストが削減できるこ都に繋がります。こうした間接的なメリットも含めると、マーケティング思考を採り入れることのメリットは4つ以上あると言えるかもしれません。

【選考フロー別】新卒採用のマーケティング戦略と具体施策例

ここからは、新卒採用の一般的なフローである母集団形成から内定後までの各段階において、どのチャネルを使い情報発信するのが良いかを解説します。

ベイジでは具体的に選考フローを母集団形成・エントリー・企業理解・選考・内定後の5つに分けていますが、前提として各フローが独立して成立しているわけではない点にご注意ください。(厳密には企業理解は母集団形成から内定後まで常に濃淡あれど発生すると考えています)

さらに、ベイジが推奨する選考フローごとのコンテンツ例も記載しますので、ぜひ自社の新卒採用活動にマーケティング思考を用いて改善する際の参考にしてください。

1.【母集団形成】自社への関心が高い学生と出会う

母集団形成は、採用活動の入り口であり、ここでいかに自社にマッチする可能性のある学生の興味を惹きつけられるかが重要です。

  • 主要チャネル
    • 採用オウンドメディア(採用ブログなど)
    • SNS(Wantedly, YOUTRUSTなど)
    • ダイレクトリクルーティングサービス
    • 採用イベント・合同説明会(オンライン/オフライン)
    • 採用媒体(マイナビ、リクナビなど)
    • 大学キャリアセンター、学内説明会
    • リファラル(社員紹介)
  • 情報発信の方針
    • ターゲット学生層に自社の存在と魅力を広く知らせ、関心を持ってもらう
    • 出来る限り多くの求職者と接点を持てるような情報発信をする
    • 魅力の多角的訴求: 事業内容だけでなく、社風、キャリアパス、働く環境など、様々な角度から自社の魅力を伝える。
    • 何をしている会社か端的に伝わるようにする
    • ペルソナに合わせた情報内容とチャネルを選定し、効果的にアプローチする。
  • 具体的なコンテンツ例
    • ダイレクトリクルーティング:ターゲットのキャリア上の不安が自社で解消できる可能性があることを伝えるスカウト文
    • 採用イベント・合同説明会:何をしている会社か遠目でブースを見ても端的にわかるブース設計
    • 採用イベント・合同説明会:一冊で会社のこと(事業/先輩社員/職場環境etc)がわかるパンフレットを配布する
    • 採用媒体:
    • 採用オウンドメディア:社員の日報(その会社の人の思考・仕事への取組み・人となりが伝わる情報発信)

2.【エントリー】応募の心理的ハードルを下げ、意向を高める

母集団を形成できても、エントリーのプロセスが複雑だったり、魅力に欠けていたり、自分は応募できないなと感じさせると、せっかく興味を持ってくれた学生が離脱してしまいます。

  • 主要チャネル
    • 自社採用サイト
    • ダイレクトリクルーティングサービス内の応募機能
    • 採用媒体・求人媒体の募集要項
  • 情報発信の方針
    • 応募障壁の低減: エントリープロセスを簡素化し、学生が気軽に応募できるようにする。
    • 透明性の確保: 選考プロセスやスケジュールを明示し、学生の不安を解消する。
    • 迅速かつ丁寧な初期対応: エントリーに対する迅速なレスポンスと丁寧なコミュニケーションで、企業への信頼感を醸成する。
    • 個別最適化の試み: 可能であれば、応募者の属性に合わせた情報提供を心がける。
  • 具体的なコンテンツ例
    • エントリーフォーム: 入力項目を最適化(最小限に)し、スマートフォン対応した使いやすいフォーム。
    • 応募プロセス説明: エントリーから内定までの流れを分かりやすく図示・説明したページや資料。
    • 自動返信メール: 応募受付完了の通知、今後の流れ、企業情報へのリンクなどを記載した丁寧なメール文面。
    • 説明会案内: 応募者の興味関心に合わせた説明会情報、参加メリットなどを記載した案内メール。
    • 募集要項は個別に解説した記事があるので、こちらを確認してください

3.【企業理解】学生に魅力を感じてもらう

エントリーしてくれた学生に対し、自社の魅力をより深く、多角的に伝え、入社意欲を高めていくフェーズです。

  • 主要チャネル
    • 会社説明会・セミナー(オンライン/オフライン)
    • インターンシップ
    • OB/OG訪問・社員との面談
    • 自社ウェブサイト(採用ページ、社員紹介ページ、企業ブログ)
    • 採用パンフレット・資料
  • 情報発信の方針
    • 企業魅力の深化: 表面的な情報だけでなく、企業の理念、文化、仕事のやりがいなどを深く伝える。
    • 双方向コミュニケーションの重視: 一方的な説明に終始せず、学生からの質問や意見を引き出し、対話を重視する。
    • リアルな情報提供: 実際に働く社員の声や姿を通じて、リアルな企業風土や仕事内容を伝える。
    • 体験を通じた理解促進: 実際の業務に近い体験や社員との交流を通じて、学生自身が企業とのフィット感を確認できるようにする。
  • 具体的なコンテンツ例
    • 説明会コンテンツ: 企業概要、事業説明、仕事紹介、キャリアパス、福利厚生、質疑応答、社員登壇セッション、グループワーク。
    • インターンシッププログラム: 実際の業務体験、課題解決ワーク、社員からのフィードバックセッション、社員との交流イベント。
    • OB/OG訪問・面談: 学生が気軽に質問できる機会の提供、現場社員によるウェブにはないリアルな情報提供。
    • ウェブコンテンツ: 詳細な事業紹介、部署紹介、多様なキャリアを歩む社員のインタビュー記事・動画、企業文化や制度を紹介するページ、FAQ。
    • 資料: より詳細な企業情報、技術情報、プロジェクト事例などをまとめた資料。

4.【選考中】候補者のエンゲージメントを超高める

選考プロセスは、学生が企業を評価する重要な機会です。良い学生を見極めることも大事ですが、それ以上に学生が自社に最終的に入社せずとも「この選考を受けてよかった」と思ってもらえるような体験(Candidate Experience/候補者体験)の提供が重要です。

  • 主要チャネル
    • 面接(オンライン/オフライン)
    • 選考会場・オンライン面接ツール
    • メール・電話(選考結果連絡、日程調整など)
    • フィードバック面談(実施する場合)
  • 情報発信の方針(体験設計の方針を含む)
    • 候補者視点の尊重: 候補者の立場に立ち、不安や疑問を解消し、安心して選考に臨めるよう配慮する。
    • 迅速・透明な情報提供: 選考結果や次のステップに関する連絡を迅速かつ明確に行う。
    • 丁寧なフィードバック: 合否に関わらず、可能な範囲で具体的なフィードバックを行い、候補者の成長を支援する姿勢を示す。
    • エンゲージメント向上: 選考を通じて、候補者の企業への興味関心や好感度を高める。
    • 評価基準の明確化と公平性の担保: 面接官トレーニングを実施し、評価基準を統一することで、公平で納得感のある選考を行う。
  • 具体的なコンテンツ例(体験設計を含む)
    • 選考プロセス案内: 各選考ステップの内容、所要時間、評価ポイントなどを明示した資料や案内。
    • 面接官のコミュニケーション: 傾聴と共感の姿勢、候補者の強みや個性を引き出す質問、企業の魅力を伝えるトーク。
    • フィードバック: 選考結果に対する具体的な理由や、今後の成長に繋がるアドバイス(可能な範囲で)。
    • 選考環境: 清潔で快適な選考会場、スムーズなオンライン面接環境の提供、丁寧な受付対応。
    • 感謝のメッセージ: 選考に参加してくれたことへの感謝を伝えるコミュニケーション。
    • 選考後のアンケート: 候補者体験向上のための意見収集。

5.【内定後】内定辞退を防ぎ、入社意欲を高める

内定を出した後も、学生が入社を決意するまでには不安や迷いが生じることがあります。丁寧なフォローアップで、入社への期待感を高めます。

  • 主要チャネル
    • 内定者向けイベント(懇親会、社内見学、ワークショップなど)
    • 内定者専用サイト・SNSグループ
    • メール・電話・チャットツール(定期連絡、個別相談)
    • メンター制度におけるコミュニケーションチャネル
    • eラーニングプラットフォーム、研修資料
  • 情報発信の方針
    • 入社意欲の維持・向上: 定期的なコミュニケーションや情報提供を通じて、内定者の入社への期待感を高める。
    • 不安解消と安心感の醸成: 内定者が抱える疑問や不安に寄り添い、解消することで安心して入社準備を進められるようにする。
    • 帰属意識の醸成: 会社や同期、先輩社員との繋がりを感じさせ、入社後のスムーズな組織適応を促す。
    • 入社準備サポート: 手続きや生活面での準備をサポートし、入社までのハードルを下げる。
    • スキルアップ支援: 入社前に必要な知識やスキルを学ぶ機会を提供し、入社後の活躍を後押しする。
  • 具体的なコンテンツ例
    • 内定者イベント: 懇親会、社内見学ツアー、先輩社員との座談会、グループワーク、入社前研修。
    • 情報提供コンテンツ: 社内報、ニュースレター、企業の最新情報、配属部署に関する情報、同期内定者の紹介。
    • コミュニケーション: 人事担当者やメンター社員からの定期的な連絡、個別面談の機会提供。
    • サポート資料: 入社手続き案内、福利厚生の詳細資料、住居探しサポート情報(必要な場合)。
    • 研修コンテンツ: eラーニング教材、推薦図書リスト、入社前課題、ビジネスマナー研修資料。

採用マーケティングを成功に導くための重要ポイント

ここまで選考フローに合わせて、主要チャネル・情報発信の方針・コンテンツ例をお伝えしました。最後に、採用ファネルの実践編の解説も踏まえ、採用マーケティングを効果的に推進しながら、継続的な成果を上げるための重要なポイントをお伝えします。

  • データに基づいて施策の振り返りを行う
    今回5つのフェーズごとに施策の方針や例をお伝えしましたが、各フェーズで目標とするKPIがあるはずです。施策実施後にKPIが前年とどう変わったのかを定量的に測ることで、成功・失敗の判断ができるようになります。

    感覚だけに頼るのではなく、設定したKPIに基づいて各施策の効果を定期的に測定・分析し、改善を繰り返すことが重要です。採用管理システム(ATS)などを活用し、データを一元管理・分析できる体制を整えましょう。

  • 現場の新卒社員を巻き込んで、新卒採用の活動を行う
    ターゲットを決めたり、活躍する人にとって自社のどこに価値を感じるかは、新卒入社した人に効くのが一番効果的です。人事・採用担当だけで机上の空論を考えるのではなく、現場の新卒社員を採用活動に巻き込むことが、新卒採用を成功させるために最も大事なポイントです。

  • 長期的な視点での採用ブランディング構築
    こうした施策は単年で終えるのではなく、理想的には毎年実施をすることが重要です。例えばリクルートは「新卒入社して圧倒的成長と当事者意識を身に着けられる会社」というイメージが私が新卒の時は(おそらく今でも)もたれていたのですが、こうしたイメージも長年の施策の積み重ねの結果形成されるものです。

    採用マーケティングは、短期的な母集団形成などの課題解決だけでなく、長期的な視点で「選ばれる企業」としてのブランドイメージを構築していく活動でもあります。一貫性のあるメッセージ発信と、誠実なコミュニケーションを継続することが大切です。

まとめ

新卒採用における競争が激化し、学生の価値観も多様化する現代において、従来の採用手法だけでは求める人材を獲得することは難しくなっています。

本記事で解説したように、マーケティング思考を取り入れ、採用ターゲットとなる学生を深く理解し、自社の魅力を戦略的に伝えていく「採用マーケティング」の実践こそが、これからの新卒採用を成功に導く鍵となります。

母集団形成から内定後のフォローアップまで、各フェーズで紹介した具体的な施策やポイントを参考に、まずは自社の採用活動を見直し、できるところからマーケティング思考を取り入れてみてはいかがでしょうか。

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