
採用活動において、企業と求職者の初期の接点は、採用サイトやスカウトメール、求人広告などが多く、その中では文章が大きな役割を果たします。特に企業の考え方や文化、仕事の具体的な内容を理解してもらうためのツールとして「文章の力」はとても有効です。
私たちは、多様な顧客の採用コンテンツ制作のご相談をいただきますが、既存のコンテンツでは「文章の精度」が低いことによって、企業の魅力が十分に伝わっていないというケースが多くあります。企業には素晴らしい特徴や魅力があるにもかかわらず、上手く言語化できないことで、優秀な人材へ理解してもらえる機会を失っているのです。
特に求人媒体やスカウトメールにおいては、限られた文字数の中でいかに企業の魅力を伝えられるかが、成果を左右します。
エージェントを利用するケースでも、採用担当者が自社の特徴や魅力をエージェントに伝える必要があります。自社について十分に言語化された資料を用意した上でエージェントとの打ち合わせを実施できると、エージェントから求職者への魅力の訴求も、効率良く高い精度で行ってもらえるようになるでしょう。
このように、企業の魅力を上手に伝える文章が書けるかどうかが、採用活動の成果に強く影響するケースは非常に多くあります。
最近では採用にまつわる文章を生成AIに書かせる流れにもなっていますが、魅力的な文章のポイントを知らなければ、生成AIが作った文章の良しあしも判断できませんし、生成AIに適切な指示を出すこともできません。生成AI時代だからこそ、むしろ、「求職者はどんな文章に魅力を感じるのか?」の明確な基準と審美眼が必要です。
では、具体的にどのように書けば、企業の魅力が求職者に伝わるのでしょうか。
以下、5つの原則に沿って解説していきます。
採用における文章で最も多い問題は、抽象的で曖昧な表現が多用されていることです。「風通しの良い企業」「挑戦できる環境」「成長できる企業」といった言葉は、一見すると魅力的に聞こえますが、実際には何も伝わっていません。なぜなら、これらの言葉は解釈の幅が広すぎて、読み手となる求職者が具体的なイメージを持てないからです。
魅力を伝える文章を書くには、数字、固有名詞、具体的なエピソードを用いて、読み手がその場面を思い浮かべられるレベルまで具体化することが必要です。
当社は風通しの良い職場で、若手でもチャレンジできる環境です。入社して間もない社員でも、自由に意見を言える環境が整っています。また、周りもサポートしてくれるので、失敗を恐れずにアイデアを出せる人は活躍しやすく沢山経験を積める企業です。
当社では毎週金曜に若手向けの「提案ミーティング」を実施しています。「提案ミーティング」では次代を担うメンバー発の新規事業の種を作っていくことを目的としており、半期に1回実施される役員も参加する新規事業提案の機会に向けて活発な意見交換が行われています。昨年は入社2年目の社員から出たアイデアが新規事業として採択されました。提案が通らなくても、改善点のフィードバックがあり、成長の機会として社員たちからも好評です。
修正案では「風通しの良い」という抽象的な表現を、具体的な制度・頻度・実例で具体化しています。読み手は「この企業ではこのようにして若手の意見が通るのか」というイメージを明確に持つことができます。
抽象的な表現を減らし、具体的な「シーン」が浮かぶ文章は、読み手の中で、個人的な体験などと紐づき、自分ごと化して捉えやすくなることが期待されます。
多くの企業は「何をしているか(WHAT)」は書きますが、「なぜそうするのか(WHY)」は書きません。しかし、求職者が本当に知りたいのは、制度や取り組みの背後にある企業の価値観やカルチャーです。
事実だけを並べても、それは情報の羅列に過ぎません。その事実が生まれた背景、その制度を作った理由、その判断に至った思想を伝えることで、企業の本質的な魅力が伝わります。
例えば、弊社の採用サイトでは、成長・学習支援に関する制度について実施内容だけではなく、「なぜそのような仕組みを取り入れているのか」の背景を明記したページがあります。
これによって、単なる福利厚生の説明ではなく、企業が社員の成長をどう捉えているか、どのような価値観を大切にしているかが伝わり、求職者は「考え方に共感できるか」を判断できるようになります。
当社では、リモートワークを導入しており、週2回まで在宅勤務が可能です。加えて、チームや業務内容に応じて柔軟な働き方をサポートしており、生産性と働きやすさの両立を推進しています。オフィスと自宅をバランス良く使い分けながら、集中して取り組める環境づくりを目指しています。
当社は「成果が出るなら働く場所は問わない」という考えから、2020年に週2日の在宅勤務を導入しました。導入後は作業の生産性が上がる一方、メンバー間の雑談が減るなどコミュニケーション面での課題も見えたため、管理職主導で協議し出社日が重なったメンバー3人以上でランチに行く際に月2回1,000円までの補助金を出すランチ会制度を設け、交流の機会を補っています。完璧な制度ではありませんが、効率と快適な働き方を追及する姿勢を大切にしています。
制度の背景にある考え方、導入後に見えてきた良い点と課題、それに対する取り組みまで書くことで、企業の価値観と意思決定プロセスが見えてきます。文章が深さを持つと、企業は単なる「選ぶ対象」ではなく、価値観の相性を確かめる相手に変わります。
採用において、企業は自社の良い面だけを伝えがちです。しかし、求職者は「完璧な企業など存在しない」ことをすでに知っています。良いことばかりを並べた文章は、かえって信頼性を損ない、入社後のミスマッチを生む原因となります。
そのため、現実を正直に伝えることが、最も効果的といえるでしょう。課題があることを認め、それにどう向き合っているかを伝えることで、求職者は企業の誠実さを感じ、信頼を寄せるようになります。
弊社が過去に実施した転職者に向けて行った採用サイトに関する調査でも、「どのような採用サイトであれば企業の印象が良いか」の質問において、「都合の悪い情報も正直に載せている」が3位にランクインしています。

求職者の多くは、企業が発信する情報だけではなく、クチコミサイトやSNSの評判なども確認します。これは、「企業は公式情報では良いことしか言わない」という認識があるからこその行動でしょう。そのため、一見すると企業にとって都合の悪い情報も正直に書くことで、求職者はむしろ「誠実」「正直」という印象を抱くと考えられます。
また、過度に自社を演出して良く見せようとすることは、求職者に「ハードルが高い」と感じさせる要因になる場合があります。「不完全な部分があるからこそ、あなたが活躍できる余地がある」そんなメッセージが伝わる文章を書きましょう。
当社の研修制度は非常に充実しており、入社時には10日間の集中研修を実施します。配属後も先輩社員がていねいにOJTを行い、一人ひとりの成長をしっかりサポートします。分からないことがあればいつでも質問できる風通しの良い職場で、社長との距離も近く、フラットなコミュニケーションが取れる環境です。
さらに、外部セミナーへの参加費用は会社が全額負担し、業務に関連する書籍も自由に購入できます。当社では、新入社員の皆さんが安心してスタートを切れるよう、万全の体制でお迎えします。
当社の研修は、入社時の10日間の導入研修と、配属後のOJTが中心が中心となり、体系的な研修プログラムは用意できていません。
配属先の先輩が実務を教えながら育てるスタイルのため、先輩の忙しさによっては「もっと教えてほしい」と感じる場面もあるかもしれません。しかし、分からないことがあればSlackの質問用チャンネルで誰に聞いても良い文化があり、社長も含めて気軽に質問できる環境です。
また、外部セミナーへの参加は会社が全額負担で、業務に関連する書籍も申請すればすぐに購入できます。「手取り足取り教えてもらいたい」という方には物足りないかもしれませんが、「自分から学びにいく姿勢」がある方なら、むしろ自由度が高く成長できる環境だと考えています。
課題を隠さず伝えつつ、それをフォローする仕組みや文化も説明することで、求職者は現実的な判断ができます。
採用媒体を一覧すると、多くの企業が似たような言葉で自社を説明しています。「アットホームな雰囲気」「実力主義」「顧客第一」といった言葉は、どの業界でも、どの企業でも使われる表現です。これでは差別化になりません。
求職者が知りたいのは、どの企業でも当たり前に言うことではなく、「その企業で働く意義」を感じられる独自性です。業界の一般論や抽象的な表現ではなく、他社にはない具体的な特徴を明確にすることで、求職者は初めて、あなたの企業を選ぶ理由を見出せます。
当社の営業は顧客に寄り添いながら課題解決を行うスタイルです。裁量が大きく、成果に応じた評価制度が整っています。
当社の営業の約6割はインバウンド案件で、初回商談から顧客の目標と課題についてヒアリングをしていく「課題解決型」のコンサルティング営業が特徴です。個人ノルマはなく、チームのKPI(成約数・満足度・継続率)で評価するため、短期的な押し込み営業だけでは評価されず、顧客の成功にコミットしていることを評価します。
差別化は、派手な強みを作ることではなく、他社が言えない「自社の当たり前」を実情に基づいてていねいに言語化することです。
企業は自社目線での「言いたいこと」を書いてしまいがちですが、採用活動においては、求職者が「知りたいこと」を書くことが最も重要です。
特に、企業が伝えたい「ミッション」や「社会的意義」と、求職者が実際に知りたい「自分がここで働けるのか」「続けられるのか」という現実的な不安には、大きなギャップがあります。理念やビジョンを語ることも大切ですが、まずは求職者が抱える具体的な不安に答えることが、信頼関係を築く第一歩です。
当社は「テクノロジーで社会課題を解決する」というミッションを掲げています。私たちが開発するプロダクトは、地方の中小企業のDX推進を支援し、日本の産業構造の変革に貢献しています。
この大きなビジョンに共感し、一緒に社会を変えていける仲間を求めています。意義のある仕事にチャレンジしたい方、自分の仕事で世の中を良くしたいという想いを持つ方のご応募をお待ちしています。
「地方の中小企業のDX推進支援」と聞いて、「自分にできるだろうか」と不安に思われるかもしれません。実は、当社の営業メンバーの半数以上が、IT業界未経験からの入社です。入社後2カ月間は必ず先輩営業に同行し、課題のヒアリング方法や、後続の開発チームへのスムーズな引継ぎ方などを学べる期間を設けています。
専門知識より、お客様の日常業務への解像度を高くして課題を抽出するスキルが求められており、専門的なDXの知識は開発チームのサポートも受けつつ、事例をベースにゆっくり学んでいける環境です。「お客様と直接対話しながら、目に見える形で企業の成長を支援できる」という実感は、他では得難い経験だと思います。もし、あなたが「顧客の近くで価値を届けたい」と考えているなら、当社の環境は向いていると思います。
求職者は「社会を変える」という大きな話の前に、「自分がそこで働けるのか」「活躍できるだろうか」という個人的な不安を抱えています。その不安に先回りして答えることで、「この企業は自分のことを理解してくれている」という共感が生まれ、応募のハードルが下がります。ミッションの伝え方は、キャッチコピーも便利ですが、求職者に伝える際には抽象度を下げて伝えることで理解を促進できます。
文章は読み手の視点に立った瞬間、ただの説明ではなく“対話”として機能します。
なお、弊社の実施した新卒採用に関する調査においても、就職に抱える不安について聞いたところ、人間関係や就労条件に関するものが上位を占め、企業側が積極的に伝えがちなパーパスやミッションは優先度が高くないことが分かりました。

ここまで5つの原則を解説してきました。実際に文章を書く際には、ぜひ以下のチェックリストを活用してみてください。
これらの内容を実践した上で、面接時にどの情報が「参考になったか」や「決め手を後押ししたか」をヒアリングし、傾向を探り文章をブラッシュアップしていきましょう。
採用活動における文章力は、単なる「文章の上手さ」ではありません。自社の魅力や特徴を深く理解し、それを求職者に届く形で表現する力です。正しい日本語やエモーショナルな言葉選びだけでは、求職者に響く文章は書けません。自社への深い理解と、求職者への誠実な姿勢があって初めて、人の心を動かす文章が生まれます。
今回ご紹介した5つの原則は、今日からすぐに実践できるものばかりです。まずは自社の採用サイトや募集要項、スカウトメッセージなどを読み返し、5つの原則に照らしてチェックしましょう。
文章を変えることで、出会える人材が変わります。文章の書き方を鍛えることは、採用力を高めることに直結します。ぜひ、今日から実践してみてください。
ここまで、文章の書き方を解説してきましたが、そもそも「何を書けば良いか分からない」という方もいるかもしれません。そんなときは、まず書くための材料を集めることから始めましょう。
その際には、以下の3つを実施することで、より文章が書きやすくなります。
求職者へ伝えたい内容に関連する、社内レポートや説明資料、制度運営の実績データなどから、数字や固有名詞を拾い集めましょう。
例えば、「風通しの良い職場」と書きたくなったら、その根拠となる具体的な仕組みや数字である、定例ミーティングの頻度・1on1の実施率・部署をまたいだプロジェクトの件数など、抽象的な内容を裏付ける「事実」を洗い出します。
制度の背景にある「なぜ」や「現場の本音」を知るには、社員へのアンケートやヒアリングが有効です。ただし、質問の仕方にコツがあります。
「会社の良いところは?」と聞くと、当たり障りのない回答しか返ってきません。代わりに「その制度ができたきっかけは?」「導入後に困ったことは?」「それをどう解決した?」と掘り下げて聞くことで、企業や社員の価値観・課題への向き合い方が見えてきます。
自社の「当たり前」は、実は他社では当たり前ではないかもしれません。しかし、内側にいる人間には、その違いが見えにくいものです。
取引先や顧客、業界の知人、転職エージェント、新入社員など、外部の視点を持つ人に「他社と比べて当社はどう違いますか?」「当社の特徴的な部分はどこだと思いますか?」と率直に聞いてみましょう。特に、複数社を見ているエージェントや、入社して間もない社員の言葉には、自社では気づかない差別化ポイントが含まれています。
「御社は提案が通るまでのスピードが速い」「意思決定の透明性が高い」「失敗を責めない文化がある」など、第三者だからこそ見える特徴を言語化してもらうことで、差別化の原則を満たす材料が手に入ります。
しかし、採用業務で多忙な中、これらすべてを実施するのは難しいという方は多いのではないでしょうか。そんなときは、ぜひ一度ベイジにご相談ください。採用戦略の情報整理から、社員へのヒアリング・インタビュー、採用サイト制作まで、一貫してサポートいたします。
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