
様々な企業の採用に関する悩みの相談を受けながら、外部環境の変化、企業内部の体制の問題に加えて、採用活動がうまくいかないもう一つの大きな要因として、長年のビジネス慣習の中で培われてきた「広告的発想」があるように感じています。
日本の採用ビジネスは、ある面では「広告」として発展してきました。
その名の通り求人広告は、新聞や雑誌の広告枠を買い、企業の魅力を「売り込む」ためのメディアでした。リクナビやマイナビといった求人サイトも、その延長線上にあります。
企業は広告費を支払い、魅力的なキャッチコピーと写真で求職者の目を引き、応募を増やす。こうした広告的なアプローチが、今なお多くの企業の採用活動の前提となっています。
広告は良くも悪くも「良く見せること」にフォーカスしがちです。商品やサービスの魅力を最大限に引き出し、消費者の購買意欲を喚起する。そのために、多少の誇張や演出は、当然のこととして受け入れられてきました。消費者側も「ある程度は仕方ない」と許容してきました。
こうした広告的発想が採用活動に持ち込まれた結果、採用の現場で良くない思考習慣が根付いてしまっています。
自社について「良いことだけを言う」「盛る」「演出する」こと。
多くの採用サイトや求人票を見ると、抽象的で耳障りの良い言葉が並んでいます。「風通しの良い職場」「チャレンジできる環境」「成長できる仕事」「アットホームな雰囲気」。
これらはポジティブな言葉であるにも関わらず、具体性に欠け、どの企業にも当てはまるような内容になっており、実際の採用にポジティブには働きません。
キラキラした写真も、同様の問題を抱えています。笑顔で談笑する社員、開放的なオフィス、おしゃれなミーティングスペース。こうしたビジュアルは、確かに企業のイメージを良く見せます。しかし、それが実態と乖離していれば、入社後に「なんか違う」というミスマッチを生むことになります。
広告的な表現は、求職者の注意を引くためには効果的かもしれませんが、実態に即した具体的なデータや根拠が示されなければ、空虚な自画自賛になるだけです。むしろ求職者は「本当にそうなのか?」と疑念を抱き、口コミサイトやSNSで裏を取ろうとします。そこで矛盾する情報が見つかれば、企業への信頼に傷がつきます。「この会社は、都合の悪い実態を隠していそう」という印象が形成されます。
こうした演出や誇張がもたらす最も深刻な問題は、入社後のミスマッチです。
労働実態や採用に関する様々な調査で、「入社前に抱いていたイメージと実際の職場にギャップがあった」という回答が半数以上に上っています。ギャップを感じた内容も、「仕事内容」「残業時間・休日」「社風・人間関係」と多岐に渡り、採用時のコミュニケーションによるミスマッチ、情報共有不足が常態化していることがわかります。
過度に期待値を上げられた状態で入社した社員は、現実とのギャップに直面し、失望します。そして最悪の展開、早期離職という結果に至るのです。
広告と採用の違いは、成功指標にもあります。特に獲得型の広告の成功は、インプレッションやクリック数、コンバージョンなどで測られがちです。つまり、短期的な反応を最大化することが目的になります。一方で、採用の成功は、単に応募数や内定承諾数ではなく、入社後の定着率や活躍度、長期的なエンゲージメントで測られるべきです。
広告的発想で採用活動を行うと、応募数を増やすことだけに注力し、その後の定着や活躍については十分に考慮しない、ということが起こります。応募数が多ければ成功。内定承諾が取れれば成功。そうした短期的な指標だけを追いかけた結果、ミスマッチ人材投入による現場マネジメントの混乱、そして早期離職という形でツケが回ってきます。
求職者が求めているのは、演出された「理想」ではなく、ありのままの「リアル」です。当社の独自調査(中途版、新卒版)でも、求職者は「リアルな情報」と「オープンな情報開示」を企業に求める傾向が顕著です。
仕事の大変さ、組織の課題、キャリアパスの現実、こうしたネガティブな側面も含めて誠実に伝えることが、長期的には企業の信用を高め、定着して活躍する人と出会う、という意味での採用力を高めることにつながります。
誠実さと透明性こそが、複雑化した情報環境の中で求職者の信頼を得るための鍵です。広告的な演出で一時的に応募を集めることはできても、それが持続可能な採用戦略にはなりません。口コミサイトやSNSなどにより、飾り立てた演出のメッキがすぐに剝がされる時代だからこそ、「良く見せる」ことから「正直に伝える」ことへと、発想を転換する必要があります。
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