
給与水準を上げれば応募が増える。これは採用の現実です。
実際に給与を引き上げて応募数が改善した事例は数多くあります。給与面で有利な企業が採用で優位に立つというのは、否定しようのない事実です。
ただ、すべての企業がその選択をできるわけではありません。
事業構造やビジネスモデルの都合上、在籍している社員とのバランスなどで給与水準を大きく変えることが難しい会社の方が大半でしょう。
そして、もう一つ見落とされがちな視点として、給与で引き付けた人は、より高い給与で去っていく可能性が高いということもあげられます。
では、給与以外で勝負するには、どんな打ち手があるでしょうか。特にコンテンツの観点から、私たちが最近顧客支援をしながら考えていることを共有します。
採用に関する各種のリサーチを実施してて一貫して感じるのは、求職者は給与・待遇以上に、その会社の人間関係、働く人のリアル、社風などをかなり知りたがっている、ということです。それが満たされないと、仮に給与が高くても長く安心して働けない、という考えが見て取れます。
こうした傾向があるにもかかわらず、求人メディアの募集要項や採用サイトなどで「どんな人が働いているのか」「どんな文化があるのか」がまったく見えないケースは多いです。
求職者へのインタビューに立ち会った経験からいっても、求職者が強く反応するのは、綺麗な成功談よりも「失敗した経験」「意見が通らなかった時の話」「会社や仕事でうまくいかなかった経験」といった泥臭いエピソードです。
失敗をどう扱うか、意思決定にどう関わらせてもらえるか、会社にはどんな問題課題があり、社員としてどう乗り越えていってるのか、そうした具体的な働き方の描写が、その企業への関心、共感、信頼を生みます。
高尚な理念や価値観をいくら並べても、それを裏付けるエピソードがなければ、求職者には「どの会社にも書いてある言葉」としか映りません。社員インタビューであれば量より質。リアルな葛藤を含む1本のインタビューの方が、小綺麗にまとめらた8本のインタビューを超えることもあるでしょう。
成長できる環境です。挑戦を応援する文化があります。
こうした言葉は、もはや何かを言ってるようで何も伝えていません。どの企業もよく言う典型的な表現になってしまっているからです。
求職者は、人間関係や社風以外に、入社半年でどんな業務を担当し、1年後にはどんなプロジェクトを任されるのか、3年後にはどんな選択肢があるのか、という具体的な時系列のイメージを知りたがっています。
キャリアパスを抽象的なポジション名や等級表で示すのではなく、実際の仕事の変化として描くことも効果的です。「入社3ヶ月は既存案件のサポートに入り、半年後には担当顧客を持つ。」
「1年目の終わりには後輩の指導も始まる」といった粒度で語れると、求職者は入社後の自分をリアルにイメージできます。社員インタビューにキャリアの変遷を盛り込む、先輩社員の入社からの軌跡をコンテンツ化する、といったアプローチももちろん有効です。
公式の採用サイトや求人票だけが情報発信の場ではありません。求職者にとって最も信頼できる情報源は、社員個人がSNSで日常的に発信している投稿です。「この人たちと一緒に働きたい」という感覚は、こうした場所で生まれています。
ただし、SNS発信は属人性が高く、継続が難しい施策でもあります。一部の発信好きな社員に依存していると、その人が異動や退職をした途端に止まってしまいます。だからこそ、仕組みとして設計することが大切です。
まずスモールステップで始めることをおすすめします。全社員に発信を求めるのではなく、まず数名の中心メンバーを決め、小さく回してみるなど。発信内容のネタ出しや投稿文のリライトをサポートする社内編集部的な役割を置くことも有効です。
今なら生成AIを上手に活用することで、投稿の負荷を下げることもできるでしょう。ただし、完全自動化はバレた時に信頼を失うので止めましょう。事務的に運営されているSNSアカウントに魅力を感じる人はいない、と考えておく必要があります。
発信に対してインセンティブを設ける、採用への貢献を評価に結びつけるといった動機づけをしている企業も存在します。
発信の文化は一朝一夕には育ちません。試行錯誤を繰り返しながら、自社に合ったやり方を見つけることが重要です。
動画コンテンツは採用においても有効です。求職者が知りたがっている、文章では伝わりにくい職場の雰囲気や社員の人柄という要素を、よりリアルに直感的に届けられるからです。
採用目的のYouTube運営において再生数は本質的な指標ではありません。
バズる動画よりも、入社を検討している求職者が「見てよかった」と感じる動画のほうが価値があります。大切なのは、実際に応募した人や内定承諾した人に「どの動画に惹かれたか」を聞き、採用に効いているコンテンツを把握することです。
再生数が少なくても、求職者の意思決定に関わっている動画は存在します。求職者の声をフィードバックとして取り込み、何が刺さるのかを検証しながら運営を改善していく姿勢が、採用YouTube成功の鍵です。
給与で差をつけられない会社が、それでも選ばれるためには、「ここで働くとはどういうことか」をリアルかつ具体的に伝えられるかどうかにかかっています。
社風・成長機会・社員の日常という3つの要素を、採用サイト・SNS・動画というそれぞれの特性に合った形で発信できる企業こそ、長期的に強い採用力を持てるのではないでしょうか。
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