
企業の採用マーケティングを支援している株式会社ベイジでは、採用活動の参考になる有益なリサーチを定期的に行っています。その活動の一環として「新卒就活におけるAI活用実態調査」を、2026年06月に実施しました。
生成AIが世の中に広く使われ始めたのは、ここ数年のことです。きっかけは、2022年11月に公開されたChatGPTでした。ちょうどその頃、冬季インターンを終え、3月の採用広報解禁を目前にしていたのが2024年卒です。まだ生成AIの活用が浸透しきっていない状態で、活用するかどうかを、多くの学生が決めかねていました。
実際に、マイナビが2024卒向けに実施した調査でも賛否が分かれており、エントリーシート作成でのAI活用に対して、「AIが作った文章をそのまま使うのでなければ問題ない」が43.5%にのぼる一方、「利用すべきではない」とする学生も28.9%いました。
それから数年で、状況は大きく変わりました。生成AIはすっかり身近な道具になっています。NTTドコモ モバイル社会研究所の調査によれば、就活世代を含む10〜20代の生成AI利用率は、2026年2月時点で約7割です。いまや「使うべきか」と問われた時期は過ぎ、使うこと自体は当たり前のフェーズに入りつつあります。
今回の調査では、すでに社会人となった2024〜2026年入社の若手会社員に、自らの就活を振り返ってもらいました。生成AIが就職活動にどう入り込み、学生がそれをどう受け止めたのか。その実態を、これからのAI時代の採用活動のヒントとして読み解きます。
<調査概要>
調査対象:2024年卒・2025年卒・2026年卒の若手社員
有効回答人数:434名
調査時期:2026年06月09日 ~ 2026年06月12日
調査方法:アイブリッジ社『Freeasy』を用いたインターネットリサーチ
今回集計する回答者は、2024年・2025年・2026年新卒入社した434名。各世代の特徴は以下の通りです。
【2024年入社】
大学入学は2020年春。入学式もないままオンライン授業で大学生活が始まった、コロナの影響が最も濃い世代。就活の本格化は2023年で、その少し前にChatGPTが登場。インターンや業界研究などの序盤は「AIなし」で動き出し、途中から「AIあり」に切り替わった世代。
【2025年入社】
大学入学は2021年春。1〜2年次はコロナ禍。就活が本格化しはじめる時期(2023年5月)に5類移行で日常が戻り始めた。就活期を通じて生成AIが普通に使える状態にあった最初の世代。
【2026年入社】
大学入学は2022年春。1年次はまだコロナの名残があるが、大学生活の後半はほぼ平常。就活期(2024〜2025年)は完全に生成AI時代で、ChatGPT以外の選択肢も増えた中で動いた。AIがすでに浸透してきた状態で就活をした世代。

「はい」(58.1%)が「いいえ」(41.9%)を上回り、生成AIを活用した就活生は、約6割という結果になりました。入社年度別にみると、生成AIの活用割合はこの3年の間で着実に増えていることがわかります。

ChatGPTが登場する前から就職に向けて動き出していた2024年入社は半数を下回り、就活の最初から生成AIがあった2026年入社では7割を超えています。就活への生成AI活用は、この3年で一気に普及したことがうかがえます。
この時期は、生成AIサービスが出そろっていくタイミングでもあります。2024年入社が本選考を迎えた頃はChatGPTが広まり始めたばかりでしたが、その後はBing Chat(現Copilot・2023年2月)やBard(現Gemini・2023年5月日本語対応)などが次々とリリースされ、選択肢も増えていきました。
では、就活生たちは実際にどの生成AIサービスを使っていたのでしょうか。

「ChatGPT」(73.8%)が最も多く、「Gemini※旧Bard」(27.0%)「Copilot※旧Bing Chat」(26.2%)と続きます。各サービス、リリースタイミングは異なりますが、いずれにしてもChatGPTの活用率が圧倒的でした。
ChatGPTが首位であるのは、就活での活用に限った話ではありません。2022年に対話型AIの先駆けとして広まって以来、いまも利用者数で世界トップを走り続けており、日本国内の利用率調査でも首位を保っています。先行者としての強さが、就活の場面にもそのまま表れたと見るのが妥当でしょう。
一方で、各サービスの初期の性格の違いが影響した可能性もあります。Copilot(旧Bing Chat)やGemini(旧Bard)は検索エンジンと一体で登場し、「賢い検索窓」という色合いが濃かった一方、ChatGPTはリリース当初から純粋な対話型サービスでした。「対話しながら相談する」という使い方が、エントリーシート作成や面接対策などの目的と相性が良かったことも、選ばれた一因として考えられます。
次に、どんな場面で活用したのかを見ていきましょう。

活用場面の上位には、「自己PRの作成・添削」(44.8%)、「志望動機の作成・添削」(42.1%)、「履歴書の作成・添削」(42.1%)が並びました。
ほとんどの人が、応募書類作成の場面で活用していたことがわかります。生成AIを使った252人のうち85%にあたる215人が、文章作成の場面で生成AIを活用していました。
就活サービスを提供している企業側においても、質問内容に回答するだけで自己PRやガクチカを作成してくれるようなAIアシスタント機能が、次々とリリースされています。
たとえばリクナビは、4つの質問項目に答えるだけで、ガクチカの文章の土台ができる「ガクチカAIアシスタント」を提供しています。ワンキャリアの「ESの達人」も同様に、生成AIでガクチカを作成してくれるサービスです。また、マイナビでは、穴埋め式のフォームに記入するだけで自己PRのベースが作成される仕組みが用意されています。
では、文章作成において、就活生は具体的にどのように生成AIの出力を使用していたのでしょうか。

最も多かったのは「出力結果を一部修正して使用した」(39.5%)、次いで「AIとのやり取りを重ねて精度を上げてから使用した」(31.6%)でした。「出力結果をそのまま使用した」(18.1%)という回答は一定数いるものの、少数派にとどまりました。
多くの就活生は、自分で手を加えたうえで文章を使用していることがわかります。
一方で、気になる傾向も見られました。今回の調査では母数が限られるため断定はできませんが、「出力結果をそのまま使用した」と回答した割合のみが明確に、2024年入社、2025年入社、2026年入社と年度が新しくなるにつれて上昇していました。
就活生たちがAIに触れたこの数年は、対話型AIが世代を重ね、生成される文章の質が大きく向上していった時期でもあります。初期のモデルでは手直しが前提だった出力も、モデルの進化とともに、そのまま通用する水準に近づいてきました。
いまはまだ、修正を前提として生成AIを使う就活生が多数派です。ただ、手の加え方のバランスは、生成AIの進化とともに、少しずつ変わっていくかもしれません。

生成AIを使って感じた効果として最も多かったのは「面接の準備が充実した」(42.9%)で、「時間・手間を削減できた」(37.7%)、「自己理解が深まった」(36.9%)が続きました。「書類の質が上がった」(31.7%)は4位にとどまりました。
前述した活用場面では、自己PRや志望動機の作成など、書類作成に関する項目が多く挙げられました。しかし、効果の1位は「面接準備」であり、「自己理解」も上位に入っています。
この結果から、就活生は生成AIを、単に作業を効率化するための道具ではなく、自分の考えを引き出し、言語化することにも役立てていたと推測できます。
便利に使いこなしていた一方で、就活生は生成AIの活用に複雑な思いも抱えていました。

就活で生成AIを使うことへの罪悪感を尋ねると、「やや感じた」(34.9%)が最も多く、「とても感じた」(26.2%)と合わせて約6割でした。半数を超える人が、どこか後ろめたさを感じながらも生成AIを使っていたことになります。
この罪悪感は、生成AIの出力をどのように扱ったかによって差がみられました。出力の扱い方ごとに罪悪感を覚えた割合を見ると、最も高かったのは「そのまま使用した」人で、94.9%に達しています。
この結果から、生成AI活用への罪悪感は、出力内容をみずから吟味し、自分の言葉として再構成する過程によって軽減される傾向があると考えられます。
とはいえ、どの使い方をした層にも、罪悪感を抱えている人が一定数います。やり取りを重ねて使用した人でも、半数は後ろめたさを覚えていました。手を加えたかどうかにかかわらず、生成AIを使ったという事実そのものが、後ろめたさの原因になっている場合もありそうです。
では、生成AIを活用した就活生は、どんな不安や懸念を抱えていたのでしょうか。

「個人情報の取り扱いへの不安」(43.7%)が最も多く、「AI使用が企業にネガティブな印象を与える懸念」(38.1%)、「情報の正確性への不安」(32.9%)と続きました。
「特に不安は感じなかった」(7.1%)は1割にも満たず、多くの就活生が何らかの不安を抱えながら生成AIを活用していたことがわかりました。
また、感じた不安の数と罪悪感の関係を見ても、不安の数が多い人ほど、罪悪感も強くなる傾向にありました。
| 感じた不安の数 | 罪悪感ありの割合 |
|---|---|
| 特にない | 16.7% |
| 1つ | 58.6% |
| 2つ | 75.0% |
| 3つ以上 | 81.0% |
多くの就活生は、便利さを感じながらも、「この使い方でよいのか」「企業にどう見られるのか」「情報は正しいのか」といった何らかの不安と後ろめたさを抱えたまま、生成AIを使っているようです。
罪悪感や不安を持つ人が多数ではありつつも、就活生は生成AIを否定的に見ているわけではありません。

後輩へ生成AIの活用を推奨したいかどうかを尋ねたところ、「推奨したい」(44.4%)、「積極的に推奨したい」(26.6%)の推奨派が7割(71.0%)と多数を占めました。逆に、「あまり推奨したくない」「推奨したくない」を合わせた非推奨派は6.8%にとどまりました。
ここまで見てきたように、就活生は生成AIの活用に効果を感じる一方で、罪悪感や不安も抱えていました。それでも多くの人が、後輩にも生成AIの活用を推奨したいと回答しています。
就活生は就活への生成AI活用に対して、払拭しきれない罪悪感や不安はありつつも、そのネガティブな要素を上回る利便性を感じていることがうかがえます。
ここからは、企業側が採用活動で生成AIを活用することに対して、就活生がどのような認識・印象を持っているのかを見ていきます。

まず、企業の生成AI活用の広がりについての認識です。「ほとんどの企業が活用していると思う」(35.5%)が最も多く、「すべての企業が活用していると思う」(24.7%)、「半数程度の企業が活用していると思う」(17.7%)と続きました。
実態はともかく、就活生には企業も生成AIを使っていると認識されているようです。

企業側の生成AI活用に対する印象を尋ねると、「特に気にならない」(41.2%)が最も多く、「やや好感を持つ」(24.2%)、「好感を持つ」(12.2%)が続きます。不信感を示した人は、合わせて22.4%にとどまり、大多数の就活生が、企業のAI活用を好意的に、あるいは気にせずに受け止めていることがわかります。
前の章で、就活生自身の生成AI活用について尋ねた際には、6割程度が罪悪感を抱いていましたが、企業側が生成AIを使うことには、約8割が寛容な姿勢を示しています。自分の利用に罪悪感を覚えていた人に絞ってみても、その96.1%が、企業のAI活用を「気にならない」または「好感を持つ」と答えていました。
その理由としては、以下のような意見が集まりました。

「応募する側も同じようにAIを使っているから」という相互性の意識や、「今どきAIを使うのは当たり前」という時代認識、「効率化のためなら当然」という、企業側の事情を汲む声が複数見られました。
また、就活生本人の生成AI活用有無とのクロス集計をしたところ、「活用した人」では、企業の活用に不信感を持つ人はわずか8.3%。一方、「活用していない人」では41.8%にのぼりました。自分が使う側に立った経験も、企業の利用への寛容さにつながっているようです。
企業がAIを活用すること自体には寛容な意見が多い一方で、その活用範囲については慎重な姿勢も見られました。

AIではなく、人間に対応してほしい場面の上位に挙がったのは、「面接での質問・会話」(29.7%)、「選考そのもの」(28.6%)、「企業からのメール・連絡文」(24.7%)でした。
一方で、「採用担当者とのチャット・問い合わせ対応」(12.0%)や「スカウトメッセージの作成」(15.2%)、「求人票・募集要項の作成」(16.1%)はやや低めです。
この結果から、企業のAI活用への寛容さには、活用範囲によるグラデーションがあることがわかります。効率化のためのAI活用は理解できるが、面接のように人と向き合い、自分が評価されるような場面は人であってほしい、という要望が読み取れます。
この傾向は、AI面接への反応にも表れました。

AI面接が実施されることになった場合に、「受けたいと思う」と答えた人は、15.9%にとどまりました。「抵抗はないが積極的でもない」(34.6%)が最も多く、「できれば避けたいが、受けざるを得ない場合は受ける」(28.6%)、「受けたくない」(10.1%)と続きます。積極的に歓迎する人は少なく、多くはためらいを見せています。

現在の職場での生成AIの推奨状況について、「特に推奨も禁止もされていない」(26.3%)が最も多い結果となりました。
これによると、回答者の勤務先の約4分の1は、AIの方針が定まらないまま運用されていることになります。一方、何らかの形で推奨されている企業は約6割にのぼり、「禁止されている」はわずか2.8%です。
多くの企業で、AIはすでに使える状態にあるものの、その推奨の度合いや線引きは、企業によってさまざまであることがうかがえます。

どのようなAI方針の企業で働きたいかを尋ねると、最も多かったのは「必要な業務に限定してAIを活用している企業」(32.0%)で、次いで「従業員個人の判断に委ねている企業」(21.4%)、「AIの方針は特に気にしていない」(20.5%)と続きました。
「AI活用を禁止している企業」(9.4%)を望む声は全体の1割未満で、生成AIの活用自体を敬遠する若手社員は少数派であることがわかります。

最も多かったのは「AIの普及により、自分の仕事が代替される不安を感じている」(35.7%)で、それと近い割合で、「AIを活用することで自分のスキルが高まると感じている」(31.1%)が続きました。全体で見ると、不安と期待がほぼ同じ重さで並んでいます。
ただし、今回は複数回答が可能な設問のため、回答を「ポジティブな意見/ネガティブな意見」に分けて、さらに詳しく見ていきます。
「スキルが高まる」「キャリアの可能性が広がる」といったポジティブな選択肢のみを選んだ人は31.1%、「仕事が代替される不安がある」「市場価値が下がる」といったネガティブな選択肢のみを選んだ人は33.6%で、両者は同程度の割合に分かれました。一方で、両方を選んだ人は14.1%でした。
つまり、期待と不安はひとりのなかで揺れているというより、AIを成長の機会と捉える層と、脅威と捉える層に、同じ若手世代でも分かれていると言えそうです。
今回の調査から、就活での生成AI活用は年々広がっており、その活用にあたって多くの人が罪悪感や不安も抱えていることがわかりました。また、企業側のAI活用には寛容ですが、その受容はまだ効率化の範囲にとどまっており、評価やコミュニケーションに関わる場面では、人に見てほしいという慎重な姿勢が残っています。
さらに、AIがこれからのキャリアにもたらす影響については、成長の機会と見る層と、脅威と見る層に、同じ世代の中でも分かれていました。
こうした就活生の実態は、AI時代の新卒採用にいくつかの示唆を与えてくれます。
これからの新卒採用では、AIと向き合うことは避けて通れないものとなるでしょう。就活生のAI活用を、前提となる環境として捉え直し選考を設計していく必要があります。今回の調査が、その一助となれば幸いです。
【引用】
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