空き家や再建築が不可能な物件など、売却が難しい不動産の買取・再販事業を展開する株式会社AlbaLink(以下AlbaLink)。AlbaLinkは、「訳あり不動産」を不動産市場に再流通させ、「世の中の空き家をゼロにすること」を目指す企業です。同社の採用サイトのリニューアルを、ベイジが支援しました。
本記事では、AlbaLink 代表取締役の河田さん、取締役COO・マーケティング部長の大友さん、人事部の上総さんへのインタビューをもとに、採用サイトリニューアルの背景や具体的な取り組み、リニューアル後の効果などについて紹介します。
課題
解決策
効果
AlbaLinkが採用サイトのリニューアルを検討し始めたのは、2023年の夏頃でした。その年の秋にはTOKYO PRO Marketへの上場も控え、業績は急成長の真っ只中。それに伴って、採用にも一層注力したい状況にありました。今後の採用計画を進めるためには、採用の約8割をリファラル採用に依存していた状態から脱し、他の採用チャネルを強化することが急務でした。そのため、情報量の少ない採用サイトを整備し、情報を充実させる必要がありました。
また採用サイトだけでなく、採用活動に関してもいくつかの課題を抱えていたと代表の河田さんは話します。
河田さん:
既存の採用サイトには、どんな事業をしているのか、同業他社とは何が違うのか、なぜ不動産屋がマーケティング職を求めているのかなど、私たち自身を説明するコンテンツが少なかったと思います。その影響か、最も欲しい営業職の採用状況が芳しくなく、当社にマッチする人材にうまくアプローチできていない状況でした。また、現場で活躍している社員と経営層との間に、価値観のズレが生じ始めているのではないかという懸念も感じ始めていました。創業から間もない頃は人数も少なく、自分たちが大切にすべき価値観の目線合わせをしやすかったのですが、ここ1~2年のうちに社員の人数が倍になるスピードで増えたことで、意識の統一が図りづらくなりつつありました。採用サイトのリニューアルを通して、現場のリアルな声を知ることで、社内施策に活かしたいと考えました。
リニューアルにあたり、なぜベイジをパートナーに選んだのか、ベイジに最初に問い合わせをしてくださった大友さんに尋ねました。
大友さん:
ベイジのことは元々SNSで知っていました。その後、自社のサイトリニューアルを考え始め、さまざまな企業のサイトのデザインを見るようになりました。その中で、気に入ったサイトの制作会社を調べてみると、その多くがベイジの制作実績でした。そこで社内に推薦し、他社とも比較検討した結果、最終的にはベイジに依頼しようと決まりました。制作会社を選ぶ上で検討したポイントはいくつかありますが、ベイジ代表取締役の枌谷さんがウェブサイトの戦略の考え方を発信している記事を読んだことも決め手になりました。成果を出すためにどのような観点から何を検討してサイトを決めるのかを徹底的に考える姿勢に共感しました。
サイトリニューアルにあたり、最初の1カ月半はサイトの戦略立案を行いました。現サイトの課題は何か、どのようなターゲットを狙いたいか、求職者に対して訴求できる魅力は何かといったディスカッションに加え、①全社員に向けたアンケート調査、②社員へのユーザーテスト、③複数の職種でのワークショップの3つのリサーチを実施しました。
全社員を対象に、求職時に気にしていた点やAlbaLinkに転職を決めた理由、入社後に感じたギャップなど、30項目ほどのアンケートを実施しました。AlbaLinkを志望する求職者の情報ニーズや行動特性と、AlbaLinkが求職者に対してどのような点を訴求できるかを理解し、ページ構成やコンテンツのヒントにしました。
ユーザーテストは、現状の採用サイトの使い勝手や課題を把握し、情報設計に役立てるためのものです。今回は営業職の方2名とマーケティング職の方1名に、求職者視点で旧サイトを訪問してもらい、閲覧行動や発話を観察しました。
営業職や事務職、人事職の社員の方々を集め、アイデアのブレインストーミングを行いました。「仕事のやりがい」「AlbaLinkで活躍できそうな人材」といったテーマをもとにアイデア出しとディスカッションを行い、複数の職種の視点からターゲット像の解像度を高め、コンテンツのアイデアを集めました。
戦略フェーズのディスカッションや3つのリサーチを通して、採用する職種の優先順位を定義し、AlbaLinkで働く魅力や、具体的な改善方針を以下の通りに立案しました。
現状の課題・得られた示唆 | ウェブサイト改善方針 |
・マーケティングが強みとなっているにも関わらず、その独自性や魅力がサイトから伝わりづらい | ・「マーケティングに強い不動産会社」という独自性をファーストビューで明確に表現 |
・求職者は職種問わず成長意欲が強い傾向がある | 挑戦できる環境があることを訴求するために、以下2ページを作成・「AlbaLinkで働くメリット」ページでビジネス感覚や合理的思考が養われるなどの身につくスキルを紹介・「これからの事業戦略」ページで全国展開とIPOに向けた具体的な成長計画を示す |
・旧サイトでは、グローバルナビゲーションにエントリーボタンがないなど、求職者がすぐにエントリーしづらい設計になっていた | ・エントリーボタンや募集要項ボタンを追加・グローバルナビゲーションのラベリングを「求職者の知りたいこと」起点にする |
・採用サイトで最も参照されたのはインタビュー・座談会ページ | ・「大手と比べた裁量の違い」や「仕事で大切にしていること」を引き出し、具体的なエピソードを交えながら、裁量の大きさや切磋琢磨する社風を解説 |
・採用優先度の高いバックオフィスやコーポレート職の魅力を語るページが少ない | ・「上場企業の体制づくりを一から担える」「ルールや制度を自分で作れる」といったバックオフィスならではの醍醐味を語り合う座談会記事を作成 |
・成長の可能性に加え、社員の人柄、面接の雰囲気も入社の決め手になっている | ・社内の雰囲気やカルチャーを伝えるために、社員の本音をアンケート形式で見せる |
・選考過程や入社時において、給与に関わる情報不足や認識齟齬は最も不満につながりやすい・営業職の求職者は、基本給と歩合のそれぞれの割合を気にしたり、給与モデルが高すぎると「アッパー」と捉えることがある | ・給与と評価制度ページでは、職種・役職別の具体的な給与テーブルと役割定義を表で示し、透明性を持たせる |
ウェブサイトの戦略を検討する上で、どのような気づきがあったのか、上総さんと河田さんに伺いました。
上総さん:
メインビジュアルやメインコピーの方向性を考えていくなかで、「事業軸」「スキル軸」など、働く価値を多角的に整理する考え方を学びました。これまで感覚的に捉えていたAlbaLinkの強みを、空き家問題の解決といった事業的な価値や、一気通貫で案件を担えるといったスキル面での価値などに整理できました。この整理によって、社外への発信や採用面接での説明でも、求職者に合わせてより具体的な内容を伝えられるようになったと感じます。河田さん:
社員へのアンケートやヒアリングを通して、社員がAlbaLinkに感じているメリットや期待する内容を知り、そこから自社の在りたい姿を定義できたことが大きな収穫でした。回答結果は、自分たちではなかなか気づけない内容も多かったですね。
戦略フェーズを通して立案された改善施策を、制作フェーズでコンテンツやサイト設計、デザインに落とし込みました。
グローバルナビゲーションは、サイトのどのページでも求職者の目に触れる重要な導線です。しかし、これまではそこにエントリーボタンが設置されておらず、エントリーにつながる設計になっていませんでした。
この課題を踏まえ、グローバルナビゲーションに募集要項やエントリーボタンなど求職者向けの重要なコンバージョンポイントを配置し、デザイン面でもメリハリをつけて視認性も向上させました。
さらに、「会社について」「働く人びと」など、「求職者の知りたいこと」を起点としたラベリングに変更することで、必要な情報へのスムーズな誘導を実現しています。
また、以前のエントリーフォームは、求職者に志望理由を書いてもらう仕様だったため応募のハードルが高く、フォーム経由での応募数が伸び悩む原因のひとつとなっていました。そこでエントリーフォームの項目を「名前・メールアドレス・電話番号・区分(新卒/中途)・希望職種」の5項目に絞り、応募のハードルを下げました。さらにエントリーボタンの周辺には「わずか30秒で送信できます」のコピーを添え、入力への心理的な負担も軽減しています。
AlbaLinkへの求職者層は、営業職とそれ以外で異なる傾向が見られました。営業職は不動産業界内での転職が中心である一方、その他の職種では美容や観光など、幅広い業界を視野に入れた転職を検討していることがリサーチで分かりました。さらに今後は新卒採用にも注力していくという方針もあったため、不動産業界を知らない求職者でも理解しやすいコンテンツを意識しました。
特に注力したのが「数字で分かるAlbaLink」です。3年間で問い合わせ件数が約7倍になったなどの成長性、入社後30日以内に83%が初受注を達成できる教育体制、約19%という高い未経験者率など、事業成長の勢いと未経験でも活躍できる環境を示す数字を大きく打ち出しました。
「旧採用サイトの情報量が少なく、カルチャーや魅力が伝わっていない」という課題には、AlbaLinkのカルチャーが多角的に伝わるコンテンツを複数用意しました。
「社員の本音アンケート」では、不動産業界特有の「体育会系の雰囲気が強そう」「ノルマ必達で厳しそう」といった不安を払拭するため、現場の率直な声を掲載しました。
また「アライアンス制度」のページでは、社員と会社が対等な関係で成長を目指すAlbaLinkならではの制度を紹介しています。制度の内容だけでなく、社員それぞれが描く将来像と、それを実現するためのアクションや現在地を詳しく掲載。実際の目標設定や面談がどのように実践されているかを伝えることで、社員の意思を尊重しながら成長を支援するという価値観への、理解を深められるようにしました。
これらのコンテンツを制作する中で、特に印象に残っている出来事を河田さんと大友さんに伺いました。
河田さん:
ベイジと採用サイトの詳細を詰めていくなかで、グローバルナビゲーションやカテゴリー、各部分のコピーなど、そのすべてに意味を持たせて配置や内容を決めていたのが印象的でした。例えば、ナビゲーションに配置されている三角形のカラーリングも、感覚ではなく明確な意図があってデザインされていると知り、納得感が高かったですね。そしてこうした工夫は、私たちの主な目的である「ウェブサイトからのエントリーをどう増やすか」から考えられていました。ビジュアルの良さだけではなく、本来の目的から逆算して設計し、デザインしてくれたのでありがたかったです。
大友さん:
印象的だったのは、高橋さんの本質を突いた指摘です。私たちが「価値観の浸透が組織づくりの課題である」と考えていたことに対して、「既にいる社員の方々への価値観の浸透だけでなく、価値観に共感できる人材の採用や、まっさらな状態の新卒が御社の価値観を身につけられるよう注力することが、理想の組織づくりに直結するのでは?」という新たな視点を示してくれました。採用サイトの制作を通じて、組織づくりの本質的な課題に気づくことができ、組織づくりや採用戦略の示唆を得られたと思います。
2024年5月、新たな採用サイトが公開されました。公開後、定量と定性の両方でさまざまな成果が生まれています。
まず定量面では、エントリー数の増加が見られました。サイトリニューアル後のエントリー数は、リニューアル前(2023年1月〜4月)と比較して約60%増加しました。特に営業職においては、リニューアル前の月平均3〜4件から、リニューアル直後の2024年5月は15件と大幅に増加し、その後も月平均9〜12件と高い水準を維持しています。
次に定性面では、採用サイトが求職者の熱量を測る材料としても機能するようになりました。面接時に「採用サイトのどのコンテンツが印象に残ったか」を確認することで、サイトをどの程度読み込んでいるかが分かるようになったとのことです。
採用サイトの基盤が整ったことで、今後はサイトの情報を常に最新化すること、コンテンツを面接や情報発信にも活用していくことに注力したいと河田さんは言います。最後に、今後の展望や採用サイトをどう活用していきたいかを河田さん、上総さんに伺いました。
河田さん:
作ったサイトをより価値あるものにするために、常に最新の情報を掲載しようと思います。会社が拡大する中で、新しい役割やメンバー、部署なども増えています。社員インタビューを増やしたり、制度や組織に関するページを更新したりするなどして、社内外の誰が見ても「今のAlbaLinkのリアル」がわかるサイトにしていきたいです。採用サイト経由の応募を増やしていけるように、引き続き採用・広報活動に注力します。
上総さん:
採用サイトでは、AlbaLinkのカルチャーがわかるコンテンツを多く作成しました。これらのコンテンツを面接の場であったり、SNSでの発信、各種採用媒体などさまざまな場で活用したいと思います。現在は、エージェントや媒体を活用しながら必要な採用数を確保している段階です。ただ、将来的には企業認知度を高め、採用サイトを通じた直接応募が増えていくことを目指しています。そのためにも、コンテンツの定期的な更新や効果検証を重ねながら、より多くの方に当社を知っていただき、共感を得られる採用サイトを目指していきたいです。
ベイジ担当者の声
高橋(コンサルタント):
この採用サイトリニューアルは、採用戦略を固めるための全社的プロジェクトでもありました。プロジェクトを通して組織の基盤づくりに微力ながら関わらせていただけたことをとても光栄に思うとともに、全力でひたむきな皆さまと良いサイトを作り上げられたことを心より嬉しく感じています。より定量面での成果が出せるよう、引き続き折々でご提案をさせていただければと思います。
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