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無料で相談してみる近年、多くの企業が業務効率化のために様々な業務システム/SaaSを導入しています。しかし、わざわざ時間とお金と大きな労力をかけて導入したシステムが使いにくく、期待した効果が得られないケースも少なくありません。
独自でフルスクラッチのシステム開発をする超エンタープライズ企業もいれば、SaaSのような外部サービスを導入して済ませるケースも多々あります。ですが、どちらのケースでも導入者・管理者・利用者が多岐にわたるBtoBの業務システムにおいて、ユーザビリティが低いことは即ち労働の生産性を著しく損ないます。また、業務システムの利用頻度が高い場合、影響範囲は生産性だけではなくモチベーションなどほかにも影響を与える可能性も考えられます。
本記事では、ベイジが独自に行った業務システムの利用実態調査を基に、業務システムが使いにくい理由とその弊害、そして解決策について、調査結果を基に詳しく解説します。
本記事で紹介する調査は、調査会社を通じて2024年2月に実施したものです。調査対象は上記の通り。
調査方法はインターネットリサーチで、財務・会計・経理、法務・労務、営業・顧客管理、販売管理、人事、給与、マーケティング、カスタマーサポート、生産管理・在庫管理、コラボレーション、コミュニケーションツールの11種類の業務システムについて、それぞれ約94サンプルずつ均等に割り付けて回収されています。そのため個別のシステムごとのサンプル数としては少ないものの、それでもユーザーのペインなどを定量・定性的に判断するには、一定有効な示唆が得られたと考えます。
はじめに、日常的に業務システムを利用しているユーザーに対して「業務システムの使い勝手に満足してるか?」と質問を行いました。
調査結果によると、全体の約半数51.9%のユーザーが「業務システムに満足している」と回答していました。残り半数の内訳をみると「どちらともえいない」が36.8%、明確に「満足していない」と回答した人は11.3%程度で、事前の想像に反して使いにくいと明確な意思表示をした方は多くありませんでした。
一方で、その解答とは別に「使いにくいと感じる点は具体的にどんな内容か?」と質問をすると、かなり多くの解答が自由記述のコメントも含めて集まりました。そのため今回は「使いにくい」と感じたユーザーが、具体的にどのような機能・ユーザー体験に対して使いにくさ感じるのかを以下にまとめます。
多くのシステムで、操作方法が複雑であると「使いにくい」と感じることが指摘されています。特に以下の点が問題となっています。
例えばカスタマーサポートシステムは、顧客対応をリアルタイムで行いつつ使用されます。当然、素早く必要な操作をすることが求められるため、「直感的に操作できるようになって欲しい」という要望が上がるのも頷けます。また、人事システムでは「メニューが多く、分かりづらい」という指摘があります。これはそもそも人事で管理する範囲が企業によって異なるものの、基本的には広いため多くの機能・メニューを表示せざるを得ない背景があると考えられます。
調査結果によると、システムを「使いこなせている」(「使いこなせている」+「やや使いこなせている」)の割合は全体で57.4%となっており、使いやすさの値と近似しています。しかし内訳を細かく見るとシステムによって差はあり、販売管理システムでは71.3%と高い一方、法務・労務システムでは45.7%と低くなっています。
システムの応答速度が遅いことも、大きな不満の原因となっています。具体的には以下の点が挙げられます。
販売管理システムのユーザーの定性コメントをみると「処理速度が早ければ早いほどいい」という要望も挙がっており、システムの速度が業務効率に直結していることがうかがえます。そもそも販売管理システムは7割以上のユーザーが1-2日に1回以上利用しており、利用頻度・一回あたりの利用時間ともに長いのが特徴です。そのため使用するたびに処理速度が遅いと、業務に支障を与える頻度が高いため不満を感じる割合も高くなると考えられます。
調査ではシステムの動作速度に関する不満が全体の10.0%を占め、不満点の中で最も高い割合となっています。そのため便利な機能や使いやすいUIをどれだけ整えていても、業務を効率よく行うことを目的に使用するの業務システムでは応答速度が遅いことは致命的な不満につながるといえます。
多くのシステムで、ユーザーのニーズに合わせたカスタマイズが難しいという問題が指摘されています。システムによっては、会社の事情に合わせた設定の最適化をする必要があります。しかしカスタマイズ設定自体の難しさと、ニーズに合わせたカスタマイズ機能自体の不足の双方が問題になっています。
例えば、カスタマーサポートシステムでは「独自にカスタマイズするには高額な料金を請求されるのが不満」という声が上がっています。調査結果では、カスタマイズができないことが不満点の2位(9.0%)となっており、多くのユーザーがこの点に不満を感じていることがわかります。
一方でカスタマイズ性が高かったとしても、ユーザーが機能を十分に使いこなせない可能性もあります。
マーケティングやUXデザインの文脈で頻繁に語られる内容でもありますが「ユーザーが欲しい」という機能は必須なのか・あればうれしいだけなのか。ユーザーの声を聴くことは大事ではありますが、それをそのまま鵜呑みにしても、まったく機能が使われないというケースもあります。「カスタマイズ性が高い」というコメントも、あくまで「そうした声もある」という程度に受け止めるのが現実的にはよいかもしれません。
システム間のデータ連携や、蓄積されたデータ活用が難しいという指摘も多くあります。
営業・顧客管理システムのユーザーからは「名刺管理システムやCRMなどとの連携が不十分」という声が挙がっています。
調査では、システム間の連携の悪さが不満点の4位(8.1%)となっており、多くの企業で複数のシステムを利用している現状が反映されています。特にエンタープライズ系の大規模組織では、すでに導入している基幹システムとの連携がシステム導入時における要件の1つになることもあります。
これは既存システムのデータベースをうまく活用できれば導入時の負担を抑えられることに加え、システム利用時の業務効率自体もゼロから情報を入力する必要がなくなるため、効率化することが容易になるためと考えられます。実際にシステムの利用者が多いエンタープライズ型の組織ほど、その傾向は顕著になると私たちも過去の支援経験から感じます。
システムのエラーや不具合も、使いにくさの大きな要因となっています
マーケティングシステムでは「エラーの解消に手間がかかる」また「エラーを起こさないように気を付けていると時間がかかる」という指摘があり、業務の遅滞につながっているようです。調査結果では、エラー・不具合やバグの多さが不満点の6位(7.6%)となっており、多くのユーザーがこの問題に直面していることがわかります。
ベイジでは過去に「入力フォームにおけるエラーデザイン」について調査・解説をまとめているので、よろしければこちらも参考にしてください。
業務システムが使いにくいことによって生じる弊害は、大きく4つに分けられると調査から考えます。
使いにくいシステムは、業務の効率を著しく低下させます。
調査結果によると、59.7%のユーザーがシステムに対する満足度が仕事へのモチベーションに影響すると回答しています。特にカスタマーサポートシステムのユーザーでは、この割合が69.1%と高くなっています。
また、システムに対する満足度は全体で55.5%が非常に満足・満足(5段階中上位2つ)となっていますが、内訳をみるとシステムの種類ごとに差が生じています。例えば、コミュニケーションツールの満足度は74.5%と高い一方、カスタマーサポートシステムは46.8%と低くなっています。
今回の1,000人を対象とした業務システムの利用実態調査では、システム種別の満足度(非常に満足、満足、普通、不満、非常に不満の5段階で評価し、非常に満足・満足を洗濯したユーザーを「満足している状態」と定義)を集計し、上記の図がその結果となります。
使いにくいシステムは、従業員のストレスを増加させ、モチベーションの低下につながります。
人事システムのユーザーからは「申請手順などをもっと明確にして欲しい」という声が上がっており、システムの使いにくさが日々のストレスになっていることがうかがえます。システムに使われている感じがするという声もあり、自分で使いこなしている感覚が薄いとストレスになるだけではなく、業務に取り組むモチベーションにもつながることがあります。
調査結果では、システムの使いやすさについて、全体の51.9%が「使いやすい」(設問に対して「使いやすい」「やや使いやすい」と回答した人を定義)と回答しています。しかし、11.3%が「使いにくい」(「やや使いにくい」+「使いにくい」)と回答しており、これらのユーザーにとっては業務システムの使用が日々のストレス要因となっている可能性があります。
後述しますが、こうしたストレスはできるだけ発生させないよう業務システムのユーザビリティを向上させるのが最も重要な改善策となります。使いにくさを解決する具体的な手順は「3. 使いにくさを解決する方法」に記載の5つの方法がありますので、そちらをご参照ください。
使いにくいシステムでは、蓄積されたデータを十分に活用できないという問題があります。
マーケティングシステムのユーザーからは「蓄積されたデータを分析しやすくカスタマイズしてほしい」という要望が挙がっています。調査では、蓄積したデータを活用しにくいことが不満点の11位(5.8%)となっており、データ活用の重要性が高まる中で、この点が課題となっていることがわかります。データ活用には、分析データのダッシュボードが活用されることが多く、ただデータを表示するだけではなく、改善ポイントを発見できるなど次のアクションを決定する判断軸になるようなデータが表示されていると機会損失を防ぐことができます。誰が何のためにデータを活用したいのかを念頭に置き、情報の取捨選択がしやすい体験を提供することで、こうした機会損失を防止できると考えます。
使いにくいシステムは、セキュリティ面でも問題を引き起こす可能性があります。
人事システムのユーザーからは「他人に人事評価を見られるかも知れないので改善してほしい」という声が上がっており、セキュリティ面での不安が指摘されています。
調査結果では、セキュリティ対策への不安が不満点の16位(4.8%)となっています。セキュリティ対策の重要性が高まる中、この点への配慮も必要です。実際にわたしたちが大手企業や公的機関の案件を過去に手掛けた際には、セキュリティリスクを発生しにくいようにする要望を多くいただきました。
UIデザインやUXデザインにより、業務システム・ウェブアプリケーションの操作性の向上、必要情報入力のステップ数の効率化などが目的化することが多いですが、その一方で使いやすくなったことによるリスク(情報漏洩)への対策も忘れてはいけません。対象となる業務システムの利用者や人数にあわせて、リスク対策の重要度も変わることは認識しておいた方がよいでしょう。
業務システムの使いにくさを解決するためには、以下のような方法が考えられます。
ユーザーが操作する際には、事前の学習や説明を入念に行わずとも、自然な感覚で使えるようなユーザーインターフェースを設計することが重要です。
ユーザーが迷わずに目的の機能や情報にアクセスできるよう、ナビゲーションがシンプルで分かりやすいことが重要です。例えば、メニューやボタンが論理的に配置され、ユーザーが直感的に次のステップを理解できるようになっていると、使いやすさが向上します。
インターフェース全体で一貫したデザインパターンや用語を使用することで、ユーザーが操作方法を容易に学習し、適応できます。一度覚えた操作が他の部分でも通用することで、ユーザーは安心して操作を続けられます。
ユーザーが行った操作に対して、即座に視覚的または音声的なフィードバックが返ってくることが重要です。たとえば、ボタンを押した際に色が変わる、音が鳴る、あるいは進行状況を示すインジケーターが表示されることで、ユーザーは自分の操作が認識されていると確認できます。
多くのユーザーにとって最適なデフォルト設定を用意しておくことで、特別な設定やカスタマイズが不要になります。初めて使うユーザーでも、基本的な操作が簡単にできることが理想です。
情報の重要度に応じて、文字サイズ、色、位置などに違いをつけることで、ユーザーの視線が自然に重要な情報へと誘導されます。これにより、ユーザーは必要な情報を素早く見つけられ、操作がスムーズになります。
コミュニケーションツールのユーザーからは「操作機能はPCスキルが弱い年配にも使えるよう意図的にシンプルに作られている」という好評価があり、このようなアプローチが効果的であることがわかります。
調査結果では、システムの満足点として「操作が簡単(直観的に操作できる)」が19.8%で2位、「入力項目がシンプルで分かりやすい」が19.2%で3位となっており、これらの点が使いやすさに直結していることがわかります。
システムの動作速度を改善することで、ユーザーの満足度を大きく向上させます。
販売管理システムのユーザーからは「処理速度が早ければ早いほどいい」という声も挙がり、パフォーマンスの改善が強く求められています。調査では、システムの満足点として「動きが早い(システムの応答時間が早い)」が14.7%で8位となっており、この点の改善が満足度向上につながることがわかります。パフォーマンスの最適化はユーザーの満足度に加えて、生産性の向上にも役立ちます。
ユーザーや企業のニーズに合わせてシステムをカスタマイズできる機能を提供することが重要です。
マーケティングシステムのユーザーからは「カスタマイズがもっと簡単にできるようになってほしい」という要望があり、この点の改善が求められています。カスタマイズしなくてもすぐに利用開始できるためのデフォルト設定と、任意のタイミングでカスタマイズができる柔軟さを持ち合わせることで利用者にとってより使いやすいシステムになるでしょう。
調査結果では、システムの満足点として「カスタマイズが可能」が9.0%で17位となっており、この機能の拡充が満足度向上につながる可能性があります。
システム間のデータ連携を強化し、蓄積されたデータを効果的に活用できるようにすることが重要です。
営業・顧客管理システムのユーザーからは「他のシステムと連携して効率の良い営業ができるようにしてほしい」という声が挙がっています。調査では、システムの満足点として「システム間の連携が良い」が10.6%で15位となっており、この点の改善が満足度向上につながる可能性があります。
エラーの発生を最小限に抑え、発生時の対応を改善することが重要です。
エラーには修正可能な軽微なものと、起こしてはならない重大なものがあります。システムごとのエラーの影響範囲や重要性、復旧の難易度、ビジネスへのインパクトを基準にエラー設計をする必要があります。
財務・会計・経理システムのユーザーからは「確実に申告手続きでもミスがないようなチェック機能」を求める声があり、エラー防止機能の重要性が指摘されています。調査結果では、システムの満足点として「エラー・不具合やバグが少ない」が13.0%で10位となっており、この点の改善が満足度向上につながることがわかります。
業務システムの改善を実施する際には、以下の点に注意が必要です。
システムの改善にあたっては、実際のユーザーの意見を積極的に取り入れることが重要です。
ユーザーの意見を取り入れることで、実際のニーズに基づいた改善が可能になり、システムの使いやすさや満足度が向上します。提供側の先入観に基づいて開発を進めると、実際のユーザーのニーズと乖離したシステムが出来上がり、結果的に大きな開発リスクを招く可能性があります。
システムの大規模な変更は、ユーザーに混乱を招く可能性があります。段階的な導入を心がけましょう。
調査結果では、システムのリニューアル経験者の62.9%が使いやすくなったと回答しています。慎重な導入プロセスにより、この割合をさらに高められるでしょう。
リニューアル経験のある人は全体の30.8%で、システムによって差があります。例えば、販売管理システムやコミュニケーションツールでは40%以上がリニューアル経験がありますが、給与システムでは22.3%と低くなっています。リニューアルの機会を適切に活用することで、システムの使いやすさを向上させることができます。
新しいシステムや機能の導入時には、十分なトレーニングとサポートが不可欠です。
調査結果では、システムを使いこなせるようになるために欲しいサポートとして、「マニュアル」が49.7%と最も高くなっています。適切なサポート体制の構築が重要です。次いで、「ヘルプ機能」が31.6%、「チャットで質問」が29.6%、「電話で質問」が27.0%、「説明会」が26.5%となっています。システムの種類によって求められるサポートが異なる点にも注意が必要です。
わたしが過去に利用した人事評価システムを例に挙げると、利用者として使用していた人事評価システムでは常にチャットで質問をしたいと考えていました。このシステム利用頻度は年に1-2回で、もちろんこれは運用が徹底されていないなど別の問題もありますが、周囲をみてもわたしくらいの利用頻度の方が圧倒的多数だったように思います。こうした使用の度に使い方を思い出すようなシステムにとって、知りたいことがすぐに把握できるヘルプ機能やパーソナライズされた回答を得るためのチャット機能などは、ユーザーが求める傾向が高いと考えるのは納得できます。
システムの改善にあたっては、セキュリティとコンプライアンスに十分な注意を払う必要があります。
給与システムのユーザーからは「セキュリティ対策が不安」というコメントも調査ではあがっており、この点への配慮が重要です。
調査結果では、システムの満足点として「セキュリティ対策が万全である」が12.9%で12位となっています。セキュリティ対策の重要性が高まる中、この点を改善することで満足度を向上させることが可能となります。
システムの改善には、コストと効果のバランスを十分に検討することが重要です。
調査結果では、システム導入の成功理由として「費用対効果があったため」が31.2%となっています。適切なコスト管理が成功の鍵となります。
また、導入が成功だったと思う理由としては、「業務の効率化が成功したため」が56.1%で最も高く、次いで「導入の目的を達成したため」が40.0%となっています。システム改善の際には、これらの点を明確な目標として設定することが重要です。
今回の調査はシステムの種類別で集計を実施しています。調査で上位に挙がったシステム個別内容について、簡潔にまとめました。
これまで業務システムの使いにくい理由・解決策について、1,000人を対象とした独自の利用実態調査の内容も併せて解説してきました。みなさんも本記事で紹介した問題点と解決策を参考に、自社のシステムを見直してみてはいかがでしょうか。
ユーザーインターフェースの改善、パフォーマンスの最適化、カスタマイズ機能の拡充、データ連携と活用の強化、エラー処理とサポートの改善など、様々なアプローチがあります。これらの改善を適切に実施することで、業務効率の向上と従業員満足度の改善が期待できます。
システム改善のプロセスでは、ユーザーの声に耳を傾け、段階的な導入を心がけ、十分なトレーニングとサポートを提供することが重要です。また、セキュリティとコンプライアンスへの配慮も忘れてはいけません。
最後に、システム改善には適切な専門知識と経験が必要です。自社だけで対応が難しい場合は、業務システムの改善に精通した外部の専門家やコンサルタントの協力を得ることも検討してみてください。
業務システムの使いやすさを向上させることは、単なる従業員の不満解消だけでなく、企業全体の競争力向上につながる重要な取り組みです。調査結果が示すように、システムに対する満足度は仕事へのモチベーションに大きく影響します。つまり、使いやすいシステムは従業員の生産性とモチベーションを高め、結果として企業の業績向上にも寄与するのです。
今回の調査結果を踏まえ、自社の業務システムの現状を客観的に評価し、改善に向けた具体的な行動計画を立てることをお勧めします。システムの種類や企業の規模、業種によって最適な解決策は異なりますが、ユーザー中心のアプローチを取ることが成功への近道となるでしょう。
本記事が、皆様の業務システム改善の一助となれば幸いです。
※この記事はunname社がAIを活用して執筆した文章にbaigieが加筆して制作しました