コロナショックはウェブ制作をどう変えるか?【ウェビナーレポート】

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4月22日に開催された合同ウェビナー『コロナショックはウェブ制作をどう変えるか?』に、株式会社アンティー・ファクトリー代表の中川直樹さん、株式会社タービン・インタラクティブ代表取締役の志水哲也さん、株式会社リクト代表の山口裕介さん、そして当社代表・枌谷がパネリストとして出演しました。

コロナが事業に与える影響、新しい働き方についてどう考えるべきか、これからの顧客獲得のやり方、web制作には何が求められるのか。

web制作の未来について、web制作会社4社の代表が語り合ったウェビナーの内容をお届けします。

※当日いただいた質疑応答への回答はこちらです。

事業への影響

ウェビナーの様子

志水:今、約680名もの方々にお集まりいただいていますが、一番気になるのはコロナが自社の事業に与える影響ですよね。そこで、Zoomウェビナーのアンケート機能を活用して、コロナの影響に関するアンケートを行ってみたいと思います。お集りいただいた皆様、ご回答をお願いします。

コロナの影響アンケート結果

やはり6割以上の方が案件が減るなどの影響を受けているみたいですね。パネリストの皆さんはどうでしょう?

山口:大きな変化は感じていませんが、打ち合わせや新規の商談が先延ばしになったりと、徐々に影響が出始めてはいます。

中川:うちは広告代理店経由の仕事も多いのですが、3月は納品遅延で売上予想から5%ぐらい落ちました。大きく影響が出ているわけではないですが、先方がテレワークになって確認できず、遅延しているプロジェクトが少しあります。

それと顕著なのは動画ですね。映像チームの撮影ができず、軒並み延期になっている。あとはプロモーション部門など、屋外での活動がメインのチームでも遅延や中止が出ています。中止になったイベントを、オンラインに変更する施策も同時進行で進んでいますが、撮影が必要な広告やブランディングの仕事はこの先どうなっていくのかなぁ、という感じはあります。

枌谷:うちの場合、全体としてはあまり影響を受けていませんが、領域によってバラつきがあります。

コロナの影響①

まず一番上の「組織」に関しては、完全テレワークになるなど、大きく影響を受けています。危機下においてもっとも重要な「資本」については、幸いあまり影響が出ていません。「情報」は、外部に発信する情報の内容が少し変わりつつあります。「商材」は、中川さんの撮影と同じですが、我々だとユーザーテストやワークショップなど、オフラインでなければ提供できないサービスが影響を受けていますね。

最後の「顧客戦略」、これだけ別の図にまとめたのですが、

コロナの影響②

リード→商談→成約→売上、という流れのうち、商談→成約→売上に関してはまだ始まったばかりですが、大きな影響はないように感じています。

一方でリード数、要はお問い合わせ数ですが、これはちょっと増えています。詳細に見ると、500~1000万円を超える案件が減って、100万~300万円の案件が増加傾向にあります。つまり、高額案件が減って、低額&短納期案件が増えている。

うちの場合500万円以下の案件をあまり受けられない状況なので、このまま低予算案件ばかりになっていくと、事業に影響が出てくる可能性はあります。

志水:今の中川さんと枌谷さんの話、両方よくわかります。撮影関係だと、撮影の香盤が組めなくなったり、「こんなの撮りましょう」って話していたものを撮影する手段がなくなったりとか。後はイベント 系ですね。Web を使ったイベントの仕組みが作れなかったり、ワークショップが組めなかったり。

これは枌谷さんの話と近いんですけど、喫緊でウェブサイトが欲しい。比較的安価なものをなるべく短納期でやりたい。でも商品やサービス紹介だけじゃなくリードを獲得したい。成果が出るがコンパクトなものを急いで欲しい。みたいな話が増えてきましたね。
皆さんの話を合わせて考えると、発注側の企業の皆さんが動揺して困っているという印象を受けます。

中小規模でフットワークが軽い企業は、プロモーションもオンラインでなんとかしよう、直接ECにつなげようと焦ってアクションを起こしている。大企業だとコンプライアンスやら決裁やらで、何を変えるにしても足踏みしてしまう。そんなイメージです。

枌谷:大きい企業だと多少活動を止めてもなんとか生き延びる体力がある。でも小さい企業はオフラインでの認知手段を失って、肝心のwebサイトも死んでいる状態だと致命傷になりかねない。だから焦って一か月以内にでも立ち上げたい。

ただ、業界によっても極端にばらつきがありますよね。衛生系の商材や自宅で楽しむためのサービスは異常に伸びてたり、ECは好調だったり。その一方で、旅行系はほぼ全滅に近い。だから同じweb制作会社といっても、どういう業界と付き合っていたかによって影響は違うのかもしれません。

中川:強い業界への偏りはどの制作会社もあるはずで、それが理由で影響をモロに受けている制作会社と、比較的影響が少ない制作会社に分かれてる感じはしますね。

山口:地域ビジネスでいうと、キャッシュポイントを変えないといけないだとか、そもそものビジネスモデルを変えないといけないだとか、緊急の課題が差し迫っているところも増えている感じはします。

テレワークの現状

志水:テレワークについて皆さんの状況を知りたくて、またアンケートを用意したので、答えていただいてもいいでしょうか?

テレワークのアンケート結果

枌谷:すごい。企業のテレワークが思うように進まないという声もある中で、我が業界は先を行ってますね。約8割が完全もしくはそれに近いテレワーク。

志水:中川さんのめちゃくちゃかっこいいオフィスなんて、行かないともったいないですよね。今はどうしてるんですか?

中川:うちの本社は70人ぐらいいるんですけど、今は4人ぐらいしか会社に来てませんね。僕自身は日本全国の指示系統のつもりでいて、基本的に毎日出社して、会社とシステムを守っています。みんなの居場所というか、席を守らなくちゃいけない立場なので。
うちの会社でラッキーだったのが、日本全国に支店が散らばってることです。東京の仕事を各地の支社がやるスタイルで、普段からテレワークに慣れてるんですよ。なので、いきなりテレワークになっても特に戸惑いはなく、移行はスムーズでした。

山口:うちは全然やってなかったんですが、コロナで世間がそういう雰囲気になってきた時に、テレワークどうするよっていう話になって。クリエイティブのメンバーはやりやすいんでしょうけど、クライアントと接するディレクターとかは難しいんじゃないかって議論してるうちに、やらざるを得ない状況に。

でも、やってみると意外にできちゃう印象です。今も8~9割テレワークですが、なんとかなってます。子供達も学校行けない状態で、個人的には家で仕事するのは難しいところがあったりしますけど。

枌谷:実は、私はテレワーク反対派でした。台風や大雪の日は家で仕事してもいいと社員に話したりしても、制度としてはほぼ整備してなくて。でもこういう状況で、2月下旬くらいから段階的にテレワークを始め、4月からは完全テレワークになったのですが、山口さんもおっしゃるように、意外とやれると思いました。むしろテレワークにはテレワークのよさもあって、経営者としてはポジティブな印象に変わってきています。

志水:うちは宮古島にサテライトオフィス作るぐらい、テレワーク推進派でした。でも私自身はテレワークをあまりしてないと言うか、在宅ワークとかやったことなくて。恥ずかしながら、家で仕事をすることにすごく慣れてないと気がつきました。

テレワーク制度自体は以前からあって、産休明け、介護、いろんな理由で、家で仕事するメンバーは常に一定数いたんですが、今回みたいに全員がテレワークになるとちょっと意味が違ってきますよね。

例えばこのウェビナーも、枌谷さんと中川さんが同じ部屋にいて、山口さんと僕が一人ずつでZoomに入ってたら、重みが変わっちゃうんですよね。

枌谷:そういえば、1:1:1:1:1の関係性でのテレワークってみんな初めてですよね。それが新鮮でもあるし、戸惑うところでもあるのかなと思います。

テレワークの長所と短所

中川:皆さん、テレワークの良かった点・悪かった点ってありますか?

枌谷:社員がどう感じているか分かりませんが、私自身は個々の社員と話す機会が増えている気がします。テレワークになるとコミュニケーションが希薄になると考えていたんですが、逆の現象が起きていますね。

山口:うちもずっとZoomを繋いでます。物理的な距離は遠いんですが、常に目の前にみんながいる状態で、表情を見る機会がすごく増えたなと思います。なるべくオフラインの時と同じように、とやり始めたこともあって、普通に朝礼とかもやってますし、コミュニケーションはなるべく減らさないようにしてます。

中川:うちは基本的にカンパニー制みたいな形で事業部長に全てを委ねてて、朝礼は事業部長がやったりしています。Slackのチャンネルを雑談用と仕事用に分けたり。メンタル管理もしてるみたいです。

あなたは今日何をする、ここまでやる、という管理や仕組みがあればスムーズに仕事ができるのがテレワークの良さなんですけどが、4月は新入社員が多いですよね。うちの新入社員も一回会社に来て、そのまま1ヶ月テレワークに。

フリーになれるような力がある人は、テレワークでも会社の中できちんと機能する。一方で半人前というか、修行途中の人やアシスタントはテレワーク向いてないというか。オンライン上で教えるのも手間がかかるし、その場の手直しや支援もうまくいかず苦労してると感じます。

志水:新入社員といえば、うちにも新入社員が入ったんですけど、いきなり出社できないじゃないですか。それでこういうことをやっていました。

タービン新人歓迎

通常入社式では一人づつウェルカムカードを渡したり、色々なことやるんですけど、今は渡せないわけじゃないですか。そこで先輩が壁紙を揃えて、桜でお出迎えみたいなことをしました。こういうことを自発的にささっと企画して、あっという間にできちゃう。こういう動きはいいなと思ったりします。

上から言われたからやるとか、社長が思いつきで言ってきたからしぶしぶやるとかではなく、自分ですぐ解決できるアイデアが比較的出やすい。短い時間で自発的に問題をどんどん改善していってる感じ。

枌谷:今までは経営者が会社のことを一番知ってるから、経営者の言うことがほぼ間違いない、という前提で色々なことが決まってた。でも今の状況は経営者も初めてで、経営者がいうことが正しいかどうかも分からない。だからみんなが頭を使って、こんな工夫したらいいんじゃないか、っていうのが生まれやすい環境な気がしますよね。

中川:そういうことがすごく重要だと思うんですよね。基本的に今までの会社って上から下に命令が来るって感じだったけど、みんなが目的意識を持って、それに対して考えて動く。会社という組織としての自律性というか。言われたことだけやりますではなく、自律性を持って、会社やチームを良くしていくために、目的のためにみんなで考えながらやっていく組織でないと。

悪い言い方をすると、昔以上に好き勝手な時代になってしまったので、自律性がないとうまくいかないなぁと思います。

テレワークと評価制度

山口:テレワークになって、教育とか会社の文化を根付かせるとか、その辺が難しくなりましたよね。数値化できないところの評価をどうするか。評価の仕方、仕組みが変わってくるんじゃないかと思うんですが、その辺どうですか。

中川:まさにそこがどこの会社も一番悩んでることだと思います。裁量労働的な評価をしていかないといけなくなってきているというか。

例えば、会社の中だと、仕事がまだ一人前じゃないのであれば一生懸命トイレ掃除をしたり、ゴミ捨てをやってくれたり。人間関係の潤滑油になってくれる人はそれはそれですごく価値があるし、そういう意味ではいろんな評価をしていました。

でもテレワークになってしまうと、今日は何をして、どのくらい売上をあげた、というところがメインになる。だからある程度評価基準も変えないといけない。会社にみんな集まった環境で秀でる人、テレワークの環境で秀でる人の違いはやっぱりある。時代にあった評価の仕方というか、状況にあった評価の仕方が大切なのかなあと思っています。

枌谷:専門職のハードスキル的なところはあまり変わらないと思うんですが、ソフトスキルですよね。気が利くとか、周囲をサポートできるとか。それが見えにくくなる。オンライン上だけの情報で「この人は手伝ってる・手伝ってない」と把握できない状況になっている。そういった評価基準はうちの評価制度の中にも含まれているので、見直しは必要と考えてます。

ただ、仕事の仕方が変わっても、オンラインならではの配慮ができるとか、皆がオンラインで働きやすくなるアイデアを出せるとか、細やかに気を利かせられる人の良さが全然活かせなくなるわけでもなく、オンライン環境の中でソフトスキルを評価する方法は色々あるのかなと、前向きには捉えています。

中川:僕もそこは悩んでいるところです。いい奴っているじゃないですか、一生懸命な奴とか。そういう所をどっかで拾ってあげたいなと思うし。だけど世の中は実力主義というか、そういう未来がどうしても見えちゃってる。そこは課題ですよね。

山口:そもそも、テレワークで出社せず、帰属意識が関係なくなると、雇用や働き方が根本的に変わりそうな気がします。

中川:会社は人を育てるために見込み値も含めて給与やボーナス払うところもあるんですけど、時代が変わると、この仕事をやったことに対する対価っていう感覚になりかねないですよね。常にフリーの人と仕事しているような形で。

僕は会社という組織を大切にしたいと思っているので、そこに対してすごく危機感を感じている方です。会社の意味をどうしていくべきかっていうのを、withコロナ、afterコロナの時代にきちんと追求していきたいと思っています。

志水:空間を共有していない社員同士が、なんらかの繋がりと現状をモニタリングしながら前に進んでいく安心感みたいなのを得るにはどうしたらいいのか。社員が会社にとってどういう存在なのか、自分たちが会社をどう見るのか、という感覚が大きく変わると、皆さんの話を聞いていて強く思いました。

特に日本は、「これだけの実績を上げてくれるからこのフィーだよね」ではなく、「組織の一員として会社について一緒に考えていこう」というメンバーシップの性質が強い。まず意欲を求めて、スキルは教育をして、長く一緒に働こう、っていう日本型の経営が変わりつつあるということですね。

テレワークの課題

中川:リモートワークだと、定時の中で必ずしも仕事をする必要がなくなったり、仕事をしているお互いの約束で、色々な意味でフレキシブルさって必要になりませんか?

例えば、お互いの昼間散歩やジョギングに行く時間を許す代わりに、制作物のチェックを夜の9時にするとか。こういうフレキシブルな働き方って昔懐かしいというか、ガンガン仕事をしていた若い頃を思い出します。今は曜日感覚や時間感覚がなくなってて、そのへんはうちのスタッフに怒られるんですが。

志水:本来、クリエイティブ系の仕事ってインプットとアウトプットの時間が比較的区別しづらかったじゃないですか。これは何のための時間で、案件の話なのか、自己研鑽なのか、それともインスピレーションを待ってる時間なのか、みたいな。そのうえ今は食事も仕事も自宅でやってる訳で、さらに切れなくなっていますよね。

中川:東京は住宅事情もあるので、テレワークやってると掃除機の音がしたり、子供が割り込んできたりしますよね。ベランダや車の中から打ち合わせに参加したりする人もいますし。住宅事情によってテレワークの良し悪しは変わってくるのかもしれないですね。

山口:それは福岡でも起きてますね。生活音は普通に聞こえてきますし、やっぱり気を使う所はあるだろうなと思います。また一人暮らしのメンバーからは、本当に人に会わないし精神的にきついので早く出社したい、という声も上がってきています。

中川:メンタルヘルス面のサポートってどうされています?

山口:現状はサポートまではできてないですね。オンライン上で顔は合わせるんですが、リアルで会うこともできないし、難しいです。

中川:一人暮らしの人たちが一番きついんですよね。地方から出てきて身近に助けてくれる人がいない、兄弟も東京にいない、ご両親は地方とか。

そのサポートも兼ねて、うちはオンラインで交流する予算として、1人週1回1000円〜1500円を出すことにしました。ランチでも飲み会でも、画面越しにみんなで集まって過ごすことを会社として推奨しています。あと産業医の先生にお願いして、希望者はZoomでのカウンセリングを受けられるようにしました。

枌谷:まだ定着してないのですが、オンライン飲み会やランチ会はやりました。うちも新卒の新入社員がいるので、そのサポートも兼ねてランチ会を企画したり。あとDiscordというボイスチャットを使って朝礼と夕礼はやっています。コミュニケーションの量をなるべく増やすことで精神的な疲弊を抑えられないかなというトライをしている感じですね。

山口:うちは先週末オンライン飲み会をやって、一部のメンバーが人狼で盛り上がったりしてました。Uber Eats頼んだり、近くのお店でテイクアウトしてきたものを見せあったり。そういう楽しさ、新鮮さもあるんでしょうね。

デジタル・トランスフォーメーションではなくフルオンライン

志水:コロナショックによって顧客サイドでも混乱が起きているのは想像に難くないですが、そんな中での顧客獲得はどのようにしていけばいいでしょうか?

枌谷:今は、デジタルトランス・フォーメーション(以下、DX)のさらに先をやれって言われてるのが結構キツいというか、ついていけてない企業が多い気がしています。

フルオンラインの図

この図の一番左、Traditionalと書いてあるのが今までの仕事の仕方。アナログ優位で、定性的で、属人的な世界。多くの企業はまだDX化まで行ってないのに、コロナが来て、さらに先のフルオンラインが求められている。価値観も会社の文化も変えなきゃいけないけど追いついてなくて、ハードだけではどうにもならない、というのが今の状況。

この状況では現実と仮想の主従逆転が起きる。要は仮想空間にいる時間の方が長くて、仮想空間でのよりよい体験のために現実世界が存在する、という転換です。こういう意識のシフトがすごく難しい。

ただ、顧客獲得のルールとしては簡単です。

今までは、マーケティングやセールス施策の流れの中で、オフラインとオンラインの両方を使って顧客に対応し、最終的にクロージングまで持っていってました。

でも今オフライン施策が使えない、使っちゃいけない状況になっている。なのでこれを全部オンラインに置き換える。もしくはオンラインの別の施策で代替すればいいわけです。

BtoBマーケの図

中川:現実と仮想の主従逆転は面白いですね。僕も昔は仮想とかゲームの世界が別にあって、24時間はそれぞれの世界で流れていて、現実の世界と仮想の世界は並行してあると思ってました。だけどこの10年くらいで、既に24時間は一本の軸にあって、自分がどっち側にいるかの話だなと気づいたんです。

枌谷:仮想と現実の主従逆転は今までも時々起こっていて、例えばポケモンGOなんかはそうだと思うんですよ。ポケモンGOの中の仮想空間で、自分を有利にするために現実空間の公園に集まったりする。仮想空間で楽しい思いするために、現実空間での行動が決まる、みたいな。

こういう現実と仮想の逆転が、色々な分野で起こりつつある。もっと言えば、現実空間は家の中しかない状態で、仮想空間の中でいかにビジネスを優位に立たせるか、そうすると現実空間における経済性が高まる、みたいな状態になってる。画期的でもあるし、急速すぎるともいえる。

志水:DXに関しては準備期間が長かったけど、優先順位はなかなか上がらなかったですよね。

ただ生活者は完全にデジタル化されていってるじゃないですか、デジタルネイティヴがバリバリ働いている時代なわけですから。それなのに、企業がデジタル化に遅れている。
DXができているところは比較的大丈夫なんだけど、あまり準備できていないところに現実と仮想の主従逆転まで行き切ってしまって、みなさんが戸惑っている。

制作会社の顧客獲得はどう変わるか?

枌谷:web制作会社の場合、リード獲得までは今まで通りで結構いけると思うんですけど、難しいのが営業ですよね。対面営業ゼロにして数百万とか数千万の仕事取れるかっていうのは結構大きい課題な気がします。みなさんどう思われますか。

志水:私たちのところでちょうど1000万ぐらいの規模の案件を一つ発注いただいたんですけど、会ってないですね。それぐらいの規模で一切会わないというのは確かにコロナ以前はなかったと思うんですよ。

枌谷:そのお客様は、以前からタービンさんを知ってたんですか?

志水:たぶん知らなかったお客様です。メールに反応して、興味があって新しい資料を取って、という普通のプロセスで生まれたお客様です。

ただ、それぐらいの規模の仕事であれば普通は会いますよね。でも今は会えない。ただ企業側も、会えない中でもなるべく先に進む状況を作ろうとはなってきてますね。

山口:BtoBだけじゃなくてBtoCでも同じことが起きています。うちだと住宅系が多いんですけど、クライアントさんと一度も会わずに個人から数百万円のリフォーム工事を受注した、みたいな声がもう上がり始めてて。オンラインでセミナー告知したらリアルでやってた時以上に人が集まったとか。

枌谷:3月に出会ったお客様で、1000万近い規模の案件が一度も会わずに決まったんですが、その会社は声をかける前からうちのことを完全に知ってくれていましたね。

オンライン営業では、営業担当者の真面目さやひたむきさ、仕事の姿勢みたいなのが見えにくいくなって、ブランド力勝負の傾向が強くなる気がするんですよね。

知名度やブランド力がある有名な企業の方がより有利な世界。そんな中でうちみたいな企業は、リードとして接触する以前の話題性や評判がないとオンライン営業の難易度が上がる。逆にそのベースがあると、オンライン営業の時代になっても割と難易度低く、高い金額の受注ができる気がします。

中川:そう考えると、業界は違えど、食べログってすごく分かりやすいですよね。行ったことがなくても、高い評価やクチコミがあると行ってみたくなる。食べログのようなもので制作会社を選ぶ、みたいになっていくのかもしれませんね。

枌谷:オンラインが強くなると、評判をベースに選ぶ流れがさらに強まる気はしますね。

志水: 信頼感の獲得を画面越し、場合によってはメール、チャット、botみたいな世界の中でどう設計するのか。そこにクリエイティブがおよぼすことのできる影響って、ノンバーバルなものも含めあると思います。我々の研究課題として大きい領域ですね。

制作会社が今後、取り組むべきこと

志水:いろんな Web 制作会社があるんですけど、この状況下で取り組むべきことって何ですか?

山口: うちは、特定のクライアントや業種、地域商品に依存していなかったおかげで、今回はダメージが軽くて済みました。なので、純粋に制作をするだけでなく、管理のサポート、広告、システム開発など、業務範囲を広げて多角化することが求められるのかなと思ってます。

クライアントがDXをやるとなった時の支援、ビジネスモデルやキャッシュポイントを変えるとなった時の改善提案とか。

例えば住宅とかも、家を買うというオフラインメインでやってたことを8~9割オンラインにするという発想で設計しないといけない。取り組み始めているところも一部あるんですけど、そういうことを、私たちも求められ始めるのかなと思っています。

それと、能力があってテレワークでもバリバリ活躍できる人が複数の会社から報酬を得るような、パラレルワーク的な働き方への順応も大きなテーマですね。評価制度含め、今から考えていかなくてはと感じています。

枌谷:組織作りや人事など、切り口は色々あるんですけど、私はやっぱりマーケ好きなので、マーケ面で何をやるべきかという話をしたいと思います。

自分がやってるからっていうのもあるんですけど、キモになるのがコンテンツとソーシャルかなと思っていて。Web制作会社も、コンテンツとソーシャルにもっと向き合っていったがいいんじゃないかと。

今までのweb制作会社の顧客獲得ってこんな感じだった気がするんですよね。お客さんの中に意思決定チームがあって、そこに対して広告とか電話とか営業とか、オフラインの手段でアプローチして、選んでもらっていた。

今までのBtoB

でも今、これができなくなった。ではどうするか。

まず有益で良質なコンテンツを作る。それをソーシャルで拡散する。お客さんの社内ネットワーク上にはダークソーシャルと呼ばれている、チャットとかグループウェアで繋がった情報ネットワークがあります。これを通してお客様社内にコンテンツを浸透させる。そうすると自社のブランドと接触できる状態ができる。

これからのBtoB

これができていると、例えばサイトリニューアルしたいとなった時に、「じゃあチャットでよく見かけるベイジさんに声をかけてみなよ」といった意思決定が働いて、商談フェーズで有利に立てる。

ソーシャルとコンテンツを使いこなしてる Web 制作会社はこれから強い。顧客支援の観点でもソーシャルとコンテンツというものを理解しているから、支援しやすくなる。なので、この二つに力を入れていくべきだと思いますね。

中川:会社経営について、自分が信じている哲学を二つ共有します。コンサルティング会社だとかはダイバーシティマネジメント=自律型がこれからの経営が絶対で、規律型はもう古いって言うんですけど、僕は違うと思っていて。

Web制作会社にはコンサルタント、マーケター、プログラマー、デザイナーと、色々な人たちがいる。そんな組織は、自律型だけではまとまらないですよ。そうじゃなく、規律型と自律型の中庸をとらなければいけない。

中川的経営哲学①

マネージメントという意味では1つ目。テレワークに徹底して慣れる。これは絶対に重要だと思うんですよね。

2つ目は、裁量労働を見越したマネージメントの評価基準を必ず新たに持つ。しかも早急に持たないとダメ。

3つ目が規律型的なんですけど、トップダウンのマネジメントができる状態も作る。指示系統はきっちり持たせる。

4つ目は目的思考に応じた多様性と自律性。3つ目と4つ目この両方の中庸を持つこと。

会社経営の23年間を振り返って、会社経営の公式は、哲学を分母にした科学+芸術だと気付いたんですよ。哲学というのは、心を一つにする会社の理念だったりミッション。これは絶対ベース。その上に科学と芸術。

中川的経営哲学②

科学はマーケティング的な話で、計算式を立てれば売上も上がる。戦略と戦術をきちんと立て、あとは現在の立ち位置をしっかり確認してのKPIとKGIの設定。KPIは短期でいくつかたてて一個クリアしたらまた計画を練る。間違ったら軌道修正しKGIへ邁進、正しいことをすれば、確実に売上は伸びる。

だけどやっぱりそれだけじゃ人はまとまらないので、芸術という言葉もとても重要視しています。パーソナリティや人の動かし方といった、情緒的なところの采配を芸術と個人的にに定義してるのですが、これら全てが合わさって会社経営は成立する。

ただ、今は緊急時なので、哲学うんぬん言ってられない。科学がすごく重要で、今すぐ制作会社は戦略と戦術を立てないといけない。なので緊急時の重要度は科学が1番、芸術が2番。

また、戦略と戦術に関してすごく重要なのが、なるべく下の層までそれらを理解し、会社一丸となること。せめて3~4年以上会社にいる人たちには、パラダイムが変わることに合わせた緊急の戦略と戦術についてきちんと理解させた上で、こっち側に進むぞ、って旗を振って行かなければならない。

売上に関してはこれから確実に下がるトレンドにあります。給与を払わなければいけない、売上がない、の二重で会社はお金がなくなっていく。

それに対して準備するためには、科学をしっかりしなければいけない。あとは芸術のところで心をまとめながら、パラダイムを乗り切る。これが重要なのかなと。

志水:この緊急時と真剣に向き合った中から成長はあるのかなという気もします。そして我々web制作会社の人たち、もしくは Web 制作に携わってる人たちのスキルセットって、ここを乗り切るためにも使える。

これからの世界の話、我々がどうやって乗り切っていくかって話と、我々がどうやってお客様を助けるかって話は、それぞれ別物じゃなくて繋がってるなと、皆さんの話を聞いて思いました。加えて、我々がサバイブしていくためには、我々の大事なお客様を成功させる、サバイブさせることがすごく重要なんじゃないのかなと感じました。

僕ら自身も、今やっているビジネスからちょっと間口を広げたり、形を変えたり、手に取りやすいものにしたり。本来こうじゃないといけないって思い込んでたものを少し外して考えるとか、そういったサービス設計も重要なのではないでしょうか。

さいごに

枌谷:事前リハーサルをやっていた時に、web制作って実は未来があるし、これからも基本的に仕事は増えていくし、コロナショックで一時的に停滞することはあっても需要としては今後も続くし、希望を持ってやっていける明るい業界だよね、っていうのがこの4人の総意としてありましたよね。

志水:結論ではないけど、方向としてはそうですよね。

枌谷:フルオンラインの時代だとwebサイトは絶対に必要だし、市場として枯れていくわけでもないと思うので。そういう意味では、この状況を生き残れば、その先には皆が活躍できる場が広がっているはずだし、希望を持って生き抜いてほしいな、と思います。

志水:そうですね。web業界で働いてる皆さんは、今の状況には一番慣れているというか、速い人たちであるはずですし。だからこそ周りの状況を落ち着いて見ることもできる人たちなんじゃないかな。

我々には、今を生き残るためのスキルセットが既に備わっていると考え、我々が生き残らないと日本のためにならない、くらいの気持ちでいてほしいですね。

※当日いただいた質疑応答への回答はこちらです。

ご協力いただいた企業の皆様

株式会社アンティー・ファクトリー
インターネットビジネスを中心とした企画、設計、デザイン、システム、運用、マーケティング、リサーチ等の総合的なクリエイティブファーム。デザインのその先にあるものを目指し、どんな些細な事も情熱をもって取り組みたい。そしてより良いカタチにしてあげたい。そんな心意気を持ったスタッフがのびのびと働けるオフィス環境を東京・名古屋・大阪・盛岡の4都市に構えています。

株式会社タービン・インタラクティブ
東京、名古屋、宮古島を拠点に活動するBtoB専門ウェブ制作会社。戦略コンサルティング、デザイン制作・運用、コンテンツSEO、マーケティングオートメーション導入・運用など、BtoBマーケティングに必要なすべてをワンストップで提供しています。

株式会社リクト
コミュニケーションを大事にする株式会社リクトは、企業の利益に繋がる本当の強みをサイトに反映し、寄り添う運営サポートで集客支援を実現します。相談ができ連絡が取りやすいホームページ制作会社をお探しならまずはご相談ください。

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