はじめまして、ライターの古閑です。
私はつい最近まで都内の大学に通う大学生でした。もともと文章を書くことが好きだったのですが、働くならマーケティングにも触れてみたいと思い、4月からライターとしてベイジで働いています。
大学で文章を書いていたとはいえ、プロのライターとしては実績がないため、代表の枌谷や編集者経験があるディレクターの五ノ井から、ビジネスコピーについて教えてもらいつつ、まずはwebサイト内のテキストのリライトなどの仕事をしています。
ベイジに入ってから知ったのですが、ライターが所属しているweb制作会社というのは実は少ないそうです。そんな中、ベイジが私のような未経験のライターでも重要視して採用したのは、これからのweb制作、ひいてはデジタルマーケティングにおいて、文章が書ける/コンテンツが作れることが非常に重要で、その力を会社全体で高めていきたい、という考えがあるからです。
今回の記事は、入社後に枌谷から受けたweb制作とコピーに関するレクチャーを下敷きにしています。ライターとして身に付けるべき知識領域は幅広く、初学者はどう学べばいいか迷うだろうということで、枌谷がスライドにまとめてレクチャーしてくれました。
その中では、現在のマーケティングやweb制作におけるコピーが置かれている状況、webサイト上でのコピーの役割、デジタル時代のコピーライターが身に付けるべき知識領域について教わったのですが、それを皆さんに共有します。
※以下、枌谷の口調を再現してお届けします。
※レクチャーに使われたスライドはこちらです。
私たちベイジは、平均して1日2~3件、ひと月で40~50件ほどのお問い合わせをいただいています。依頼は企業様によってまちまちですが、共通するのは「いいホームページを作ってほしい」というシンプルな要望です。しかし、このシンプルな要望を実現する工程は、決してシンプルではありません。
以下の図は、制作の受注から納品するまでの工程を上から順番に縦に並べて、それぞれの工程を担う職種や担当企業などを横に書き出したものです。(担当する職種や企業はあくまで一般論です)
最上流にあたるサイト戦略などはwebマーケティング会社が、大規模なシステム開発は専門のシステム開発会社が担当することもありますが、一般的にweb制作会社は、サイト制作における重要な工程のほとんどを、自社で請け負うことができる体制を作っています。
しかしながらここで注目してほしいのが、「コピー」の行です。
コピーを担当するコピーライターという職種は明確に存在していますが、担当する企業の欄には「?」とあります。これは、コピーはweb制作会社に期待されている領域でありながら、先ほどもお話ししたようにコピーライターが在籍しているweb制作会社が少ない、コピーの質まで管理できるweb制作会社が少ない、という現状を示しています。
単に文章を作るだけなら、コンテンツ制作会社でも可能です。しかしながら、オウンドメディアなどの記事制作に特化したコンテンツ制作会社は通常、webサイトの中に配置される個別のコンテンツやコピーの制作を扱わないことが一般的です。
いわゆる広告系のコピーライターが、サイト内の文章を担当することはあります。しかしながら、こういったコピーライターは、セールスや取材のライティングは得意でも、SEOやSNSに有利な記事の書き方、UIの一部としてのコピーには疎いことが多いです。
このような業界構造上の問題から、web制作のプロジェクトを進めていく中で、「webサイトのコピーのクオリティを、誰が責任を持って管理するのか?」といった問題にぶつかることが非常に多いです。
20年以上前のインターネット黎明期に生まれた「コンテンツ・イズ・キング」という言葉は、本来のwebサイトの在り方を表していて、これが色褪せることはありません。
むしろ、誰もがコンテンツを作成し、公開できる環境が成熟したことによって、企業サイトにおけるコンテンツの存在は相対的により重要になり、ビジネスやマーケティングへの影響力はさらに強くなっているとも考えられます。
それなのに、コンテンツと表裏一体にあるコピーについて、未だにweb制作の現場では、誰が責任を負うべきかよく分からないグレーゾーンのままになっています。ベイジがライターの採用を積極的に行っているのは、この状況を何とかしたい、という強い想いがあるからです。
webサイトにおいてコピーが手薄になってしまうのは、業界構造上の問題以外にもあります。それが、webサイトにおけるコピーの多様性です。
「webサイトのコピー」と一口にいっても、長文の文章、1~2行の短い文章、人に何かを訴求することを目的としたキャッチコピー、ボタンに表示された機能的なラベルなど、細かく見ていくと様々な形態と目的があります。
webサイトに必要なコピーを整理するため、ユーザー体験ベースで考えてみましょう。
これはかなり単純化した図ですが、ユーザーはSNSや検索結果を入口にサイトを訪れ、欲しい情報を求めてページを遷移していきます。その過程で、目的にたどり着くまでの道筋が複雑であったり、自分の求めるものはそこに無いと判断したりすると途中で離脱していきます。また、目的の場所にたどり着いても、そこで魅力や物欲といった感情を刺激されなければ、何もアクションを起こすことなく去っていきます。
このような基本的なユーザー行動を考えると、webサイトが機能するためには、少なくとも以下の要件を満たすコピーが必要です。
webサイトのコピーといっても、このように異なる知識領域が混在しています。この中には、いわゆる広告畑におけるコピーライティングとは異質な領域も多いです。所謂コピーではなく、マーケティングやデザインで扱われる知識を求められる領域もあり、旧来の文章術をマスターするだけでは不十分だったりします。これが、webサイトにおけるコピーを難しくしている、もう一つの理由です。
逆に、この4つの領域の違いを理解し、それぞれを丁寧に抑えていけば、webサイトにおける「質の高いコピー」を作ることができるようになるともいえます。
以下で、4つのコピー領域がどういったものか、もう少し詳しく見ていきます。
オウンドメディアのようにSNSが重要な流入経路となりえるwebサイトやコンテンツでは、「SNSに有利なコピーの作り方」をある程度踏襲する必要があります。
SNSのタイムラインは自分の興味関心に合わせてカスタマイズされているようでいて、細かく見ていくには雑多すぎる情報で溢れています。そんな情報の洪水の中で、ユーザーは無意識と言っていいくらい瞬間的な早さで読む/読まないの判断を繰り返します。
その判断材料となるコピー要素がタイトルです。コンテンツがSNS上に配置される際、唯一露出するコピー要素ともいえます。このタイトルを通して、ユーザーが求める情報がこの先にあると思ってもらえなければ、どんなに質のいいコンテンツであったとしても人に届けることができません。
また、ユーザーの手によってコンテンツが拡散される、UGCが生まれるというのも、SNSをキッカケに多くの人に見てもらうために重要なことです。
例えば、Twitterでは拡散される際の傾向として、自分が特に惹かれた部分をコピペして記事のURLと共にツイートするというものがあります。そのため、100~200字程度を1ブロックとし、その中にフックとなる文言を置くとブロックごとコピペしてシェアしやすく、Twitter上でUGCを誘発できる記事になったります。
その他、引用されやすい言葉や金言を含める、タイトルを32文字以内に抑えるなど、細かなテクニックはありますが、この領域に関しては、現時点で形になったノウハウ集があるわけではありません。自らnoteやtwitterを運用しながら、どんな文章を書けばどういう風に人々が反応するかを、肌感覚で掴んでいくことも大事です。
なお、SNSでシェアされやすい文章の書き方については、ベイジのブログで改めて公開する予定です。
検索エンジンが発見しやすいようにコンテンツを作らなければいけないというのは、SEOの世界では昔から言われてきたことです。
とはいえ、最近はGoogleのアルゴリズムも進化し、小手先のテクニックは必要なくなってきました。類義語もある程度はカバーしてくれます。つまり、ユーザーにとって有益なコンテンツを作るという基本を守ることこそが、SEOを考慮したコピーの基本です。
より具体的に言えば、コンテンツがユーザーの検索意図と一致する内容であること、専門性・網羅性・信頼性の3つを満たすことを抑えることです。
これを実現するためには、読んでほしい人がどんなキーワードを使って検索するのか、そういう人はどのくらいの数がいるのか、そのキーワードで検索した場合、今はどんなページが上位表示されているのかといったことを、知っておく必要があるでしょう。
「類義語もある程度はカバーしてくれる」とは言いましたが、類義語であっても言葉のセレクトで表示順位や検索エンジンからの流入数が変わってしまうのが今のアルゴリズムの現状です。自分たちが想定している読者が、どういう気持ちでどんな言葉を使っているのか、ということを把握しておくことが特に重要です。
また、検索結果に表示された際のコピーにも配慮する必要があります。具体的には、タイトルタグ内やメタのdescription属性内のコピーといった要素についてです。
検索エンジンの仕組みに精通し、ターゲットとする人たちがどんな検索体験をしているかを理解した上で、その検索体験に最適化できるよう記事を作ることは、インターネット上に公開する以上、最低限のこととして配慮しておかなければなりません。
ナビゲーショナルコピーとは、訪問者を求める情報まで誘導する役割を持つコピーのことで、ベイジで作られた造語です。webサイトのコピーとなると、いわゆる文章だけでなく、UIの一部としてのコピーに関する知見も必要になってきます。
例えば、グローバルナビゲーションにある「サポート」というメニューの場合。
これだと、製品購入前のユーザーのための、導入をサポートする情報が載ったコンテンツのか、製品購入後のユーザーのための、故障時の修理保証などの情報が載ったコンテンツなのか、メニュー名からでは判別できません。
そのため、「サポート」ではない言葉に差し替えて、ユーザーが正しく情報に辿り着けるようにすることが必要になります。例えばそれは「導入サポート」がいいのかもしれません。あるいは「導入でお悩みの方」とまったく変えてしまった方が良いのかもしれません。いずれにしろ、サイト内のユーザー行動と訪問者のマインドセットを理解した上で、このような発想で最適な言葉選びをすることが、ナビゲーショナルコピーには必要です。
また、CTA(コール・トゥ・アクション)と呼ばれるコンバージョンに誘導するボタン周辺に設置されるコピーには、フォーム遷移率やコンバージョン率を変わる力があります。ナビゲーショナルコピーは、webサイトの成果や使い勝手に直結するUIパーツの一種という側面が強いものです。
このようなコピーは、旧来の広告系コピーライターがほとんど扱ってこなかった領域です。最近ではUXライター/UXライティングなどという言葉も生まれていますが、文章術よりも、UX、情報設計、認知心理学、行動経済学の知識やノウハウを必要とし、UIデザイナーに近い感覚が求められます。
web制作やUIデザインの仕事を通してでないと実践しにくいというハードルの高さはありますが、言葉選びによってサイト内での人の動線や離脱率が明確に変わるため、web制作会社でコピーを担当する上では、避けては通れない重要な領域です。
インフォメーショナルコピーもベイジが作った造語ですが、こちらは多くの人が想像するいわゆるコンテンツであり、読み物や情報そのものを構成するコピーのことです。
フォーマットとしては、ロングテキストやストーリー、アソート型コンテンツ、インタビュー、セールスコンテンツなど色々ありますが、昔ながらのコピーライティングや文章術が一番効く領域でといえます。わかりやすく情報を構造化するロジカルな思考と、人の心を掴む情緒的なセンスの両方が求められます。
とはいえ、webにはwebの特殊性があるため、紙媒体でのセオリーやルールをそのままデジタルに持ってくるのではなく、web上でのユーザーの行動特性を踏まえた、読みやすい文章を設計しなくてはなりません。
ここまで枌谷が私に話してくれたことを引用してきましたが、最後に、デジタル領域のライターはライティング、マーケティング、テクノロジー、教養、読解力といった普遍的な能力を横断的に身に付ける必要がある、と話していたのが印象的でした。
それぞれの領域について幅広く深い知識を得るほど、それぞれが相乗効果を発揮し、発想の幅と質が高まり、より一層良質なコピーを作ることが可能になる、とのことです。
横断的に幅広く知識を身に付けていかなければいけないのは、とても大変なことだと思います。ただ、「コピー」とひとくくりにするのではなく、目的や用途によって種類を分類し、それぞれの学習方法を教えてもらったことで、自分が何から手を付ければいいのかが、明確にイメージできるようになりました。
また、これから知識を身に付けていく中でも、自分が知っていること以外にどんな領域が広がっているか、という地図のようなものができた気がします。一年や二年で身に付くことではなく、少しずつできることを増やしていけばいい、というお話も聞いたので、少し安心することができました。
ベイジのようにマーケティングから関わっているweb制作会社で仕事をすることは、異なる職種の人たちと綿密にコミュニケーションをとりながら、デジタル時代のライターに必要な知識を網羅的に学べるというメリットがあるように思います。
私がベイジでの仕事を通じて学んだ細かなテクニックなどは、これからもこのブログで紹介していければと思います。
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