ベイジは4月5・6・7日の3日間、東京ビックサイトで開催されたJapan IT Weekに出展しました。展示会への出展はベイジとしては初の試みです。
ブースの設計を担当したのは、独自の集客方法を確立し、数々の展示会のブースデザインを手がける「SUPER PENGUIN」さんです。
今回は展示会の中心メンバーであるベイジ佐々木と、SUPER PENGUIN代表の竹村さんにインタビューを実施。展示会出展の背景から集客のための施策まで、お二人に語っていただきました。
ーベイジといえばウェブサイト制作のイメージが強いですが、なぜ展示会に出展しようと思ったのですか?
佐々木:たしかにベイジはウェブ制作の会社だと認識されていますが、実は売り上げの半分ほどは業務システムの案件が占めているんです。ただ、お問い合わせの数はウェブサイトの方が圧倒的に多い。会社としては業務システム支援サービスはもっと力を入れて伸ばしていきたい事業ですが、あまり知られていないのが現状です。これまでもデジタル広告や記事発信などの施策は行っていたものの、そこまで効果が出ていませんでした。
他に見込み顧客へアプローチできる有力なチャネルはないか考えていたときに、思いついたのが展示会です。それがちょうど1年前の4月頃ですね。自分たちからプロモーションを仕掛けにいくアウトバウンド型の施策にも挑戦してみよう、ということで出展を決めました。
ー認知拡大が主な目的ということですが、なぜJapan IT Weekを選んだのですか?
佐々木:業務システムやアプリケーション開発関連で一番大規模な展示会がJapan IT Weekだったからです。せっかくなら大規模で人が多く集まるところに出展して、効率よくベイジを知ってもらおうと考えました。
竹村:Japan IT Weekの主催者であるRX Japanは、日本で一番大きな主催企業の1つなんです。展示会の来場者数も多いので、Japan IT Weekを選んだのはやっぱりいい選択だったんじゃないかなと思います。
ー展示会出展にあたりどのような準備を行いましたか?
佐々木:Japan IT Weekの中にはデジタルマーケティングやAIなど様々なブースがありますが、ベイジはウェブアプリケーションシステム系のソフトウェア開発ブースに出展しました。出展にあたり、まず重要になってくるのがターゲットの設定だと思います。工夫した点としては、ターゲットを2つ決めたことですね。
1つ目のターゲットは、ブースに開発会社やパートナーを探しにくる来場者。2つ目のターゲットは、展示会に出展している企業です。実は今回のメインターゲットはこの出展企業でした。Japan IT Weekはここ数年、業務システムやSaaSを取り扱う企業の出展が増えています。その企業に対して「御社のシステムのUI/UXデザインを改善しますよ」と直接アピールできる場だと考えたんです。
竹村:あとはターゲットがブースに来てくれないと意味がないので、出展場所もかなり重要になってきます。今回依頼いただいたのは展示会の約1年前とかなり早い時期だったので、いい場所がとれたと思いますね。
ー出展する場所にも良い・悪いがあるのですね。
竹村:ブースのサイズと場所は費用対効果に大きく影響すると思います。ブース面積が大きすぎると費用が膨れ上がってしまう。かといって小さすぎると細い通りに追いやられて人が入ってこないので、思うような効果が見込めません。
今回の会場は横長の形をしていましたが、その場合、横動線の道に人が多く集まるんです。縦動線の細い道は人が入ってこないので、横動線の会場の中心付近が理想的だと思います。
佐々木:最初は、メインから離れた縦動線の通りにブースを出す予定でした。でも、運よく横動線のスペースに空きが出て、いい場所をとることができました。
ー場所の選定にかなりこだわったようですが、予算はどれくらいかかりましたか?
佐々木:ベイジと同じ規模の会社が出展するなら、予算は3〜400万円ほどが妥当だと思います。しかし、しっかり集客が見込める場所とブース面積を確保したかったので、場所代に約210万円、その他費用に約440万円、トータル約650万円ほど予算をかけました。
会社の知名度が圧倒的に高い会社なら、ここまで場所選びにこだわらなくてもよいと思います。ただベイジは一部のウェブ制作・マーケティング業界では知られているものの、一般的に有名な会社ではない。なので、設定したターゲットへ効率よくアプローチするために、可能な限り予算を出していい場所をとりたい、という考えはありましたね。
ー展示会の集客にはブースデザインも欠かせない要素だと思います。デザインする上でどのようなところにこだわりましたか?
竹村:意識したのは展示会の「基本3原則」です。これは私がいつもセミナーなどで言っていることで、「1.何を扱っている会社かはっきり書く」「2.通路際を活用する」「3. 立ち方・待ち方を意識する」が押さえておくべきポイントです。
1つ目は一番大きく会社名を記載している看板部分を指しています。展示会場を歩いていると分かるんですが、会社名は書いていても何をしているかまで明記していない会社が多い。展示会場は多くの情報に溢れています。ぱっと見て何をしているか分からないと、多くの場合スルーされてしまいます。なので、何をしている会社なのか端的に書くことが大切です。
2つ目は通路際に突き出し部分を作り、商談ブースとして活用すること。来場者はだいたい通路の真ん中を歩いています。そんな時に、通路際にぽっかりとスペースが空いているブースを見ても、いきなり奥まで入る気にはなりませんよね。そんな来場者の抵抗感を無くすために、突き出し部分を作るんです。加えて遠くを歩く人の目に留まり、すぐにテーマが理解できるように、頭より上に掲載するコンテンツは大きな文字で端的な表現になるようにデザインしました。
佐々木:竹村さんのお話は日常生活に通じることも多いですよね。例えば看板もなく何をやっているか分からない飲食店は怖くて入りづらいけど、大きな文字で「中華料理」と書かれていたら一発で何のお店なのか分かります。ブースも1つのお店だと捉えたときに、外から見て何をやっているのかすぐに分かることは、かなり大事だと思います。
ー最後の3つ目はすごく接客に近い話ですね。
竹村:まさにそうです。服を買いに行った時を想像して欲しいのですが、普通お店に入ってしばらくの間は店員から声をかけられないはずです。店員がしつこく声をかけたり待ち構えていたら、お客様が警戒してしまうからです。実はこの待ち方や立ち方にはマニュアルがあって、服を畳むなどの自然な動きを取り入れながらお客様の様子を伺う「動的待機」が重要になります。
これは展示会にも通じる話で、基本的に来場者はスタッフに話しかけられたくない、と思った方がいい。なので無理に声かけをせずに、チラシを配る、スタッフ同士で談笑するなど「動的待機」を取り入れることで、来場者の警戒心を解くことができます。
ー展示会というリアルな空間だからこそ、ウェブ制作とは異なる考え方もあったと思います。何か苦労した点はありますか?
佐々木:パネルに掲載するコンテンツの制作には苦労しました。最初は「顧客に有益なことはすべて伝えるべき」という思いが強く、伝えたい情報は全て載せる方針でした。しかし量が多すぎたりキャッチーじゃなかったり、見せ方のバランスが悪かったりと、様々な課題が出てきて、1番調整に時間がかかりました。
苦労の甲斐あってか、製品・サービスについて分かりやすくまとまったパネルになったと思います。スタッフも説明の時にすごく参考にしていました。ベイジの業務システム支援サービスを全く知らないお客様も、パネルのコンテンツだけである程度サービスについて理解してもらえるような内容になったと思います。
竹村:多くの会社はパネルに伝えたい情報を全て盛り込みがちですが、逆に情報過多で読む人に伝わらなくなってしまうんです。空間とウェブ制作の違うところは、説明する人がブースにいることです。コンテンツは情報を伝えるというよりも、歩いている人を引き付けるためにあると考えた方がいい。だからパネルの見出しに「~?」という疑問形を使う、黄色など目立つ配色を取り入れる、など「人の目を引く」という観点を意識して、かなり細かいところまで作り込みました。顔写真を載せる案も私から提案したんです。
ーたしかに最初ブースを見たときに、人の顔にすごく目を引かれました。
竹村:最初ベイジさんのウェブサイトを見たときに、ちゃんとスタッフの皆さんの顔写真が掲載されていて、すごく人を大事している印象を受けたんです。なので人で勝負した方が競合他社との差別化要素になると思いました。
「全員がプロフェッショナル」ということを伝えるために、顔写真を同じサイズに揃えたのも、こだわった点です。やはりお客様からしても、よく分からないスタッフに対応されるより、スタッフ全員がプロフェッショナルだと感じられた方が心強いと思ったからです。
佐々木:たしかに同業他社で顔写真を載せているブースは見なかったので差別化になったと思います。また、誰が対応したかすぐ分かる上に専門性もアピールできるので、すごく効果的でした。
今回展示会に出展するにあたって、改めて日常的に実店舗を観察するようになったのですが、人が取捨選択を行う時というのは、凄く本能的な部分に影響を受けているなと感じます。例えば焼き鳥が目の前で焼かれていていい匂いがしてくると、つい気になってしまいますよね。展示会のようなリアルな空間でも、色遣いや写真などで人の注意を引く、というのはすごく重要な要素だと改めて実感しました。
ーリアルな空間の方が、より「五感に訴える要素」が大切ということですね。
佐々木:そうなんです。五感で言うと、まさに「音」で集客を狙ったのがセミナーです。動画を流している企業も居ましたが、僕が実際に他の展示会へ下見に行った時にはそこまで注意を引かれなかった。より集客率が良いと感じたのは人が集まっているセミナーです。やはりリアルタイムで喋る方が熱量が伝わりやすく人が寄ってくる。そして人だかりが出来ると面白いくらい人が人を呼ぶんですよ。その流れでブースへ誘導することもできるので、実施してよかったと思います。
竹村:「音」や「匂い」など五感に訴えかける手法は集客にすごく効果的だと思います。なのでブースを作る際は、スピーカーを設置して音楽を流したり、フレグランスで香りを付けたりもよくしますね。
ーそもそもどうしてSUPER PENGUINさんにブース設計を依頼しようと思ったのですか?
佐々木:いくつか理由はありますが、1番はSUPER PENGUINさんのサイトコンテンツを見て展示会についてのノウハウをしっかり持っていると思ったからです。つい最近書籍「集客できる展示会ブースづくり PENGUIN METHOD(ペンギンメソッド)と店舗への活用」を出版されたのですが、すごいボリュームなんですよ。これを見ても分かる通り、集客するためのナレッジを豊富に持っているので、信頼して任せられると感じました。
また、最初に相談を持ちかけたときから、こちらの要望を汲み取りつつもしっかり提案してくださったんです。竹村さんなら、一緒に議論しながらブースが作れそうだと感じたのが決め手です。
竹村:みなさんがよく言われるのが「他の会社は頼んだことはやってくれるが、提案がない」ということです。恐らくうちは業界の中でもかなり特殊で、お客様からの要望でも、集客できないと思ったら別の案を提案します。「ダメなものはダメ」とはっきりお伝えするようにしているんです。
佐々木:そういったやり取りはコンテンツ作りの中でもありましたよね。コンテンツ案を提出したら、意図をくみ取って添削していただいたものが返ってきたり、かなり議論を重ねて制作しました。でも、考え方や目指す方向性が同じだったので、コミュニケーションはとりやすかったです。
ー「考え方や目指す方向が同じ」とは、具体的にどういった部分で感じたのでしょうか?
佐々木:最初に依頼して説明を聞いたときから似ているな、と感じていました。例えばベイジだと、サイトのファーストビューにいきなりポエムのような抽象的なコピーは載せません。誰が読んでも、何をしている会社なのか理解できるように明記して、ユーザーの知りたい情報を出すのがセオリーです。
ブースの看板もウェブサイトのファーストビューと同じだと思っているので、三原則の「1.何を扱っている会社かはっきり書く」というのはとても共感しました。人を集客する方法を考えたときに、コミュニケーションのメディアが違うだけで、「コンテンツファースト」の考え方はまったく同じだなと。だからこそ、提案内容にも納得感を持って進められたんだと思います。
竹村:コンテンツへの考え方もですが、「提案すること」に重きを置いている会社の姿勢自体も似ていると感じますね。会社として大事にしていることや目指す方向性が似ているからこそ、我々の考えをストレートに提案しやすかったです。
ー展示会に出展してみて、率直な感想を教えてください。
佐々木:「来場者や出展企業にベイジを広く知ってもらう」という目的はある程度達成できたと思います。大企業から中小企業まで、普段のお問い合わせでは接点が無かった人と接点が持てた。あとは、実際に接客する中ですごくリアルな課題感や悩みを聞けた点もよかったですね。どんな提案だと顧客の反応がいいのか、ある程度パターンが分かったので、コンテンツ化してメルマガ配信にも活用したいと考えています。
ー現時点で感じている効果はありますか?
佐々木:成果は、総額いくらの案件を受注できたかなので、1・2年経ってみないと何とも言えません。ただ、中間成果として、確度の高いお客様との商談は10件ほど決まっています。またメール配信などで今後長期的にナーチャリングしてくお客様も何件か獲得できています。短期視点では商談したお客様から何件受注できるか、長期視点ではメール配信するお客様の中から何件受注できるか、という観点で成果を図ろうとしています。
ここまでがマーケティングの話ですが、間接的な効果もすごく感じました。1つ目は社員の教育に効果的ということです。今回営業経験のない社員にも接客をしてもらいましたが、半強制的にサービスの説明をしなければいけないので、自ずとサービスへの理解が進むんですよ。営業に慣れている社員も、普段の2倍3倍の量の商談をこなさなければいけない。そうなると話す内容がどんどん研ぎ澄まされて、鍛えられたと思います。
2つ目は展示会に出展することで、説得力を持ってお客様に展示会を紹介できること。ベイジのサービス自体がBtoB企業向けのものが多いので、展示会が1つの有力なチャネルだということは理解していました。しかし実際に出展して肌を持って利点や特徴を学んだことで、商談の場でも展示会のメリットなどを細かく説明して提案できる。そういった波及効果もあったと思います。
ー売上だけでなく予想外の効果も見込めたのですね。今後も展示会への出展は考えられていますか?
佐々木:そうですね。実はすでに次回の展示会出展の話が出ているんです。やはり大企業など長期でのナーチャリングが必要なお客様が多かったので、1回だけの出展だともったいないというのが理由です。あとは展示会を通して学ぶことも多く、普通に楽しかったので、また出展したいですね。
今回の展示会は、ブースの場所にも恵まれて運がよかった。なので次回は今回以上に工夫しないと上手くいかないと思います。コンテンツの分かりやすさはもちろん、より五感や本能に訴えかけ、人の目を引くようなブースや施策を考えたいと思います。
ウェブ制作とブース制作、それぞれの専門領域で異なる点はありつつ、「集客」という観点では通じるものを感じられるお話でした。会社として目指す方向性が同じだからこそ、お互いのナレッジをかけ合わせ、相乗効果が生まれた取り組みとなったのではないでしょうか。
ベイジの展示会を通しての学びが、展示会に出展したいが何から考えればいいか分からない、集客できるブース設計や施策を考えたい、などお悩みを抱える方の参考となれば幸いです。
ベイジは業務システムやSaaSのUIデザインを得意としている数少ないデザイン会社です。官公庁から金融機関、ベンチャー企業まで、実績も豊富です。もちろん、UXリサーチを含めた上流工程もしっかりワークフロー化して対応できます。SaaSのプロダクトや社内業務システムのデザインでお悩みの方は、私たちまでお気軽にご相談ください。