BtoBの購買活動は本当に論理的・合理的か?

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代表/マーケター/デザイナー/ブロガー枌谷力

BtoBは情緒購買ではなく論理購買である。BtoBは経済合理性にもとづいて意思決定される。これらはいずれもBtoBでよく言われる「定説」ですが、この記事ではそんな定説に疑問を投げかけてみたいと思います。

人は予想通りに不合理である

BtoBの意思決定をしているのは、結局は人間です。そして個々の人間は、実は論理的・合理的な考えがそれほど得意ではありません。

ノーベル賞受賞の行動経済学者ダニエル・カーネマンの名著『ファスト&スロー』(2012年)では、常時オートモードで運転し、主に反射的な意思決定を得意とするシステム1と、論理思考などの熟考が可能だが負荷が高く怠け癖があるシステム2を中心に、人の判断を誤らせるバイアスについて、詳しく解説されています。

先入観から論理性や妥当性を見失い、すぐに思いつく結論に飛びつき、直前に見た数字に流されて過大/過小評価をし、関係ない事柄を結び付けてデータを見誤り、偶然並んだ言葉に因果関係を見出して勝手なストーリーを作り、平均回帰を無視してある特殊な事象に意味づけをして成功確率が低い選択をしてしまうのが、人の思考です。

このような認知的な基本特性だけでなく、そもそも人が純粋に会社のためだけを考えていることは稀で、その深層には様々な動機が隠れています。この複雑な動機が、論理的・合理的な意思決定を難しくします。

ある人は、企業利益のためと説明しながら自己の利益を優先してしまいます。公平な判断を求めながら、誰かが損をする提案をすることもあるでしょう。冷静な話し合いと言いながら、感情的に誰かを排除あるいは許容しようとするシーンを見かけることも、珍しいことではありません。冷静に客観的になろうとしても、それぞれの価値観、生きる目的、強固な固定観念が、その場の意思決定に大きな影響を与えてしまうことは、誰しも起こりえることです。

やはりノーベル賞受賞の行動経済学者リチャード・セイラーは著書『行動経済学入門』(2009年)の中で、グループへの帰属意識が有力な選択を捨てるうえでの決定的要因になる、という事例が紹介されています。帰属意識や愛社精神が、逆に判断を誤らせることもあるのです。

人は単に合理的なだけではなく、公平性や倫理観も重視し、しかもそれらをトレードオフではなく、バランスを取りながら行動を決めています。そこに非合理な信念が介在することは珍しくないどころか、ほとんどのケースがそうなのではないでしょうか。

そんな非論理・非合理な思考に支配されている人々が置かれている心理状態は、さらに多様で複雑です。

数億円の発注を意思決定する会議の前日、プロジェクトを指揮する立場の部長は夜遊びの現場を妻に抑えられ、そこに同席する課長は子供が学校で起こした問題に頭を抱え、会議資料をまとめた担当者はデート中に別れを告げられたショックから立ち直っていないかもしれません。

そこに睡眠不足、自律神経の乱れ、空腹、疲れといったフィジカルな問題が加わり、人の集中力や思考に影響を与え、論理的・合理的な意思決定をより一層強固に阻みます。

このように一定のルールや法則には収まらず、不条理なまでの複雑さを抱えているのが人間です。そんな人間が意思決定している以上、いかに法人間の取引だと言っても、しっかり論理的・合理的な判断ができることの方がむしろ珍しいのではないでしょうか。

みんなの意見は案外正しくない

一人では非論理的・不合理的な判断をしてしまうというのは企業も分かっています。だから多くの企業には、決裁と呼ばれる複数の権限者による承認プロセスが存在します。

意思決定が多層構造で複数人で検討するというのは、BtoBの大きな特徴の一つです。BtoBの購買に関与する企業内のプレイヤーはDMU(Decision Making Unit)とも呼ばれています。

DMU

BtoBの最新営業方法をデータで解き明かした『隠れたキーマンを探せ!』(2018年)によると、企業の購買関与者約3,000人に対して行った調査では、平均5.4人が意思決定に関わっていることが分かったと記載されています。これらの人物が入れ替わり立ち替わり、数回にわたって慎重に協議しながら意思決定するわけですから、確かにBtoCのような情動に駆られた衝動買いはBtoBでは滅多に発生しません

しかし複数人で協議するからと言って、必ずしも論理的で合理的な判断ができているかというと、それはまた別問題でしょう。

口コミサイトや比較サイトのようなCGM(Consumer Generated Media)が発達し、Wikipediaの普及が始まった2000年代中盤、「集合知」「集団的知性」という言葉が注目を浴びたことがありました。

日本にも「寄らば文殊の知恵」という似たような慣用句がありますが、ようは、集団で協調して議論をすると、一人では成し得ない複雑な思考や高次元の問題解決が可能になるという考え方です。

この考え方自体は否定されるものではなく、むしろ実感することも多いです。チームに相談することで足りない知識が補完され、固定観念からも解き放たれ、その結果合理的な解が得られた、という経験は誰しもあることでしょう。

その一方で、「衆愚」という言葉も存在します。つまり、集団になることでより愚かになってしまう、ということです。多数決が天才を殺す、などという話もあります。「情報カスケード」と呼ばれる、集団の知恵が偏った多数派に集約され先鋭化する現象も起こります。カルト宗教による問題行動などは、その一例と言えるでしょう。

社会学や心理学に基づいて群衆の叡智を詳しく解説した『「みんなの意見」は案外正しい』(ジェームズ・スロウィッキー/2004年)では、複数人で協議することの数々のメリットが語られています。一方で本書を読むと、これらの合議がうまく機能するためには、以下のような条件を満たす必要があることも分かります。

  • 大胆なアイデアも後押しして積極的に受け入れるシステム
  • 根本が異なる多様なアイデアが多数生まれる環境
  • 似たもの同士の集団ではない
  • 集団のメンバーが自由に発言しやすい環境
  • 集団のメンバー同士が影響を与え過ぎず独立性を保つ
  • 情報を一人が掌握しているのではなく、多くの人に分散されている
  • 分散している情報が適切に集約されるシステム
  • 周囲の模倣をすることでメリットが生じない環境
  • 自己の利益ではなく集団の利益に貢献しようとする信頼と協力の姿勢

果たして、これだけのことが満たされた理想的な意思決定が、ビジネスの現場でどの程度存在するのでしょうか?こういう環境を整えることが難しい実状を踏まえると、複数人で合議したからといって簡単に合理的な正解には辿り着かないのでは、という疑問が沸き上がります。

繰り返しますが、私自身が集団の叡智をある一定信じており、自身の会社も、個人ではなくチームの力を信じて設計しています。一方で「複数人で協議するから論理的・合理的判断ができる」とまでは、安易には思えません。なぜなら、「複数人での協議」がうまく行くためには、多くの課題をクリアする必要があるからです。

合理的判断が不可能な商材特性

人はそもそも論理的・合理的な志向が苦手であり、それらが5.4人集まったところで、理想的な意思決定の条件が整うことは極めて稀、ということをここまで説明してきましたが、論理的・合理的な意思決定のさらなる障壁となるのが、BtoB商材のそもそもの複雑性です。

以下は、私が提案や講演などでよく用いているBtoCとBtoBの違いをざっくりとまとめた表です。

BtoCとBtoBの違い

このうち④~⑨は、BtoBにおける論理の重要性を示しています。BtoBは課題解決型商材であり、そのことを複数人で長期間念入りに協議するわけですから、時間が経っても気持ちが冷めても色褪せない、課題解決に繋がる論理的な説明は確かに不可欠に思えます。

しかしながら、同じくBtoBの大きな特徴である⑪~⑮が、論理的・合理的判断の妨げとなります。

BtoB商材は、高額なのに市場に流通している情報が少なく、「本当に良い」かどうかを事前に見極めることが困難です。判断基準は複雑で、「これがいい」という明快な答えが出しにくく、契約して数カ月、場合によっては数年たたないと、その選択が正解だったかどうかがわかりません。また多くの場合はスイッチングコストが高く、失敗が分かったとしても、解約や乗り換えは容易ではありません。

このようにBtoB商材は、失敗した時の経済的損失が非常に大きく、軌道修正が困難であるにも関わらず、いくら情報を集めても、その安全性を担保することが難しいのです。

だから、高額な意思決定をする時の企業は、大抵こんな気持ちになっているはずです。

BtoB企業の気持ち

このような企業内の心理状況にとって、最後の一押しとなるのが、信頼感、安心感といった「気分」です。このような「気分」の獲得を、企業は案外重視しています。

以下は、HubSpotが行った「営業担当者に自社を訪問してほしいと考える一番の理由」に関するアンケートです。

Hubspotの調査

上位の回答を見ると、「誠意」「安心感」「上司の納得」という、およそ合理的ではない理由が並んでいます。しかしこれこそがBtoBのリアルではないでしょうか。

BtoB界隈で有名な調査データとして、営業担当者と商談をする時点で意思決定の57%が終了している、というものがあります。情報環境が整備されている今の時代、対面営業に入る前に意思決定がかなり進んでいることを証明した調査結果です。

だから対面営業以前のマーケティングに注力すべきだ、という文脈で用いられることが多いこのデータですが、一方で私は、残り43%のことを思います。

企業は意思決定の最終段階における非論理的・非合理的・情緒的な判断をするために、営業担当者と会いたがっています。その情緒面を満足させる工程がないと、BtoBの購買プロセスはクローズしません。それが購買プロセスの最大43%も占めるだとしたら、「気持ち」のような情緒性を無視するわけにはいかないでしょう。

BtoBにおける購買の実態

このように考えていくと、よく言われる「BtoBは情緒購買ではなく論理購買である」「BtoBは経済合理性にもとづいて意思決定される」といった定説は、いささか極端な捉え方であるように思えます。

対する私自身は、BtoBの購買プロセスを以下のような概念図で捉えています。

BtoBの購買検討プロセス

一番左の「必須要件」は、金額や納期など、絶対に守らないといけない要件です。どんなに優れた商品でも、どんなに営業担当者が優秀で信頼できる人でも、財布にないお金は出せませんし、期限に間に合わないものを買うわけにはいきません。

この必須要件を満たすだけで選ばれる商材が存在します。それは他に選択肢がない商材、代替案がない商材です。こういう商材なら、必須要件さえ満たせば契約に至ります。

そうではない商材は、次のフェーズである「機能要件」に移行します。

BtoB商材は課題解決型商材です。それ故に、課題解決に影響する属性を、論理的に吟味するプロセスが加わります。これがBtoBの特徴とされる論理的・合理的な判断です。

圧倒的に性能がいい、圧倒的に実績がある、といったスペック上の優位性、強みがあれば、機能要件に関する論理的・合理的な判断でその商材は晴れて選ばれるでしょう。しかしながら、この「圧倒的な優位性」を作るのは、簡単なことではありません。

専門性が高いBtoB商材は評価項目が多く、選定基準も複雑で、顧客自身では優劣が判断しにくいことも多いです。色々と検討した結果、一長一短でどれがいいか分からない、となりがちです。そもそも、顧客に明確な強みを伝えること自体に難しさがあります。

成熟市場や成熟カテゴリでは機能の差が出にくく、どの商材を選んでも課題解決の上で大して変わらないこともあります。そうすると価格競争に陥ります。また、SaaSのようなIT商材は、頻繁に更新が行われるため、優位性を長期間謳うことのが難しく、論理的に優劣を判断するのが難しい状況になりがちです。

このように、必須要件を満たしながら機能要件の論理的・合理的検討では決定打にならないとき、購買プロセスは「情緒要件」の検討に移行します。

情緒要件を構成するのは、信頼感や安心感といった企業や商材のイメージです。価格も納期も機能も大きな差がないのなら、有名な企業、馴染みがある企業、上場している企業に発注しよう、と判断するのは自然な発想です。

ここでは、営業担当者の印象も重視されます。担当者の真面目さ、熱意、仕事に取り組む姿勢、誠実さ、親しみやすさ、分かりやすさ。営業担当者の人となりは、時に顧客獲得における最重要成功要因になりえます。

興味深いのが、こうした情緒的な判断を、意思決定の当事者たちは「合理的な判断」と認識して行っていることです。

冷静に考えれば、営業担当者の熱心さは、その製品やサービスの品質とは関係ないはずですが、そこに何かの因果があると判断し、集団で合議しているにも関わらず、曖昧な理由を満場一致で支持し、意思決定を後押しします。

実は市場の多くを占めているのは、課題解決の可能性や経済合理性ではなく、情緒的印象を決め手として意思決定する企業なのでは、と思うことさえあります。

情緒購買のためのBtoBマーケティング

BtoBでも情緒的な印象を重視されるといっても、見た目が好みだから買おう、ロゴやwebサイトがカッコいいから発注しよう、とはなりません。

BtoBで重要視される情緒性とは、信頼感や安心感といった類のものです。この信頼感や安心感を抱かれる可能性を高めることが、BtoBにおける情緒的判断の対応策になりえます。

このような考えを踏まえて、BtoBにおける情緒的判断を助ける施策を、以下にいくつかピックアップしてみました。

マス広告・屋外広告

テレビCMや電車内の動画広告、タクシー広告など、BtoBでも不特定多数に大量にリーチできる広告を見かける機会がここ数年増えましたが、このような広告における大きな期待は、①ブランド認知と②単純接触効果(ザイオンス効果)です。

①ブランド認知は、「今必要な人」への直接的な働きかけと、「これから必要な人」には記憶からの第一想起を期待します。

②単純接触効果は、接触回数の増加による好意形成を促すもので、意思決定のショートカットや最終段階での競合優位性構築を狙います。これが、BtoBにおける情緒的判断に一定の影響を与えるのではないでしょうか。

BtoBの特徴である複数人での意思決定では、リスク排除に判断が偏る傾向があります。そこでは、合理的・論理的には辻褄が合わないけど、感覚的・情緒的にリスクが少なそうな印象を持たれているブランドが有利になります。大規模な広告を打てるほど事業として成功している事実もまた、情緒的判断に好影響を与えるでしょう。

プライシング

行動経済学系の書籍を読んでても、人間は数字に弱く、簡単に非論理的・非合理的な判断をしてしまうことが分かりますが、サブスクリプションモデルのSaaSのプライシングにも、このカラクリが見受けられます。

初期費用1000万円と言われるより、1人月額500円といわれた方が、買う側は受け入れやすくなります。長い目で見ると後者の方が損をする設定になっていても、多くの企業が一気に1,000万円を支払うことより、1人あたり月額500円で支払うことを選択します。(もちろんこれは情緒的判断ではなく、会計上の合理的判断ということもありますが)

また、SaaSでは以下のようなプランもよく見かけますが、ここにも行動経済学の知恵が生きています。

  • Professional Plan=月額25万円
  • Standard Plan=月額15万円
  • Basic Plan=月額5万円

このようなメニュー設計にすると、例えば本当はBasic Planで十分なのに、1番高いProfessionalプランに引っ張られて、「○○の機能を使うかもしれない」「もしもの時のためにより安全にしておきたい」などといった曖昧な理由で、Standard Planを選択することが起こりやすくなります。

このような人の非合理性・非論理性に働きかけるプライシング戦略は、BtoBでも一定の効果があると思われます。(もちろん、顧客の便益を無視した露骨なやり方は、中長期的にブランドを毀損するのでオススメはしませんが…)

イベントやメディアへの露出

大規模かつ有名な展示会のキーノートへの登壇や、メディアの取材を受けて露出することもまた、企業の情緒的判断を後押しするでしょう。

東京ビッグサイトや幕張メッセで行われる大規模イベントのキーノートとして登場した、Salesforce.comやGoogle、Adobeが開催するイベントのスピーカーとなって登壇していた、というのは、ある一定の信頼感や安心感に繋がると考えられます。

実態としては出演枠が有料であることも珍しくありませんが、見る側にはそれが分からないようになっています。そのイベントで話した内容に納得感・説得力があった場合、その企業ブランドに対する情緒的イメージは、当然より良いものになるでしょう。

メディア露出も同様で、日経等のブランド力のあるメディアに取り上げられた実績は、業界内における一定の地位・評価があると、多くの人は判断します。

実際、イベントやメディアに登場することが、そのブランドの機能的な便益や導入後のROIを保証することはありません。しかしながら、そもそも情報が少なく専門的で明確な判断基準が見つけにくいBtoBにおいては、サービス品質と因果関係がないこのような情報もまた、信頼の証明要素として扱われる可能性があります。

企業規模

企業の購買に関わる方の話を聞くと、発注先の企業規模を気にする方は一定数存在します。大企業の多くは与信管理をしており、規模が小さすぎる企業とはそもそも契約できないようになっていますが、その与信を通過してもなお、企業規模はある一定重視されます。それは以下のように、企業規模の大きさが安心感に分かりやすく繋がるからです。

  • 大きな会社だと最低限の品質は担保されているはずだ
  • 欠員が出てもすぐ補充されるはずだ
  • 万が一トラブルが起きても、なんとかなる体制だろう
  • 良いサービスだから事業が大きくなったのだろう
  • 名前が知れている企業なら無茶なことはしないだろう

企業規模もまた、実際にはサービスの品質は連動していないことも多いのですが、規模と品質に因果関係を見出し、信じたいように信じてしまいがちです。

中でも、ある一定以上の経済的規模と社会的評価を兼ね備えた「上場企業」という属性は、規模にまつわる究極の信頼要素といえるでしょう。そこまで行かなくても、10名以下の企業と、100名を超える企業との比較になった時、後者の方が有利に働くことは簡単に想像できます。

規模だけが決定的な要因になることは少ないでしょうが、規模の面で有利な条件を有しているのであれば、それはきちんと伝えておくことに越したことはありません。

オウンドメディア

BtoBマーケティングのマーケティング施策として、オウンドメディアはもはや珍しくありません。安定的なリード獲得を狙ってSEOを重視した運用をしているケースも多いですが、オウンドメディアを上手に使えば、情緒購買において有利な立場を築くこともできます。そのために必要なのが、「エモーショナルなBtoBコンテンツ」です。

BtoBは論理購買であるという先入観に囚われていると、BtoBのコンテンツは理路整然と説明したようなものであるべき、と思うかもしれません。

しかし、単に理路整然としているだけでは、情緒的判断にはあまり貢献しないでしょう。いくら論理的・合理的に説明しても、「そんなの分かってる」「予想通り」という感想しか持てないコンテンツでは、印象にも記憶にも残りません。

情緒的判断に影響を与えるためには、読み手に刺激を与える必要があります。それは、固定観念を破壊し、望ましい視点や知識を提案することです。そのためには、ターゲットとする顧客の固定観念(マインドセット)を知ることが重要になります。

疑う余地もない固定観念を破壊されたときに、人は大きな刺激を受けます。新しい視点を提示され、そのことに納得すれば、おそらくはその執筆者や所属企業に関心を抱くでしょう。これらの刺激的な体験が記憶として残り、情緒的判断に作用します。

このような衝撃は、製品やサービスを直接的に紹介したコンテンツでなくても可能です。そこで生まれた好意的印象がハロー効果を生み出し、改めて商材を検討する時、性能や品質との因果関係を脳内に作り出し、情緒的判断に影響を与えます。

ただPVやCVを追いかけ、SEOと相性がいい記事を機械的に量産しているだけでは、このような効果は得られません。「そんなことは思ってもいなかった」「そんな考えがあるなんて知らなかった」「今までの自分の考えが間違っていた」「すごい、あなたの話をもっと聞きたい」といった感想を引き出せるかが、もっとも重要なのです。

SNS

かつてはSNSはBtoBに向かないと言われていましたが、近年はSNSを上手に使い成果を出しているBtoB企業もちらほら出てくるようになりました。

BtoBのSNS運用は、社長や社員といった個人アカウントの方が圧倒的に有利ですが、これは、BtoBでは人のブランドが企業ブランドに繋がりやすいからです。

BtoBはタッチポイントが少なく、街中で見かけたり、すぐ体験できる店舗があったり、日常生活の中で会話に出たりすることは稀です。それ故、SNS上で見かける人のイメージでさえ、その会社の好意的なイメージに影響を与えます。

また、SNSでコンテンツで拡散されると、それに比例してDirectでのトラフィックが増大する傾向にありますが、これはSNSでの拡散が、企業内のソーシャルネットワーク(ダークソーシャル)にまで飛び火することを示唆しています。

良質なコンテンツをSNSを経由してダークソーシャル上に送り込んでいると、やがて単純接触効果(ザイオンス効果)が生まれ、企業内の情緒的な意思決定に大きな影響を与えると考えられます。

ソーシャルを使ったブランディング

実際に私たちの会社でも、SNSやブログに継続的に接触したことから、「ベイジさん一択です」とアプローチしてくれる企業が一定数います。これはBtoBにおける衝動買いに近いものだと思いますが、このような現象が、SNSを駆使すれば起こりえるのです。

ソートリーダーシップ

ソートリーダーシップとは、直訳すれば「思想の先導」です。ある特定の分野や業界を先導するような、リーダー的な地位を築くことです。これは単にシェアNo.1になることではありません。新しい技術や思想を提示し、自らの利益/不利益に関係なく、業界に貢献する行動を続けることで築かれるものです。

例えばSalesforce.comが『The Model』を提唱したり、HubSpotがインバウンドマーケティングを啓蒙したり、Googleが働き方に関する情報発信(Google re:Work)をしたりする行為は、直接的に自社製品に誘導するような論理展開はしていません。しかしこのような業界に貢献する情報発信、ノウハウの提供が、彼らに対する絶対的な信頼を構築していきます。

日本企業では、「働き方改革」を推進する企業の急先鋒となっているサイボウズもまた、ソートリーダーシップの上手なBtoB企業と言えます。最近放送されているテレビCMでは、テレワーク以外に自社製品の説明は一切登場しませんが、強力に社会を啓蒙し続けるその姿勢は、まさにソートリーダーシップです。

ソートリーダーとしての地位が確立すると、例え売上や顧客数でNo.1でなくとも、「業界リーダーとしての印象」が、人々の頭の中で形成されます。これがハロー効果による意思決定のショートカットを起こし、BtoBにおける情緒的判断を後押しします。

ソートリーダーシップにおいて大事なのは、業界や社会に貢献する姿勢です。直接的な自社の利益ではなく、競合も含めた業界や社会の健全化のための活動こそがソートリーダーシップです。企業の情緒的判断を促すには、このような利他的な活動も、マーケティングの中にある一定組み込んでおくとよいでしょう。

まとめ

ここまで、BtoBの購買は案外論理的・合理的ではなく、情緒的・非合理的な判断も多分に含まれる、という話をしてきました。といいつつ、一部のBtoC商材のような情動にかられた衝動買いがBtoBで起こるわけでもありません。

そんなBtoBの購買特性を一言で言い表すとしたら、「リスク回避購買」といえるのではないでしょうか。

BtoBの購買における最大の関心事は「失敗しないこと」です。例えば、新規顧客が増えることに繋がる様なソリューションでさえ、顧客が増えるワクワク感より、間違って選んでしまうことによる不安感が先立ちます。この不安をできるだけ消し去るため、まずは論理的に判断できる情報を収集し、それでも判断が付かない領域を情緒的に判断します。

BtoBマーケティングは、顧客企業におけるこのようなリスク回避購買に対応するため、論理性と情緒性を混在させて設計されなければなりません。真っ先に目に留まるメッセージは分かりやすく論理武装しつつ、その一方で情緒的判断を促す後輪もしっかり回していく、以下のようなイメージです。

BtoBマーケティングの構造

一般的によく言われているような、「BtoB=論理的・合理的」という言説を盲目的に受け入れるのではなく、例えBtoBであっても、論理と情緒の両輪を回していくようにしてマーケティング全体を設計していく必要があるのだと、私は考えています。

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