社内ミーティングをVR空間に移行できないか検証してみた

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代表/マーケター/デザイナー/ブロガー枌谷力

リモートワーカーが大半を占めるわが社で、「社内ミーティングをVR空間に移行できないか?」という意見が出ました。

「全社員30人にVRゴーグルを配布しても面白いかな」と一瞬思いましたが、「全然使わなかった」となると勿体ないので、検証する場を設けました。そのレポートです。

Horizon Workroomsとは

検証にあたって、Meta社(旧Facebook)が販売しているVRゴーグル『Oculus Quest 2』で無償利用できるビジネス会議用アプリ『Horizon Workrooms』を使いました。

 

Horizon Workroomsでは、VR空間上でこんなことができます。

  • 自分のコンピューターを持ち込んで投影できる
  • 自分のキーボードをスキャンしてVR内で使用する
  • ルーム内のホワイトボードを使って、コラボレーションできる
  • 画面やメモ、ファイルをVR内でシェアできる
  • バーチャルルームのレイアウトやテーマを変えられる
  • 専用のコントローラーを使ってVR内で絵や文字が書ける
  • 自分のアバターを作ることができる
  • 一緒にゲームをしたり映像を見たりしながら話せる
  • Oculus Quest 2がなくても、PCやスマホから参加できる

最初はOculus Quest 2を購入しようと考えていましたが、レンタルサービスがあることを知り、これを利用してみました。

ドコモのデバイスレンタルサービスkikito - Meta Quest (Oculus Quest) 2 一体型VRヘッドセット

Oculus Quest2

購入するとゴーグルだけで1台につき3〜5万円しますが、こちらの短期レンタルであれば2泊3日で1台につき3,980円で、かなりお得です。本格的に導入するか定かではないという方は、まずはレンタルで試してみるといいでしょう。

また検証にあたっては、初期設定をお互いサポートできるようにするため、私を含めて4人でオフィスに集まりました。

検証の様子

初期設定

結論からいうと、開始までの初期設定のハードルが結構高いです。参加した4人全員がHorizon Workroomsを開始するのに1時間くらいかかりました。

ゼロからHorizon Workroomsを開始するまでのステップは結構あって

  1. スマホにOculusアプリをインストールする
  2. FacebookアカウントでOculusにログインする
  3. Oculus Quest 2をスマホとペアリングする
  4. アバターやコントローラーを設定する
  5. Oculus Quest 2上でHorizon Workroomsアプリをインストールする
  6. PCでWorkroomsにアクセスしてアカウントを作成する
  7. Workroomsで部屋を新規作成してメンバーを招待する
  8. 招待をうけたメンバーがピンコードを入力する
  9. Workroomsで会議開始

という感じです。整理して書くとシンプルですが、随所で「あれ?これどうするの?」と戸惑うポイントがあり、全社員で一斉に導入しようとするとまずこの初期設定でつまずくこと間違いなしです。

今回は全員同じ場所にいたのでお互いでサポートできましたが、リモート環境で各自が自宅にいながら初期設定を終えるのはなかなか厳しい気がします。本当に全社導入するなら、何チームかに分かれて、チームごとにオフィスに集まって一緒に設定するのがいいかもしれません。

良かった点

こうして苦労して接続した全員の第一声は「うおー!」でした。とにかく驚くし、感激するし、感動します。色々と操作しながら全員のテンションは明らかに上がってて、「今この瞬間未来の働き方を体験してる!」という力強い実感を得られます。

Workroomsの様子

この感激だけで「やってよかった!」という気持ちになったのですが、社員からは他に、以下のようなポジティブな評価があがってきました。

  • 参加者同士がすぐ近くにいる感じがする。同じオフィスで距離を取って検証したけど、物理空間の距離感ではなく、VR内の距離感で隣の人を感じた。
  • Zoom等のオンライン会議より会話しやすい。オンライン会議での会話特有の変な間が生まれない。雑談もしやすい。
  • 顔の向きに合わせた音の方向とボリュームの変化が絶妙で、音質もよく、これが臨場感の高さに繋がっている。(ちなみに骨伝導)
  • アバターには表情の起伏がないが、ユーモラスなデザインであるため、話しかけやすく感じる。いつもは表情が硬い人でも柔和な雰囲気が出せる。
  • 普段できない格好がアバターでできて、それがコミュニケーションに繋がる。
  • オフィスが綺麗。未来都市や自然が見える風景などのテーマを変えることができる。どれも「こんなオフィスで働けたらいいな」という魅力的なデザイン。
  • 自分のPCの画面をVR内に映すことができるが、これが結構鮮明。VR内のホワイトボードに自分のデスクトップが映し出された時には感動。
  • 付属コントローラーは最初戸惑うものの、慣れると自然に利用できる。
  • 手元に自分のキーボードとマウスを映し出す機能もあり、簡単な作業ならVR上でもできる。(ブランドタッチ完璧な人なら問題ない)
  • VR内のインターフェースはシンプルで、触るだけでなんとなく操作はわかる。
  • メガネはかけながらでも大丈夫。

気になった点

とはいえ、気になった点も当然ながらありました。主に以下のようなネガティブな意見が出てきました。

  • ヘッドセットの重量が503グラムほどあって、1時間くらいではあまり気にならないが、1.5時間くらい経つと重く感じる。(一部の発言)
  • 1時間以上使ってると酔ってくる。(一部の発言)
  • 近距離でずっとスクリーンを見ている状態なので目が疲れやすい。眼精疲労になりやすい人は特に。
  • VR上にキーボードを投影できるとはいえ、使い勝手はさすがにリアルに劣り、VR上で何かを作るのは厳しそう。
  • キーボードが投影できるのはLogitechやAppleのMagic Keyboardなど限定されてて、多くの人は自分の画面を映すだけしかできない。
  • なので多くの人は会話をしながらメモを取ったりができない。
  • Workroomsに参加できるのは16名に限定されているので、全社員でミーティングはできない。
  • 可動域の設定があり、場所を変えて使おうとするとまた可動域を設定する必要があって、すぐに使えない。
  • 可動域の設定があるため、椅子に座ってることしかできず、空間を自由に歩くような感覚はない。(テーブルからホワイトボードに移動するのも、歩いてはいけなくて、移動ボタンを押さないとできない)
  • しばらく使ってると読み込みが重くなってきた。(回線の問題?)
  • アプリやデバイスが不安定なのか、よく落ちるメンバーがいた。(回線の問題?)
  • 現実世界に戻ると、現実空間なのかVRなのかわからないような錯覚が5分ほど続いた。
  • 専用コントローラー以外に指でも操作ができるのだが、この操作に馴染めなかった。
  • 頭に押さえつけるように被るので髪の毛がぼさぼさになる。
  • ヘッドセットを顔に押し付けるので、化粧も崩れやすい。
  • 手元の飲み物を気軽に取れない。

結論

結論、全社的な導入は見送りになりました。

理由としてまず、初期設定の難易度の高さがあります。初期設定は初回だけですが、基本的に使い始めるのにヘッドセットを付ける、アプリにアクセスするなど、数段階の手間があり、ZoomやmeetでURLをクリックして参加するほどの手軽さがありません。

また、短時間だと問題なさそうですが、酔う、目が疲れる、重くて肩が凝るなどの、肉体的な疲労を訴える人も一部にいて、人数が多くなるとこれは無視できないように思いました。全社的にこれを強制導入すると、おそらく40~50代以上には非常に疲れやすい環境になってしまうでしょう。

また、META社は「生産性が上がる」と謡ってますが、正直、通常業務は当然ながら、会議の生産性自体も、Zoomなどのオンライン会議に劣ると感じました。

会話そのもののスムーズさは確かにWorkroomsの方が優れていますが、その他の全てが劣ってるように思えます。キーボードの問題、コントローラーの問題、飲み物が飲めないなども含めて、ユーザー体験を総合的に見た時に「現実世界+オンライン会議システム」に劣っているように思いました。

VR上のホワイトボードにPCの画面が映せるのも、同じ空間を共有してる感は出ますが、画面の見やすさはZoomの画面共有の方が優れていて、使い勝手としてはオンラインの良さがなくなり、退化している気がします。

インターネット初期に、オンラインショッピングを3Dにして現実世界の買い物体験を再現しようとして、結果的にオンラインの良さを失って買い物がしにくくなる、という例もありましたが、この手の「デジタルで現実世界を無理に再現しようとして失敗する」という過ちが、ここでも繰り返されてるように感じます。

また髪型や化粧が崩れるのも地味にマイナスです。オフィスとリモートが混在するハイブリッドワークなどでは、オフィスワーカーは身だしなみを整えている可能性が高いわけで、それなのに髪や化粧をぐしゃぐしゃにされるのは、人によってはなかなかの嫌体験ではないかと思います。

まったく使い道がないわけではなく、全員が自宅にいる完全フルリモートで、1on1のように雑談を含む会話をするのには、オンライン会議システムよりも向いているでしょう。社内イベントなどの福利厚生として限定的に使うのは喜ばれるかもしれません。

ただ、社内ミーティングをすべてVR上に移行するには、まだまだ無理があるように思います。最初は感動しますが、使い慣れると感動は薄れて、使い勝手の問題の方が気になりそうです。エンタメとしてはいいですが、仕事で使うのはまだ先な気がしました。

個人的には、以下のように進化すれば再度検討してもいいかな、とは思っています。

  • 超小型化。水泳用の眼鏡みたいなサイズやデザインにまで進化したら、重さや髪型などの問題が一気に消える。
  • 簡単起動。例えば眼鏡の側面にボタンがあって、それを押すとチャンネルを変えるようにしてアプリを選択できるようになるとか。
  • 目に優しいスクリーン。長時間掛けても疲れない画面加工。
  • BMI(Brain-machine Interface)化。現実世界で手を動かしてVR空間の物体を動かすのは色々無理がある気がして、脳波で操作できるようになるのが理想。ちなみにBMIは2030年代には実用化するそうなので、10~20年後にはVRでアバターで仕事する時代になるのかも。

最終的には全社導入になりませんでしたが、こうした新しい技術を使った新しい働き方の模索は、これからも時々やっていきたいと思います。

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