サイトリニューアル徹底解説~計10万字超のコンテンツで自社の強みを打ち出したトライバルメディアハウスの事例

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ライター林崎優吾

ソーシャル時代に企業と生活者間のコミュニケーションをアップデートするマーケティング支援会社、トライバルメディアハウスのコーポレートサイトをベイジがリニューアルしました。

トライバルメディアハウスが自社のアイデンティティを見直す取り組みの一環として始まったこのプロジェクト。ベイジも事業構造や市場でのポジショニングなどを整理するところから深く関わっています。

得られた成果(after)
リニューアル後3か月のCVが前年比1.3倍に
顧客からの問い合わせ内容が具体的に
セールスにおける商談内容の効率化・均一化

トライバルメディアハウスが抱えていた課題(before)

社員が自社の特徴を端的に説明できていない
コーポレートサイトの内容が抽象的で伝わりにくい
ノウハウなどの情報発信が各所に散らばっている

ベイジが行ったこと
会社の特徴と事業構造を整理してサイトに反映
ノウハウと知見を集約して顧客目線でコンテンツ化
さらなる事業拡大や情報発信に耐えうる構造に

新たなコーポレートサイトは、業界別・手法別のノウハウなど網羅的なコンテンツが特徴です。そうしたコンテンツを制作した背景には、トライバルメディアハウスと他のマーケティング支援会社との市場におけるポジショニングの違いがあります。

本記事の前半では、このようなサイトリニューアルの戦略と制作過程について解説します。そして後半では、トライバルメディアハウス経営企画室マーケティングチーム(取材当時)の亀井大樹さんへのインタビューを通して、リニューアルの成果、制作過程から得た学び、発注側としてやっておくべきだと考えていることなどについてお届けします。

※リニューアルの成果について詳しく知りたい方はインタビューからお読みください

リニューアルの背景

トライバルメディアハウスは、ソーシャルメディアに関する豊富な知見をベースに、企業のコミュニケーション戦略および施策を支援している会社です。以前からソーシャルメディアマーケティングの先駆者として、業界内では一定の認知と競争優位性を確保していました。

しかし、ソーシャルメディアの支援会社が急激に増えつつある中で、「トライバルメディアハウスとは何者なのか?」の認識が社内で曖昧になっていきます。その結果、広報や営業などのシーンで自社の特徴を端的に説明できないシーンが増えてきました。

また過去(2019年)にリニューアルしたコーポレートサイトはビジュアル面で非常に満足していたものの、コンテンツの内容が抽象的で、見込み顧客に対してもトライバルメディアハウスの特徴が伝わっていないのではないか、という懸念がありました。

こうした背景からトライバルメディアハウスでは、自社のアイデンティティを見直す取り組みの一環として、コーポレートサイトをもう一度リニューアルすることになりました。

そのためベイジは度重なるディスカッションによって、市場や顧客に対する認識、事業の方針や構造などを整理。トライバルメディアハウスの特徴と目指すべき方向性をハッキリさせてから、ウェブサイトの情報設計やコンテンツに落とし込んでいきました。

市場でのポジショニングを明確にする

ベイジのウェブサイト制作における戦略フェーズでは、事業計画、市場、顧客、商材、競合、ブランド、流入経路などについて議論と整理を重ねていきます。その中で今回のリニューアルにおける肝となったのが、市場の定義でした。

一般的にソーシャルメディアマーケティング支援というと、SNS上で企業公式アカウントをどのように運用するか、どうやってSNS上でバズらせるか、といった話になりがちです。しかしトライバルメディアハウスの考え方は、そうしたソーシャルメディアの支援会社とは異なります。

マーケティングにおいてソーシャルメディアをどう活用するか検討するのではなく、消費者の生活にソーシャルメディアが当たり前にある前提でマーケティング戦略を立てる必要がある、という考えが根本にあるのです。(この考え方はリニューアルサイトのホームに掲載したメッセージでも伝えています)

実際に付き合いの長い顧客からも、ソーシャルメディアやソーシャルメディアユーザーの性質がわかっているからこそ、SNSとマス広告を連動させた施策マーケティング戦略全般の提案ができることが評価されていました。

それを踏まえてベイジは、トライバルメディアハウスのターゲット市場を以下の図で整理しています。

総合/統合マーケティング支援ソーシャルメディアマーケティング支援の市場は重なっていて、その重なった部分こそトライバルメディアハウスが重点的に狙う市場だという考え方です。別の見方をすれば、ソーシャルメディアの専門家でありマーケティングの専門家でもある、といった認知を獲得していくべきとも言えます。

そしてこの市場に属するすべての企業を対象とはせず、内容が戦略に寄っていて予算が高額な企業(案件)を理想的なターゲット、内容が施策に寄っている企業(案件)を現実的なターゲットとして設定しました。

市場におけるポジショニングが明確になったことで、この後の「どんな顧客に対して/どの事業を/どのように見せていくか」についての議論がスムーズに進んでいきます。

網羅的なコンテンツで独自性を伝える

先ほどの市場におけるポジショニングを前提に、顧客と商材について議論・整理した結果から、トライバルハウスのKBFUSP(※)として整理したのが以下の図です。

※KBF(Key Buying Factor):重要購買決定要因
※USP(Unique Selling Proposition):自社が提供できる独自の強み

KBFとUSPのかけ合わせによって「1.戦略提案力、2.スペシャリスト、3.実績、4.安心の体制」という4つの訴求テーマでコーポレートサイトのコンテンツを用意していくことが決まりました。この中で「2.スペシャリスト、3.実績、4.安心の体制」のコンテンツを用意するのは、それほど難しくありません。(実績プロフェッショナル紹介など)

問題なのは「1.戦略提案力」です。どんなコンテンツなら、トライバルメディアハウスの独自性が顧客の価値として伝わるのでしょうか。

ベイジでは調査の一環として見込み顧客へのインタビュー動画を共有いただいていて、そこでは「戦略から提案してくれる支援会社と聞いたら、どう感じますか?」という質問がされていました。相手から返ってきたのは「良いなとは思うけど、それだけでは何をやってくれるのかわからない」といった答えです。つまり「戦略から提案できます」というコピーだけ書いても、あまり意味がないと考えられます。

そこでベイジが戦略提案力を伝えるために出した結論が、業界と手法別の知見を網羅的に分厚くコンテンツとして掲載するという方法です。

顧客企業にとっての提案力とは、すなわち「自社の業界ならではの事情を踏まえて考えてくれているか」「現場のリアルな課題を理解してくれているか」といったことでもあります。たとえばお菓子業界ならコンビニやスーパーの店頭で目立つ棚に置かれているかによる影響が非常に大きく、そうした前提を踏まえていない施策を提案されても、顧客は魅力的に感じにくいでしょう。

しかし多くのマーケティング支援会社において、そうした業界事情や現場の課題を理解した提案ができるかどうかは、担当者の能力による部分が大きいです。担当者に依らず会社として豊富な知見を持っていることを見せられている企業は、ほとんどありません。

つまり、ウェブサイト上で業界と手法別の知見を整理して見せられること自体が、トライバルメディアハウスの独自性だと言えます。顧客にとっては、会社として一定の知見を持っている(≒誰が担当しても一定の成果を出してくれそうだ)とわかることで、「ちゃんと自分たちの事情を理解した担当者がアサインされるのか」という不安を軽減できることが価値になります。

そうした考えをもとに、リニューアル後のサイトでは「得意分野」というカテゴリで計23ページのコンテンツを用意しました。各ページで、業界・手法別の特性、調査データ、よくある課題、問題を解決するためのアイディア、トライバルメディアハウスにできること、などを記載しています。

また、4つの訴求テーマ(1.戦略提案力、2.スペシャリスト、3.実績、4.安心の体制)は、「私たちの特長」という1ページにもまとめられていて、トライバルメディアハウスが何者なのか?はここを見るだけでも伝わるようになっています。

このようなコンテンツによってトライバルメディアハウスの強みが顧客に伝わったのか、実際にリニューアル後は「施策だけでなく戦略コンサルの問い合わせが増えた」「問い合わせの内容が以前よりも具体的になった」などの変化が起きました。

ビジュアルで個性と機能性を両立させる

ウェブサイトの構造と各コンテンツの内容が決まったら、ビジュアルデザインが始まります。コーポレートサイトのビジュアルも、プロジェクトの前提である自社のアイデンティティの再整理に深く関わるため、何度も議論を重ねながら制作を進めていきました。

トライバルメディアハウスは、働く個人にフォーカスすると非常に個性的で遊び心にあふれる会社です。ベイジがプロジェクト中に実施したワークショップで現場の社員の方々と接した際にも、そのような印象を強く抱きました。企業ロゴも多様な色や図形が用いられていて、そうした個性的なイメージに近いデザインになっています。

一方で、企業として社外のステークホルダーに感じてほしいのは「知的で頼りになる専門家」のイメージです。また大量に掲載するコンテンツへの導線設計や、今後のページ追加を見据えた拡張性など、機能面も考慮する必要があります。

こうした相反する要素を今回のリニューアルサイトでは両立させました。具体的には、モノクロでシンプルに整理されたUIをベースにしつつ、カテゴリごとに1色ずつ異なるキーカラーを入れることで、トライバルメディアハウスの個性でもある支援方法や知見の多様さを表現しています。

サイトのメインビジュアルは「開拓する。マーケティングの地平と、人と社会が心待ちにしていた喜びを。」というパーパスと、コーポレートスローガンの「トライバルは、こっちだ。」から着想を得て制作を進めました。

最初にいくつかラフなイメージを持ち寄って大まかなモチーフと方向性を定め、そこから複数回に渡って議論とブラッシュアップを重ねています。どうしてもビジュアルデザインは感覚で判断されやすい領域です。もちろんベイジでも最終的には感覚に任せる部分はありますが、できる限り言語化して議論しながら制作を進めています。

その結果として、自社のアイデンティティの再整理するという目的があった中でも、完成したビジュアルに対して強く納得していただくことができました。

メインビジュアル制作過程の案

インタビュー「サイトリニューアルで成果を出すためにやるべきこと」

約8か月の制作期間をかけて、綿密に議論を重ねながら進んでいったリニューアルプロジェクト。クライアント側の窓口として対応いただいたのは、トライバルメディアハウス経営企画室マーケティングチーム(取材当時)の亀井大樹さんです。

亀井さんにプロジェクトを振り返ってもらいながら、リニューアル後の成果や、制作過程から得た学び、発注側として考えていたことなどについて話していただきました。

リニューアルによる複数の観点での成果

ーこのインタビューの時点ではリニューアルから半年ほど経ちますが、公開後にはどのような変化がありましたか?

まずわかりやすい変化としては、リニューアル後の3か月でコンバージョンの数が前年比1.3倍になりました。流入数が急に増えるわけではないので、今回のリニューアルによる影響があったのかなと感じています。

ウェブサイトに「こんなことができます」と書いたことで、過去に問い合わせがなかった分野やサービスに関する相談も来たりしてますね。あと以前はSNSの施策や運用に関する相談が多かったんですが、戦略提案に関する訴求を分厚くしたからか、コンサル系の問い合わせが増えています。

ーリードの「質」という観点では、いかがですか?

問い合わせ内容が具体的になったのが大きいです。これまでは「SNSの運用について相談したいです」みたいなザックリした内容だったのが、得意分野やサービスのページを読んだうえで「こういうことがしたいんです」と長くしっかりフォームに記入してもらえることが増えました。

ある程度はトライバルメディアハウスについて理解してもらった状態でスタートできるようになったので、自己紹介を簡略化できたのではないかと感じています。たとえば以前は商談のうち長い時間をかけて、私たち自身のことや私たちの強みについて理解いただいていたところが、事前にサイトを見ておいてもらえば説明の必要がなくなって、そのぶん他の議論に集中できるという感じです。

ーコミュニケーションコストの削減によって、セールスが効率化されているということですね。他にセールスへの影響はありそうですか?

効率化だけでなく「均一化」の効果もあると感じています。「営業によって言っていることが違う」みたいなのが減るということですね。トライバルメディアハウスの強みや特徴がコーポレートサイトにまとまったことで、社内での共通認識を持ちやすくなりました。

それによって、たとえば入社1年目の新人営業でも入社3年目の慣れた営業と同じようなトークをしやすくなったのではないかと思います。実際リニューアル後に社内から「コーポレートサイトの内容を見て勉強になった」といった声が届いたこともありました。

ーそのほかにリニューアルの成果として感じられたことはありますか?

採用に関して、直接応募とカジュアル面談が増えたという話を聞いています。リニューアルしたサイトを見て、「こんな仕事ができるならやりたい」と感じてくれる人が増えたのかもしれないですね。

あとは直接的な成果というより、サイトの制作プロセスそのものに価値があったと感じています。第三者であるベイジさんに対して我々の思いや考えをぶつけて、それを客観的な視点で整理してもらえたからこそ、自社のアイデンティティを明確にすることができたのかなと。

誰かと話している中で「自分はこれが言いたかったのか」と気づくことってよくあると思うんですけど、それを当社側の参加者みんなが感じていたんじゃないですかね。プロジェクト中に実施していただいたワークショップでも、そうした社内の共通言語みたいなものが、たくさん出てきたなという印象があります。

ウェブサイトの発注側がやっておいたほうがよいこと

ーサイトをリニューアルするにあたって、どんなことを意識されてましたか?

まずサイトを作り始める前に、リニューアルの目的を明確にすることですね。いろんなマーケティング活動がある中で、コーポレートサイトが果たすべき役割と立ち位置をハッキリさせる。そうしないと結局ウェブサイトのコンテンツで伝えるべきことをちゃんと考えられないじゃないですか。今回はそれを最初に議論して決めていくことができたのが、前回のリニューアルとの差だと感じています。

ー今回のリニューアルを経験して気がついたことはありますか?

ウェブサイトのコンテンツは多いに越したことはないなと思いました。「これは載せなくてもいいんじゃない?」という判断って実は不要で、少しでも「伝えておいたほうがいいかも」と思ったことは全部コンテンツとして載せたほうがいいんだなと。

ただ今回のサイトみたいに、たくさんコンテンツを用意するなら絶対にライターさんがいたほうがいいですね。自分たちだけだったら作りきれませんでした。あとは闇雲に大量のコンテンツを載せればいいというわけでもなくて、どうやって必要な情報に辿り着いてもらうのか、という導線設計も重要だと思います。

ープロジェクトを進める中で「こうしておけば良かった」と感じたことはありますか?

当社側でプロジェクトの関係者を増やしすぎたのは、少し失敗だったなと感じています。特にビジュアルデザインの制作工程などは、個人の感覚による部分も大きいので人数の多さが混乱を招きました。途中で意思決定者を絞ってからはスムーズに進みました。

アイディアを発散するフェーズはいろんな人に意見を出すだけ出してもらって、あとはプロに任せる。そして決めるときは少人数で決める、という進め方がよかったですね。

ー最後に、今後の展望を教えてください。

会社のビジョンとしては、今より何倍も大きな組織にしていくつもりですし、新しいノウハウやサービスも今後どんどん生まれてくるのではないかと思っています。今回のリニューアルで土台とか軸みたいなものが作れたので、そこからブレないように、組織や事業にあわせてウェブサイトも拡張していきたいですね。

あとはサイトを公開するにあたって完璧を求めるとスケジュールが伸び続けちゃうということで、優先順位をつけて公開までに対応しなかったこともあります。ベイジさんの公開後のサポートプランの中で、そうした細かく残った部分も運用の状況を見ながら対応していけたらと思っています。

ーありがとうございました。ぜひ今後ともよろしくお願いします。

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