SaaS市場の盛り上がりもあり、企業のマーケティング活動をサポートする便利なツールが続々と登場しています。マーケティングやセールスに従事する方々にとっても、複数のツールを使い分けながら仕事をすることは、当たり前のことになっているはずです。
そういったツールの中でも、Google Analyticsに代表されるアクセル解析ツールは、古くから使われている比較的ポピュラーな存在でしょう。
しかしながら、アクセス解析を専業としていない方にとっては、少々難しいツールであるようにも思います。クライアントの社内資料でも、全体の直帰率で良し悪しを判断していたり、ページビューをKPIにしていたりすることは珍しくありませんが、これはアクセス解析の正しい使い方や見方があまり浸透していないことを物語っています。
このようになってしまう一つの要因は、ツール上で閲覧できるデータの種類と量が膨大だからでしょう。
例えばGoogle Analyticsであれば、ログインすると左側にさまざまなメニューが並んでいます。しかし、アクセス解析に関してある程度の知見を持っていないと、まずどれを見るべきかが判断できません。メニューを上から順に見る人もいますが、それをやると無駄に時間を浪費します。また、見たいグラフや数字が見つけられたとしても、「どう解釈していいか分からない」となってしまいがちです。
先日、「BtoBサイトを成功に導く180のチェックリスト」という記事を公開し、BtoBサイトには型があるというお話をしましたが、webサイトに型があるということは、その分析方法にもなんらかの型がある、ということになります。
アクセス解析ツールは、使いこなせば非常に多くの示唆が得られますが、一方で、高度な機能やカスタマイズが必要なのは、ある程度深堀された明確な課題や仮説がある時だけです。初期の健康診断レベルの分析において、見るべきポイントは割と決まってます。
そこでここでは、BtoBサイトを分析する時に私たちがまず確認している、基本的な8つのポイントについて解説いたします。
(2019年11月時点のGoogleアナリティクスの仕様を元にしています)
アクセス解析は、情報を一まとめに分析してしまうと誤解する可能性が高まります。例えば、近年はレスポンシブwebを採用し、PCとスマートフォンで表示されているUIを変えることが多いですが、このように大きく異なる条件を混在させたままサイト全体の直帰率を分析しても、適切な改善には繋がらないでしょう。
BtoBサイトは、仕事中に会社のPCで閲覧されていることが大半です。そのため多くの場合、スマートフォンユーザーを除外した方が、効率の良い解析に繋がります。ただ、本当にスマートフォンユーザーを除外していいかは一度確認した方がいいでしょう。そのため私たちは、まずデバイスの割合を確認します。
左メニューの「オーディエンス」をクリックし、「モバイル」→「概要」と選ぶと、desktop、mobile、tabletでの訪問の割合が表示されます。
数字の判断はケースバイケースなのですが、私たちの場合、mobileの割合が20%未満であれば、まずはmobile(スマートフォン)の訪問を除外する、もしくはdesktop(PC)の訪問に絞り込んで、分析していくことが多いです。もしmobileの割合が30%以上ある場合には、desktopとmobileをそれぞれ分けて解析します。なお、tabletは割合が非常に僅かなことが多いことと、PCと表示されるUIが同様のサイトが多いため、PCに含めて分析することが多いです。
このようにある特定の訪問に絞り込むには、「セグメント機能」が便利です。
セグメント機能は、画面上部の「すべてのユーザー」や「セグメントを追加」をクリックすることで利用できます。セグメント機能の詳細なオペレーションはネット上に多数解説記事があるため割愛しますが、事前にdesktopやmobileに絞り込んだセグメントを作っておくと、その後の解析がスムーズに行えるようになります。
また、デバイス以外に、webサイト内にオウンドメディアを併設し、そのトラフィックがそれなりにある場合は注意が必要です。
というのも、例えばBtoBの製品サイトとオウンドメディアでは、お昼休みや通勤時間にスマートフォンで閲覧し、多くの場合は直帰するなど、ユーザー行動が明らかに違うことが多いです。つまり、オウンドメディアを混在させたまま分析すると、読み誤ってしまう可能性が出てくるわけです。この場合は、セグメント機能で、オウンドメディアへの訪問を除外したうえで判断した方が良いでしょう。
セグメント機能を使用して、条件「フィルタ」→「セッション・除外する」を選択します。さらに「行動」→「ランディングページ」を設定して、オウンドメディアのディレクトリ(例./blog/)を指定します。
このセグメントを適用すれば、商材の情報収集を目的と推測される訪問を抽出できます。このような絞り込みをしたうえで、やはりPCのセッションの割合が80%を超えるようであれば、PCでの分析に割り切ってもよいでしょう。
一般的なユーザー行動は、サイト流入→ページ閲覧→コンバージョン→離脱になります。アクセス解析もこの流れに沿うと、実際のユーザー行動を想像しやくなると思います。
また、指標を『量』と『質』の2つに分類すると、ユーザー行動がさらに理解しやすくなります。量を表す代表的な指標は「セッション」「新規セッション」「新規ユーザー」「ページビュー」、質を表す指標は「直帰率」「ページ/セッション」「平均セッション時間」です。
このような基本的な見方を踏まえたうえで、まずは流入の傾向を見ていきます。
左メニューの「集客」から「すべてのトラフィック」→「チャネル」をクリックすると、チャネルごとの訪問の比較ができます。チャネル比較では主に「セッション」「新規ユーザー」「直帰率」「ページ/セッション」「平均セッション時間」「コンバージョン数」など、訪問を『質』と『量』に分けて、注目していきます。
まず「セッション」「新規ユーザー」の訪問の『量』を比較して、主な流入経路とさらに新規ユーザーが多い、集客に貢献している経路を特定します。一方で、「直帰率」「ページ/セッション」「平均セッション時間」の訪問の『質』に注目して、熱量が高いことが予想されるユーザーの流入経路の傾向を確認します。
一般的なBtoBサイトの流入チャネルは、「Organic Search」、「Direct」「Referral」、「Display」、「Paid Search」になることが多いですが、私たちの初期の解析では、この中でも「Organic Search」、「Direct」「Referral」の3つに着目します。
まず「Display」や「Paid Search」など広告経由の訪問は、広告のクリエイティブや出稿媒体などサイト以外の要素がユーザー行動に影響を与えていることが多く、サイト改善の参考にしにくいからです。広告系のチャネルは、最初の分析では深堀せず、参考程度に見ておくと良いでしょう。
BtoB商材の主な認知経路として、展示会や業界内の口コミがほとんど、ということも多いでしょう。その場合、BtoBサイトには自然検索(指名検索)でホームに流入するユーザーが多くなります。また、社内のメールやチャットで情報共有され、そこ記載されたURLをクリックしてサイトに訪問することも最近は増えてきています。
そのため広告経由の流入を除くと、ランディングページはホーム、チャネルは「Organic Search」か「Direct」になる傾向にあります。これらを念頭に置き分析を進めます。
左メニューの「行動」をクリックし、「サイトコンテンツ」→「ランディングページ」を選ぶとランディングページの一覧が表示されます。その中の上位のページを深堀しますが、上述の通りBtoBサイトの場合、トラフィックの大半がホームに集中しているサイトが多いです。ここではホームの訪問が最も多いと仮定して説明を進めます。
次に「チャネル」×「ランディングページ」のように、複数の分析軸を掛け合わせてデータを見るためには、セカンダリディメンション機能を使用します。セカンダリディメンション機能とは、複数の分析軸を組み合わせてデータを表示する機能です。一覧表の「セカンダリディメンション」のプルダウンリストをクリックして使用します。
セカンダリディメンションのプルダウンから「集客」→「デフォルトチャネルグループ」を設定すると、「チャネル」×「ランディングページ:ホーム」の訪問を確認できます。
チャネル×ランディングページでは主に「Organic Search」の「直帰率」に注目します。BtoBサイトの「Organic Search」×「ランディングページ:ホーム」は、指名検索の訪問が多いと推測されます。指名検索は、一般キーワード検索や広告経由などの流入に比べて、ホットリードが含まれる可能性が高いです。
一概には言えませんが、直帰率30%前後であれば、私たちは大きな問題がない状態であると判断しています。50%を超えるようなら、ホームの構造に大きな問題があり、改善の必要があるかもしれない、と推測します。
一例として、メインキャッチコピーがユーザーのニーズと一致していないなどです。BtoBサイトでは、ホームのメインキャッチコピーは重要な要素です。ユーザーテストをすると、ホームに訪問して、ファーストビューでまず何のサイトかを確認し、自分の目的と合致していると、サイトを回遊する、という行動もよく見受けられます。逆に、ホームのファーストビューで「間違ったサイトに来てしまった」と思わせてしまうと、ブラウザのバックボタンなどで離脱し、それが直帰率に反映される、ということが起こりえます。
またホーム以外で、「Organic Search」の流入が多いランディングページが存在するようであれば、社名・商材名とその他のキーワードを組み合わせた指名検索か、一般キーワード検索の訪問と推測されます。
本来直帰すべきではないランディングページの直帰率が高い場合には、商材の理解ができるような特長を端的に説明したバナーを、Cookieで識別した初回訪問者だけに冒頭に表示するなどの改善のアイディアを考えることができます。
チャネル→ランディングページの傾向を掴んだら、次にランディングページ→次のページの、行動を把握しましょう。
先程と同様にセッションの多いランディングページを選択して、セカンダリディメンション機能から「行動」→「2ページ目」を設定します。
ここでは主に「セッション」に注目して、どのページに遷移されているかを確認できます。ただし、2ページ目の遷移が多いページ=ユーザーの情報ニーズが高いと一概に決めつけるのは早計です。ページの上部に導線が設置してある、デザイン的に強調されているなどページ構成が影響し、強制的に誘導されている可能性もあります。
前提として、訪問するユーザーの多くは、業務上必要にせまられてwebサイトを閲覧しており、短時間で楽をして最低限必要な情報を入手したいと思っています。そのため、遷移量が多いページ=情報ニーズが高いとも一概には言えません。人が反射的に反応しやすいUIによって、半強制的に遷移が発生している、遷移元のページに掲載されている情報では不充分だからやむを得ず遷移している、といった可能性もあるためです。
上述の通り、ページの遷移行動にはさまざまな可能性があることを踏まえて、ページ構造やコンテンツも一緒に確認しながら、冷静に判断していきましょう。
BtoBサイトによくある、サービス・機能紹介、事例、価格など、ランディングページになりにくいがコンバージョンには影響を与える重要なページがあります。これらのページの遷移傾向も確認します。
主な方法は2通りあります。ひとつは、左メニューから「行動」をクリックして、「サイトコンテンツ」→「すべてのページ」から確認する方法。もうひとつは、セグメント機能の中の「シーケンス」という連続する条件によって、ユーザーやそのセッションデータをセグメント化して遷移の傾向を確認する方法です。
まずは大まかに傾向を把握するのが目的であれば、前者の「行動」→「サイトコンテンツ」→「すべてのページ」からで十分でしょう。
「すべてのページ」から主要なページを選択します。セグメント機能の真下に表示されている「ナビゲーションサマリー」のタブをクリックすると、「前のページ遷移」と「次のページ遷移」を確認できます。
主に「次のページ遷移」のページビュー数(%)に注目して、ケースバイケースですが、私の場合は、5%以上で最大上位10ページを確認し、その傾向を捉えています。
そして、「4.ランディングページ×2ページ目の特性」と同様に、ページ構成による影響なのか、ユーザーニーズによる影響なのかを考えながら、遷移傾向を考察していきます。
ページの性質によっては、ユーザーの情報ニーズがポジティブ、ネガティブのどちらかを整理して考えた方が良いこともあります。例えば、価格ページからよくあるご質問ページへの遷移が多いとしましょう。ポジティブに捉えれば、「価格で満足して、よくある質問を見ている」という解釈になりますが、ネガティブに捉えると、「価格ページの内容が分かりにくくて、よくある質問に遷移した」とも解釈できます。
このように、単純にアクセス解析上の数字だけで判断するのではなく、実際のページの内容を見ながら、ユーザー心理を推測していく必要があります。
ここからは、コンバージョンを中心としたユーザー行動を確認していきます。まずは、コンバージョンをアシストしたページ、つまり、コンバージョンした訪問でよく閲覧され、コンバージョンに影響を与えていると推測できるページの傾向を確認することで、サイト内の何の情報がコンバージョンに影響しているのかを推測します。
左メニューから「行動」をクリックし、「サイトコンテンツ」→「すべてのページ」を選択し、セグメント機能から「コンバージョンが達成されたセッション」を適用します。
ページ別訪問数の多いページに注目します。訪問の起点になるホームやコンバージョン設定された到達ページが上位に並ぶのは自然なため、それ以外のページを確認します。
ここで特に注目したいのは、サイト全体でのランディングページやページビューのレポートでは目立たないが、コンバージョンしているセッションの時だけ浮上してくるページです。こういうページは、コンバージョンに強い影響を与えている可能性があるため、改善の優先度が高いページと捉えることができます。こういうページは、サイト全体でチェックしていると見えてこないことも多く、そういう意味でも、コンバージョンとの相関に絞り込んで分析する意味があります。
なお、BtoBサイトでは、この見方をすると会社情報が上位に並ぶこともあります。特に一般的には知名度が低い企業の場合、そもそも信頼できる会社なのかを確かめたいというユーザー心理が反映され、このような傾向が現れます。その場合、売上や取引先、株主構成、企業グループ、歴史、組織規模、経営層の経歴など、会社としての信頼性を担保できる情報を充実させることが有効ではないかと、仮説を立てることができます。
コンバージョン直前のページ遷移を確認することで、コンバージョンを後押ししているコンテンツを突き止めることができます。
左メニューの「行動」→「サイトコンテンツ」→「すべてのページ」から、お問い合わせなどコンバージョン設定した到達ページを選択します。前述と同様にナビゲーションサマリーのタブをクリックして前のページ遷移を見ます。
目安としては、「前のページ」のページビュー数の割合が5%以上の上位5ページを参考にするのが良いと思います。ここで閲覧されている情報はコンバージョンに直接影響している可能性が高いと推測できます。ただし、コンバージョン数が少ない場合には、偶発的な行動でも数%単位で数字が動いてしまうので、その場合は期間を延ばすなどして、より多くの情報から傾向を導き出すようにしましょう。
このように、コンバージョン直前で特に閲覧されているページを突き止めると、例えばホームのようなトラフィックが多いページから、コンバージョンの直前に見られるページへのリンクを追加することで、短経路でコンバージョンへ誘導できる設計にする、などの改善案に繋げることができるようになります。
BtoBの商材は一般的に検討期間が長くなるため、サイトへの再訪問率が50%を超えることも多いです。つまり、コンバージョンに至るまで複数回サイトに訪問する可能性が高い、ということです。そのためコンバージョンに至ったセッションだけに注目していると、コンバージョンに間接貢献している重要なページを見落とす可能性があります。
例えば、オウンドメディアのように直帰率が高いコンテンツでは、訪問時のセッションではコンバージョンがほとんど発生しないため、一見コンバージョンに貢献していないように見えてしまいます。しかし、セッションを跨ったアトリビューション分析を行うと、実は初回訪問に貢献している、という傾向が見られたりします。
このような誤った判断を避けるためにも、コンバージョンに至ったユーザーが、それ以前の訪問で閲覧したページやコンテンツを確認しておきます。
左メニューから「コンバージョン」をクリックして、「マルチチャネル」→「モデル比較ツール」を選択します。
詳細は割愛しますが、「モデル比較ツール」とはコンバージョンのラストセッションだけではなく、コンバージョンに至るまでのユーザーとの全ての接点を対象として、CVへの貢献度を評価する機能です。
「モデルを選択」で「起点」vs「終点」を設定して、「セカンダリディメンション」から「集客」→「ランディングページのURL」を選択します。さらにアドバンスフィルタをクリックして、「オーガニック検索」を絞り込みます。なおBtoBの商材は検討期間が長いため、「ルックバックウィンドウ」も最大のコンバージョン前の90日間に設定するのが良いでしょう。
「起点」というのは、最初の訪問に使われたランディングページになります。もし、ラストセッションでのコンバージョン分析とは異なるページがリストアップされる場合には、そのページも重要ページとして改善対象にする、といった判断が生まれてきます。
また、同様の方法で、チャネルを分析することもできます。BtoBサイトでは、初回の訪問に指名検索を用い、2回目以降はメモしたテキストエディタやExcelのリストなどから訪問することがあります。そうすると、1度目の訪問はOrganic、2度目以降の訪問がDirectになり、コンバージョンしたセッションのチャネルもDirectになります。しかし、実際にはOrganicもコンバージョンに貢献している重要なチャネル、ということになります。
また、Directを使って、1回目の訪問だけでコンバージョンしているユーザー、というのも存在します。こういうユーザーは、社内の誰かからメールやチャットで推薦され、その情報を信用して最初からお問い合わせをする目的で、そのリンクをクリックし、訪問しているユーザーかもしれない、という推測が成り立ちます。そしてこういうユーザーが多い場合には、ホームのコンバージョンボタンをより分かりやすく設置し、さらには電話番号なども露出する、という改善のアイディアに繋がります。
繰り返しますが、BtoBはリードタイムが長く、再訪問の可能性が高いからこそ、ラストセッションだけではなく、複数のセッションをまたいだ分析をすることがより重要になってきます。
1.で解析対象を絞り込み、2.~3.でサイトへの流入、4.~5.でサイト内の行動、6.~8.でコンバージョンを起点とした行動といったように、一連のユーザー行動に沿ってアクセスログを見てきました。
Googleアナリティクスをはじめとして、アクセス解析のツールでは取得しようと思えばいくらでも細かなデータを取得することができます。しかし、大事なのは網羅的に見ることではなく、サイト改善のアイディアを検討するためにユーザー理解のヒントになりそうな部分にフォーカスして見ることです。
そのためには、事前に仮説を持っておく必要があります。さらにいえば、最初に健康診断的に分析をするのであれば、一般的なBtoBサイトの傾向を知っておいたほうが、問題箇所を素早く判断できるようになるでしょう。
BtoBサイトの改善やBtoBマーケティングに取り組む方々のアクセス解析業務が効率化し、サイト改善に繋がる良いアイディアを発想するという、本来やるべきクリエイティブワークの時間が少しでも増えれば嬉しいです。
私たちはBtoBサイトを得意分野とするweb制作会社です。ただ作るだけではなく、BtoBマーケティングの豊富な知見を活かし、成果にこだわったBtoBサイトをご提案します。webサイトのことでお悩みのBtoB企業、良いweb制作会社がいないとお困りのBtoBマーケターの方は、ベイジまで気軽にご相談ください。