2019年はコンテンツマーケティング関連のイベントでお話しする機会が何度かあり、その中でたくさんの質問をいただいたのですが、すべての質問にお答えすることができませんでした。
そこで改めてこの場を借り、質問に回答させていただこうと思います。私の経験則にもとづくものも多いですが、参考情報としてご覧いただければ幸いです。
いわゆるオウンドメディアについては、成果が出るまでに時間がかかることが多く、必ず成功すると事前に言い切れません。
そのため、経営者や事業責任者が、オウンドメディアの力をそもそも信じているということは、推進する上での重要なポイントになります。逆に、否定的な人を説得して始めるのはなかなか難しい施策ともいえます。
こういった前提があった上での回答ですが、オウンドメディアの目的を、一つではなく複数設定すると、社内を説得しやすくなるのではないでしょうか。
例えば、集客だけを目的にすると、すぐに成果が出ない、いつ・どのくらい顧客になるのかよく分からない、と否定的な理由ばかり出てきてしまいます。しかし、オウンドメディアの効果は、以下のように集客以外にもあります。
どんな企業も、様々な経営課題を抱えているはずです。複数の課題を解決しうる手段としてオウンドメディアを提案すれば、前向きに考えるようになる経営者や事業責任者も出てくるのではないでしょうか。
情報発信は、大企業ならではの施策ではありません。むしろ、セキュリティや組織上の障壁など、大企業になると情報発信が難しくなる側面もあります。特に上場企業ではその傾向が顕著です。中小企業こそ、その自由な立場を利用し、スピーディーでゲリラ的なコンテンツ発信を行うべきです。
私たちもとても小さな会社です。最初にブログを立ち上げたのは、2011年、社員がまだ3~4名の頃でした。そこからいくつかのオウンドメディアを立ち上げ、組織の拡大とともに発信量を増やしていきました。組織の拡大といっても現在は17名で、今も大きな会社ではありません。しかしそれでも、オウンドメディアは運営できるのです。
とはいえ、リソースが少ない組織でメディア運営をするには、それなりの工夫も必要です。私たちの場合は、以下の3つの工夫をしてきました。
オウンドメディアをやろうと、新しくコンテンツを企画しようとすると、人手も時間もかかりますが、そんな余裕は大抵の小さな会社にはありません。
しかし、それなりに事業が続いている企業なら、絶対になんらかのコンテンツを持っているはずです。イベントのスライドかもしれないし、営業が持っている提案資料かもしれません。社員向けの資料もコンテンツになりえます。
このようなコンテンツをオウンドメディア用に加工して公開すればいいのです。「コンテンツを新しく作らないといけない」というのは固定観念です。日常業務の中で自然に生まれたコンテンツを流用すれば、オウンドメディア運営の負荷を軽減できるはずです。
小さな会社だと専任の担当者を置くことが難しく、本業との兼務になりがちです。この時、本業以外の時間を増やすと、オウンドメディア運営の難易度が上がります。そこで本業に影響を与えず、メンバーの仕事量を増やさない工夫が必要になります。
例えば私たちには、終業時に日報を書くというルールがあり、この中から良質なものを選んで外に発信しています。これが『ベイジの日報』というオウンドメディアです。
このオウンドメディアで公開する記事の執筆は、日々の日報を書く時間に行っています。つまり、公開用の記事を書く日は、社内向けの日報は書かなくていいとすることで、オウンドメディアのために仕事が増える事態を回避しています。
やり方は色々あると思いますが、仕事量を増やさずにコンテンツを作る工夫は、小さな会社には欠かせません。
オウンドメディアは、実感できる成果が出るまで1年以上かかることも少なくありません。このような成果待ちの期間に、モチベーションを失わないためには、経営者もしくは事業責任者の強い関与が不可欠です。
経営者や事業責任者が積極的に関与せず現場に任せていくと、現場のモチベーションは下がり、低質な記事しか上がらなくなり、更新が止まる可能性が高まります。
またオウンドメディアには、主観を交えた熱量の高いコンテンツが必要です。その方が独自性や話題性が生まれやすいからです。そして、コンテンツに熱量を込めるためには、一番熱量が高いスタッフが制作を担当するのが一番です。その「一番熱量が高いスタッフ」は、中小企業の場合は大抵、経営者や事業責任者です。
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このように、自らの制約を理解した上で、継続するための工夫をすれば、例え中小企業であっても、オウンドメディアの運営は可能であると私は思います。
「デジタルが浸透していない古い企業」とは「デジタルに疎く、オウンドメディアの価値が分からない企業」ということだと思います。このことは、オウンドメディアの推進に有利に働くこともあります。
例えば、実施責任者が会社から十分な信頼を得ていれば、社内のリテラシーが低いゆえに、自由に取り組ませてくれる場合があります。このような状況では、デジタルが浸透していない古い企業であることが、むしろやりやすさに繋がるかもしれません。
一方、デジタルの理解がないゆえに、抵抗勢力が多く、邪魔されてしまう、ということもあるでしょう。質問をされた方の意図は、こちらのケースだと思います。
その対処法は、もはやオウンドメディアもデジタルも関係ありません。これは、反対者がいる組織の中で、新しい取り組みを始めるにはどうすればいいか?という質問です。
その場合にまずやるべきは、いきなり施策を実行することではなく、啓蒙と信頼獲得を続け、アクセプタンス(受容、心理的柔軟性)を構築することではないでしょうか。
私が知るあるマーケターは、マーケティング施策を具体的に動かすまでに約1年間、営業との対話を続けました。会社を支えてきた営業に共感し、リスペクトの姿勢を持ち、その心理や行動原理を理解することに1年を費やしました。それから、「そろそろサイトリニューアルに着手したい」と私たちに声をかけてきました。
この例に限らず、優秀なマーケターは、個別の施策を打ち出す前に、まず組織に働きかけるケースが多いです。施策の実行スピードも大事ですが、しっかり加速できるようエンジンを温めることも大事なわけです。
質問にあるように、古い企業が、オウンドメディアに限らず、何か新しい取り組みを始めるのであれば、このような組織のアクセプタンスが育つように働きかけていくことはとても重要だと思います。
それと、別の視点から言えば、社内で理解が得られない企業というのは、そもそもオウンドメディアに向いていない企業ともいえます。であれば、オウンドメディアに固執せず、社内で合意が得られることをまず優先すべきです。理解がない社内を無理やり丸め込んでも、心の底から納得していないと、後から紛糾し、道半ばで終わってしまいがちです。
何事も、強引に推し進めすぎないこと、別の手段も含めて柔軟に考えていくことが大事なのではないかな、と思います。
結論からいえば、大いにあります。ブランディングというと曖昧になりますが、主に以下の観点から効果を実感しています。
「ブランド認知」とは、その名の通りブランドの認知を取ることです。
有益なコンテンツを発信すれば、SEOで検索上位に表示されたり、SNSで露出したりして、認知の機会が増えます。さらに社内で共有されたり、打ち合わせの席上で話題になったりと、その効果はオフラインにも波及します。
例えば、私たちの会社名「ベイジ」を含むキーワードは、2019年12月に約5,000回検索されました。同名のファッションブランドが含まれるため、すべての検索ニーズが私たちにあるわけではないですが、うち約2,000回がクリックされ、私たちのコーポレートサイトに流入しています。
このクリック数は、2018年8月の段階では約600回でしたので、そこから数えれば3倍以上に増えています。このように、指名検索からのクリック数が増加したのは、ブランド認知の拡大が一つの要因であり、そこにはオウンドメディアとSNSがかなり影響を与えていると考えています。
続く「ブランド連想」とは、商材を正しく理解し、第一想起を取ることです。私たちの場合であれば、「web制作会社といえばベイジ」「ベイジといえばweb制作会社」と認識してもらうことです。
オウンドメディアで記憶に残るコンテンツを発信すれば、人々の頭の中に「ベイジ=web制作会社」という連想ネットワークを作り上げることが可能になります。
「ブランドロイヤルティ」は通常、リピート数やリピート率がその成果となりますが、既存顧客に喜ばれる良質なコンテンツを発信することで、同様の効果が期待できます。
このように、オウンドメディアのブランディング効果は、様々な面で実感しています。
そのようなことが起こってもまったく不思議ではありません。事業に貢献しているなら、それでもまったく問題ないと思います。
そもそもオウンドメディアには、「自社が保有するメディア」くらいの意味しかありません。こうしなければいけない、というルールがあるわけでもありません。
目的を変えた方が良さそうなら変えればいいし、KPIを動かした方がよさそうなら動かせばいい。大事なのは、投資に見合う効果が見られるかだけなので、自由に、柔軟に、考えていいと思います。
Q1で回答したように、オウンドメディアに複数の目的を持たせると、KPIはかなり複雑になります。それ故に「あえてKPIも置かない」というのも選択肢の一つです。
ただ、マーケティング目的でオウンドメディアを運営する場合、通常KPIを求められますので、その前提で回答します。
既に言及したように、オウンドメディアは成果を上げるまでに時間がかかることが多いです。言い換えると、以下の3つの問題を順番にクリアして初めて、成果が出るオウンドメディアになります。
「量の問題」とは、成果を出すのに十分な量のコンテンツを、安定的に継続的に供給できるのか、という問題です。オウンドメディアの失敗で最も多いのは、意気込んで開始したものの、徐々に更新が途絶えて、やがて活動が停止する、というものです。
立ち上げたばかりのオウンドメディアは、まずこの量の問題を解決しなければなりません。必要な量のコンテンツを、継続的に安定的に、供給できる体制をまず作らなければなりません。この段階のKPIは、更新回数や更新頻度が良いでしょう。
量の問題をクリアしたら、次に向き合うのは「質の問題」です。この段階のKPIは、ページビュー(PV)、あるいは訪問(セッション=SS)、もしくは訪問者(UU)の数が良いでしょう。
企業目線の一人よがりのコンテンツばかりでは、いかに更新を続けても、見てくれる人は増えません。ターゲットに喜ばれ、関心を持たれ、訪問される、質が高いコンテンツを目指さなければなりません。コンテンツの質は厳密には数値化できませんが、PV/SS/UUを参考に質を判断するのが、この段階では分かりやすいです。
こうして量の問題、質の問題をクリアしてはじめて、成果の問題に向き合い、KPIがオウンドメディア経由のコンバージョン(CV)の数や率になるのです。
注意したいのは、すぐCVするとは限らないことです。アトリビューション分析やMAなど、訪問をまたがって把握できる手段を使い、オウンドメディアの効果を把握する必要があります。
このように成長のステージによってKPIを変えていけば、成果が出ないと社内で評価されず、道半ばで打ち切られることも減るのではないでしょうか。
オウンドメディアに限った話ではありませんが、事業環境も前提も目的も異なる他社の数字を見ても、あまり参考にならないでしょう。
大事なのは、数字の基準を知ることより、自分たちがやりたいことから逆算して、自分たちなりの目標の数字を立てることです。例えば、私たちの会社のような商材・業態であれば、以下の公式をベースに予算から逆算すれば、ざっくりしたKPIを算出できます。
もしも私たちが、オウンドメディアに年間1,200万円を投じ、初年度はプラマイゼロ、次年度から黒字化を目指すとしましょう。
年間1,200万円ということは、1か月で100万円の利益を出せば、黒字化します。
その企業の案件単価が500万円、利益率が5%とすると、案件毎の利益が25万円。そうすると、オウンドメディア経由で月4件、新規案件が獲得できればいいわけです。
この企業のCV後の商談化率が80%、商談からの成約率が50%だとして、4件から逆算していくと、オウンドメディア経由で月間10件のCVが必要になります。オウンドメディアのCV率を0.05%とすると、月間で20,000のSSを獲得しなければなりません。SSあたりのPV数が1.1と仮定してPVに換算すると、月間22,000PV必要になります。
1記事が平均2,000PV稼ぐとすると、月に必要な記事本数は11本になります。つまり、この計算で行くと、週に約2~3本ペースで記事を作る必要がある、となります。
非常に雑な計算ですが、このようにしてまず、仮の数値目標を設定すべきです。あとは実際に運営しながら、数字を上下させたり、現実的な数字に置き換えていけば、やがて現実的な目標が見えてくるでしょう。
AIアナリストというプロダクトを提供しているWACULさんは、オウンドメディアを運営してからの具体的なCV数、コスト、CPAの推移を公開しています。
これを見ても、オウンドメディアへの投資はすぐ回収できるものではなく、長く運営するほど、リターンが大きくなることが分かります。
当社の『社長ブログ』も一時期、CVの10~20%が社長ブログ経由でしたが、それを読んだ人が社内で別の人にオススメして訪問するケースなども想定すると、その貢献は数字以上である実感がありました。
ただ、このように成果が見えるようになったのは、2011年の開設から2年ほど経ってからです。最初は集客に繋がっている実感も、データ上の証拠もありませんでした。
この経験を踏まえても、オウンドメディアの成果が出るのは早くて半年、1~2年かかるのもザラ、というのが実態ではないでしょうか。
しかし、成果が出るまでに時間がかかるというのは、「競合が真似しにくい」「真似しても追いつくのに時間がかかる」ということでもあります。オウンドメディアをやり切ると、他社にはない優位性や差別性が生まれると考えることもできます。
また、マーケティング成果だけだとどうしても時間がかかるため、採用や社員教育、ナレッジ共有など、複数の目的を視野に運営することが大事なのだと、改めて思います。
オウンドメディアへの流入が増えたのに売上に繋がらない理由は、大きくは2つあると思います。
原因を細分化すれば、コンテンツの質、配信のタイミング、オウンドメディア内の導線設計など様々な要因が考えられますが、オウンドメディアへの集客はできるが売上に直結しないコンテンツばかりアップしていることが、最大の原因と考えられます。
例えば、web制作会社のコンテンツとして売上に繋がりやすいのはどちらでしょうか?
PV/SS/UUだけで比較すると、前者の方が優秀なはずです。なぜなら、前者の方がターゲットが多いからです。
しかしこれはデザイナー向けの記事です。つまり、顧客化の可能性が低い記事です。もちろん、この記事を読んだ人が転職してweb担当者となって声をかけてくる、という可能性はあります。しかしそれは「売上に直結する」とは程遠いものです。大事なのは、見込み顧客に直接的に刺さるコンテンツを作ることです。
これは、実際には成果が出ているが、それに気づいていない、というパターンです。
例えば、Googleアナリティクスでは、ランディングページ別のCV、流入チャネル別のCVを簡単にチェックできます。しかし、そこで表示されているCV数/率は、ラストセッション(最後の訪問)の数字にすぎません。
そこでGoogleアナリティクスには、90日しか遡れませんが、コンバージョン分析という機能があります。これを使えば、CVしたユーザーの初回訪問時のランディングページやチャネルが確認できます。
また、MA(マーケティングオートメーション)を使っていれば、リード化したユーザー毎の訪問履歴が細かく確認でき、コンテンツの成果をより的確に掴むことができます。
ただ、「記事を読んで感激した人が事業会社に転職し、web担当者となり、社名で自然検索し、サイトに訪問し、お問い合わせフォームから声をかけてくる」のようなケースだと、Cookieベースの計測では、記事がCVを貢献したしたようには見えず、自然検索からCVしているように見えるでしょう。こういったCVは、「売上に繋がっていない」と判断されがちです。
いずれにしろ、「コンテンツが成果に繋がっていない」というのは、「コンテンツが成果に繋がっているが、その見方が分かっていない」ということもあります。成果が出てないと決めつけるのではなく、様々な角度から分析する必要があります。
これは間違いなく、質です。
一時期、Googleのアルゴリズムと相性が良い低質なコンテンツを大量にアップして流入を増やすオウンドメディアが流行した時期もありましたが、現在のアルゴリズムでは、このようなやり方はうまくいかないでしょう。
Googleのアルゴリズムが質の良いコンテンツを上位表示できるように日々改善されている以上、流入を増やしたければ、質の良い記事を書くのが正攻法です。実際、その方が長期的に見て集客に繋がる傾向があります。
例えばこれは当社が2016年に公開した記事です。
この記事は3年経った2019年の段階でも、「色」で検索すると5位に表示され、年間220,000PVを記録しています。しかも、2017年よりも、2018年よりも、2019年の方が多くのトラフィックを集めています。
このように、良質な記事を公開すれば、長期間に渡って集客させることができます。短絡的に低質なコンテンツを大量にアップするより、少数の質の高いコンテンツをアップしていった方が、遥かに効率的です。
そして質が重要なのは、SEOのためだけではない、というのは言うまでもないでしょう。普通に考えれば、読者として、質の悪いコンテンツと、質の良いコンテンツのどちらが嬉しいかと言えば、質の良いコンテンツに決まっています。質の良いコンテンツだから記憶に残り、質の良いコンテンツだから、「あの会社に声をかけようかな」という気になります。質の良いコンテンツは、オールマイティーに事業に貢献するのです。
ただしその一方で、「質の良いコンテンツを作りましょう」というのは、ある種の理想論でもあります。
というのも、「コンテンツの質」を定量的に図ることは難しく、属人化せずに質の高いコンテンツを生み出すことはさらに難しいからです。そのため、特に社内でコンテンツを制作する場合などは、最終的には質を重視する方針でありつつも、一時的に量も重視した運営を行い、質の高いコンテンツを作る力を磨くことは必要だと思います。
質が大事だからといって、質にこだわりすぎて量が減り、質の高いコンテンツを作る能力がなかなか身に付かない、ということでは本末転倒です。
最終的に大事なのは質ですが、その過程で量をこなすことを避けては通れない、と考えておいた方がよいと私は思います。
私自身は、BtoCに詳しくありませんが、「ターゲットを決める」「ターゲットが関心を持つテーマを決める」「そのテーマに合わせて良質なコンテンツを作る」「ターゲットの目に触れる場所に送り届ける」「成果を検証する」という、基本的な枠組みは、BtoCでもBtoBでもあまり変わらないように思います。
そのうえで、BtoBのオウンドメディアの特徴を掴むなら、そもそものBtoCとBtoBの違いを把握するのが良いでしょう。
例えば、「ターゲットの数が少ない」「市場に流通している情報が少ない」という点からは、少数だが情報を熱望しているユーザー向けの、ニッチで熱量の高いコンテンツが求められる、といえるでしょう。
BtoBは「購買目的が課題解決」ということから、共感を得るような情緒的なコンテンツより、直接的に役に立つ機能的なコンテンツの方が向いている、といえるでしょう。
また、「リードタイムが長い」ことから、短期的にPVを見ても成果が見えない可能性が高い、といえます。BtoBオウンドメディアは、長期間かつ複数の訪問にまたがり、最終的なKPIとの関係性を類推していかないと、実際には顧客獲得に貢献しているのに、「成果が出てない」と誤解される可能性があります。
このように、BtoBならではのいくつかの視点の違い、力の入れ方の違い、というのはありますが、冒頭でお話ししたように、「読み手のためにコンテンツを作る」という基本的な視点は変わらないと思います。
BtoBといっても業種業態は様々で、オウンドメディアを運営する目的も多種多様です。そのため一概に説明するのは難しいですが、「成果を出した方が社内で支持されやすい」という原則を意識すれば、より成果に近いコンテンツが、まず手を付けるべきコンテンツといえます。
もう少し詳しく説明すれば、以下のようなマーケティングファネルに対して、より下部にいるターゲットが求めるコンテンツを優先した方がいい、ということです。
もちろんこれは、顕在層に伸びしろがある場合の話になります。顕在層は既存のマーケティング手法でほぼリーチし切っており、潜在層へのアプローチを目的としてオウンドメディアを運営する場合は、これにあたりません。
なのでやはり目的次第なのですが、一つの考え方として、「ファネルのどこを狙うためにオウンドメディアを運営するのか?」を意識すれば、題材も見つけやすくなるのではないかと思います。
オウンドメディアはもはや珍しい施策ではなく、飽和状態の業界や分野によっては、個性を出すのが難しくなっています。既視感のある記事では認知にも繋がりにくくなるでしょうし、やはり独自性はある程度は必要でしょう。
しかしながら、あまり独自性に固執しすぎると、読み手を無視したコンテンツを作りがちです。そもそも、独自性にこだわることはそんなに重要でしょうか?
私は、「独自性にはこだわらず、想定する読者はどんな記事を求めているか、どんな記事なら喜ぶかに集中すべき」という話をよくします。根底にあるのは、読み手を喜ばせることに集中すれば自然と独自性は備わる、という考え方です。
このことは、以下のインタビュー記事の中でも言及しています。
似たような商材であっても、市場の立ち位置、それを作っている企業、それを生み出している人は、同じではないはずです。そういうブランドが、「読み手を喜ばせる」ということを追求すれば、そこには必ず個性が滲み出てくるはずです。この自然に滲み出る個性こそ、コンテンツの独自性ではないかと思います。
どの企業にもどの商材にも独自性はあります。それをどんどん出していけばいいのです。しかしながら、固定観念とリスク意識が、それを阻害します。
「これ以上書いてはいけない」「これを書くと怒られる」「こんな記事は相応しくない」と、リスク回避の意識を強めていくと、どんどん無難で無個性でつまらないコンテンツになっていきます。個性的で魅力あるコンテンツを生み出すには、のびのびと思ったことを書ける組織風土が必要なのです。
もちろん、機密情報の漏洩など、事業に悪影響を与えるほどの自由さは危険ですが、責任が取れる範囲で「読み手(顧客)を喜ばせる」という目的に対して自由で柔軟な発想を許容していくことが、コンテンツに独自性を与える最大の秘訣ではないかと思います。
オウンドメディアに限らず、受託企業共通の悩みではないでしょうか。
当社はweb制作会社ですが、webサイトのアイデアのほとんどは「コンテンツのアイデア」であり、そのコンテンツを作るうえで、顧客理解・商材機会が不可欠です。しかしながら、BtoB企業の商材は専門的であることが多く、プロジェクト開始段階では、私たちの知識はゼロに近いことも多いです。
そのため、以下のようなプロセスを経て、顧客理解を深めてから、コンテンツのプランニングなどを行っています。
専門的な業界を理解するには、インプットを増やすしかありません。それ以上の近道はないのではないと思います。
読者を明確にしてコンテンツを作った方が、メッセージが研ぎ澄まされ、コンテンツの訴求力は高まります。その意味でペルソナは有効です。
このペルソナを想像だけで作ると、企業や書き手にとって都合の良いペルソナになりがちなので、客観情報を元に作りましょう、というのはよく言われることです。その客観情報を手に入れるためには、Q14でお伝えしたような調査が有効です。
ただ、記事の内容によってターゲットが微妙に変わる時、このような重厚長大な調査をその都度実施するというのは、現実的でないことも多いでしょう。
その場合にオススメなのが、実在する誰か一人のためにコンテンツを作ることです。ペルソナを作らなくてもほぼ同じ効果が期待できます。実在する人物なので、ペルソナ以上に現実的な想像力が働き、有用なアイデアに繋がることもあります。
これは例えば、「顧客に質問されたことをコンテンツにする」と同じ発想です。実在する顧客のために生まれたコンテンツだからこそ、同じ悩みを持つ人々が、「これは有益だ」と思う可能性が高まるわけです。
それと、質問の後半にあるターゲットの種類が多い場合ですが、これも基本的には代表者にフォーカスすべきです。
属性は多様でも、抱えている課題、ニーズ、動機、行動様式が同じなら、一人の代表者で多くのニーズをカバーできるはずです。属性の多様性に惑わされず、代表的な誰か一人のために書くことを、私としてはオススメします。
オウンドメディア訪問時にホワイトペーパーをダウンロードしてもらい、その時に入手したメールアドレスにメルマガを配信して再訪を促すことはできます。また、記事の最後にSNSの公式アカウントのリンクを張って公式アカウントをフォローしてもらう、という方法も考えられます。
ただ、ホワイトペーパーダウンロードも、公式アカウントのフォローも、高確率で発生することではありません。
その前に、そもそもオウンドメディアに再訪させる必要はあるのでしょうか?
本当に良いコンテンツ、役に立つコンテンツを発信していれば、自然に再訪問するでしょう。言い換えれば、再訪問しないのはコンテンツに魅力がないからで、再訪問の仕組みを考えるより、コンテンツを磨くことの方が本質に思えます。
さらに、一回の訪問でCVに至るなら、再訪問させる必要もありません。CVするユーザーは再訪問率が高いですが、それは再訪の仕掛けがないからではなく、単に課題形成に時間がかかっているだけかもしれません。
いずれにしろ、「再訪問させないと」という雑念は無視し、どうすれば読み手にとって魅力的なコンテンツになるか、ということだけを意識し、一球入魂でコンテンツを生み出し続けることでいいのではないかと思います。
「オウンドメディアのコンテンツは自社で作るのが理想」とよく言われますが、必ずしもそうではなく、目的に応じて使い分けるべきでしょう。
外部委託と内部制作では、以下のような違いがあり、一長一短です。
外部委託はコストがかかりますが、プロに委託すればスピーディーな実行が可能になり、クオリティも担保されます。更新が止まり風化するリスクも最小限に抑えられます。確実に成果を出したいのなら、外部委託は有力な選択肢です。
一方の内部制作の一番のメリットは、知見が社内に溜まることです。そのため、採用やナレッジ共有、社風など、組織作りに影響を与える可能性がでてきます。これは外部委託ではほぼ得られないメリットです。
オウンドメディアで、確実にマーケティング成果を生み出したいのなら外部の力を借りる。オウンドメディアを組織づくりに影響を与えるような活動にしたいのなら内部制作にする。と、目的に合わせて選択すべきでしょう。
専門スキルを持った外部のプロと協力しながらオウンドメディア運営をする場合、以下のような仕事のどの部分を社外にお願いするかを、明確にする必要があるでしょう。
1. メディア戦略
2. コンテンツ企画
3. 編集
4. ライティング
この4つだけだとまだ粒度が粗く、予期せぬグレーゾーンが生まれる可能性があります。ここからさらに細分化して、役割を明確にする必要があるでしょう。
また、社外に依頼する場合には、依頼内容や委託する方の強み・特性に合わせて、連絡方法や連絡手段、チェックリストなどのフォーマット、企画から公開までのワークフロー、権限の明確化など、質を担保するための各種ルールを決めるとよいでしょう。
社外のプロに依頼するといって何もかも丸投げではなく、率先してメディア運営やコンテンツ制作の環境を整備することが、企業側の姿勢として特に大事だと思います。
コンテンツを社内で制作する場合、専任メンバーを立てるのか、通常業務との兼任で行うのかによって、難易度が変わります。
確実に続けたいなら専任メンバーを立てるべきです。しかし小さな組織では、本業と兼務でコンテンツ制作をせざるをえないことも多いでしょう。コンテンツに専門性が求められるBtoBだと、現場スタッフでなければコンテンツを作れないこともあります。
この兼務こそ、コンテンツを社内で制作する時の最大の障壁です。本業が忙しく、コンテンツ制作の時間が確保できなくなることをうまく回避することが、社内で兼務で制作する時の最重要課題です。
実は当社も、本業との兼務でオウンドメディアを作り、失敗したことがあります。その『用語集』というメディアは、以下の理由で、一年もせず更新が止まりました。
一方、『ベイジの日報』というオウンドメディアは、同じく本業との兼務でありながら、今も更新が続いていますが、その運営方法について、『用語集』と対比すると、以下のような違いがあります。
『用語集』は、本業以外に新規にコンテンツを考えて作る必要がある、そのための時間の確保は本人に委ねられている、質にこだわって何度も修正しなければいけない、という運用をしていました。それによってメンバーが疲弊し、更新が止まってしまいました。
一方の『日報サイト』は、本業と兼務であることを除くと、ほぼ真逆です。毎日書いている日報の再編集で良い、そのため新規にコンテンツを考える必要がない、執筆時間は毎日の日報の時間を使う、質にこだわらず完全に本人に任せる。
つまり、社員が兼務でオウンドメディアを運営する時、以下の3つを守った方が継続の可能性が高まる、というわけです。
「コンテンツ制作を内製化して継続するためのコツ」という質問にお答えするならば、「無理しない方法を考える」ということになるかと思います。
個人的見解でいえば、以下のような人をリーダーにして体制を作るのが良いと思います。
特に重要なのが3と5です。他は後からでもある程度身に付けることができますが、3と5は本人の内発的な要素で、他人が引き上げることが難しいためです。
このような条件を上げると、多くの人が「そんな人はいない」と思うかもしれませんが、中小企業なら、ほぼ近い属性の人がいるはずです。それは経営者や事業責任者です。並々ならない熱意を持っている彼らこそ、オウンドメディアの責任者として最適です。
もし、経営者や事業責任者が文章が苦手な場合には、文章が得意なスタッフが、彼らが話すことや考え方を言語化し、コンテンツ化するとよいでしょう。
この質問の難しさは、何をもって「良質」とするかにあります。
良質なコンテンツを生み出し続けるには、まず「良質」を定義する必要があります。SNSでシェアされる記事が良質なのか。CVに繋がる記事が良質なのか。直帰率が低く製品サイトに誘導できる記事が良質なのか。
コンテンツ運用のフェーズによっても変化すると思いますが、少なくともその時点で、何をもって「良質」とするかをきちんと定義できていなければ、「良質なコンテンツを生み出し続ける」ことはそもそも難しいでしょう。
そのため、「生み出し続けるコツ」は良質の定義によって変わりますが、コンテンツの質に影響を与えている構成要素を分解し、「良質」の定義に合致する成功パターンをつかんでいくのが、質を安定させる一つのポイントでしょう。
コンテンツの質の構成要素とは例えば、以下のようなものです。
それぞれに仮説を立て、検証しながら運営していくと、成功パターンが見えてき、やがてコンテンツの質が安定してくるのではないでしょうか。
逆にいえば、このような探求心を持たず、試行錯誤をせずにいきなり質を安定させるのは、どのような企業でも難しいのではないかと思います。
これもオウンドメディアの問題ではなく、組織の問題ですが、一体感を生み出す、なんらかの共同作業をするとよいのではないかと思います。
例えば私たちがwebサイトを作るとき、よくワークショップを行いますが、そこには必ず、マーケティング担当と営業担当に同席していただきます。そしてワークショップの中ではチーム分けし、共同作業をしてもらいます。
webサイトに関する有用なアイデアを出すのが一番の目的ですが、お互いを理解して一体感を生み出すという副次的効果も期待して、このような取り組みを行っています。あるお客様から、「マーケと営業が一つのテーマについて話し合う機会が今までなかったので、とても良かった」と言われたこともありました。
組織の問題が、一度のワークショップで簡単に解決することはありませんが、マーケティングも営業も「良い顧客を獲得して売上に繋げる」という同じゴールを見ているわけで、分かり合える部分もあるはずです。それなのに協力し合えないのは、単にコミュニケーション不足ということも多いです。
質問にあるような、「足を引っ張りあう組織」であればなおさら、オウンドメディアを作る前に、ワークショップなど、密にコミュニケーションを取って率直な意見を交換し合う場を設けるべきだと思います。
文章力は抽象的な力です。まず「良い文章」の定義が曖昧で、人によっても変わります。さらにその「良い文章」を形作っている要素が複雑で、端的に表現できません。それ故に文章力はセンスであり、才能であり、鍛えられないものと思われています。
しかし、作家やプロのライターを目指すわけでないのなら、文章力はある一定までは誰でも鍛えられると思います。
例えば私たちの会社には、日報という制度があります。この日報は業務報告ではなく、その日の振り返りを書くものになっています。文字数に制限はありませんが、だいたい500~1000字くらいの文章を、全社員が毎日書いています。
この日報を運用していると、入社時に拙い文章しか書けなかったのに、一年もすればほぼ問題ない文章が書けるようになる、ということが起こります。最初は無機質な短文しか書けなかったのに、1~2年後に思わず感心するような文章を仕上げてくる人もいます。
つまり、「どうすれば文章力が上がるか?」のもっともシンプルな回答は、「毎日文章を書くこと」だと思います。これはチャットなどの短文ではなく、1,000字以上ある長文がいいでしょう。また、人前に披露する緊張感を伴った活動の方がいいと思います。
その上で、テクニック的なところとしては、以下を意識して文章を書くといいのではないでしょうか。
文章を極めようとすると際限がなくなりますが、オウンドメディア用と考えれば、それほど高度な文章力が求められるわけではありません。そのため、日々文章を書く習慣と、いくつかの心がけで、最低限の文章力は身に付くのだと思います。
当社では人事評価への反映やインセンティブはありません。正解はありませんが、私自身はコンテンツを書くことに報酬を与えることには反対です。
なぜなら、コンテンツを書く動機は「読んだ人を喜ばせたい」という気持ちであるべきで、「報酬を得たい」であってはならないと思うからです。そうすることで、文章は熱量を失い、魅力を失います。
また報酬に反映されなくなると、途端に書くことを止めてしまうでしょう。行動経済学などでも証明されていることですが、報酬を与えると人は打算的になり、報酬が目的になり、報酬に見合わないと行動しなくなる傾向があるのです。
コンテンツをたくさん書いてくれる人になんらかの評価をしたい場合には、コンテンツを書くことで磨かれたスキルが生んだ成果に着目すべきだと、私は思います。
コンテンツを積極的に書いていると、普通、知識が体系化され、言語化能力が磨かれ、社外への影響力が高まっていきます。それが結局は事業に好影響を与え、なんらかの貢献するはずです。そのことを評価すればよく、コンテンツを書くことそのものを評価する必要はないと思います。
「報酬がないからコンテンツを書かない」という組織があるとしたら、その問題は報酬がないことではありません。報酬がないとコンテンツを書かない体質が問題なのです。
コンテンツを書く意義、事業にとっての必然性、書いた人が得られるメリット、そういう説明がないから、「報酬がないからコンテンツを書かない」という発想になるのかもしれません。あるいは今まで安易に報酬を与えてきたから、報酬がないとやる気が起きないのかもしれません。
報酬などなくても、コンテンツが安定共有されるチームを作る。これもまた、オウンドメディアをインハウスで運営する企業が考えるべきポイントの一つといえます。
オウンドメディアの事例を紹介する前に、オウンドメディアの分類についてご説明しておきます。
中央集権型とは、編集部を持ち、スケジュールとクオリティをきちんと管理して運営するタイプのオウンドメディアです。マーケティング目的で明確に数字の成果を得るなどに向いています。中央集権型の場合、記事は外部委託と社内制作の選択肢があります。
コミュニティ型とは、投稿のタイミングやクオリティは社員に任せてしまうオウンドメディアです。社員同士のモチベーションやナレッジ共有など、組織づくりを目的とするのに向いています。組織づくりが主目的となるので、記事は基本的に内部制作になります。
このように分類した上で、まずは中央集権型×社内制作のオウンドメディアの事例としては、以下があげられます。
中央集権型×(一部もしくは全部)外部委託のオウンドメディアとしては、以下があげられます。(私の推測含みであるため、外部委託していないオウンドメディアも含まれている可能性があります)
そして、コミュニティ型の事例は少ないですが、以下はそれにあたるでしょう。
これらオウンドメディアが成功しているかどうかは、何を目的に運営しているかも含めて、中の人に詳しく話を聴かないとなかなか判断できないかと思います。
そのためここでは、私が担当者さんから具体的な話を聞いたことがある、クラスメソッドさんの『Developers.IO』とサイボウズさんの『サイボウズ式』についてご紹介します。
クラスメソッドさんは、AWSを使ったインフラ開発、ビッグデータ基盤の構築、アプリ開発、AIやIoT活用などを行う、社員の8割がエンジニアというテックカンパニーです。
そんな彼らが運営する『Developers.IO』は、エンジニア向けの技術情報の提供をメインとしたオウンドメディアですが、2万近くの膨大なページ数と、月間200万PV超というトラフィックを誇っています。これを、社員だけで実現したのが驚きです。
オウンドメディアはもはや社内文化になっており、多い時には一日に20~30件ものコンテンツが自主的にアップされます。またこれだけのトラフィックを誇るだけに、当然顧客獲得や採用にもかなりの好影響を与えています。日本国内でもっとも成功しているBtoBオウンドメディアといっても、言い過ぎではないでしょう。
なお、『Developers.IO』については、代表の横田さんに私が取材した記事もあります。こちらに取り組み内容や経緯や考え方が詳しく書かれていますので、ご覧ください。
そしてもう一つ、サイボウズさんの『サイボウズ式』はとても有名なBtoB企業のオウンドメディアですが、社長の青野さんの発言、各イベントでのサイボウズさんの登壇内容、現代の働き方に疑問を投げかける映像コンテンツ、そしてコーポレートサイトから垣間見えるコーポレートブランドの方針と、すべてがリンクしています。
『サイボウズ式』にはKPIがないことでも有名ですが、オウンドメディアを単体施策としてみておらず、企業全体の大きな取り組みの中での役割がある程度明確だからこそ、KPIを必要としていないのかもしれませんね。
そんなことはありません。
オウンドメディア運営するにあたって、コンテンツのテーマやクオリティ、運営体制だけでなく、デリバリー、つまりコンテンツを送り届ける方法も、考えるべき重要な課題の一つです。どんなに素晴らしいコンテンツを作っても、読んでほしい相手に届かなければ、そのコンテンツは全く機能しません。
デリバリーの手段も色々ありますが、比較的コストをかけずに自力で開始でき、かつ上手に活用すれば安定的に効果を発揮するのが、SEOとSNSです。
SEOは、長期的な集客を期待するならぜひ考えたい視点です。どんなにSNSで記事がバズっても、半年や1年間のトラフィックとなると、自然検索からの流入の方が多くなることは珍しくありません。
このSEOと併せて意識したのがSNSです。SNSでバズを起こすことができれば、より多くの人にコンテンツを届けられるようになります。バズることをネガティブに捉える意見もありますが、「バズる=人を惹きつける魅力がある」ということなので、コンテンツの質の参考指標としてシェア数を気にするのは、悪いことではないと思います。
さらにSNSで拡散されると、SEOへの好影響も期待できます。アルゴリズム的にはSNSでのバズは検索順位に影響しないようですが、バズるとまとめサイトやブログなどで取り上げられるなど外部リンクが増えるため、SEO面で有利に働くことが多いです。
このバズを起こすためには、フォロワー数が多いSNSアカウントを持っている方が有利です。つまり、コンテンツのデリバリー戦略としてもSNSは有効なわけです。
また、BtoBだからSNSは効かないというのは固定観念だと思います。「キーマンがSNSを使っていない」という話はよく聞きますが、BtoBマーケティングは、購買プロセスに複数の人間が関わります。
つまり、例えキーマンがTwitterを使っていなかったとしても、社内の情報通がTwitterを活用していれば、彼らを通じて社内で情報が流通します。実際に私たちの会社でも、Twitterなど無縁だろうというBtoB企業から、「社員に教えてもらった」という理由で声がかかることは少なくありません。
また、Twitterの習慣がある人物が別の企業に転職して、新しい職場で影響を及ぼす可能性もあります。このように視野を広げて考えると、BtoBにおいてもSNS活用の可能性は大きく広がっているように思います。
BtoBにおけるSNSの有効性は、こちらのnoteにも詳しくまとめていますので、よろしければご覧ください。
「コンテンツSEO」という言葉が広く使われるようになったのは、私の記憶が正しければ、2012年頃と思われます。ペンギンアップデートと呼ばれるGoogleによる大規模なアップデートが実施され、企業のSEOの取り組みが大きく変わった時期です。
それまでは、外部リンクをひたすら集積するいわゆるブラックハットSEOが成果を上げていた時代でした。リンクファームと呼ばれる、リンクの集合体のようなwebページをSEO業者が作り、企業はお金を払い、そこにリンクを張るような手法が横行していました。これらを、ペンギンアップデートは無効にしました。
そして、外部リンクの購入という抜け穴が使えなくなった後、次に注目された手法が、いわゆる「コンテンツSEO」と呼ばれている手法です。
これは、コンテンツを充足することで、検索エンジンの上位表示を目指す、という考えです。といっても、この考え自体は、Googleの基本方針そのままであり、あえて「コンテンツSEO」などという呼び方をする必要もありません。
しかしおそらく、「外部リンクを増やすSEO」「ソースコードやサイト構造などのテクニカル面を変更するSEO」との区別で、「コンテンツSEO」という俗称が使われはじめたのだと思います。
SEOの本質であるはずの「コンテンツSEO」ですが、お金で解決したい企業はまたもアルゴリズムの穴を突き、コンテンツの質ではなくコンテンツの量で上位表示を目指す企業が増えました。その結果、検索結果はまたしても、低質なコンテンツで汚染されていくようになりました。
例えば、ある一定のルールに基づいてページに8000文字を超える大量の文章を詰め込むことでSEO上有利にすることが、一時期は可能でした。2012年以降に台頭してきたクラウドソーシングが、低質なコンテンツの量産を可能にしました。
しかしながら、Googleのアルゴリズムもそれから進化し、SEOを目的とした低質なコンテンツの量産は、現在はあまり有効ではなくなっています。一時的に有効であったとしても、中長期的には有効ではなくなっています。このことをもってして、「コンテンツSEOは終わった」と言われるのだと、私は解釈しています。
しかしながら、「コンテンツSEO」という言葉を、良質なコンテンツを作って検索エンジンで上位表示されるようにすることと文字通り受け取れば、コンテンツSEOはまだ終わってはおらず、今もこれからも有効であると私は思います。
Googleのアルゴリズムは一貫して、良質なコンテンツを上位表示されるためのアルゴリズムの研鑽を続けています。ここでいう良質とは、ユーザーにとって真に有益なコンテンツ、という意味です。
言い換えれば、コンテンツを提供する側は、ユーザーにとって真に有益なコンテンツを提供しようとしていれば、Googleのアルゴリズムはやがて拾ってくれるだろうし、今後のアルゴリズム変更で急に下落することもない、と受け取ることができます。
つまり、本質的なコンテンツSEOは終わっていないが、基本的に私たちはアルゴリズムではなくユーザーを見てコンテンツを作り続けなければならない、と考えておく必要があるでしょう。
ベイジは、ウェブサイトの最重要要素はコンテンツだと考えています。そのために、自社で正社員のライターを複数名抱えて、専任のライターチームを編成し、ナレッジの共有やコンテンツの制作を行っています。
これまでに蓄積したオウンドメディアやコンテンツに関する知見をご提供するサービスも用意しています。必ずしも制作が発生しなくても、コンサルだけ、コンテンツ制作だけのお仕事もお請けしています。オウンドメディアの運営支援から、コンテンツの品質改善、社内研修まで、お気軽にご相談ください。