BtoBのマーケティング&セールスは「オフラインの活動が不可欠」と多くの企業で言われてきました。しかし今、コロナショックと急速なテレワーク推進により、オフライン施策のほとんどが実施不可能になっています。
予期せぬ急激なゲームチェンジに多くのBtoB企業が戸惑っていますが、この新しいゲームの勝利条件は実はシンプルです。多くの場合、BtoBマーケティング&セールスは、以下のチャネルと施策の組み合わせて構成されていますが、これらをオンライン前提で再設計すればいいわけです。
このような考えに基づき、BtoBマーケティング&セールスをフルオンライン化するための道筋を、施策別にまとめてみました。
状況が流動的な現状において、あくまで想像に過ぎない部分も多々あると思いますが、ご了承ください。また相変わらずですが、文字数が約2万字と膨大なため、すべてに目を通す必要はありません。皆さんの企業で実践している、関心がある施策を中心に確認するだけでもいいと思います。
対策:交通広告はウェブ広告に移行し、足りない分は他のオンライン施策で補完する
BtoBといえば「広告が効かない」などと言われていた時期もありましたが、近年は資金力のあるSaaSを中心に、テレビ広告やタクシー広告などを積極活用する企業も増えていました。
このうちテレビ広告に関しては、自宅でテレビに接触する機会が減るわけでもなく、引き続き有効と考えられます。緊急事態宣言になり、BtoB企業のテレビ広告も以前ほど見かけなくなりましたが、未だに継続している企業も存在しているのは、変わらず有効である、という判断をしているからでしょう。
一方、タクシー広告に代表される交通広告や屋外広告については、屋外活動の減少に伴って、リーチ(到達率)とフリークエンシー(接触頻度)が大きく減少するはずです。都内では電車内の動画広告や駅構内のサイネージ広告も一般化していましたが、これらの広告効果も期待できなくなりました。
失ったオフライン広告の成果は、ウェブ広告で取り戻すのが現実的な考え方でしょう。ウェブ広告は当然広告料がかかりますが、他のオンライン施策と比べて即効性があります。
またオフライン広告のように「検索はこちら」と誘導する必要はなく、デジタル上で認知→デジタル上のプラットフォームに誘導→デジタル上コンバージョン、とシームレスに行動が繋がります。これまであまり成果が出ていなかった広告を整理し、効率の良い広告に絞っていけば、オフライン広告以上の成果も期待できます。
詳しくは、「オンライン① ウェブ広告」をご覧ください。
対策:ウェビナーを積極活用しつつ、新しい枠組みも模索する
顧客数が少なく、ターゲットと接点を持ちにくいのが、BtoBの特徴です。だからこそ、会期中に数百~数千のターゲットと接触できる展示会は非常に重要なチャネルです。人気のブースは取り合いで、1年以上前から予約する必要がありました。
展示会で名刺を獲得し、その情報をMA(マーケティングオートメーション)に登録し、数日以内にフォローアップのコールやメールをするのは、BtoBマーケティングの定番施策となっています。
また近年は、ホテルのバンケットやカンファレンスホールなどを貸し切った大規模イベントを自主開催するケースも目立ちました。業界の著名人が多数登壇する傍らで協賛企業のブースが設置されるのが、この手のイベントの基本フォーマットとなっています。
しかしながら、コロナショックによってこのすべてが実行不能になりました。
自社開催イベントのオンライン化は既に進んでいます。Zoom等が提供しているウェビナーの仕組みをうまく活用すれば、同規模のイベントをオンライン上で実現することはさほど難しくありません。数千万円ともいわれるイベント費が不要になる分、リードあたりの獲得コストはウェビナーの方が低いかもしれません。
展示会については、「オンライン展示会」の枠組みが立ち上がれば、展示会のオンライン化が一気に現実的になるかもしれません。似たようなサービスは既にあるようですが、以下のような仕組みなら、展示会のオンライン化が可能になります。
環境構築はさほど難しくはなく、セッションやオンライン商談などは、各社で用意しているZoom等のURLに飛ばせば、大したインフラを用意せず、WordPressだけで一週間ほどで構築できるはずです。
もちろんこのオンライン展示会の企画や集客、マネジメントは必要になりますが、知名度のある企業が中心になって連合軍でやれば、それもクリアできるかもしれません。
対策:ウェビナーにどんどん移行していく
ここでいうセミナーとは、数名~数十名ほどが参加する自社開催のセミナーのことです。
セミナーにはオープンセミナーとクローズドセミナーが存在します。オープンセミナーは基本的には誰でも参加できるセミナーです。セミナー参加時にリード情報を獲得する、リードジェネレーションのための施策としても行われます。
参加者が制限されたクローズドミーティングは、リードナーチャリング以降で活用されます。MAを導入し、リードの属性や行動履歴に合わせてセミナーに招待し、商談化への可能性を上げるといったこともよく行われています。
また、成約直後の顧客向けの導入勉強会、あるいは既存顧客向けのユーザー会として開催されることもあります。
このセミナーは、ウェビナーで代替可能です。日本ではこれまでウェビナーはあまり浸透してきませんでしたが、ウェビナーの方が優れている点も多く、テレワークに関わらず、今後も積極的に使って行きたい施策です。
後述する「オンライン⑤ ウェビナー」で、もう少し詳しく説明します。
対策:メールに移行する
数日ぶりにオフィスに行くと、ポストの中が郵送物でいっぱいになっていたりします。法人向けのマーケティング施策として、未だDM(ダイレクトメール)が積極的に行われていることの証です。
時には、直筆の手紙(レター)が届くこともあります。要職の方には、このような直筆の手紙の方が読まれやすいという話もあります。
個人情報保護法がある日本では名簿を購入することはできませんが、法人の住所や代表者の氏名は登記簿やwebサイトで確認できるので、郵送物を一方的に送るようなマーケティングを合法的に行うことができます。ROIの観点からいってもある一定の成果があるため、現在も根強く実施されているのでしょう。
いきなり送り付けられてくる郵送物は多くの人にとって迷惑なものですが、これも属性や行動履歴から相手のニーズに合ったDMやレターを送ることができれば、好意的に受け取ってもらえる可能性も高まります。
ただしこの施策はオフィスに人がいることが大前提です。テレワーク推進でオフィスに人がいなくなっている今の状況では、これまでのような成果は期待できないでしょう。
このDMやレターは、メールで代替するのが一番現実的でしょう。ただ、フルオンライン時代のマーケティングは、メール依存がより強まり、その結果、一人が受け取るメール量は増え、読まれる確率が下がることが予想されます。
このことは後述する「オンライン④ メール」で詳しく説明しますが、DMにしろ、レターにしろ、メールにしろ、相手が望まない情報は即ゴミ箱行きになるということは、変わらず意識しておくべきでしょう。
対策:携帯電話番号、メール、もしくはSNSのメッセージ機能に移行する
1800年代に誕生した電話という通信手段は、インターネットが主流となった21世紀においても、BtoBマーケティング&セールスにおいて主役に近い立場を維持してきました。
DMやレターと同様に、法人の登記簿やwebサイトに記載された連絡先に突撃してくるテレアポ(コールドコール)は、デジタルマーケティングの時代になってもなくなりませんでしたが、それは一定の成果を上げるからです。
BtoBマーケティング&セールスの世界では電話のことを「コール」と呼ぶことも多いですが、ファネルを下るにしたがい、コールの重要性は増していきます。
商談化率を高めるためにはリード獲得後のコールは欠かせないという企業は少なくありません。10分以内にコールするより5分以内にコールする方が、顧客化の確率が4倍高まるという調査結果もあります。
セールスのプロセスに入ってもコールは活躍します。インサイドセールスはコールで行われるのが主流です。フィールドセールスに入ってからも商談後のフォローコールは重要です。コールを重視している企業は、トークスクリプトを用意し、どのタイミングでどういうコールを行うと成約率が高まるかを知っています。
しかし今、テレワーク推進でオフィスに人がいなくなり、コールが繋がりにくい状況になりました。
大手企業では、一人一台スマートフォンを貸与、オフィス不在時は携帯電話に転送する、といった環境を整備していることもあります。しかし、すべての顧客がそうだ、ということはほとんどないでしょう。
そのため、以下の3つの併用が現実的な対策になるでしょう。
① 携帯電話番号を取得する
② メールで代用する
③ SNSのメッセージ機能で代用する
これまでのコールと同じようにマーケティング&セールスを進めるなら、手っ取り早いのは、連絡先を携帯電話番号にすることです。入力フォームの項目に、携帯電話の番号を入力するだけで対応は済みます。
ただ、仕事関係の問い合わせや情報収集で、個人の携帯電話番号を教えることに抵抗を示す人もそれなりに存在するはずです。
そうなると、次に候補となるのがメールです。メールアドレスを持っていないビジネスパーソンは少数派ですし、リード情報として会社のメールアドレスを提供することはそれほど抵抗を感じないはずです。
そして次に注目したいのが、TwitterやFacebookのメッセージ機能です。メールと比べてより心理的な距離に近い距離感でメッセージを受け取ることができるようになります。
問題は、リード情報の中に、TwitterやFacebookのアカウント情報を取得することがほとんど行われていないことです。またTwitterやFacebookをやっていない、仕事用には使いたくない、という人も少なくはないでしょう。
そのため、全リードに対して使える手段ではありませんが、上手に関係性を作っていけば、電話やメール以上の効果をもたらすかもしれません。
対策:コンテンツとSNSを使ってダークソーシャル上でのクチコミを増やしていく
BtoBの認知経路として、クチコミや紹介は非常に強力です。
「あの会社がいいよ」「あのサービスがいいよ」と人に言われ、それ以上の情報収集はせず、指名検索でwebサイトに訪問、フォームに直行していきなり問い合わせをする、ということは珍しくありません。
非常に専門的でニッチな商材は、そもそもネットで情報収集をされないこともあります。また、紹介から指名検索でコンバージョンしたリードの方が、リードタイムが短く、成約単価が高くなる傾向も見られます。
クチコミマーケティングといえばBtoC向け施策と思われがちですが、実はBtoBでも、業界内や顧客企業内でのクチコミを誘発させるマーケティング手法は有効です。
フルオンライン化の時代になると、クチコミと指名検索の重要性がさらに高まると私は考えています。その理由の一つとして、展示会などの情報収集の場は失われるからです。もう一つの理由は、商談などがオンライン化されて信頼の担保が難しくなる中で、信頼できる人物の推薦や意見を重視する傾向がより高まると予想されるからです。
ただし、クチコミがより強くなるといっても、これまでオフィス内で発生していた会議室、休憩室、ワークスペース、ランチ時のクチコミは、フルオンラインでは発生しなくなります。つまりクチコミの総量が減る可能性があります。
そのため失ったクチコミを、メール、チャット、グループウェア、あるいはオンラインの社内会議上など、いわゆるダークソーシャル上で交わされるクチコミで補っていく必要があります。
具体的な方法については、「オンライン③ SNS・ダークソーシャル」の章で解説しますが、このクチコミのマネジメントこそ、フルオンライン時代における効果的・効率的なBtoBマーケティング&セールスの鍵になるのではないかと、個人的には思っています。
対策:交流会や懇親会はオンラインに、接待はオンラインゲームでの代替を模索する
BtoBでは、懇親会や交流会からビジネスが発生することがあります。ユーザー向けの交流イベントに招待された企業が新しい顧客になることもあるでしょう。
また近年は減った印象もありますが、接待が重要視される業種や業態もまだ存在するはずです。接待ゴルフがトップセールスの一手法として成立している企業が存在しても、不思議ではありません。
しかし当然ながらコロナショックによって、交流会や接待の類はすべて実施できなくなりました。
このような状況の中、交流会のようなものは、「オンライン飲み会」で代用されていく可能性が高いと思われます。
オンライン飲み会では、大人数になると話を裁く幹事(ファシリテーター)が必要だったり、沈黙が生まれやすかったり、終わる時間を決めておかないとダラダラ続いてしまったり、ということが起こりえます。
ただこのようなことは何度か経験すれば慣れることです。むしろその手軽さから、オンライン飲み会は日常的な息抜きとして今後定着していくことでしょう。
こうして一般化したオンライン飲み会は、やがて顧客企業に対しても実施するオンライン接待に発展する可能性を秘めています。
オンライン接待だと接待交際費が発生しません。つまり、金銭を介した癒着にはなりにくいわけです。また立場を利用したパワハラやセクハラも起こりにくいです。このような利点を考えると、カジュアルかつ健全な顧客とのコミュニケーションの一手法として、オンライン接待が注目される可能性があります。
また接待ゴルフのようなことに関しては、オンラインゲームがその代替手段になるかもしれません。オンラインゲームでは、Disordなどの音声チャットを同時に立ち上げて、通話しながら遊ぶことが一般的に行われています。
フルオフラインの時代になれば、営業先の意思決定者とオンラインゲームを楽しみつつ、ゲーム中の会話から大きな商談をまとめる、といったことが起きるかもしれません。
対策:CPA/CACの高い広告に絞り込みながら運用継続・一部拡大する
景気が後退局面になると、広告予算は真っ先に削られがちです。しかしながら、ただでさえ売れにくい状況で広告を削減すると、商材を知る機会がさらに減り、さらに売れなくなる、という悪循環に陥る可能性もあります。
特に今回のコロナショックとテレワーク推進によって、オフラインでのリード獲得手段を断たれたBtoB企業は、他のオンライン施策と比べると短期的に成果が出やすいウェブ広告に活路を見出すべき、ということも多いのではないでしょうか。
営業が強く既存顧客からの引き合いだけでビジネスが成立していたので、これまでウェブ広告を一切やってこなかった、というBtoB企業は少なくありません。そんな企業こそ、今はウェブ広告を始めてみるいい機会かもしれません。
またこういう企業は、同時にSEOにも取り組むべきと思いますが、記事制作が必要、成果が出るのにやや時間がかかることが多いなど、中長期施策という性質が強いです。短期施策として、あるいはSEOの成果が明確に出るまでは、ウェブ広告を並走させる必要があると、私は思います。
ウェブ広告といっても、種類は膨大にあります。配信プラットフォームとしてはGoogle、Facebook、Instagram、Twitter、YouTube、Spotify、各種アフィリエイトネットワーク、配信形態としては検索連動型、フィード型、リターゲティング型、表現もテキスト、画像、動画、音声と多種多様です。
そのため、専門的な知識を持たずにいきなり成果を出すことは難しいですが、知識豊富なウェブ広告の代理店と付き合い、上手に使いこなせばCPA(Cost per Action)やROAS(Return On Advertising Spend)やCAC(Customer Acquisition Cost)を低く抑えられる、コストパフォーマンスの高い広告運用が可能になります。
一方、これまでウェブ広告も積極的に活用してきたBtoB企業の場合、これからウェブ広告で劇的に成果を出し、オフラインで失った成果を取り戻すのは難しいかもしれません。
そういう企業でも、Instagram広告やYouTube広告など、これまで「効果がない」と決めつけていた広告があれば、これを機に挑戦してもいいでしょう。特にInstagram広告は出稿しているBtoB企業が少ないこともあり、比較的狙い目であるという話も聞きます。
ウェブ広告は少額から始められ、効果を見極めてPDCAを回しながら、徐々に育てるように運用できます。また、お金がかかること、広告出稿を止めると効果が失われることはデメリットのように言われますが、広告費を出せば一定の効果が出る、と言い換えることもできます。さらに、SEOだけだと検索面、SNSだけだとSNS面しかとれないですが、ウェブ広告は検索面やSNS面を含んだ、より多くの面を取ることができます。
今は、複数の施策を同時並行で進めるべき状況だと思いますが、オフライン施策が実施できず販促予算が宙に浮いているような企業ならなおさら、ウェブ広告は現状を打破する第一の選択肢になるのではないでしょうか。
なお、ウェブ広告は基本的にリンクであり、飛び先としてのLP、webサイトなどが必要になります。そのため、ウェブ広告が成果に繋がるかは、広告からの飛び先であるLPやwebサイトの品質に左右されるのは当然のこと、何をもってウェブ広告の成果とするのかといった目標設定も大切です。
一気に問い合わせまで繋げるのか、その手前のホワイトペーパーなどの資料ダウンロードやメルマガの登録などにするのか、ウェブ広告からどのようにアクションにつなげていくかなど、営業フローに沿った目標設定を行わないと、せっかく実施したウェブ広告の成果が正しくジャッジできなくなります。
ウェブ広告を実施する際には、広告のリンク先改善、情報の取得方法なども含め、何が最も成果を上げるのかを常に考えながら進める必要があります。
BtoB企業における成果に繋がるウェブ広告戦略に関しては、アナグラムさんも豊富に知見を持っており、マーケティングの上流から適切な広告運用についてコンサルティングが可能です。より具体的にはアナグラムさんにも相談してみてください。
※内容の一部をアナグラムさんに監修いただきました。
対策:初級SEOは確実に行い、中級SEOは他の施策との兼ね合いで実施する
SEO(Seach Engine Optimization:検索エンジン最適化)とは、自然検索で上位表示させ、サイトへの流入を増やし、それによってコンバージョン数や売上のアップに繋げていく施策です。
BtoBサイトは、企業名や製品名を指定した指名検索からの訪問が多く、コンバージョンに繋がる自然検索流入はほぼ指名検索、ということも珍しくありません。一方、SEOが狙うのは企業名や製品名を含まない一般キーワードでの流入です。このようなことから、これまでSEOに真剣に取り組んでこなかったBtoB企業も多いことでしょう。
このSEOを上手に行えば、広告に頼ることなく、効率よく集客ができると一般的に言われていますが、どのくらいのレベル感で取り組むべきかは、以下のように分類して考えるべきでしょう。
「上級SEO」とは、検索エンジンのクロールやインデックスを効率化するためにディレクトリ構造やソースコードに手を加えるようなテクニカルなSEOのことです。
これは、膨大なページ数やトラフィックを有する巨大サイトが意識すべき領域です。月1万セッションで十分、月10万セッションなら上出来、ということが多いBtoBサイトにおいては、あまり考えなくていいでしょう。
一方、「初級SEO」は、インターネットにコンテンツを公開するのであれば、すべてのwebページ、webサイトが満たすべき基本的なSEOです。ここでやるのは以下のようなことです。
① タイトルや文中の言葉を、顧客が検索に使う言葉に置き換える
② 顧客が検索する言葉に対応するページを作る
③ 検索した言葉に対する丁寧な回答をコンテンツ化する
初級SEOにおいて、「顧客が検索に使う言葉」を難しく考える必要はありません。SEOの専門ツールも不要です。顧客を知るメンバーと1時間くらいブレストをして、出てくるアイデアを元にするだけでも十分です。
例えば、私たちのようなweb制作会社を探すとき、普通は「web制作会社」「ホームページ制作会社」などの言葉を使うでしょう。最近のGoogleのアルゴリズムは、同義語もある程度吸収してはくれますが、まだ完璧ではありません。もし自社のwebサイト内で「webプロダクション」「デジタルクリエイティブカンパニー」といった言葉を使っているなら、顧客が検索に使う言葉に置き換えた方がいいでしょう。
また、「コーポレートサイト」「採用サイト」といった、顧客が検索に使うであろう言葉に対応する説明ページがないなら、それを説明するページを個別に作ります。
あくまで単純想起できるキーワードに対する基本的な対策が、初級SEOです。ここではSEOの専門家はそれほど必要ないでしょう。SEOの本を一冊読み、SEOを最低限理解したweb制作会社と相談しながらでも十分対応できます。
これまでSEOをまったくやってこなかったBtoB企業なら、初級SEOには今すぐ取り組むべきです。これはコロナショックとは関係なく、インターネット上で一人でも多くの人にコンテンツを見てもらえるようにするための、最低限のマナーのようなものです。
一方、初級SEOをある程度実施している企業が考える次のステップといえるのが、「中級SEO」です。
中級SEOでは、キーワードを抽出するためのツールを使い、より多様なキーワードの可能性を網羅的に考察していきます。SEOの初心者が一時間程度のブレストで思いつくような簡単なキーワードではなく、他業種におけるキーワードの利用傾向などから顧客のインサイトまで深堀し、巧妙にキーワードを導き出し、リストアップしていきます。
コンテンツに関しても、検索アルゴリズムをある程度理解した上で、検索上位に表示されている競合サイトを調査し、より戦略的なコンテンツ作りを行っていきます。
中級SEOになると、専門家の手を借る必要が出てきます。ただし、BtoBでこのレベルのSEOまで手を出すべきケースはかなり限られているようにも思います。
可能性だけでいえば、「ユーザーインサイトを把握してコンバージョンに繋がるキーワードを見つけ、良質なコンテンツを作ること」は、あらゆる企業で可能です。
しかし、様々なBtoBサイトを手掛けてきた私の経験でいえば、「ユーザーインサイトを理解してコンバージョンに繋がるキーワードを見つける」ことも、「良質なコンテンツを作る」ことも、口でいうほど簡単ではありません。
競合がそれほど多くないBtoBビジネスであるほど、いくつかのキーワードで上位表示させてトラフィックを稼ぐだけのSEOであれば比較的簡単に成果を出すことができます。しかし、「きちんと顧客化するキーワード」となると話は別です。
これまでSEOに取り組んできたBtoB企業から、流入は増えたがコンバージョンには繋がらない、これ以上の伸び代が見えない、という相談を何度か受けることがありました。そのうちいくつかは、SEOでこれ以上の解決は難しく、他の施策に力を入れた方がよいのでは、という状態でした。
またSEOは、上位表示されるまで時間がかかることも多く、Googleのアルゴリズムによる不確実性もはらんでいます。
このような諸々を考えると、コロナショック下のBtoB企業におけるSEOの基本方針は
① 初級SEOは最低限のこととしてやっておく
② 中級SEOまでやるかは要検討(必要ない企業も多い)
ということになるのではないかと思います。
なお、前述の通り、BtoBでテクニカルなSEOが求められることはほとんどなく、基本的にはコンテンツありきのSEOになります。ただそれも、SEOをやろう→コンテンツを作ろう、と発想の順番ではなく、顧客の役に立とう→コンテンツを充実させよう→そのためのデリバリー手段としてSEOを意識しよう、という発想の順番が健全だと思います。
つまりBtoBにおけるSEOとはコンテンツ施策であり、コンテンツとそれを格納する器があった上で、検索されやすくするにはどういう文章にすべきか、SNSでシェアされるためにはどういうテーマとタイトルの切り方にすべきか、という流れで考えるべきです。
そのためSEOは単体施策として考えるのではなく、後述する自社サイトやオウンドメディア運営と一緒に考えていくべきでしょう。
対策:コンテンツ施策と並行し、Twitterの個人アカウント運用を強化する
ビジネスSNSとして有名なLinkedInが普及していない日本で、SNSを有効活用しているBtoBの事例は極めて少ないですが、コロナショックによってオフライン施策の多くが断たれた今、その重要性は急激に高まっていると感じます。
SNS利用というと公式アカウントの運用を想像する人も多いかもしれませんが、BtoBマーケティングに効くのは個人アカウントです。流通している情報やタッチポイントが少ないBtoBでは、個のブランドが商材のブランドに直結しやすく、SNS上でのフォロワー数やエンゲージメントが、ビジネスに好影響を与える可能性が生まれます。
このあたりのロジックとBtoBにおけるSNS運用の基礎については、以下の記事をあわせてご覧ください。
BtoBマーケティング&セールスのフルオンライン化において、SNSは非常に重要なチャネルであり、以下のような様々な役割を期待できます。
① SNSでの投稿による認知獲得
② SNSのアカウント運用によるブランディング
③ イイネやリプライなどによる緩やかな関係構築
④ コンテンツのデリバリー手段の構築
⑤ SNSのメッセージ機能による電話やメールの代替
⑥ ダークソーシャルを利用したリアルのクチコミの代替
このうち①~④については想像が容易なので説明は割愛し、⑤と⑥について少し詳しくお話しします。
まずは⑤について。
オフィスに人がいなくなり、電話は繋がりにくくなりました。その影響を受けてメールの総量が増えることが予想されます。そこで活用したい第三の連絡手段が、SNSのダイレクトメッセージ機能です。
心理的な距離が近いSNSを上手に使えば、電話やメール以上に深い顧客との関係を築くことができます。あるマーケターはFacebookのメッセージを経由して安定的に月10~数十件の問い合わせを獲得しているそうです。私自身も、月に数件はFacebookやTwitterのDMで相談がやってきて、一部はここから商談に繋がっています。案件化率も他のチャネルと比べて比較的高いです。
ただ、TwitterやFacebookは、フレンド関係ではない人物からのメッセージは、別の場所に格納されてしまいます。また無神経なダイレクトメッセージを送ると、ブロックされて二度と関わりを持てなくなってしまいます。
そのため、低質なテレアポやメルマガのような、数を打って成果を上げるスパム的なコミュニケーションはSNSでは向いていません。相手を喜ばせる、相手に受け入れられるコミュニケーションをすることが最低条件になります。
次に⑥の、リアル・クチコミの代替手段としてのSNSの利用価値について。
「BtoBにSNSは効かない」という主張の根拠として、アクセス解析などで分析しても「Social」からの流入は少なく、そこからのコンバージョンとなるとさらに少ない、ということがあげられがちです。
しかし、SNSで認知が拡がって増えるチャネルは「Social」ではなく、「Organic」か「Direct」です。「Organic」は社名などを含む指名検索、そして「Direct」とはダークソーシャルからの流入です。
ダークソーシャルとは、FacebookやTwitterのようなオープンなソーシャルメディアとの対比で生まれた概念で、アクセス解析などでは可視化されない「見えないソーシャル」のことです。
会議室や休憩室、自席での会話といったオフラインでのクチコミが生まれなくなった今、チャットやグループウェアといったダークソーシャルとそこで生み出されるUGC(User Generated Contents≒クチコミ)に注目する必要があります。
BtoBでは、SNSのようなオープンプラットフォーム上でクチコミが出ることはほとんどなく、多くは目に触れない場所で情報交換や議論が行われます。これは完全にはコントロールできませんが、良質なコンテンツを作り、SNSを通じてネットワーク上に流通させることで、それがダークソーシャルに行き渡り、閉ざされた社内情報空間内での評判を生み出し、ブランド構築を可能にします。
詳しくはこちらにまとめていますが、
このようなダークソーシャルの活用においても、起点となるのはやはりSNSなのです。
このように、①~⑥のことを総合的に考えていくと、フルオンライン時代のBtoBマーケティング&セールスにおいては、SNSの重要性が極めて高くなると私は感じています。
今までもそうでしたが、BtoBは高額商材になるほど情報収集をあまりせず、信頼できる人(経験者あるいは専門家)の評判で決める傾向があります。
その上、コロナショックでオフラインが封じ込められ、対面営業で得られていた情報(態度や姿勢、安心感といった定性情報も含め)が減ると、その傾向に拍車がかかるのではないかと思います。
そうなると、情報収集以前の段階からいかに評判を起こし、顧客/見込み顧客の頭の中に入り込んでいるかが、マーケティングの主戦場になるでしょう。そこに大きな影響を与えるのが、SNSです。
SNSといっても、LinkedInが根付いていない日本では、拡散性のあるTwitter、ネットワークを深堀できるFacebookだけが、事実上の選択肢になるでしょう。これらのアカウント運用と、SNSを前提としたマーケティングプランの再構築を検討し始める絶好のタイミングではないでしょうか。
対策:積極活用するとともに、効果的なメルマガ運用にシフトする
現在のビジネスにおいて、最も汎用性が高く、広く使われているコミュニケーションツールがメールです。最近は一人の社員に必ず一つのメールアドレスが発行されており、連絡手段としては電話以上の存在になっています。
近年はチャットも普及してきましたが、より多くの人を相手にしようと思ったら、やはりメールが第一の選択肢になります。コロナショックによって電話が封じられた今、メールはより一層の利用がなされるでしょう。一方、これ以上メールが増えて機能するのか?という問題もあります。
社団法人日本ビジネスメール協会が実施した『ビジネスメール実態調査2019』によれば、ビジネスパーソンは平均して一日に約38通のメールを受け取っているそうです。
1日に8時間労働だとすると、1時間に4~5通、10~15分に1通のペースでメールを確認し、必要に応じて処理するなりしなければいけない計算になります。部課長などの役職者になると、メールの量はさらに増加する傾向にあります。コロナショックによって電話が使えなくなった今、この数がより増加している可能性があります。
当然ながら、すべてのメールに真面目に向き合う人はいません。業務上必要なメールを優先し、それ以外はほぼ無視するはずです。マーケティング目的のメールの多くも同様の扱いを受けるでしょう。つまり、メールマーケティングの難易度はより高まるわけです。
そのため、オフライン施策で失ったコミュニケーション量を安易にメールで挽回しようとするのではなく、読み手の行動や心理にフィットした、より戦略的な「正しいメール配信」が必要になるはずです。
このメールマガジン運用については、ラクスの安藤さんが有益な記事をいくつかまとめています。以下の記事も参考に、運用を見直してみましょう。
メールマーケティングについては、ライトアップさん、フウカさんでコンサルティングも行っているそうです。より具体的なことは、この二社にも相談してみるといいでしょう。
対策:展示会やイベント、セミナーに代わる重要施策として積極活用する
ウェビナーとは「ウェブ」と「セミナー」を組み合わせた造語で、海外では随分前から定番のマーケティング施策となっていました。
オープンなウェビナーはリードジェネレーション、クローズドなウェビナーはリードナーチャリングを目的として実施され、クロージング直前や導入後のカスタマーサクセスのフェーズで開催されることもあります。
これまで日本ではウェビナーはあまり浸透していませんでしたが、今回のコロナショックで一躍脚光を浴びました。以前からウェビナーを開催していた企業では、コロナショック後には集客が3倍以上になり、また一度に数千人を集めるようなウェビナーも登場するようになりました。
ウェビナーは、コロナの脅威が過ぎ去った後も、BtoBマーケティングの手法として定着すると思われます。なぜならばウェビナーには、オフラインのセミナーよりも圧倒的に優れた点があるためです。
運営側にも参加者側にも多くのメリットがあるのがウェビナーです。これまで行われてきたイベントの多くが、ほぼ間違いなくウェビナーに取って代わられるでしょう。
ただ、ウェビナーは参入障壁が低い故に、すぐ飽和状態になることが予想されます。というより既にその傾向にあります。気楽に参加できるからこそ、ながら聞きされる、すぐ離脱される、ということも起こりえます。参加者は集めやすいが顧客化しにくい、ということにもなりやすいでしょう。
このような状態に陥るのを防ぐために、参加者の期待に応える「質が高いウェビナー運営術」を今から意識しておくべきです。例えば、
といったことです。また、近年のイベントのトレンドになっていますが、宣伝臭さを排除し、時間を使ってくれている参加者に貢献する、という姿勢もより一層大事になるでしょう。宣伝色が強いと思われると、すぐに離脱され、二度と参加してもらえなくなるかもしれません。
ウェビナー運営に関しては、才流さんが決定版といえる有益な記事をまとめていますので、こちらもご覧ください。
なお、広く遍く人を集めるオープンウェビナーの集客には、強いSNSアカウント、特にTwitterアカウントを持っていた方が圧倒的に有利です。ウェビナーを施策に組み込むなら、SNS運用も並走させるのがオススメです。
対策:対面営業をできるだけオンラインに移行し、ノウハウを蓄積する
安価な商材、仕様だけで選べる商材を除き、多くのBtoB商材は商談から契約に至るクロージングを、人が対面で行ってきました。それが不可能になった今、対面営業(フィールドセールス)を強みとしていた企業ほど、危機感に襲われているでしょう。
このような中で俄然注目が高まっているのがオンライン営業です。今の時点では、オンライン商談についてネットで調べてもツールの比較記事ばかりが出てきますが、つまりオンライン商談は、これから研究されるべきテーマだということです。
そんな中で、1200社の営業支援を行った実績があるセレブリックスさんの以下のホワイトペーパーはよくまとまっているように思います。
一部では、コロナが小康状態になれば、対面営業がまた営業の主役に戻るという見方もあります。オンライン営業はコロナショック下での応急措置、という考え方です。しかし私は、コロナの脅威が去っても、オンライン商談が営業のメインになってくるのでは、と考えています。なぜなら、オンライン商談の方が圧倒的に営業生産性が高いからです。
対面営業には移動があるので、1時間の商談に対してざっくりと約3時間を要します。そうすると1日8時間以内で実施できる商談は2件までとなります。この数を増やすために、営業ルートを工夫することが営業パーソンには求められていました。それでも8時間で3~4件が限界でしょう。それ以上の商談をこなすためには残業が必要です。
一方、オンライン営業になると移動時間が発生しないため、詰め込めば、1時間の商談を1日で8回開催できます。事務作業などで2時間使うとしても、1日に6回の商談を開催できます。対面営業で同じ数をこなそうとすれば、人員を2倍に増やす必要があります。これこそ、オンライン商談による営業生産性の革新です。
コロナショック下でオンライン営業を経験した多くの企業が、その圧倒的な有益性を思い知ったはずです。「営業は対面でなければ」という価値観の多くが固定観念であったことに気付いたはずです。いくつかのBtoB企業では、コロナ以前よりも成果を出す営業パーソンが生まれているという話も聞きます。
まともな経営者や営業マネージャーであれば、コロナの脅威が過ぎ去っても、オンライン商談を有効活用するでしょう。これからの時代は、オンライン営業こそが営業のスタンダードになる可能性が高いというわけです。オンライン商談への移行が遅れるほど競争力を失うといえるかもしれません。
オンライン商談がスタンダードになると、THE MODELなどで定義されているインサイドセールスの位置づけも大きく変わります。
これまでのインサイドセールスの主な役割は、マーケティングがクオリファイしてきたリード(MQL)を受け取り、電話などでヒアリングし、有望なリードを見極め、フィールドセールスが受け入れるリード(SAL)を増やすことでした。
しかし、フィールドセールスもオンライン化すると、インサイドセールスとの役割が曖昧になります。インサイドセールスがクロージングまでやりきってしまえばいいのではないか、あるいはフィールドセールスがインサイドセールスに転向すればいいのでは、という発想にもなってくるでしょう。
セールスのオンライン化は、THE MODELを解体し、インサイドセールスとフィールドセールスが融合した次世代のセールス組織・レベニューモデルを生み出すと考えられます。
数百万、数千万といった高額商材を、オンラインだけで成約まで持っていけるかは、営業上の大きな挑戦となるでしょう。しかしこれを乗り越えることができたBtoB企業は、コロナショック以後の時代で間違いなく優位に立てます。
営業組織のオンラインシフトについては、セレブリックスさんも積極的に取り組んでいるテーマだそうです。具体的にはセレブリックスさんにも相談してみてください。
対策:BtoBサイトのセオリーに従い、CTAおよびコンテンツに必要な改善を加える
コーポレートサイト、製品サイト、サービスサイトなどを含む自社のwebサイトは、これまでもBtoBマーケティングにおける中核的なチャネルとして特に重要な存在でした。フルオフラインの時代になると、その重要性はより一層増すと考えられます。
BtoB専門のweb制作会社として数々のBtoBサイトを手掛けてきた私たちの経験でいえば、BtoBサイトに来る訪問者の目的は、主に以下の2つです。
① すぐに問合せしたい
② 必要な情報を入手したい
BtoBサイトのアクセスログを見ると、指名検索やダイレクトでホームにランディングしてフォームに直行するという行動パターンが一定存在します。また、コンバージョンの7~8割は2回以内の訪問というサイトも多いです。
これは、サイト訪問以前である程度の情報を掴んでおり、サイト内で行う情報収集は最低限、基本的には問い合わせ目的で訪問している、ということを示しています。
そのためBtoBサイトでは、ホームのファーストビューにCTAを置く、CTAを随所に設置するといった、CTA中心のCRO(Conversion Rate Optimization)が重要になります。要は、できるだけ短時間でコンバージョンできるサイトにする、ということです。
続編記事で詳細を解説しますが、フルオンラインの時代になると、クチコミや評判が重要になります。その場合、webサイト訪問以前に勝負はほぼついており、webサイトはできるだけ取りこぼしなく速やかに問い合わせに導くことが重要になります。
一方、専門性が高く情報収集が難しいBtoB商材において、webサイトが重要な情報源という側面もあります。
トライベック・ブランド戦略研究所の『BtoBサイト調査 2018』では、BtoBにおける製品・サービスの一番の情報源がwebサイト(64.8%)とあります。しかもその数値は2017年の調査よりも上昇しています。
展示会などオフラインでの情報収集手段が減ることで、webサイトを情報源とする傾向はより一層強まると考えられます。また、チャットなどのダークソーシャル上での情報交換が活発になることを想定すると、顧客が求めることをきちんとコンテンツ化しておき、いつでもすぐにURLを共有できるようにしておくことは、マーケティングやセールスに好影響を与えると考えられます。
こうした諸々を考えると、①のユーザーを想定してコンバージョンへの最短ルートを設計しつつ、②のユーザーを想定してテーマ毎にページ化し丁寧にコンテンツを作る、ということがこれまで以上に有効になると考えられます。
このようなことを踏まえたBtoBサイトの基本セオリーについては以下にまとめていますので、合わせてご覧ください。
またBtoBを専門領域とするweb制作会社といえば、ほとんどが弊社一択になるのではないかと思います。何かあれば弊社までご相談ください。
対策:SEOやSNSと絡めて、量よりも質重視で積極的に運用する
オウンドメディアは厳密にはすべての自社サイトやSNSの公式アカウント、さらには紙の会社案内なども含まれますが、ここでは一般的に使用されている「ブログ型のwebサイト=オウンドメディア」という定義でお話をします。
結論からいえば、フルオンラインの時代になると、オウンドメディアの重要性はさらに増すと考えられます。
自社サイトはどちらかといえば、顕在顧客やホットリードなど、ファネルの中層部(ミドル)から下層部(ボトム)の近くを主領域とします。一方でオウンドメディアはより自由度の高い運用が可能で、SNSでバズを起こすことで、ファネルの上層部(トップ)に位置する潜在顧客にアプローチもできますし、特定の検索キーワードを狙った狭いニーズに応える記事の発信もできます。
また、SNSやダークソーシャルを活用した評判の醸成、ブランドの構築を狙うのにも、オウンドメディアは重要な役割を果たします。
このようにマーケティングの万能薬ともいえるオウンドメディアの最大の弱点は、成果が出るまでに時間がかかることと、良質なコンテンツ制作の難易度が高いことです。
そのため、コロナショックに対する緊急対策にはやや不向きであり、今の状況が1~2年続き、それ以降にフルオンラインの時代が継続することを想定した、中長期施策と考えるのが現実的でしょう。
オウンドメディアに関するノウハウや私の考え方については、こちらの記事で徹底的に書いています。オウンドメディアに興味がある方はこちらをご覧ください。
対策:カスタマージャーニーを意識し、良質なホワイトペーパーを作成する
ホワイトペーパーとは「白書」のことですが、BtoBのデジタルマーケティングにおいては、顧客にとって有益な情報をまとめた、PDF等で配布されるデジタルコンテンツのことを指します。
ホワイトペーパーをダウンロードする時、企業名、氏名、連絡先の入力を促すことも、近年のBtoBマーケティングではよく行われています。ホワイトペーパーをダウンロードした後、メルマガが送られてくるようになったり、すぐに電話がかかってきたり、という経験は皆さんもあるでしょう。
リードジェネレーションの観点でいえば、これは頭のいいやり方です。例えば通常、自社サイトでリード情報を取ろうと思うと、お問い合わせや資料請求になります。しかしこれらのコンバージョンポイントは、「お問い合わせをしよう」「資料を請求しよう」と、それなりに意欲が高い訪問者しか利用しません。少し興味があるくらいの人には「お問い合わせ」「資料請求」は不向きです。
そこで、問い合わせや資料請求まで至っていないユーザーの興味に合わせたホワイトペーパーを作成すれば、比較的興味が浅い人をリード化できるようになります。このホワイトペーパーダウンロードを突破口とすることで、メルマガなどでのコミュニケーションを継続し、行動履歴からクローズドなセミナー/ウェビナーに勧誘し、商談を生み出す下地を作ることができます。多くのBtoB企業がリードナーチャリングと呼んでいる活動です。
またリードの検討ステージに応じて、事例集や価格リストなどのピンポイントのニーズに応えられるホワイトペーパーを用意すれば、より相手の状態にあったコミュニケーションが可能になります。
このように、様々な活用余地があるホワイトペーパーは、フルオンライン時代においても有効で、むしろ今まで以上に力を入れるべき施策といえます。
ホワイトペーパーを有効に使うためには、以下の点に考慮する必要があります。
① ダウンロードしたくなるテーマやタイトルの設定
② ダウンロードした後に満足できる質の高さ
③ ホワイトペーパーに誘導するための動線(SEO、広告、SNS、LPなど)
①と②はオウンドメディアの記事とも共通するノウハウですが、③は誘導動線の話です。ホワイトペーパー単体で考えるのではなく、他のマーケティング施策も含めてホワイトペーパーの活かし方を考えるべき、というわけです。
ここまでは一般論的なホワイトペーパーの話ですが、ここからは個人的見解を少々。
ホワイトペーパーでリードを取る行為は、あまりにも定番になり過ぎたように思います。ユーザーも学習しており、「メルマガやテレアポが嫌なのでホワイトペーパーはなるべくダウンロードしない」という話をユーザーインタビューで聞いたこともあります。
もしかしたら、低品質なホワイトペーパーでちまちまとリードを集めることは、成果に繋がらない無駄な仕事を増やしているだけかもしれません。
顧客を満足させるホワイトペーパー作りは、ファネルの上/ジャーニーの前の方ほど難しくなります。何気ない気持ちでホワイトペーパーをダウンロードしてガッカリ体験をした後に、性急にメルマガやテレアポなどのアプローチが行われると、そのブランドへの悪い印象が増幅するだけになったりもします。
そこで私は、課題形成前や情報収集の初期段階にいるリード向けのホワイトペーパーにおいては、個人情報の入力を求めず、事例集や価格表など、ある程度検討が進んだユーザー向けのホワイトペーパーのみ、情報入力を求めた方がいいのでは、と思います。
課題形成前や情報収集の初期段階向けのホワイトペーパーは広く開示し、「こんなものがタダでもらえるの?」という驚きを与え、リード情報を取ることより、一人でも多くの人の記憶に残ることを優先するのです。
そしてホワイトペーパーの末尾には連絡先を書き、興味があれば問い合わせができるようにしておきます。あるいはメルマガの紹介をして興味があれば購読できるようにしておくのもいいかもしれません。
これは近年のBtoBマーケティングのセオリーからは外れているかもしれません。ただ、リードマネジメントも手間とお金がかかります。闇雲にリード化するのではなく、意欲が高いユーザーだけをリード化し、そうでもないユーザーは管理しない方が、結果的にマーケティング効率が高まる可能性があります。
これは一つの提案ですが、これまでの定説に惑わされず、それぞれの企業の事情を加味してホワイトペーパーの運用方針を決めるといいでしょう。
対策:コンテンツ施策の一部として積極的に挑戦してみる
オフラインの機会損失をオンラインで取り戻すのがフルオンライン化の基本的な考えですが、広告、SEO、ウェビナー、オウンドメディア等を総動員しても、オフラインで失った成果をカバーできない、ということは起こりえるでしょう。
そうなると「打つ手なし」にも思えますが、あえてこれまで取り組んでこなかったことにチャレンジしてみてはどうでしょうか。
例えばYouTubeは、BtoBではあまり活用されなかったチャネルです。BtoBではYouTubeを見るという行動習慣が顧客の中になく、YouTubeを行っても目立った成果が出ないことの方が遥かに多いでしょう。しかし多くの企業が取り組んでいなかったことは、競争が少ない狙い目である可能性もあります。
例えば強いTwitterアカウントがあれば、YouTubeに人を誘導できます。YouTubeに動画をアップし、それをLPやwebサイトに埋め込みつつ、YouTube上での認知も期待する、といった複合技を繰り出すこともできます。
また、ウェビナーを積極的に仕掛けるようになれば、ウェビナーで録画した動画をそのままYouTubeにアップするだけで、YouTube運用が成立します。
例えば、元・日本マクドナルドの鴨頭嘉人さんのYouTubeチャンネルは登録者数が100万人を超えているそうですが、本業である講演の動画をそのまま流していることも多く、それでも100万回以上の再生数を記録していたりします。
基本的に、ネットの世界はチープ文化です。チープ&ファストがクオリティ&スローを凌駕する世界です。チープ&ファストで初動を制し、そこで得た経済的優位性を元にクオリティ&ファストに移行するのがオンライン市場での基本的な戦い方でです。
YouTube以外にも、VoicyやStand.fmのような音声配信なども最近は充実しつつあります。いずれもBtoBでの目立った成果は報告されていませんが、これから芽を出す未開の地かもしれません。
景気後退期に、まったく新しいことにリソースを全投入するのは得策ではありませんが、今までのセオリーの踏襲では、打開策が見えなくなることもあります。コロナによる市場特性の変質は不可逆である可能性が高く、今すぐ成果が見えないが中長期対策になることもあります。リソースの何割かを新しい挑戦に割く判断もある程度必要かもしれません。
ここまで、BtoBマーケティング&セールスをフルオンライン化するうえでのポイントを、施策別・チャネル別に見てきました。これらをどう組み合わせるかは、各企業の置かれた状況、商材特性、顧客特性、企業文化によって大きく変わることでしょう。
フルオンライン時代に加速するテーマの一つは、多様性だと思います。これはBtoBマーケティング&セールスにおいても同様で、一つの勝ちパターンですべての企業の事業課題が解決するということにはならず、企業によって選択が分かれる、それが今まで以上に顕著になるはずです。
ある企業はウェブ広告最優先、ある企業はSEOがベストなアプローチ、ある企業はウェビナーが突破口、と分かれて当然です。大事なのは一般論を安易に受け入れず、自分の頭で考えて、必要に応じてカスタマイズし、自己流を作り出すことです。
コロナの猛威が過ぎ去れば、再びオフライン施策が行えるようになるという期待もあります。そう考えると「焦ってフルオンラインにするほどでもない」と思う人もいるかもしれません。
しかし、コロナの終息には2~3年かかるという見方もあります。夏に小康状態になっても、冬に再び活性化し、今のような自粛生活を強いられるかもしれません。
また、地震や自然災害などで、オンライン上での経済活動を強いられることはこれからも起きるでしょう。そもそもAIが発達した未来において、ビジネスの多くがデジタル化・オンライン化するといわれていました。今の状況は、遠い未来に起こるはずだったことを、一足先に期間限定で経験しているだけかもしれません。
多くの企業が、今回のコロナショックで、マーケティングやセールスをオンライン化することの有効性に気付きました。市場に起きている大きな価値観の変化を感じ取ってる先見性のある企業は、コロナの終息と関係なくフルオンライン化を進め、競争力をより一層高めていくことでしょう。
世の中がそういう動きをすれば、自社も変わらないわけにはいきません。人の叡智によってコロナが脅威ではなくなる日が来るでしょうが、コロナ以前のビジネス環境に戻ることはないでしょう。マーケティングやセールスのフルオンライン化は、多くのBtoB企業にとって避けては通れない大きな課題になるはずです。このコンテンツが、それを考える一助になれば幸いです。
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