時間にまつわる11の原則(ビジネス編)

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代表/マーケター/デザイナー/ブロガー枌谷力

時間を管理する能力は仕事のパフォーマンスに直結します。それは会社や市場からの評価に繋がり、最終的には年収や生活の質に影響を与えます。それなのに、私を含めて多くの人は、つい時間を無駄遣いするような行動を取ってしまいます。

その理由の一つには、「時間に対する誤解」があるのではないでしょうか。

このような思いと自戒を兼ねて、私なりに考える「時間の原則」をまとめてみました。

社内勉強会で披露したスライドを元に、詳しく解説します。

1. 平等の原則

1分=60秒。1時間=60分。1日=24時間。1年=365日。こうした時間に関する前提条件はすべての人に平等である、という原則です。人によって異なるのは与えられた時間ではなく時間の使い方である、ともいえます。

図:平等の原則

基礎的な能力に大差ない者同士が、同じ環境・同じタイミングで何かを始め、3年後にパフォーマンスが大きく異なっていたとしたら、その間の時間の使い方が大きく異なっていたからでしょう。「自分には才能がなかった」と言いたくなったら、その前に自身の時間の使い方を疑ってみるべきです。

時間は、才能がある人も、才能がない人も、残酷なくらい等しく1日=24時間、1年=365日です。だからこそ天才同士の頂上決戦でもない限り、才能ではなく時間の使い方でほとんどの評価が決まります。これは、時間の使い方を工夫すれば、才能を凌駕するパフォーマンスを発揮できる、ということも意味します。

時間は平等であるという原則に立ち返れば、時間の使い方や計画の立て方を工夫するという発想が生まれ、自らが望む目標に一歩前進できるのではないかと思います。

2. 質と無相関の原則

費やした時間の量と仕事の質は必ずしも相関しない、という原則です。

仕事がうまく行かなかった時、「時間が足りなかった」とつい言いたくなることはないでしょうか。私はたくさんあります。

「時間が足りなかった」という言葉の根底には、「時間をかけると仕事の質が高まる」という考え方があります。しかし、時間をかけるほど仕事の質が高まるわけではありません。正確には、時間と質が相関する仕事と、そうでない仕事が存在します。

時間と質が相関する仕事とは、文字入力、データの仕分けなど、やり方が決まっているルーチンワーク系の仕事です。時間と質が相関しない仕事とは、面白いコンテンツを考えたり、データを見てアイデアを生み出したりなど、定型化できない知識労働、ナレッジワーク系の仕事です。

図:質と無相関の原則

いずれの仕事も、ある段階までは時間と仕事の質が比例します。しかしナレッジワークにおいては、どこかで時間と仕事の質が比例しなくなります。この時間と仕事の質が比例しない「無相関領域」の到達に影響を与えるのが、その人の(知識を含む)スキルです。

ナレッジワークでは、スキルがない人ほど早い段階で無相関領域に到達し、時間と仕事の質が比例しなくなります。

図:質と無相関の原則

「時間をかければ良い仕事になる」という固定観念に囚われていると、問題が生じた時の一番の原因を「時間が足りなかったから」と捉えてしまい、その後の仕事では、より一層の保険を掛けた過剰な時間を割り当てたりします。

しかし、そもそもの原因がスキル不足なら、時間を増やしても問題は解決せず、生産性はさらに悪化します。「スキル不足を認めたくない」という意識が強い時にも、こういった思考に陥ります。

ナレッジワークにおいて、仕事の質と時間は無相関です。時間を増やすことが問題解決の糸口にはなりにくいのです。安易に「時間を増やそう」と考えず、まずはスキルを磨く、知識を増やすという、根本的な土台を作らないと、かけた時間に対する成果は一向に上がっていきません。

その上で、仕事の仕方、プロセス、チーム編成なども含めて、時間に頼らない根本的な解決方法をまずは考えたいところです。

3. 責任転嫁の原則

時間は言い訳にされやすい、という原則です。これは、時間を言い訳にしている時、本当の問題は別のところにあると考えようという、私にとっても耳が痛い話です。

たとえば「時間があれば勉強するつもり」といって勉強しないことは、多くの場合、時間ができても勉強しません。なぜなら、本当にやるべきことと心から思っているなら、「時間があれば」といわず、なんとか時間を確保して勉強するはずだからです。

「時間があれば勉強するつもり」というのは、「優先度が低いので勉強しません」と、ほぼイコールということはありませんか。あえて厳しい見方をすれば、時間を作ろうとしていない時点で、その分野に関しては努力不足の状態かもしれません。

図:責任転嫁の原則

この問題の本質は、時間ではなく優先順位づけです。特に「重要だけど緊急でないこと(図の第二領域)」は強制力が働きにくいため、本人のモチベーションに依存します。

しかしそのことを認めてしまうと職業人としての存在意義に関わる時に、「時間がない」と時間に責任転嫁し、自分や周囲を納得させます。

図:責任転嫁の原則

本当に重要なことなら、時間に責任転嫁せず、意識的に優先度をあげ、退路を経って危機感を持つべきです。あるいは「時間のせいにする程度の熱意しか持てないなら、その領域にこだわるのは止めよう」という判断をした方がいいこともあるでしょう。

時間はあまりにも身近で、多種多様な強い制約を与えるため、責任転嫁の対象にされやすいものです。しかし、時間が責任を負うことなど、当然ありません。「時間に責任転嫁してる時は考え方が間違っている」くらいの姿勢でいた方がいいのかもしれません。

4. 永久不足の原則

時間は常に不足している状態にある、という原則です。

仕事をしていると「もっと十分な時間がほしい」と思うことは、誰しもあるでしょう。しかし「十分な時間を確保した方がいい」という考え方自体が、一つの誤解です。

時間は有限であり貴重な資源です。だからこそ、「時間はできるだけ少なく(早く/速く)」がビジネスの鉄則です。

図:永久不測の原則

立場が上がって仕事の難易度が高まるほど、十分な時間が得られることは少なくなり、限られた時間の中で最大限のパフォーマンスを発揮することが求められます。つまり、仕事とはそもそも時間が十分でないことが前提なのです。

しかしながら、時間の早さと仕事の評価が一見相関しない立場で仕事をしていると、時に「たくさん時間を使ってでも仕事の質を上げた方がいい」という考えに陥ります。

もちろん、ナレッジワークといえども「無相関領域」までは時間と仕事の質が相関しますので、最低限の時間確保は必要です。ただし、保険をかけて多くの時間を確保するほど、「仕事が遅い人=貴重な資源をやたら使う人=採算が合わない人」という評価になってしまいます

仕事において時間とは、不足しているのが前提です。その中で、上手に計画を立てる、期限に間に合うよう都度調整する、利害関係者に不安を与えぬよう時間配分する、最悪の時は最低限の追加時間を確保できるよう交渉する、といったことをうまく組み合わて、最小の時間で最大の成果を生み出せるように工夫することが必要です。

5. 無駄遣いの原則

時間は余裕があると無駄に使ってしまう、という原則です。

前章では、仕事においては十分な時間がない状態が基本である、というお話をしました。では仮に十分な時間があったらそれを有効に使えるのでしょうか?おそらく、ほとんどの場合は、十分な時間があっても有効に使えないのではないかと思います。

最短5日で終わる仕事も、8日の猶予があったら8日使ってしまう。しかも仕事の質は1.6倍にはならず、やらなくて済む仕事にも手を出して、調査や試行錯誤を必要以上に繰り返し、余分の3日を浪費してしまう。結果、期限が5日の時とほぼ同じ仕事の質になる。

図:無駄遣いの原則

ナレッジーワークにおけるタイムマネジメントの難しさは、調査や試行錯誤の時間が読めないこと、世に問うまで生まれたアイデアが成功するかどうか判断できないことです。

「まだ完璧ではないのでは」という思いに従えば、いくらでも調査や試行錯誤に時間を使えます。しかしこの際限のない調査と試行錯誤が、ナレッジワークの時間投資対効果を悪化させていきます

図:無駄遣いの原則

この望ましくない原則に楔を打ち込むのが、期限を決めることです。調査は1日、試行錯誤は2日、手を動かすのは2日。計5日で必ず仕上げる。そのために5日後に提出日を決めてしまい、宣言する。

期限はストレスやプレッシャーの源になるため、人は自ら期限を切ることを避けたがる傾向もあります。しかし自分の意志で仕事の質を高めるためには、自分から期限を切るというのは非常に大事な習慣です。

脳科学的には、程よい緊張感が集中力を高め、能力が最大限に発揮されるとも言われています。この適度な緊張感を生み出すために、適度に時間が足りない状況を意図的に作ることが有効です。「早くやらないと間に合わない」という焦りで集中力が高まったことは、誰しも思い当たる節があるでしょう。

人は時間に余裕があると仕事の仕分けをせず、優先度は低いが好きなこと・楽しいことに時間を使いがちです。本当に大切なことは何かを考えなくなります。時間があればあるほど時間を無駄遣いしてしまうのが人間です。生産性が高い働き方をしたいなら、時間に余裕を持たせすぎず、自ら期限を設定し、適度な緊張感を持って働くべきなのです。

6. 無益助長の原則

時間を使っていると頑張っている気になるため、無益なことでも延々と続けてしまう、という原則です。

仕事の評価は、使った時間ではなく生み出した成果によって決まります。個人的な美意識や過去の慣習に従って時間をかけて丁寧に仕事をしても、そのことと利益や成果への繋がりが証明できなかったり、妥当性のある説明ができなかったりしたら、残念ながら評価はされません。

ルーチンワークの場合、仕事の質と時間とが相関するので、確かに使った時間=成果となりやすいです。しかしナレッジワークの場合、仕事の質と時間は無相関なので、かけた時間が成果を保証しません。ナレッジワークでは、何が成果と繋がり、何が繋がらないか、繋がらないものには時間を使わない、という判断をしなければなりません

図:無益助長の原則

そうであるにも関わらず、時間を使っていると「頑張って仕事をしている感」を感じてしまいます。費やした時間にばかり目が行ってしまうと、市場や評価者の評価よりも自己評価が高くなり、無益なことへの時間投資をさらに続けてしまいます。

大事なのは、市場、経営者、上司といった評価者の価値基準に合わせた成果を見せることであって、時間を費やして努力することではありません。頑張っているのに評価が付いてこないと思った時、評価の不当さに目を向ける前に、費やした時間と成果が繋がっているかを、冷静に考えてみましょう。

7. 後回し損の原則

簡単な仕事を後回しにすると、その仕事を処理するための時間が増えることが多い、という原則です。

その場ですぐに処理できるちょっとした仕事でも、何だか面倒に感じて後回しにする、ということは誰しも経験があるでしょう。

しかし、5分以内で終わるようなちょっとした仕事を後回しにすると、本来なかったタスクが増え、時間が増えることが多いです。

例えば、チャットで資料確認を依頼されたとしましょう。その場ですぐに対応すると、

  1. チャットを読む
  2. 資料を開く
  3. 資料の該当箇所を確認する
  4. 確認完了を報告する

と4つのタスクで完了しますが、これを後回しにすると、

  1. チャットを読む
  2. 忘れないようタスク管理ツールに登録する
  3. いつまでに返信するか、一次回答する
  4. タスク管理ツールの溜まってるタスクを見る
  5. 該当のチャットを探して内容を再確認する
  6. 依頼の背景や文脈を思い出す
  7. 資料を開く
  8. 資料の該当箇所を確認する
  9. 確認完了を報告する

と、タスクが倍以上に膨れ上がります。これを減らそうと、2や3を削ることもできますが、そうすると返信を忘れたり、不親切な印象を与えたりするリスクを高めた上で、それでも元のタスク量と同じにはなりません。

その場ですぐに対応すべきか、後回しにすべきかは、どんなタスクかによって実際には異なりますが、簡単なタスクに無駄な時間をかけないためにも、すぐ処理できそうなタスクは後回しにしないよう心がけましょう。

8. 信頼=自由の原則

相手からの信頼が高まるほど時間の自由度が増す、という原則です。

細かなスケジュールを要求され、報告も小まめに必要で、途中経過に遅延があると説明を求められる。そんな仕事は誰しも窮屈に感じるでしょう。一方で、時間管理を任されて、好きなペースで自由に仕事を進められるようになると、より一層仕事にやりがいを感じられるようになります。

しかしそのために必要なのが、信頼です。信頼と時間の自由度は、相互依存の関係にあります。

図:信頼=自由の原則

能力が高く信頼がおける人の時間を細かく管理しようとは、誰も思いません。そんな人に仕事を任せる時は、ゴールと期日だけ伝えて、後は任せてしまいます。しかし、完全に信頼していない人に仕事を任せる時は、仕事の進み具合などの確認をしたくなります。

この信頼は仕事の中で徐々に蓄積されますが、1~2度の失敗で大きく失われることもあります。いつも期日を守らない人、ギリギリになって遅れると連絡する人、連絡をしても返信が来ない人は、例え実務能力が高くても、時間の自由度が高まりません

もしも「自由に仕事がしたい」と思うのなら、最低限やるべきは、時間に関する基本的なルールを守ることです。その上である程度のスキルを身に付ければ、信頼され、細かく時間管理されることもなくなるでしょう。

9. 忙しい>暇の原則

仕事においては、暇より忙しさを優先した方がいい、という原則です。

仕事においてつい、「忙しい状態」をリスクと考え、避けようとしがちです。しかし実は、「暇な状態」の方が圧倒的にリスクが高いです。

図:忙しい>暇の原則

忙しい状態を回避する方法は無数に存在します。締め切りを伸ばす、交渉をする、仕事の組み方を変える、誰かに手伝ってもらう、品質を限界まで下げる、など。

しかし、暇な状態を回避するには、「仕事を作る」以外の選択肢がありません。しかしながら、仕事はそう簡単には作れません。当然その仕事とは、単なる時間つぶしではなく、お金が稼げる仕事でなければなりません。それを急に作れと言われても、なかなかできないことの方が圧倒的に多いです。

フリーランスで仕事をすると、暇な状態の恐怖がよく分かります。忙しい状態の方がより安全なことに気が付きます。しかし誰かに雇われるなど、暇な状態が経済的損失に直接ならない仕事をしていると、忙しい状態より暇な状態を作ろうと考えがちです。

しかしこれは市場原理に反しているのです。暇を優先する判断、行動を続けていると、その人自身の市場価値は下がり、キャリアの選択肢は減っていきます

過剰な忙しさは身を亡ぼすため、もちろん実際には、忙しさと暇のバランスを取る必要があります。ただし、いつも「時間と暇を確保しよう」と考えがちな人は、実はよりリスクが高い選択をしているかもしれない、と考える必要があるかもしれません。

10. バッファの原則

バッファ(時間的ゆとり)の取り方は短期・中期・長期によって変えた方がいい、という原則です。

バッファが少ないと、常に締め切りに追われる状態に陥ってしまいます。しかしバッファが多すぎると、前述したような「危険な暇」にも陥ります。バッファの取り方は画一的にせず、長期・中期・短期と時間軸で変えるのがよいのです。

図:バッファの原則

私の場合、1か月以上先の長期予定を立てるときには、時間に対して120%くらいの感覚で仕事を詰め込み気味にします。これは危険な暇を避けるためです。先の予定は前後にズレる可能性もあり、仮に時間的余裕が無くなっても、調整可能だからです。

2週間~4週間以内の中期予定は、自分が対処できそうな100%くらいの感覚で仕事を埋めます。長期予定で詰め込み気味だった予定は、ここで関係者に連絡するなどして調整を加えていきます。

2週間以内の短期予定は、90%くらいの感覚で、バッファを加えたややゆとりあるスケジュールに落とし込んでいきます。そして1週間以内の直近の予定では、タスクの粒度を30分単位にまで落とし、80%くらいの感覚でバッファのあるスケジュールにします。

バッファの入れ方はバランスが大切です。長期予定を組むときにバッファを取りすぎると、予定がズレたり無くなったりした時に仕事をしない時間が生まれ、売上や利益が下がります。反対に短期予定でバッファが少なすぎると、想定外のことが起きた時に動けなくなります。最悪、徹夜や休日出勤をしなければならなくなります。

バッファはこのように、画一的にいつも同じように入れるのではなく、時間軸に合わせて柔軟に設計するのがオススメです。

11. 立場と時間軸の原則

立場が変わると時間軸が変化する、という原則です。

今日明日の仕事を完了させることが使命である現場スタッフは、今日明日や数時間といった時間軸で仕事を捉えています。プロジェクトの完遂が絶対命題であるプロジェクトリーダーは、1~3ヵ月の時間軸で計画を立てます。何年も成長し続ける会社を作らないといけない経営者は、1~3年、時には5年、10年という時間軸で物事を考えます。

図:立場と時間軸の原則

時間軸が異なると、全体最適の視点、生産性の基準、優先順位の付け方も異なってきます。現場スタッフが「こうしたらいいのに」と思うことを経営者が選択しないのは、立場の違いによって、視点が異なっているからです。このような時に「話を分かってくれない」と考えるのではなく、「この人の立場で見てる視点はどこだろう?」と考えることができれば、相手の視点に立った提案が可能になります。

組織やチームで仕事をすると、自分の時間だけではなく、他者の時間を管理する必要も出てきます。関係者に時間を確保してもらったり、顧客や上司と交渉して自分が欲しい時間を得たりなど。そういう時にこの「立場と視点の原則」を知っていると、自分に有利な時間的状況を作れるようになるでしょう。

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