仕事の途切れない取材ライターになるための8つのコツ

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白鳥菜都

コロナ禍において、急速に変化した働き方。副業を始めたり、転職を考えたりした人も多いかと思います。

そんななか、人気の職業のひとつがライターです。株式会社PLAN-Bが運営するウェブメディア「エラベル」が、2021年に11月に実施した「大人のなりたい職業ランキング」調査(※1)では、第1位にライターが挙げられていました。同調査では、「時間や場所に縛られずパソコンひとつで気軽に始められそう」「文章を書くのが好きだから」といった旨のコメントが寄せられています。一方で、いざライターの仕事を始めても、なかなか思うように仕事を進めることができない人も多いのではないでしょうか。

ベイジでも副業が可能で、私を含め3人のライターが副業でも記事制作をしています。私自身はベイジで働く傍ら、副業でもインタビューを中心に毎月7本前後の記事を執筆しています。この記事では、これからライターとして仕事をしてみたい、すでにライターとして仕事をしている人に向けた、仕事の途切れない取材ライターになる8つのコツをご紹介します。

※1 参照:エラベル「YouTuber?エンジニア?令和時代の大人1231人のなりたい職業ランキングTOP10!」
https://elabel.plan-b.co.jp/job-change/6423/ 

1.記事の形式を知る

記事には大きく分けると以下の3つの書き方があります。

①インタビュー・取材記事
②エッセイ
③レビュー・コラム

順番に説明していきます。

①インタビュー・取材記事
人や企業・事件などを取材して執筆する記事を指します。飲食店の取材をして書くフードライターや、著名人の取材をするインタビューライター、社会問題などを取材して書くルポライターなどはこのジャンルの記事を書くことになるでしょう。

そして、インタビュー記事の中にも、いくつか書き方の形式があります。例えば、代表的な書き方に対談形式とルポ形式がありますが、同じ内容でも次のような差が出ます。


【対談形式】

ライター:斉藤さんが会社員を辞めて農業を始めたきっかけを教えてください。

斎藤:1人旅行で長野に行った際に泊まった旅館で鍋料理を食べました。鍋の中に入っていた白菜が今までに食べたことのないくらい甘くて、驚いたんです。感動して、すぐに旅館の人に白菜の仕入れ先を聞きました。翌日には、農家を訪ねていました。農家さんと話しているうちに、自分も農業をやってみたいと思うようになり、3ヶ月後には会社を辞めていました。

ライター:すごいですね!その後は、どのように農業を勉強されていったのでしょうか。

【ルポ形式】

斎藤さんが農業を始めるきっかけとなったのは、長野への1人旅だった。宿泊先の旅館で食べた鍋料理に入った白菜に、斎藤さんは心を奪われた。今までに味わったことのないような野菜の甘みに感動したのだ。翌日には、白菜農家を訪れ、話を聞いているうちに農業への関心が高まったという。1人旅から3ヶ月後、斎藤さんは会社を辞め、農業を始めた。

このように、対談形式では実際の会話のテンポ感や、臨場感のある生き生きとした表現が作りやすくなります。一方で、ルポ形式では聞き手の視点を中心とした客観性のある文章を作りやすくなります。専門的な内容を説明したり、社会的背景の説明も加えやすいです。

書き方は、媒体ごとに決まった形が採られている場合もあるので、各媒体に合わせた執筆を行いましょう。また、どちらでも構わないという媒体の場合は、自分で適した形式を選択する必要があります。どちらの形にも慣れておくと便利でしょう。

②エッセイ
ライターの人気ジャンルの1つがエッセイです。日本語では随筆とも呼ばれますが、自分の考えや体験をもとに執筆する記事のことをエッセイと呼びます。エッセイには基本的に文体や形式に縛りがなく、書き手のオリジナリティが出やすい分野です。

その分、人と比べてユニークな経験をしていることや、日常的な出来事であっても面白く読み手に伝える表現力が必要にもなります。他の書き方と比較しても、書き手の個性と筆力が試される記事となるでしょう。

③レビュー・コラム
ある作品や事象などに対して、客観的事実・主観的な意見を交えながら、書き手の主張を展開していく記事を指します。映画批評や、マンガ批評などもここに属しますし、この記事も一つのコラムです。

レビューやコラム記事を執筆する場合、筆者自身がある程度論じる対象についての知見を持っている必要があります。そのため、ライターとして専門分野を持っている人や、ライター以外の仕事でも専門的に従事してきたことがある人はレビューやコラムの執筆に向いているといえるでしょう。

このように、記事はさまざまな種類に分解していくことができます。ここでは大きく書き方で分けましたが、その他にもカルチャー系なのかビジネス系なのか、など対象とするジャンルごとに分けることもできます。

ライターを始めたばかりの頃は自分に合った記事の書き方をみつけるために、さまざまなライティングに触れてみることをおすすめします。それぞれ異なった技術が身につくので、ぜひ幅広いライティングに挑戦してください。

2.質問力を身につける

つぎに重要なのが、質問力です。これは、特にインタビュー・取材ライターに重要な要素です。ライターの仕事は書くことに重点が置かれていると考える人も多いですが、私はそうは思いません。なぜなら、書く以前に「何を聞いたか」によって記事の出来は9割くらい決まってしまうからです。よい取材ができていなければ、よい記事を書くことは難しいのです。

質問力を上げるためには、まずは①準備すること、②信頼してもらうことの2つに気をつけてみてください。

①準備すること
人と話すのが苦手だという方は、ここに注力しましょう。取材対象についてよく調べる、事前に質問を準備する、質問の順序をある程度決める、これらによって取材は円滑になります。特に、会話に繋がりを生む質問の順序を考えていくことは重要です。考えてきた質問をランダムに投げかけるだけでは一問一答の深みのないやりとりになりがちです。会話のラリーが続く取材は深みが出やすく、記事にしたときにも読み応えのあるものに仕上がります。アイスブレイクからまとめまで、ある程度質問の順序を決めておきましょう。

②信頼してもらうこと
取材を受ける側になるとよく分かるのですが、ライターへの信頼度は話す内容に大きく影響してきます。たとえば、自分のことをよく調べもせずにきたライターの質問には答えたくないでしょうし、信頼することは難しいですよね。

また、質問自体が取材対象者を傷つける可能性があることをライターはよく理解しておくべきです。個人的でセンシティブな内容を扱う取材のときなど、質問の内容、言葉選びには細心の注意を払ってください。そして、取材対象者には質問に答えないという選択もあり、それをリスペクトしたうえで取材に臨んでください。信頼感の感じられる質問ができるようになれば、自然と取材の内容も深く、本質的なものになっていきます。

質問力はインタビュー・取材記事以外にも役立ちます。わたしはよく、コラムなどを書くときにも日常の中で誰かに質問して知ったことや、興味を持ったことをネタにすることがあります。日々の中で質問力をつけておくとネタを考えるときにも便利です。

3.文字起こしのスキルを身につける

取材記事は、多くの場合、執筆前に文字起こしが必要です。私の体感では、文字起こしには録音した音声の3倍~6倍ほどの時間がかかります。軽視されがちな文字起こしですが、忙しくなればなるほど、このスキルが役立ちます。

もちろん、近年は精度の高い自動文字起こしツールも増えてきているので、それらを使って効率的に作業するのも良いでしょう。また、大量の文字起こしが必要なときには、クラウドソーシングなどで文字起こしだけアウトソースするという手もありです。とはいえ、最終的に記事にする前には自分の手で記事を成型する必要があるため、自分で素早い文字起こしができることは強みになるでしょう。

まずは、タッチタイピングができるようになりましょう。「寿司打」や「e-typing」など、無料で使用できる練習サイトは数多く存在します。インタビュー以外のライティングではもちろんのこと、パソコンを使う仕事ならどんな職種でもタイピングスキルは役立ちます。

また、文字起こしの段階で、執筆を楽にする方法があります。それが「ケバ取り」です。話者の言い間違いを直したり、「あのー」「ええと」などの意味のない言葉を削除する作業です。ケバ取りができると、執筆の際にもスムーズに文章をまとめることができます。ケバ取りをせずに、話者の言葉を一言一句逃さずに起こす「素起こし」という方法もあります。記事のテイストやクライアントの依頼内容に応じて使い分けましょう。

その他、聞き取れない単語や意味の分からない単語が出てくることもあります。特に、自分で取材していない場合、このようなことは往々にして起こり得ます。そうなった場合、調べる力も重要な文字起こしのスキルのひとつです。話者が使う言葉にはそれぞれ癖があるはずなので、他の取材記事などを見てみるのもいいかもしれません。

4.取材場所や撮影場所の情報を集める

ライターの仕事で、意外と困るのが取材場所選びです。取材場所のセレクトは、媒体所属の編集者が行うこともあれば、会社のオフィスなど取材対象者から指定が来ることもあります。しかし、ライターが場所選びを担当することも少なくありません。

そんな時のために、取材に使える場所のリストを作っておくのがおすすめです。取材対象者がアクセスしやすいエリアとなることが多いので、複数の電車の線が乗り入れている場所から情報を集め始めると良いでしょう。例えば東京であれば、新宿や渋谷、池袋など。

取材場所選びの際には次のポイントに気をつけてみてください。

①話しやすい場所かどうか
話しやすい、というのは静かな場所ということではありません。むしろ静かすぎる空間は話者の自然な言葉を引き出しにくくなります。カフェなどを選ぶときは、ある程度、周りの人の話し声がある場所が適しています。

②予約可能かどうか
決めたスケジュールで確実に取材を行うため、予約のできる場所を見つけておきましょう。特に、喫茶店やカフェなどでは、予約不可のお店も多いため、事前に予約可能なお店のリストがあると便利です。

③撮影可能かどうか
インタビュー取材につきものなのが撮影です。インタビュー中のカットが記事に使用されることも多いため、撮影が可能な場所かどうかも確認しておくと良いでしょう。

5.ネタリストを作る

ライターは、クライアントが決めたテーマや人物の取材を行うこともあれば、企画出しから参加することもあります。会社員であろうと、フリーランスであろうと、自分から企画を提案できる人は仕事のチャンスを掴みやすいです。

いつでもネタが出せるように、記事のネタ帳を作りましょう。ネタを考える時にもいくつか方法があります。1つ目は、「人」「もの」ベースで考える方法。話題になっている/なりそうな人・もの、あるいは最近自分が気になっている人・ものなどをクリップしましょう。今はSNSも発達しているので、この方法は比較的使いやすい方法です。

ただ、人ベースでのネタ出しをする際にはタイミングも重要です。話題になってからだと、取材が集中してスケジュールが埋まってしまったり、他の媒体とネタが被ったりすることもあります。そのため、同じ人・ものでも切り口を複数用意しておくのがおすすめです。

そしてもう1つが、「こと」ベースで考える方法です。日常生活で気になった些細なことや、話題になった事件など、出来事をベースとして、適切な取材対象者をアサインします。例えば最近では、「Z世代」を切り口として、Z世代当事者やZ世代の研究者に取材する記事は数多く見受けられます。「こと」ベースで作る記事は、切り口となる出来事をうまく見つけることができれば、オリジナリティのある記事が作りやすいでしょう。

どちらのネタの出し方でも大切なのは、「なぜ今なのか」「なぜその人・ものなのか」という点です。この点が説明できれば、企画の説得力も上がるので、よく考えてネタに落とし込んでみてください。

私は、Googleのスプレッドシートでネタ管理をしています。取材対象者のSNSや、過去の取材記事、プロフィール、取材すると想定した場合の切り口の案などをまとめておけば、クライアントへの提案もスムーズになります。

6.進行スケジュールを明確にする


ライティングの仕事が決まったら、まず記事の公開までのスケジュールの確認をしましょう。当たり前のようでいて、意外と曖昧になりやすいポイントです。担当の編集者から詳細にスケジュールを提示してくれる場合もありますが、ライター任せになる場合もあります。その場合は、自分で編集者にスケジュールを伝え、締め切りを設けましょう。

私がスケジュールの確認をする際には、取材日・初稿締め切り・納品締め切り・公開日の4つの日程を確認します。インタビュー記事の場合は特に、取材対象者からの校正や画像のチェックなどを経て公開まで至るケースが多いです。記事に関わる人が多くなればなるほど、スケジューリングが重要になります。また、情報解禁時期に合わせた取材は、記事の公開時期が重要になるため、ライターも責任を持って日程を把握しておきましょう。私は、記事ごとのスケジュールも、スプレッドシートで管理しています。タスク管理ツールなどを使用しても良いでしょう。

メディアの運営において、十分な量の記事を予定通りに掲載することは重要なポイントです。スケジュール通りに記事を進行するのは、想像よりも難しい場合が多いので、期限を自分で切ることのできるライターには仕事が集まります。

7.編集ルールを集める


複数の媒体で仕事をするようになったら、各媒体の編集ルールを集めるのもおすすめです。漢字やカタカナ、数字や記号の使い方や、使用していい単語・使用してはいけない単語など、媒体によってさまざまなルールが決められています。

まず、自分自身の整理のために媒体ごとに分けた編集ルールの表を作っておくと良いでしょう。私はスプレッドシートに、媒体ごとにタブを分けてまとめています。この作業によって、執筆のコツを見直すことができ、スッキリとまとまった記事が書けるようになっていきます。ブログや、個人的な記事を書く際にも、各媒体の編集ルールを参考にすると記事のクオリティが上がります。

また、基本的な編集ルールを知るために便利な1冊が、一般社団法人共同通信社の『記者ハンドブック』です。多くの媒体がこの辞書を参考に編集ルールを作っているので、1冊持っておくと重宝します。記事制作には、編集者が入るとはいえ、ライター自身でも編集ルールを知り、記事の質を向上させていきましょう。

8.良質なポートフォリオを作る


ライターの仕事を続けていくためには、ポートフォリオが命と言っても過言ではありません。良質な記事を作っておけば、記事が仕事を連れて来てくれます。

ポートフォリオを作るために重要なのが、記名記事を多く作っておくことです。ライター初心者の方が仕事を探そうとするとき、クラウドソーシングを活用する場合が多いでしょう。しかし、それらの案件の多くは無記名記事です。人に紹介できる実績を作るためにも、記名記事を掲載してくれる媒体を探しましょう。

そして、記名記事の掲載場所としては、個人ブログの開設も有効な手段です。仕事としての記事ではなくても十分実績にはなるので、名前を出して書く機会を増やしましょう。

書いた記事はクライアントにも紹介できるように整理しておくのがおすすめです。全ての記事をポートフォリオに載せる必要はありませんが、最近の担当記事や関心ごとが分かるような構成にするのがいいでしょう。また、ポートフォリオには記事のタイトルやURLだけではなく、担当した範囲まで書いておくのがおすすめです。なぜなら、企画出し・キャスティング・執筆など、担当範囲によって任せられる仕事が変わってくるからです。

ポートフォリオの掲載先としては、以下のサービスがおすすめです。

Notion
ノートテイキング、タスク管理、表計算など複数の機能が一体となった万能アプリです。記事のURLを埋め込むと、別のページで飛ぶことなくNotion内でスクロールして記事を読むことができます。また、レイアウトも簡単に変更することができるので見た目にも綺麗なポートフォリオが作りやすいアプリです。私は現在、Notionでポートフォリオを作っています。
私のポートフォリオ:https://marsh-yard-a00.notion.site/24f8a07b824b42ad8a1c9c8743fd2e40

まとめ

ライターとして仕事をしていく上で重要なのは、自分で情報を集め、まとめる力です。自由な時間・場所で働くことができる反面、高度な自己管理が求められます。

そして、ここで紹介したコツは、ライター以外の仕事でも活用できる場面が多くあるはず。ぜひ、本記事の内容を参考に、仕事の途切れないライターを目指してみてください。

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私たちは「人生100年時代を生き抜く強い人材を育てる」を人材育成のテーマとしているweb制作会社です。

普遍的なスキルが獲得できる環境を作るためにマーケティングに力を入れ、情報発信を積極的に行い、ワークフロー化を推し進めています。

現在は、マーケター、デザイナー、ディレクター、エンジニア、ライターといったすべての職種を募集しています。ご興味がある方は、以下の採用サイトをご覧ください。

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