サイトリニューアル徹底解説~才流の事例に学ぶ、事業戦略をウェブに反映させるプロセスと実践

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ライター西岡紀子

メソッドに基づくコンサルティングサービスを提供する株式会社才流(以下、才流)が、4年ぶりにコーポレートサイトをリニューアルしました。リニューアルを担当したのはベイジです。2022年1月にプロジェクトをスタートさせ、約7か月を経て新しいコーポレートサイトが完成しました。

得られた成果(after)
「メソッドカンパニー」というブランドイメージの強化
サービスメニュー追加による問い合わせの増加
メソッドの体系化による顧客の課題解決の促進

才流が抱えていた課題(before)

  • 新しい事業戦略に合うブランドメッセージが定まっていない
    サービスの構造とサイトの構造が合っていない
    発信したメソッドが社内外に散らばってしまっている

ベイジが行ったこと

  • 新しい事業戦略にふさわしいメッセージを提案
    随時サービスメニューを増やせるサイト構造に
    メソッドの集約とカテゴリ機能の強化

才流の新たな事業戦略とブランドが一貫して反映されたコーポレートサイトは、ムダをそぎ落としたシンプルなビジュアルが印象的です。その裏側には顧客の課題解決にこだわりぬいた機能性と、常に物事の本質を追求する才流の価値観があります。

本記事の前半ではリニューアルサイトの特長と制作過程をご紹介します。後半では才流代表の栗原康太氏のインタビューをお届けします。自社の2回のサイトリニューアルや顧客の数々のリニューアルを手がけている栗原氏に、サイトリニューアルを成功させるための方法などについてお話しいただきました。

リニューアルの背景

創業から7年目に差し掛かった才流は、事業ポートフォリオを刷新し、単一事業の企業から複数事業の企業へと変化しようとしていました。事業ステージの移行に合わせ、ウェブサイトをそれに適したものにリニューアルしたいというのがプロジェクトのきっかけです。

新しい事業ステージではどの市場を狙っていくのか。その市場で才流はどのようなポジションをとるべきか。新しいターゲットへ自分たちの強みをどう打ち出すのか。才流代表の栗原氏の中にすでにイメージはあったものの、まだ言語化されていない部分がありました。

そのためウェブサイト制作の戦略工程では、才流・栗原氏とベイジ代表の枌谷、コンサルタントの佐々木を中心にディスカッションを重ね、未整理だった部分の言語化を徹底しました。そうしてより明確になった才流の事業戦略をウェブサイトのメッセージ、構造、コンテンツ、ビジュアルへと落とし込んでいきました

事業ステージの変化をウェブにどう反映させるか

近年BtoBマーケティングのコンサルティングに特化していた才流は、営業支援や新規事業支援など複数のコンサルティングサービスを立ち上げ、ポートフォリオ経営の会社へと変化しつつありました。

しかし旧コーポレートサイトの構造上の問題で、新しいサービスをウェブで展開できていませんでした。まずはここを解消する必要があります。

そして複数の事業を展開するうえで、強みと独自性をどのように定義すべきなのか。それを導き出すために、才流とベイジでディスカッションを行い、才流が新たに戦う市場や競合、獲得していきたい顧客を定義していきました。

今後の市場や顧客を考える中で栗原氏が新たに掲げた戦略は「マイクロ事業法人」です。この戦略では新しい事業を年間5個、20年で100個立ち上げることを想定しています。事業ごとに市場は異なり、それぞれの市場で先行プレイヤーと戦うことになります。以下の図がそのイメージです。

これらの事業戦略をウェブサイトの構造とつなげるために、ベイジは才流の市場でのポジションをふたつの図で整理しました。左は価格と戦略の実用性で示したもの。右は価格と案件の期間およびコンサルティング領域で示したものです。

才流は大手コンサルティングファームと比較すると価格優位性が高く、実践的な提案をもとに、比較的早期に結果を出すことに長けています。顧客はニーズに対して妥当な費用で依頼でき、提案書の納品で終わらずに実行フェーズまで手厚くサポートしてもらえます。大手ファームがカバーしていない細かな要望を拾ってもらうこともできます。このため顧客満足度は非常に高く、クロスセルの創出につながっていました。ここが才流がとるべきポジションといえます。

ではこのポジションで訴求すべき独自性や強みはどこにあるのか。ベイジが第三者視点から才流のKBF(Key Buying Factor:重要購買決定要因)USP(Unique Selling Proposition:自社が提供できる独自の強み)を整理し、提案したのがこちらです。

それまではBtoBマーケティングの専門家であることが才流の独自性であり、ウェブサイトも単一事業に合わせた構造になっていました。新しいウェブサイトでは、複数のサービスメニューを追加し、KBFとUSPが一致する新しい訴求テーマをもとにコンテンツを制作していくことが決定しました。

ブランドイメージを変える新しいタグラインをどう見つけたか

このように複数の事業を展開していく才流は「BtoBマーケティングの会社」というイメージから脱却し、新しい事業形態にふさわしいタグラインが必要になります。それを見つけるために、ベイジは栗原氏の考えを深堀りしながら、才流のブランドを整理していきました。

栗原氏によると、メソッドを軸としたコンサルティングサービスに着眼したのは、栗原氏の学生時代や社会人になってからの体験が発端だったそうです。「やり方を分かっていれば、もっと早く成功にたどりつけたのに」と感じた複数の体験から、メソッドを開発し社会に流通させたいという思いが生まれたといいます。

そうしてスタートしたメソッド型のコンサルティングは、従来のコンサルティングサービスへの問題提起とも言える手法です。一般的にコンサルティングはコンサルタントのスキルと経験に依存する属人的な仕事であると捉えられがちです。かつ案件ごとに提供サービスをカスタマイズするため、再現性がない労働集約型の仕事と認識されることが多いでしょう。

しかし栗原氏は自身の経験とビジネスにおける成功事例と失敗事例を分析すれば、そこから成功の型を抽出できると考えました。これが才流の事業の核となる「メソッド」です。メソッドを用いたコンサルティングの価値は主に3つあります。

  • 人によるバラつきのない高品質のサービスを安定的に提供できる
  • 試行錯誤の時間を大幅に減らし、顧客のビジネスゴールに早くたどりつける
  • メソッドを用いるため、高い確率で成果を再現できる

属人的なコンサルティングサービスの不合理をなくし、メソッドで人の善なる意志の結実を早めたい。これが才流の事業の根幹です。今後はサービスの提供と同じくらいメソッドの開発に注力していくといいます。

こうしたやりとりを経て、才流が会社の核として打ち出すのは「メソッド」である、という結論に達しました。栗原氏はこの議論について「そうするのがいいとは分かっていたけれど、決めきれていなかった。背中を押してもらった」と振り返っています。そして才流のミッション・ビジョン・バリューをこのように整理しました。

新しいブランドメッセージを伝えるウェブサイトの要件をどう整理したか

才流はメソッド型のコンサルティングサービスを、これから複数の市場で展開していきます。新たな市場の顧客を獲得していくにあたって、才流の企業イメージをマーケティング支援のベンチャー企業からコンサルティング会社へと変化させていく必要があります。それには新しいメッセージやコンテンツ、企業イメージにふさわしいビジュアルなどが求められます。

戦略工程での市場定義、ブランド定義などの議論を経て、ベイジは新しいコーポレートサイトの役割を以下のように定義しました。

新しいコーポレートサイトの要件

①新しいブランドメッセージ

  • 「メソッドカンパニー」というタグラインを掲げる
  • 今後の事業展開に合わせた企業イメージを表現する

②サイトの拡張性

  • ウェブサイトの拡張性を強化し、事業展開に対応できる構造にする
  • 増えていくサービスを体系化し、サイト構造に盛り込む

③メソッドの強化・洗練

  • 課題を抱えた人がサイトを訪れ、その場で解決できるように体系化する
  • 散らばっているメソッドやノウハウをコンテンツ化してまとめる

これらの課題を解決した才流の新しいコーポレートサイト。その機能と特徴をご紹介します。

戦略をウェブに反映させるために実践したこと~3つの視点で解説

ビジュアルデザイン:絞り込まれた表現がブランドの情緒性を増幅

ビジュアル面での特徴は、合理性を重視して設計したムダのないデザインです。

メインビジュアルの制作過程で、栗原氏から「写真は使わないといけませんか?」という問いかけがありました。ウェブサイトの多くはファーストビュー(以下FV)にアイキャッチとして写真やモチーフを使います。しかしそれは表現手段のひとつにすぎません。

では才流のウェブサイトのメインビジュアルにはどのようなデザインがふさわしいのでしょうか。ベイジのデザイナーが数回に分けて提案を行い、方向性を探っていきました。その際に栗原氏からは「見た目のかっこよさで煙に巻くみたいなことはしたくない。きちんとメッセージを伝えられるものがいい」という意見がありました。

栗原氏とのディスカッションからデザイナーの山崎が導き出したのは、意味が曖昧なモチーフは才流のブランドベネフィットの表現にふさわしくないということ。そしてコンサルタントの写真をFVに使うのも、コンサルティングサービスの属人性を排除するという才流のコンセプトにマッチしないということです。

そして実際にできあがったのが下に掲載したFVです。写真や抽象モチーフは採用せず「THE METHOD COMPANY」というビジョンをシンプルに打ち出しました。

FVのもうひとつの試みは、メソッドの表現です。経営の核となるメソッドを表現する方法は「訪問したユーザーに最初にメソッドを見せること」と考えました。そこで左にメインコピー、右側にメソッドへの導線を配置したFVが生まれました。これは才流の事業運営において、コンサルティングサービスとメソッド開発が等しく重要であることも表現しています。

FVに限らず、才流のサイトにはモーションや「それっぽい」装飾は一切ありません。完成したデザインは、機能や目的を持たない装飾を排した、きわめてスタンダードなレイアウトのもの。そこからは才流の情緒ベネフィット「理知的」「合理的」「誠実さ」などが想起されます。表現としての情緒性は排除しても、ブランドが持つ情緒性は失われず、かえって増幅されてはいないでしょうか。ビジュアルでブランドらしさを作るのではなく、企業の強みや文化をビジュアルに落とし込んだ結果といえるでしょう。

ただしウェブサイトのビジュアルイメージは、企業のブランド表現の一端を担うにすぎません。才流の場合も、常日頃から情報発信や企業活動を通じて企業のメッセージが発されており、それがブランドのイメージとして第三者の中に形成されています。だからこそ、ビジュアルイメージから「才流らしさ」を想起できるのです。

一方で、装飾的な演出をなくし、社員の画像を極力使わないビジュアルデザインは、デザイナーにとっては「これでいいんだろうか...?」と迷いが生まれるようなものです。デザイナーの山崎は一般的なデザイン観と対立するかのようなリクエストに「これは大変なことになった」と当初は戸惑ったと言います。山崎にデザインの制作過程を振り返ってもらいました。

「一つひとつのデザインの意味を問い直す作業の繰り返しだった」

最初のデザイン案には、動きを持たせたレイアウトや、英語の装飾や線を使ったあしらいなど、いわゆる一般的な装飾を入れていたんです。それに対して「英語も線も目的がないものは全部削りたい」と言われたときは、正直驚きました。自分では十分にシンプルなデザインを提案したつもりだったが、もっとそぎ落とさないといけないんだと。

シンプルなデザインを成立させるのは、簡単なようで実は難しいんです。サイズと余白と配置だけでいかにきれいに見せるか、かなり悩みました。線をひとつ入れるにしても「この線は本当に必要なのか」「ユーザーにとって意味があるのか」と自問自答しながら引き算でデザインを考えました。

ロジックにもとづいて合理性と機能性を追求した結果、ユーザーにとって分かりやすいサイトになったと思います。レイアウトがスタンダードなので、ユーザーは目線を動かさずにたやすく読み進められます。あしらいとしての線などをなくした結果、ページの縦幅を縮められて、ユーザーが余分なスクロールをせずにいろんな情報を見られます。

今回のデザイン制作は、今までのやり方を見直す良いきっかけになりました。そしてウェブサイトにおけるデザインとは、顧客の成功を支えるための手段のひとつだと、改めて認識できました。(山崎/デザイナー)

メソッドの設計:ユーザーの課題解決につながる機能のみを実装

メソッドのページに必要な機能は主にふたつありました。ひとつは年間100を超えるメソッドを追加していくため、大量のコンテンツを整理できるサイト構造。もうひとつはユーザーが必要なメソッドにたどり着きやすい導線です。

才流のウェブサイトを訪れるユーザーのほとんどは、日々発信されるメソッドを通じて才流を認知した後に、検索エンジンで指名検索してきます。そんなユーザーに対して、才流が提供する課題解決の手段は、メソッド型コンサルティングサービスとメソッドの提供(無料)です。

メソッドのページのゴールは、訪問したユーザーの課題をその場で解決すること。それにはメソッドを体系化して整理し、ユーザーが必要なメソッドにヌケ・モレなくたどり着ける設計が必要です。そのため、まずはメソッドをカテゴリで分類して表示できるようにしました。カテゴリを選択するとカテゴリ内のテーマがアンカーリンクとして表示され、クリックすると該当のテーマのメソッド群に移動できます。

メソッドのページはマガジン型ではなく辞書型のオウンドメディアです。訪れたユーザーは、辞書で分からない言葉を引くように、自分の課題を解決できるメソッドを見つけ、去っていきます。マガジン型のオウンドメディアのように、サイト内を回遊して興味を持った記事を読んでいくという行動はとりません。メディアの性質と目的に適したUIにするため、回遊を促すためのモジュール(新着記事や人気記事ランキングなど)は設置していません

サイトを訪れたユーザーにひとつでも多くの記事を見てほしいというのは、運営者の自然な気持ちでしょう。しかしメソッドのページで意味のない回遊を促すことはユーザーの利益にならないという判断をしました。

コンテンツ:サービスの価値を顧客視点で再構築

新しい事業が年間複数件のペースで追加されていくため、サービスページは複数の事業カテゴリーの階層をおき、配下に各サービスをぶら下げられる構造にしました。そして複数のサービスページには軸となる訴求テーマが必要です。

今回のリニューアルまで才流はサービスの強みを「再現性の高さ」という言葉で表現していました。しかし戦略工程の議論で「再現性の高さ」が顧客には刺さっていないということが明らかになりました。「再現性の高さ」はUSP(Unique Selling Proposition:自社が提供できる独自の強み)ではあっても、顧客のKBF(Key Buying Factor:重要購買決定要因)とはズレがあったのです。

そこで「再現性の高さ」を「成果が実証されているメソッドでコンサルティングする」という表現に転換し、トップページのボディコピーで訴求しています。

ほかには、コンサルティングサービスという無形商材の品質をどのように表現すれば、顧客の購買行動を進めることができるか、という課題もありました。顧客は高額の無形商材に対して「何をしてくれるのかが分からない」という不安を抱えています。この不安を解消するために、体系化されたプロセスや納品物を具体的に見せるという方針を定めました。

才流では顧客ごとの営業資料は作成せず、商談時には基本資料とウェブサイトを使ってサービスの説明を行います。そのため「このまま営業資料になるか」というセールスの視点で、サービスページの情報に過不足がないかのチェックも行いました。

コンサルティングのプロセスと成果物をすべて見せてしまうことにデメリットがないのか、不安に感じる方もいるかもしれません。しかし栗原氏は「むしろ情報を出した方が有利に感じることが多い」と話します。「他社がまだ出していないノウハウを公開することで、その領域の想起を取れるようになる」ことが理由です。

才流のサイトを閲覧したベイジのほかのお客さまからも「才流さんのサービスページのようにしたい」というお声もいただくようになりました。

インタビュー「才流のサイトリニューアルが成功した理由」

約7か月の製作期間をかけて順調に進んでいったリニューアルプロジェクト。クライアント側の窓口としてプロジェクトを担当されたのは、才流の創業者で代表取締役の栗原康太氏です。栗原氏にサイトリニューアルを振り返ってもらい、プロジェクトで感じていたことや、リニューアル後の手応えなどについて話していただきました。

サイトリニューアル後に起きた変化

ーこの度はコーポレートサイトのフルリニューアルをベイジにお任せいただき、ありがとうございました。リニューアル直後はSNSでの反響も大きかったですね。

栗原:思いのほかバズりました(笑)。バズらせる予定はゼロだったんですが、採用ページ(1ページでわかる才流の特長)がTwitter上で拡散されたので、求人への応募を多くいただきました。8月だけでオーガニックのエントリー数が2倍くらいに増えています。エージェント経由でスカウトを送るときにもこのページを送っています。採用LPのように機能しているので、エントリー率の向上に効くコンテンツになりましたね。

ーファーストビュー(FV)には左側にCTA、右側にメソッドへの導線を置いています。BtoBサイトではFVにCTA以外の導線を置かないというセオリーがありますが、コンバージョン(CV)の数などに影響はありましたか?

栗原:マーケティング的な成果よりも、内部的な影響のほうが大きかったです。これからメソッドを量産していくぞ、という気持ちが明らかに高まりました。事業戦略上、投資をしていくことのひとつに「より多くのメソッドを出していく」があったので、それを社内に明確に打ち出せた結果になりました。

ー他に変化を感じられていることはありますか?

栗原CV数は増えています。今回のリニューアルの目的のひとつは、ウェブサイトに複数のサービスメニューを持たせるというものでした。ユーザーニーズに対応したサービスページを増やしたので、その分の問い合わせが増えていますね。たとえば以前はパートナー戦略策定のメニューを掲載していなかったので、そこへの問い合わせはどう頑張っても来なかったんですけど、作ったらやっぱり問い合わせをいただけるなと。当たり前のことではありますが、ユーザーニーズに対応する重要性を再確認できました。

一部アップデートではなくフルリニューアルを選んだ訳

ーそもそも、どのようなタイミングでリニューアルを考え始めたのでしょうか?

栗原:2018年4月に以前のサイトを作っていて、3年半くらい経ったのでそろそろリニューアルしようかなと思い始めました。提供しているサービスのメニューが増えていたのでそれを載せたかったのと、3年半つぎはぎで改善を繰り返していたので、いろいろと直したいところがあって。トップページも事例もサービス紹介も会社概要も直したくて、となるとゼロから考え直したほうが結果的に早いかなと。

ー才流さんもウェブサイトのコンサルティングをされていますが、フルリニューアルではなく改善を続けるアップデート型を勧めることも多いですよね。フルリニューアルが向いているのはどのようなケースでしょうか?

栗原リニューアルの目的がブランディングや事業戦略、マーケティング戦略のように上段にあるものだったら、フルリニューアルがいいと思います。才流の場合も、事業戦略とブランディングの見直しが目的だったのでまるっと変えました。

リニューアルにあたっては、デザインやCV率の議論をするのではなく、事業戦略やブランディングについて詰めていきたかったので、ベイジさんしかいないと思ってお声かけした次第です。

事業戦略から議論できるパートナーを求めてベイジ一択で依頼

ーありがとうございます。事業戦略やマーケティング戦略の立案は才流さんの本業です。ウェブサイトの制作部分だけを外注することもできたと思いますが、どうしてベイジに丸ごと発注いただいたのでしょうか?

栗原:理由はふたつあります。当時も今も、自社のマーケティング戦略やブランディングを考える専任者がいません。誰かをアサインすると本業をやりながらの片手間になってしまうので、プロジェクトが進まなくなります。だったらアウトソースしちゃったほうが早い。僕も長年マーケティング業界にいて、内製でリニューアルをしようとしても結局進まない、というケースを数多く見てきたので。

もうひとつは第三者の客観的視点が欲しいと思っていたからです。事業のことをずっと考えていると、のめり込んでいるがゆえに、自分たちのことを客観的に見られなくなるんです。外部の方に入っていただいたほうが、自分たちの強みなどを早く正確に整理できると思いました。

とくに市場でのポジショニングの検討に第三者視点が欲しいなと考えていました。ベイジさんとの戦略フェーズではKBF(Key Buying Factor:重要購買決定要因)とUSP(Unique Selling Proposition:自社が提供できる独自の強み)を整理して訴求テーマを提案してもらいました。

あの提案はプロジェクトにおけるキラースライドだったと感じていて。すごくうまく整理いただいたので、これからもKBFとUSPが交差する点を磨き上げていこうと再認識できましたね。

ーほかに、外部パートナーと制作するメリットを感じられた点はありますか?

栗原:トップページに「THE METHOD COMPANY(メソッドカンパニー)」と大きく打ち出せたことです。これは自分たちだけだとできなかったかもしれません。社内だけで議論していたら、普通に「才流はコンサルティング会社です」というメッセージにしていたと思います。「メソッドカンパニー」だと何をやっている会社なのか、社外に伝わりにくいので。

でも僕がやりたいのはメソッドを社会に広げること。会社のミッション・ビジョン、事業戦略、その下にマーケティング戦略、ウェブマーケティング戦略、ウェブサイトとか営業活動がある、と上流から整理していくと、ウェブサイトでは「メソッドカンパニー」と訴求するべきなんです。

ただ現場や現実のエネルギーってものすごく強い。どうしてもリード獲得やCV率のように分かりやすいことを優先しがちです。現実に引っ張られて「メソッドカンパニー」と表現できていなかったのですが、背中を押していただきました。第三者に言っていただいたので決心できたところはあります

ーメソッドカンパニーの核であるメソッドの見せ方については何度も議論を重ねました。

栗原:コンサルティングのメニューを増やしていく中で、メソッドで扱うテーマもBtoBマーケティング以外に新規事業や法人営業などの領域を増やしていくことが決まっていました。だから新しいウェブサイトに求めている機能として、テーマを広げていけること、メソッドを体系的にユーザーに見せられること、などがありました。体系立てて整理できていると、ユーザーが情報を取り出しやすくなり、ヌケ・モレなくインプットできるからです。そこの機能と見せ方を整えていただきました。

メソッドのページがかなりきれいになって、読みやすくなったのも良かったところです。フォントサイズやページ幅、行間なども読みやすさを追求して制作していただいた結果かなと思います。

ーリニューアルではベイジがコンテンツ制作も担当しました。才流さんはご自身で記事を制作されますが、第三者に依頼することで良い結果が生まれましたか?

栗原:そう思っています。コンサルタントの本業はコンサルティングワークなので、記事を書けるスキルがあっても、片手間になってしまいがちです。なのでサイトリニューアルで腰を据えて情報設計してコンテンツをがっつり作りこんで、ということはできないですよね。

外部のパートナーに依頼すると、そこをしっかりとやってもらえる。新しいサイトではサービス紹介ページを充実させましたが、コンサルタントが本業の合間にやろうとすると、ここまでしっかりは作りこめません。

質の高いサービスの提供が才流のブランディングの本質

ー事業戦略とブランディングの見直しがリニューアルの目的というお話がありました。才流さんの事業戦略においてブランディングをどのように位置づけられていますか?

栗原:独自性の高いサービスを提供したいと常々考えています。競合がひしめくコンサルティング市場に参入しつつも、ユニークな点を作って、競争に巻き込まれないようにしたいなと。

ブランディングの実務上は認知度や好意度の高さが重要な要素になります。その点では、認知度はコンテンツの量とテーマの幅を増やしていく。好意度は質の高いコンテンツと質の高いコンサルティングサービスの提供をしようと。そこは継続的に意識しているところです。

ーサイトリニューアルのデザイン制作時には、意味のない装飾は全部外してほしいというリクエストがありました。機能的なデザインは、才流らしさの現れですか?

栗原:そこはどちらかというと、経営者である僕の価値観が反映された部分ですね。ごちゃついたものが嫌いなんですよ。ムダが多いものはダサい、みたいな感覚をもっているので。ウェブサイトがダサいとダサい服を着て街に出ているような気持ちになってしまう。

コンサルティングビジネスという業態とお客さまの層を考えると、もう少し見慣れたデザインにする選択肢もあるかもしれませんが、独自性を表現する意味でも装飾を抑えたサイトを目指しました。

目的を絞ることがサイトリニューアルの成功のカギ

ーサイト公開後の運用サポートプランも積極的にご活用いただき、ありがとうございます。才流さんは、リニューアル時は関係者の数を絞ってスピード優先で進め、細かなチューニングは運用で実施する、と分けられている印象です。

栗原:意図的に分けて進めました。もしリニューアル時に細かな要望をすべて盛り込もうとしたためにサイトの公開が2か月遅れたとすると、新しいサイトでの効果が2か月分得られないことになります。それでは機会損失が膨大になってしまう。提案が必要十分なレベルを満たしているのであれば、なるべく早くリニューアルをしてしまいたかったのが理由のひとつです。

もうひとつは事前に何が必要なのかを決めきるのは難しいからです。あれも必要そう、これも必要そう、と要望を増やしていくと余計なものを作ってしまう可能性もあるし、効率が悪いんじゃないかと。一方リニューアル後の運用フェーズで要望をあげたものは、実務上の必要性を感じて作っているのでムダが減るんですよね。

ただこういった意思決定をできるのは当社がまだ小規模だからかもしれません。大手企業などでは、運用フェーズでの追加費用を何度も稟議にあげるほうが非効率になるので。組織体制や事業の状況で最適な進め方は異なるとは思います。

ーリニューアルの成功と失敗を分けるものはなんだと思いますか?

栗原目的を絞ることですね。才流のリニューアルは今後の事業戦略とブランディングに合わせるという大きな目的が達成できればいいと思っていました。リード数やCV率は減らなければいいと。そういった目標設定だったのでうまくいった気がします。

ブランディングをする、リードも増やす、SEOも強化する、採用のエントリーも増やす、IRコンテンツもいい感じにする、みたいに複数の要件を盛り込むと、プロジェクトをコントロールするのが難しくなるし、ひとつひとつの難度が高いので達成に時間もかかります。目的が絞れていると、適切なパートナーも選びやすくなりますしね。

うちも4年前のリニューアルは「サービス内容が分かりやすく伝わり、リード獲得ができる」を目的に制作しました。なのでサイトリニューアルをするときは、まずはリード数を増やすためにリニューアルして、数年後にブランディングのためにリニューアルして、というように段階的にやるほうがいいと思います。

ー目的を絞って、それに合った良いパートナーを選ぶのは、リニューアルを成功させるためのアプローチのひとつといえますね。本日はありがとうございました。

あとがき

栗原氏によると「お仕事を受けてもらうために、枌谷さんにめちゃくちゃ長いDMを送って」サイトリニューアルをベイジにお声がけいただいたとのこと。マーケティングのプロフェッショナルである才流さんとのプロジェクトは緊張感がありつつも、ベイジにとっても学びの多いものとなりました。

今回の取材では触れることができなかったのですが、才流さんのカルチャーや組織作りもとても素晴らしいもので、制作を通してその一端に触れることができました。才流さんはこの3〜4年、組織づくりとカルチャー浸透にもかなり力を入れられてきたとのこと。機会があればあらためて取材を行い、皆さんに共有したいと思っています。

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