昭和の社内行事を再構築~ベイジ流・社員旅行のススメ

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ライター西岡紀子

ベイジは創業13期目にしてはじめて「社員旅行」なるものを実施してみました。任意で参加者を募ったところ、39名の社員のうち30名が参加。その中には入社1ヶ月目のメンバーや来年4月入社予定の新卒学生もいました。

参加した社員のなかで以前に社員旅行の経験があったのは5名のみ。ほとんどのメンバーが社員旅行へ持っていたイメージは「いやいや参加するもの」「上司に気を使ってめんどくさそう」「昭和の行事」などのネガティブなものでした。

ところが旅行後にとったアンケートでは93%の社員が「とても満足」と回答する結果に。「社員旅行がこんなに楽しいとは思ってなかった」「旅行に行ってから社内のコミュニケーションが取りやすくなった」「会社がもっと好きになった」などのコメントが寄せられました。日報でも長文の感想が連日投稿され、「社員旅行ロス」という言葉が出るくらい大いに楽しんだ社員が多かったようです。

昭和の社内行事の代表として否定的にとらえられがちな社員旅行。しかし私たちは実際に社員旅行を体験してみて、やり方をアップデートさせれば、効果的な組織作りの手段として社員のエンゲージメントを効果的に強化できるという可能性を感じました。

そこで今回はベイジが実践した現代バージョンの社員旅行の取り組みをご紹介します。

ベイジが社員旅行を実施した理由

観光庁の資料によると、1994年には9割近くの企業が社員旅行を実施していましたが、2014年には5割以下に減っているそうです(神戸新聞)。

そんな世間の流れに逆らうかのようにベイジが社員旅行を企画するきっかけとなったのは、ある社員の「社員旅行に行ってみたい」という声でした。その声に代表の枌谷が「いいんじゃない」と答えた背景には、ベイジをとりまく環境にいくつかの変化が起きつつあったからです。

まずベイジはここ数年で社員数が増え、直近2年で入社したメンバーが全体の6割を占めるほどに。それに加えて2020年からは感染症対策でリモートワークに移行したため、互いに顔を合わせたことがないメンバーも増え、このままで本当に大丈夫なのだろうかと不安を感じ始めていました。

そこで「リアルを強化すればリモートワークがうまくいく」という仮説をもとに、チームの懇親会やプロジェクトの設計会議などリアルで交流できる機会を積極的に設けるようにしてきました。その流れを汲んで、今回社員旅行にもチャレンジしてみることになったのです。

ベイジ流・社員旅行のポイント

社員旅行で訪れたのは福岡です。海外をふくめ複数の候補地を検討した結果、初めての社員旅行は勝手が分る場所の方がよいだろうと、代表の枌谷が住んでいる土地を選びました。

2泊3日で福岡を中心に、大分・熊本にも足を延ばしました。

1日目

  • 午前:各地から福岡へ移動
    お昼:フリー
    午後:レクリエーション
    夜:懇親会(もつ鍋)

2日目

  • 午前:車3台で大分に移動
    お昼:大分でランチ(地鶏の炉端焼き)
    午後:阿蘇(大観峰、草千里)で散歩
    夕方:熊本→福岡へ移動
    夜:懇親会(焼き鳥&いけす料理)

3日目

  • 午前:フリー
    午後:福岡から各地へ帰路

この旅行は枌谷と3人のメンバーが中心となって企画を行いました。社員旅行を振り返ってみると、多くの社員から高い満足度を得られたのにはいくつかのポイントがあったように見えます。そのポイントをこれからご紹介します。

1)はじめにレクリエーションで緊張をほぐす

顔を合わせるのが初めてというメンバーが多いため、会ってすぐに打ち解けるのは難しいもの。そこで1日目は福岡に集合したあと、市内の会議室を借りてレクリエーションをすることにしました。

5〜6名のグループに分かれて、グループ対抗のゲームとチームビルディングのワークを行いました。

  • マシュマロ・チャレンジ(グループ対抗戦)
  • ジェスチャーゲーム(グループ対抗戦)
  • Wevox values card(グループワーク)
  • ドラッカー風エクササイズ(グループワーク)

これが予想以上に盛り上がり、効果的なアイスブレイクに。社員から「レクリエーションの時間がもっと長くてもよかった」という感想が出たほどです。

社員の声「社員旅行のここがよかった」

  • ・真面目に個人の価値観について話し合う時間が持てた
    ・レクリエーションでみんなの価値観を深く知ることができた
    ・意外な一面を知ったりと心理的な距離が縮まった
    ・オンラインでは気づけない各人の良さを発見できた

レクリエーションでもっとも好評だったのは「Wevox values card」です。

Wevox values cardとは自分の価値観に合うカードを取捨選択していくゲームです。ゲームがそのまま「私はこういう人です」という自己紹介になり、仕事のやりとりだけでは知ることができない相手の内面に触れることもできます。

ゲームでは「自由」「感謝」「責任感」などの価値観が書かれたカードから、自分が大切にしているものを取捨選択していきます。その過程では、一見冷徹なメンバーが「愛」を最後まで手放さなかったり社長の目の前で「仕事」のカードを捨てる新卒の猛者がいたりと、社員の意外な一面が垣間見えてどのグループもとても盛り上がりました。

Wevox values cardの後には互いの価値観を話し合う時間としてドラッカー風エクササイズを設けました。どちらも社歴や職能にまったく関係がないフラットなグループ分けにしたのも、かえって自己開示しやすかったと好評でした。

結果的にとても盛り上がったカードゲーム。カードゲームの前に、チーム対抗戦のマシュマロ・チャレンジとジェスチャーゲームという遊びの要素が強いものを組み入れて、場をほぐしていたのも功を奏したかもしれません。遊びを介して自然と話がはずみ、笑いが絶えない楽しい時間が生まれました。その後のレクリエーション(グループワーク)、懇親会へとスムーズにつなげられたと思います。

2)ランダムで交流できる仕掛けをつくる

30人もの人数で行動する場合は、チームに分けた方が計画しやすくなります。しかしチームを分けてしまうと社員同士の交流が固定されてしまうため、チーム単位でのアクティビティは行わずに全員で同じ体験を共有できるようにしました

といっても完全にフリーで行動すると、どうしても顔見知りのメンバーとの交流に偏ってしまいます。そこで2日目の福岡〜大分〜熊本を車4台に分かれて移動するときに、中継地点や目的地に着くたびにメンバーを入れ替えるという試みをしました。1台のマイクロバスと2台のレンタカー、そして代表の枌谷の車です。

枌谷の車の乗車メンバーには、あえてほとんど枌谷と話したことがない社員を選んでいたので、事前には「緊張する」と不安そうなメンバーも。しかし蓋をあけてみると、車内という狭い空間がうまく作用したのか、どの車も独特のテンションで盛り上がり、あっという間に移動時間が過ぎていきました。

一方でマイクロバスは本格的な観光バスサイズに小人数が乗り込んだため、会話は生まれにくかったようですが、仮眠をとったり休憩に使うことができたようです。

夜の懇親会は2日間とも席はフリーにしました。会自体はとても盛り上がったのですが、終わってみるとあまり話す機会がないままのメンバーもちらほら。懇親会もスタート時の座席だけは指定しておいた方が、よりいろんなメンバーと自然に交流できたかもしれません。

社員の声「社員旅行のここがよかった」

  • ・道中のクルマの中で色んな人と会話ができた
    ・全員が同じ会場に集まる機会があったことでいろんな方と話せました
    ・懇親する時間がたっぷりあり、みんなの人柄を知ることができた
    ・全員で同じ場所を巡れたので、いろんな人とコミュニケーションが取りやすかった
    ・街歩きではなく広大な観光地でみんなで回れたこと

3)個人の時間と空間を適度に確保する

社員旅行を決定する前に、社員の意向をまず聞きました。そのときに出たコメントが「宿泊先が1人部屋なら参加します」というもの。たしかにほとんど初対面の人と同じ部屋に泊まるのは気疲れしそうです。そこで今回の宿泊はすべて1人部屋にしたところ「ひとりで休める時間がとれた」と、とても好評でした。

他にも、1日目の昼食、2日目の散歩タイム、3日目の午前など、各自が自由に過ごせる時間を確保しました。夜の懇親会も2次会、3次会は完全自由参加にしたので、疲れたからとホテルに戻るメンバーや、まだまだ交流したいと行き来するメンバーなど、それぞれのペースで行動できていたようです。

社員旅行のメリットは、3日間、夜の2次会、3次会も含めるとほぼ時間無制限でコミュニケーションできることにあります。しかしせっかくの機会だからと、すべてのスケジュールを団体行動でガチガチに決めてしまうと、気づかないうちに疲れがたまってしまいます。団体行動と自由行動をほどよくミックスするのがよいかもしれません。

社員の声「社員旅行のここがよかった」

  • ・一人一部屋による適度なプライベート時間
    ・最終日に予定が入っていなかったことが体力的にとてもよかった
    ・目的地での行動にあまり制限がなかったこと
    ・体力がないので、一人でぐったりできる時間があるのは助かります‥。
    ・適度に野放しにされて自由行動ができたところ

4)初めての社員旅行なら勝手が分かる場所を選ぶ

ベイジには枌谷以外にも九州に縁がある社員が複数います。そのため目的地やスケジュールの当たりをつけやすく、全体の時間配分や遅れたときの対処法を予測できました。それによって盛りだくさんながらも無理のない密度でスケジュールが作れたように思います。社員の誰かが住んでいる街なら、実際に日程を決める前に予行で動いてみることもできます。

福岡の中心部にホテルを取ったのも良い選択でした。これには福岡の良さが活かされたと思います。終電を気にせず夜遊びすることができ、バー、屋台、ラーメン、川沿いの深夜散歩など、夜遊びの選択肢が複数あります。こうした夜の都市部での体験が、大自然とはまた異なる楽しい思い出を作ることになりました。

全員で食事をするお店は代表の枌谷が「みんなに美味しいものを食べてほしい」と自ら選定。アンケートでも食事の美味しさに触れる社員が多く、「美味しいは正義」という食の力を再認識しました。

社員の声「社員旅行のここがよかった」

  • ・おいしいご飯をいろんな人と食べて共有できたこと
    ・ご飯がおいしくてさすが福岡と思った
    ・各土地の美味しいご飯とお酒を味わうことができた
    ・旅行ならではの場所に行けて良かった
    ・社員旅行で食べたご飯が全部美味しかったのが、満足度の高さに貢献した

旅行前には全体のスケジュールや宿泊地、美味しいお店の情報などをNotionにまとめ「社員旅行のしおり」として共有。旅行中もチャットでまめに連絡をとりあったため、はぐれたり迷ったりというトラブルは幸いにもありませんでした。

社員旅行から期待できる効果

旅行後のアンケートでは8割以上の社員が「社員旅行にまた行きたい」という回答でした。

「社員旅行がこんなに楽しいとは思ってなかった」という声も多く、アンケートは好意的な回答にあふれていました。

社員の声「社員旅行のここがよかった」

  • ・仕事で関わらない人とも話すことが出来て非常に有意義だった
    ・これからプロジェクトに参加する上でコミュニケーションが取りやすくなった
    ・必要以上に気を使うことがなく、チャットでのやり取りができるようになった
    ・もっと仕事頑張ろうと思えました
    ・会社へ貢献したい思いがより一層強まった

旅行後の変化についてもっとも多かったのは「いろんな人と話せたのがよかった」という感想です。多くの社員がコミュニケーションがとりやすくなったと感じているようです。実際にチャットでのコミュニケーションがフランクになり、より活発化しているように見えます。

帝国データバンクが行った調査では、企業がリモートワークで感じるデメリットのトップは「社内コミュニケーションが減少する、意思疎通が困難」でした。リモートワークで生まれた溝を埋める手段としては、雑談会や交流会、飲み会などが一般的です。ベイジもこうした活動を行なっていますが、社員旅行には社員同士の関係をつくり、リモートワーク下での意思疎通を容易にするための基盤を一気に整えられるという効果が感じられました。

ほかにも「一緒に同じ体験をすることの楽しさを感じた」という声も多く聞かれました。懇親会としてただ飲み会をするだけではなく、「スポーツをする」「モノ作りをする」のように同じ体験ができる機会を作れば、社員旅行のように大がかりでなくても、近しい効果を得られるかもしれません。

組織作りに効く社員旅行の条件

ここまで社員旅行のポジティブな面をとりあげてきましたが、どんな組織でもうまく作用するとは限りません。社員旅行で効果を出せる組織、また効果を出すための企画にはいくつかの条件がありそうです。

まずある程度は人間関係の土台ができている組織の方が、大きなプラスの効果を見込めるでしょう。ベイジは組織に大きな課題がなく、誰に対してもオープンでほどよい距離感で接するメンバーが多いため、もともとの人間関係が良い方向に増幅されたような気がします。

強制参加ではなく、社員が自身の意思で参加するかどうかを決められることも重要です。いくらイベントといっても会社が参加を強制すれば、どうしても義務感が生まれてしまいます。ベイジの社員旅行は任意参加で、費用は会社が全額負担し、休日出勤扱いにして振替休日を取得できるようにしました。

そしてもっとも大切なのは、社員旅行以外にもリアルで交流できる機会を複数準備し、社員が自分に合った場を選べるようにすることです。社員旅行が任意参加である以上、参加したメンバーとしなかったメンバーにはある種の機会の差が生じてしまいます。

そこでベイジは機会の平等性をできるだけ保てるように、社員旅行以外にも会社負担で参加できる懇親会やプロジェクト会などの場を多く設けるようにしています。家庭の事情で参加できなかったり、社員旅行はちょっと..というメンバーも、自分に合った場を選択できるようにできれば、コミュニケーションの格差や、そこから生まれる情報格差などをある程度はおさえることができます。

まとめ

ベイジの組織や仕事はリモートワークとの相性が良いため、このままリモートメインの働き方を続けていく予定です。ただしリモートワークは完璧な働き方ではありません。実際に一部の企業ではリアルに回帰する動きも起きています。リモートワークにリアルを少し混ぜる、ハイブリッドワークがベストというのが、今のベイジの方向性です。

そんな中で昭和の社内行事の代表といわれる社員旅行を、現代の価値観とニーズにチューニングした結果、会社としても社員としても非常に満足度の高いイベントになりました。

今回の社員旅行では、色々な人から「人生で初めて」という声をたくさん聞きました。人生で初めての社員旅行、人生で初めての九州、人生で初めての乗馬など。

大前提として会社は仕事をする場です。しかし1日の3分の1の時間を費やす会社という場所で得られるのは、仕事の経験やスキルの向上だけではありません。個人では得られない「人生で初めて」の場をたくさん用意すること、それが「楽しい」と思えるように設計することは、会社が社員に提供できるひとつの価値なのかもしれません。

社員旅行以外でも、時代遅れといわれている習慣などでも、中身を分解して再構築すれば、思わぬ効果を得られるかもしれません。ベイジもそういった取り組みをまた探してみたいと思います。

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