クラスメソッド横田氏がベイジ枌谷氏に資本提携とCDO就任をオファーした理由

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外部ライターまこりーぬ

みなさんこんにちは、外部ライターのまこりーぬです。

『ベイジはクラスメソッドと資本提携し、ベイジ代表枌谷さんはクラスメソッドのCDO(Chief Design Officer)に就任する』

……というこちらのニュース、驚かれた方も多いのではないでしょうか。「え、両社ともにめちゃめちゃ成長過程にあるのにどうして!?」と、ウェブ業界で働く一人間として私自身も非常に驚きました。

クラウド事業を筆頭に毎年快進撃を続け売上高300億を突破したクラスメソッド、そして、SNSを軸に圧倒的な注目を集め行列ができるウェブ制作会社であるベイジ。なぜビジネスに困っていないように見えるこの2社がいま資本提携をするのでしょうか。その真相に迫るべく、代表のお二人にインタビューしました!

急成長中の2社がなぜいま資本提携するのか

きっかけはベイジのブログ、声かけはTwitterのDM

―― 急成長中の2社が資本提携するというニュース、大変驚きました! まずはぜひ経緯を教えてください。

ベイジ代表 枌谷氏(以下枌谷):ベイジでは会社の規模が大きくなるにつれて、M&Aや資本提携のお問い合わせをしばしばいただくようになりました。積極的に受け付けていたわけではありませんが、門戸を開いていることは示しておこうと2021年の抱負ブログにその旨を記載したんです。するとクラスメソッド代表の横田さんから「ぜひ一度お話ししませんか」とTwitterでDMをいただき、ここから資本提携の話が始まりました。

数は多くありませんが、実は2018年頃から、「ベイジと資本提携したい」「ベイジを買いたい」みたいな問い合わせが来るようになりました。安易にどこかの子会社・関連会社になることはまったく望んでいないのですが、他社の血が混じることで自分たちの理想実現が加速するような、社員も総じて幸せになれるような資本提携であれば別にいいのではと柔軟に捉え、お声がけいただくたびに一応話は聞いていたりします。

私自身は恥ずかしながら、M&A等のファイナンスの知識に疎いところもあるのですが、昨年あたりから問い合わせがまた増えていることから、勉強も兼ねてもう少し積極的に門戸を開き、オーナーだけの純血経営にあまり固執せず、フラットに経営の打ち手を考えていければと思っております。

クラスメソッド代表横田

クラスメソッド代表 横田氏(以下横田):経営には課題がつきもので、会社はいつも穴ぼこだらけなんですよね。私はその穴を埋め、できれば強みにできるように、採用も提携もなにかできることはないかといつも考えています。そんな折に枌谷さんのブログを読み、ベイジさんはうちの穴を埋めてくださるパートナーとしてピッタリじゃないかと思ったんです。記事を読んですぐに枌谷さんへ直接ご連絡しましたね。

―― ブログにTwitterと、なんだか今風のきっかけですね……! 横田さんと枌谷さんは元々つながりがあったのでしょうか?

横田:2018年に弊社の採用サイトやコーポレートサイトのリニューアル支援をベイジさんにお願いしたことがあったんですよ。通常ウェブ制作って、ウェブサイトの方針とコンテンツは自社で考えて、デザインを制作会社へ依頼する、みたいな役割分担が多いと思います。一方でベイジさんは、見た目のデザインどうこうよりも「そもそも市場に対して事業をどう構造化して見せていくべきか、まずは一緒に考えましょう」というスタンスだったんですよね。すばらしい進め方だな、と当時感じました。今回お声がけしたのも、過去のやり取りからベイジさんがうちに足りない「事業をデザインする力」を持っていると思ったからです。

―― なるほど、3年前のお仕事が今回の資本提携の申し出につながったのですね。

結局は一緒にやりたいことが湧いてくるかどうか

―― 枌谷さんが横田さんからの申し出を受け入れることにしたのはどうしてですか?

ベイジ代表枌谷

枌谷:1つは、クラスメソッドさんが「こういう会社となら提携したい」と私が考えていた理想の条件をクリアしていたからです。たとえば事業会社と組んでインハウスの制作会社になってしまうとか、大企業に吸収合併されてそのカラーに染め上げられてしまうとか、そんな提携は避けたいという気持ちは以前から持っていました。

タッグを組むのなら、うちよりもテクノロジーに強く、お互いに独立性を保ちながらあらゆるお客様の支援をご一緒できるような企業様がいいなと思っていたんです。クラスメソッドさんのオファーはそれらの条件に当てはまっていたので、横田さんからお声がけいただいたときには、ぜひお話を聞いてみたいと思いましたね。

あとは、過去にお仕事をさせてもらった経験があったせいか、クラスメソッドさんならベイジとマッチしそうだな、という直感が働いたのもあります。実際に横田さんと改めてお話ししてみると、やっぱりいいな、波長が合うなと感じましたね。

―― まさに理想の相手からのオファーだったんですね。

枌谷:そうですね。クラスメソッドさんとならやりたいことがたくさん湧いてきたんです。実は「ベイジはこの評価額になるまでは株式譲渡には応じない」と自分の中でずっと持っていた基準もあったんですが、この提携は会社の中長期を見据えた時によい結果をもたらすと思い、自分の基準に固執しすぎることは止めて提携を決めました。本件がウェブ制作会社の経営や事業展開における1つのモデルケースになると嬉しいですね。

創業者同士じっくりと歩み寄った4ヶ月間

―― お互いに好印象ということで、今回の資本提携はトントンと話が進んでいったのでしょうか? どれくらい時間をかけて検討されましたか?

横田:2月に初回のお打ち合わせをして以来、4ヶ月ほどかけて経営者間で話をし、6月頃にはおおむね合意しました。枌谷さんも私も創業者として10年以上経営している会社ですし、当然思い入れがあります。「この金額でいかがですか」だけで合意できるものではないとわかっていたので、資本提携することで互いにどう成長できるのか、じっくりとイメージをすり合わせていきましたね。

ちなみに、世の中には「短期的に売上目標を達成するためにグループ会社をどんどん増やそう」という資本提携やM&Aのほうが多く、それはそれで一つの成長戦略だと思います。しかし今回の提携は少し違っていて、時間をかけてでもよいパートナーを見つけたいと思っていたので、枌谷さんには「今年でも来年でも再来年でも、タイミングが合えばぜひご一緒させてください」という気持ちを伝えましたね。

横田&枌谷

―― 4ヶ月にわたる議論の間、資本提携を決断するにまでに悩んだポイントはありましたか?

枌谷:今回の提携は資本のやり取りだけでなく、私がクラスメソッドさんのCDOとして「デザイン組織を作る」というミッションが伴います。それが本当に自分に実現できそうかどうかは事前にかなり話し合いました。想定されるリスクを洗い出し、うまくいかない場合にどういう手を打って成功に導くのかを慎重に詰めていきました。

「デザイン組織を作る」とはなにか

表層的ではないデザインを強化せよ

―― クラスメソッド社で「デザイン組織を作る」とは……具体的にはどんな取り組みを進めていくのでしょうか?

横田:はじめに強くお伝えしておきたいのですが、今回我々が強化したいと考えるデザインはUIなど制作における表層的なデザインだけではなく、組織や事業のデザインも含まれます。

デザインの定義

※現在策定中のクラスメソッドにおけるデザインの定義

うちは社員の7割がエンジニアで、「こんなサービスを作りたい」という要望があればパパパッと技術的に実現してしまうような会社です。しかしこれは、目の前の課題を解決するだけになってしまうことがあります。

「この事業を通じてユーザーのこんな課題を解決したい。どうしたらいいですか?」といった、お客様からいただく上流工程のご相談に応えるためには、市場をリサーチしてユーザーのペインを探り、具体的な計画に落とし込んでいく……そんな風に事業をデザインする力が今のクラスメソッドには求められています。

もちろん、既存のデザイナーもみな活躍してくれています。しかし会社の看板としてデザインを掲げられるかというとまだ遠い。お客様に提供できる価値を引き上げ、「クラスメソッドはデザインも強みです」と言えるようになるためには、旗を立ててデザイン領域を引っ張っていく人が必要不可欠だったんです。

―― その役目を、枌谷さんがCDOとして担うんですね。

横田:その通りです。枌谷さんには制度設計や採用も含めて、まったく新しいデザインチームを作り上げてほしいと考えています。また、デザイナーに留まらず営業やエンジニア、ひいてはコーポレートメンバーにまでデザインのエッセンスを浸透させ、会社全体のレベルを底上げしてほしいですね。

最初の一歩はデザインの定義から

―― 非常に壮大なミッションですが、いざ最初の一歩はどのようなアクションをとっていくのでしょうか?

枌谷:私自身、ウェブサイトのデザインから、経営、マーケティング、コンテンツ、組織と、ジャンルを横断しながらデザインという仕事に携わってきましたが、対象が変わっても共通するプロセスは存在します。問題や課題を見つけ、詳細に調査し、優先順位を付け、解決するアイデアを考えてシンプルに統合し、利便性を高め、より良くなるよう磨き続け……デザインのプロセスをこう抽象化した上で、クラスメソッド社内のいろいろな人に教えていくことになるでしょう。

しかし当然ながらこれは「デザイン思考を学びましょう!」とみんなに一斉に呼びかければ終わるような、簡単な仕事ではありません。どういうタイミングで、どういう表現をすれば皆に受け入れてもらえるか、ケースバイケースで考えて個別最適化する必要があります。それをするためにまず、クラスメソッドさんにおける「デザインとはなにか」を定義し、その定義にもとづいた時にいま足りないものがなんなのかを明確にしようと考えていますね。

―― なるほど。最初の取り組みはデザインを定義することなんですね。

枌谷:その後はデザイナーの職能定義をし、チーム編成を決めていく予定です。そこからデザイン組織のメンバーと一緒にミッション・ビジョン・バリューを定めて、ようやく業務プロセスや採用、評価制度の改革に入っていけるかな、と想定しています。

……とまぁ理想は語りましたが、「外部からいきなり人が入ってきて正論を押し付けてくる」なんて状態には決してしたくないので、最初はとにかく現場のデザイナーのみなさんの声を聞いてまわるつもりですね。

横田&枌谷(マスク写真)

※取材はマスクなどの十分な感染対策を行い、撮影時のみマスクを外して実施しました。

マクロな視点で見るデザインの需要

―― 素朴な疑問なんですが、お二人は今後もさらに「デザインが重要になる」とお考えでしょうか? もちろんそうだとは思いつつも、10年以上この業界に携わるお二人の見解をぜひお聞きしてみたいです。

枌谷:いまって、「デザイン=表層的ななにかを作ること」という定義からどんどん離れてきていて、デザインという言葉が指すものの範囲が広がっているため、必然的にビジネスシーンでのデザインの需要も高まっているのではないかと思います。

とくにこの10年は急速に「経営にデザインを取り入れよう」「ビジネスパーソンはデザイン思考を身につけよう」なんて耳にする機会が増えました。これにはスマートフォンが登場した影響も大きいと思います。屋外でも、通勤しながらでも、雨の日に傘を差しながらでも、歯磨きしながらでも使えるスマートフォンが登場したことで、ユーザー体験、いわゆるUXにまで踏み込んでプロダクトをデザインせざるを得なくなりました。

もちろんこれはアプリやデジタル中心の話ですが、デザインを活用することが大きなビジネスになると多くの企業が気づき、業界を超えたトレンドになっているのだと思います。

クラスメソッド代表横田

横田:たしかに、最近はデザインされた体験が生活に密着しているので、体験が悪ければそのサービスは選ばれなくなってきていますね。日頃からデザインを享受してきた人たちがいざビジネスを担う側になってきているので、デザインが重視されるのは当然の流れでしょう。

あとは、日本はいまだ分業制が強く残っていますが、最近は気軽に使えるデザイン・開発ツールが充実し、だんだんと職種の垣根を越えて自分で手を動かせる領域が広がっていると思います。みんなフルスタック化してきている、という感じでしょうか。デザイン組織においても「職種の壁を越えてデザインの力を活用していく」のはやっていきたいことの1つですが、エンジニアもデザイナーもそれぞれちょっとずつ周辺の仕事をつまみ食いしながら提供価値を高めていく……というのがこれからのクリエイターの在り方だと感じています。デザイナー以外にとってのデザインの重要度も高まっていますよね。

―― デザインの範囲が広がっている、デザインされた体験が当たり前になっている、デザインの担い手が増えている。このあたりが、デザインがますます重要となるポイントと言えそうですね。

テック×デザイン市場に新興勢力現る

―― 今回の資本提携を経て、これからどのような成果やシナジーを生み出していきたいですか?

横田:デザイン組織が確立することで、お客様へさらに価値を提供できるようになると思っています。しかしありがたいことに両社とも既存の案件やお問い合わせですでに手いっぱいであり、「受注数を2倍にしました!」みたいな成果を出すのは正直難しい。なので直近でまず手を組めるとしたら、クラスメソッドの技術力にベイジさんのデザイン力を加えて、自社サービスを生み出すことではないでしょうか。

うちにはハードウェアを作れる社員から自分で仮想通貨を発行しちゃうような社員まで、400名を超えるエンジニアが揃っています。それに新規事業のアイデアもたくさんある。ただ、技術的にサービスを作れるからといって、それをお客様に価値として届けられるかどうかは全くの別問題なんですよね。なのでベイジさんのデザインやマーケティングのノウハウを提供いただけるのは非常に心強く感じています。

枌谷:将来的には一緒に事業も作ってみたいですね。そしてそれをパッケージ化してお客様にも提供できるメニューになったらさらに理想です。自社を強くしつつ、顧客への提供価値も上がっていくといいですよね。

あとは、我々ベイジもウェブ制作だけでなく、業務システムやSaaSなどのUIデザインの相談が増えていて、2021年は売上の7割を占める見込みです。その分野においてクラスメソッドさんのインフラやサーバサイドの知見を頼れるようになるのは非常に大きいです。お客様のビジネス支援をする上で、より強固な提案力を手に入れられたのではないかと感じています。

横田:ちょっとした部分の補い合いですよね。たとえば、どんなに優れたインターフェースがデザインできたとしても、レスポンスに1秒かかればいい体験ではなくなります。ロード中のマークを表示するといった解決策もありますが、テクノロジーの力で1秒を0.1秒に短縮できたほうが断然いい。これらをあっという間に解決できる技術力を、うちはベイジさんへ提供していきますよ。

―― す、末恐ろしい強力なタッグであることを改めて感じました……!!!

ベイジとクラスメソッドの関係

※提携内容を整理する資料中に記載されたベイジからクラスメソッドへの支援内容

情報発信なしにパートナーは見つからない時代

―― 今後両社のように、テクノロジー×デザインのタッグを組む会社は増えていくと思われますか?

横田:間違いなく増えていくでしょうね。我々のようなエンジニア会社にとっては、デザイン会社とどう一緒にモノづくりに取り組んでいくのかが重要なテーマになっています。やっぱりデザイナーがいないといいサービスって生まれないよね、という考え方が世界のトレンドですね。

―― これからパートナーを見つけたいと考えるみなさんへ、ぜひ最後にアドバイスいただけないでしょうか。

横田:今回の資本提携も、この取材を除けばすべてオンラインで完結しています。交流を広げづらいコロナ禍においては、オンライン上で日頃から情報発信しておかないとそもそも何者かわからない、見つけてもらえないっていうのは絶対にありますよね。広報チェックが入ったようなキレイな情報だけではなく、働く人の仕事や生活が透けて見えるような生の声を発信することで、ようやく会社のことを理解してもらえるのだと思います。

枌谷:加えて、なんとなく情報発信しているだけでは、おそらくこうしたコラボレーションは生まれないのではないでしょうか。たとえばベイジは、有料級のコンテンツをあえて無料で公開することでUGCを生み出すような情報発信をやり切っていますし、クラスメソッドさんは「DevelopersIO」で、大量の一次情報を公開して検索のロングテールワードに引っ掛けていくスタイルを貫いています。このようにインターネットのメカニズムを理解した上で、発信した情報をきちんと相手に届けることが大事だと思いますね。

横田:そうそう、うちは「〇〇をやってみた」という記事をみんなで勝手気ままに書くんですよ。それを100本や1,000本というペースでアップしていく。1本1本のPVは少なくとも、検索で見つけてくれたその人にとってはめちゃめちゃ具体的で役に立つ、というのがクラスメソッドが提供している価値です。

一方で、うちが100本書いている間にベイジさんはたった1本の記事を書くんですよね(笑)。めちゃくちゃ体系化されていてそのまま本にできるような、誰が読んでも価値あるコンテンツを作り込む。どちらがいい悪いではなく、こうしたアプローチの違いはありますよね。

枌谷:たしかにそうですね。お互い情報発信を大事にしているけれど流派が違う。こうした異なる部分があるからこそ、組み合わさったときにおもしろい化学反応が起きるんだと思います。

―― 横田さん、枌谷さん、本日は資本提携の全貌を赤裸々に語っていただきありがとうございました! 強力過ぎるパートナーを得た2社のこれからの取り組み、今後も注目してまいります。

撮影:関口史彦(オフィシャルサイト

横田&枌谷

私たちは顧客の成功を共に考えるウェブ制作会社です。

ウェブ制作といえば、「納期」や「納品物の品質」に意識を向けがちですが、私たちはその先にある「顧客の成功」をお客さまと共に考えた上で、ウェブ制作を行っています。そのために「戦略フェーズ」と呼ばれるお客さまのビジネスを理解し、共に議論する期間を必ず設けています。

成果にこだわるウェブサイトをお望みの方、ビジネス視点で相談ができるウェブ制作会社がいないとお困りの方は、是非ベイジをご検討ください。

ベイジは業務システム、社内システム、SaaS、管理画面といったウェブアプリケーションのUIデザインにも力を入れています。是非、私たちにご相談ください。

ベイジは通年で採用も行っています。マーケター、ディレクター、デザイナー、エンジニア、ライターなど、さまざまな職種を募集しています。ご興味がある方は採用サイトもご覧ください。

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