営業活動を支える、生成AIの活用シーン8選

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営業 仲野翔也

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AIを活用する営業職への見方

SNSを見ていると「AIを使って提案書をつくった」「ChatGPTがあれば提案書なんてすぐ終わる」といった発言をよく目にする。こうした発言を見たとき、あなたはどう思うだろうか。

特に悪意や偏見があるわけではないが、ライターやエンジニア、デザイナーといったクリエイターがChatGPTを使うよりも、なんとなく営業職が使っている方が「ラクしてる」「さぼってる」「手を抜いている」という印象を持たれそうではないだろうか。私も最初はそう思っていたが、今ではそうした考えよりも、積極的に活用していくべきだと考えている。

ここのところ、自分自身もAIを活用してセールス業務を効率化できていると実感しているため、具体的に何をしているのかを振り返ってみようと思う。

AIの具体的な活用シーン

AIをセールス業務でどのように活用しているのか、具体的なシーンを紹介していく。

1. 商談前の顧客理解

すぐ正確に顧客理解を深めることができるのがありがたい。顧客について知りたいといっても色々な項目がある。

  • 顧客そのものについて
  • 業界特性について
  • ターゲットについて
  • 商材について
  • 提供価値やサービスの優位性について
  • 競合について
  • 課題や困りごとについて

これによって、商談時にどこに比重を置いて話せばいいかおおよそのあたりがつけられるようになる。また、ChatGPTとの対話によってヒアリングしておきたいことや提案の方針について仮説を持つこともでき、さらにはその仮説の妥当性もある程度事前に評価してもらうことができる。

2. 商談後の議事録や情報整理

簡易的なメモでもAIが綺麗に構造化&整理してくれるのがありがたい。提案依頼書(RFP)と生成AIによって整理された商談のメモと1.で使用した情報をミックスすると、包括的な議事録(≒提案材料)が手に入る。さらには自社の過去提案やプロジェクトの進め方、事例などをミックスして提案イメージを膨らませることもできる。

ここまでわずか5分~10分程度で完了するため、すぐに提案書に着手せずとも、概ねどのような提案方針になるかを固めておくことができる。また、提案にあたりその時点で不足している情報や材料があれば、すぐにその情報を集めることに時間をかけることもできる。

3. 提案骨子の作成

企業概要や議事録から、ドキュメントに落とす前の提案骨子をつくることができる。何度か指示を繰り返し、商談時の顧客の声・温度感・優先度・制約などを加味して方向性を固めていく。

2.で触れたような提案方針があれば、それを箇条書きレベルでもいいので提案の骨子として用意し、まずは大きな提案の流れをつくる。そのあとに細かな肉付けをおこなうことで、違和感のない提案書の構成をつくることができる。

さらには、目的や背景をChatGPTに伝えたうえで上記の提案骨子を読み込ませると、自分では気づけない視点での指摘や改善のためのフィードバックが端的にもらえるため、提案作成の序盤で微調整をしながら方向性を固めていくことができる。

これまでは上司に確認してもらう、お客様に確認をお願いする、といった方法でしかなかなか実現しえなかったことが、生成AIによって変わっているのを実感する。

4. 提案ドキュメントの作成

ここまでの提案骨子作成だけでも十分に便利なのだが、提案ドキュメントについてもAIの力を使うことができる。

最近はスピード重視で、営業担当1人でも顧客にとってよりよい提案・サービスを提供できるよう、PowerPointを活用したスライドベースではなくGoogleドキュメントを活用したテキストベースでの提案書作成にチャレンジしている。Googleドキュメントのいいところは、ChatGPTと相性がいいところだ。まだ現在の生成AIだと、こちらが意図しているスライドデザインを1発でアウトプットするのはなかなか難しいが、ChatGPTのテキストベースであればそこまで工夫をせずともわかりやすいアウトプットを出してくれるからである。それなりに工夫すれば、提案骨子から最終提案までかなり時間を短縮しながらつくることができる。

また、これまでスライド作成にかけていた時間が浮いたことにより、より本質的な提案書になるよう内容をブラッシュアップしたり、テキストベースだからこそ伝え方を工夫したりといった時間の使い方ができるようになっていると感じる。

逆に言えば、スライドを使うことで文字だけでなく図やグラフ、画像に”逃げることができない”ので、ドキュメントデザインのスキルを高めたり言語化のスキルを高めることにも貢献しているように感じる。

5. 提案メールの添削

これまでの顧客対応の経験から、メールでのコミュニケーションはとても大事だと感じている。使う言葉や配慮の有無で、受け手の印象が変わる。そのため、どの営業フェーズだとしても、ここにはこだわりたいところ。

例えば商談が成約に近づいており、クロージングが近い案件であれば、より明確で丁寧な言葉遣いを心がけ、お互いにとって最適な判断ができるよう配慮している。また、成約に近づくほど、顧客から細かい確認や質問が増える傾向にあるだろう。それは仮に発注をする場合に、という前提で物事を考えたり、社内で調整が発生したりするからと考えられる。

ということは、例えば〇〇に関する不安や懸念といった性質の質問などであれば、端的に質問の回答をするだけではやや物足りず、顧客がその質問をしている背景や理由まで推測し、先回りで回答することや、「そのご不安は大丈夫ですよ」と安心材料を提供することが大切だったりする。

この点で、AIが使える。おそらく一般的な使い方としては誤字脱字やニュアンス含めてメール文を添削してもらうことだと思うが、プロンプトの内容次第では、上記のような細かいニュアンスや文脈を加味した文章も一瞬で出すことができる。その結果、顧客とのコミュニケーションがスムーズになり、場合によっては手戻りが少なく、リードタイムを短くする効果もあるかもしれない。

6. ウェブサイトの改善案の抽出

BtoBサイト/採用サイトのチェックリストやワイヤーフレームをもとに、対象サイトの改善点を見出す作業にも生成AIを活用できる。もちろん自分自身でサイトを確認し、ユーザー視点での分析も必ず行う。AIの分析が表面的だと感じた場合は、より深い洞察を求めて追加の質問を投げかけるようにしている。ここでもプロンプトの書き方しだいで変わると思うが、できるだけ抽出したい情報やその背景を丁寧に説明することで、網羅的かつ客観的なアドバイスをもとにした調査・分析が可能になる。

7. ウェブサイト分析レポートの作成

基本的には6の手法と同様だが、顧客によっては提案依頼書(RFP)にウェブサイト分析の依頼が明示されていないケースもある。しかし、これはむしろチャンスとも捉えられる。「追加で対象ウェブサイトの分析も実施しました」「こちらは即効性が高い改善ポイントです」「私たちならこう改善します」といった付加価値を提供することで差別化を図れる。このような分析作業を通じて、新たな提案内容のアイデアが生まれることも少なくない。

8. 効率化のためのプロンプト開発

これらの活用を早く・確実に実行できるように、効果的なプロンプトの開発にも取り組んでいる。個人の取り組みには限界があるものの、現状では毎回最適なプロンプトを考えていても時間的には十分間に合っている状況だ。

今後はもう少し再現性を高めるといった意味で、型をつくっていくことにもチャレンジしたい。ちなみにプロンプト開発について、効果的だったことはざっくり以下のようなポイントである。

  • いきなり100点のアウトプットを出そうとしない
  • 事前情報を丁寧に伝える(目的、背景、依頼内容、制約や条件、参考データ、ニュアンス等)
  • 「こんな感じ」と伝えられる参考のアウトプットを提供する
  • 「〇〇の視点に立って」と、どの立場からフィードバックが欲しいかを明確に伝える
  • (最終的に納得のいった)アウトプットを出すために有効なプロンプトを考えてもらう

AIを活用した提案の真の価値

営業がAIを使って提案をすることの良さは、単に他の業務に時間を充てられるという効率化だけではない。より重要なのは、提案内容の8割程度までの到達スピードを大幅に向上させることで、残りの2割に創造性や専門性といった付加価値をつける時間を確保できることだ。

せっかく会社がAI手当を毎月支給してくれるのならば、自分とAIのどちらに仕事を任せるべきかを適切に判断したうえで、AIではなく人間である自分自身がやったほうが創造的な成果を生み出せる部分に、全力を注いでいきたい。

営業担当者がAIをうまく活用するためのポイントは、上記8つ以外にも数多くある。

日々の業務に追われていると、ついAIを活用する余裕がなくなりがちだが、たとえば「返信文のトーンを整えたい」「議事録の要点をまとめたい」といった場面で、少しだけAIに投げかけてみるだけでも違いが出てくる。まずは“なんとなく相談してみる”ことから始めてみてはいかがだろうか。それだけでも、日々の業務にちょっとしたゆとりと、思わぬ発見が生まれるかもしれない。

AIをうまく活用すれば、ただの効率化にとどまらず、伝わるコミュニケーションの質そのものを高めることができる。これからのビジネスにおいて、こうした「伝え方の最適化」にAIが寄与する場面は、ますます増えていくだろう。

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