ベイジに転職し、最初の役割は「デザインの業務フローを効率化する」だった。過去のデータを集め、リーダー職2名へのヒアリングをして提案を整えたところ、フィードバックとして上司から言われた言葉がこれである。
「数字は整っているけど、これを提案して現場は動くと思いますか。もっと現場に踏み込んで、心理や気持ちもヒアリングしてほしい」
メンバー全員に話を聞いたところで工数削減につながるのか、当時の自分は半信半疑だった。それでもフィードバックをメモに書き留め、翌週からメンバーへのヒアリングを実施した。その結果を元に、入社1カ月後には新たな業務フローを全社に共有することができた。
この業務フロー効率化に関する施策は昨年11月から実践していて、現在もまだ経過観察の段階ではあるがチーム内外でも効率化に向けた動きが広がってきている。数字としての結果はまだ見えないが、遅延や不安を早期に共有できる空気が根づき始めていることも成果のひとつだと感じている。
入社から半年が経ったある日、上司からもらったフィードバックを書き溜めているメモを読み返した。そこで初めて、当時の自分が「効率化=工数削減」という狭い枠組みに囚われていたことに気づいた。
メンバーにとっては、フロー変更そのものがストレスだ。改革の成否は、新しいやり方にどれだけ納得感を持ってもらえるかにかかっていた。数字の裏にある心理的ハードルを、フィードバックをもらった当時の自分は十分に想像できていなかったなと気づいた。
半年前のメモを再度読み返し、振り返りを行ったことで、私は多くの恩恵を得た。まず、半年間の経験や知識の蓄積により、当時は気づかなかった新たな視点や理解が得られた。次に、当時の自分とくらべることで、思考の深さや明確さがどれほど成長したかを客観的に確認できた。
また、時間を置いたことで、表面的な問題の奥にある本質的な課題に気づくことができた。さらに、過去にもらったフィードバックが自分の中でどの程度定着しているかを明確に検証することができ、次の改善策への指針を立てられたし、具体的な成長実感も得ることができた。
振り返りはそこで終わると自己満足でしかない。重要なのは、振り返りで得た気づきを具体的な行動へ落とし込むことだ。振り返りの価値は、次の行動につながって初めて意味を持つ。
今、私はヒアリングで拾った声を土台に、短期的な課題解消を超え、中長期の経営課題への取り組みへと業務を拡げている。上司からもらったフィードバックや1on1で会話したメモを読み返すたびに勉強会の設計や新施策のアイデアが具体化し、現場の悩みが一つずつ解けていく手応えがある。
この記事を読んでくださった方も、半年後の自分に向けて今の経験や気づきをメモに残してほしい。そして、半年後に今の経験を振り返ってみてほしい。きっと、そこには今は見えていない景色や気づきと新しい一手を導くヒントが書かれているはずだ。