間延び、間違い、間抜け など、私たちは「間」を使った熟語をよく使用している。営業として働く中で気づいたのが、この「間」の持つ可能性だ。特に商談において、この「間」を活用することは、顧客の成功を実現し、より深い信頼関係を築くためのテクニックとして大きな効果を発揮する。さらには、ビジネスコミュニケーション全般においても、その可能性は広がっている。
顧客の課題解決を実現した際、「え、具体的に何をしたんですか?」という反応が返ってきた。課題A→結果Bに至るまでの過程、つまり「間」が気になるからだ。重要なのは、「間」への興味が単なる好奇心ではなく、自社の課題解決に向けたヒントを見出したいという期待から生まれている点だ。「間」を共有することで、自然と能動的なコミュニケーションが生まれ、より実践的な課題解決の対話へと発展していく。
質問を投げかけた後にシーンとなることがある。最初は気まずく感じるその瞬間も、あえて「間」として活かすことで、その場に新しい期待感が生まれる。そして、次に発する言葉に自然と重みが増し、より深い対話への入り口となる。普段の会話とは異なるこの特別な空気感が、説得力のある対話を生み出すのだ。
提案中の相手の様子を観察することは、より良い対話を生む重要な要素だ。表情、リアクション、視線、あいづち。これらの小さな変化に意味があり、真の課題やニーズが隠れている。そのため、あえて「間」を作り、一つ一つの反応を丁寧に読み取る。焦って話を進めるのではなく、相手の反応に真摯に向き合うことで、より本質的な課題解決への糸口が見えてくるのだ。
会議や商談での経験を振り返ると、「間」には思考を深める重要な役割があることに気づく。例えば、誰かの発言や提案を聞いたとき、私たちの頭の中では以下のような内なる対話が自然と生まれている。
「あれ、そうだっけ」 – 事実との照合
「なるほど、確かに」 – 理解の深化
「ということは…」 – 推論の展開
「別の可能性もあるかも」 – 代替案の検討
「でも、自分はこう考える」 – 独自の視点の形成
これらの内なる対話は、単なる沈黙ではなく、より深い理解と創造的な思考を生む「積極的な間」として機能している。このような「間」を商談の場で意識的に活用することで、より質の高いコミュニケーションが実現できる。具体的には、
こうした「間」の活用により、コミュニケーションはより豊かなものとなっていく。
相手の興味を引き出すストーリーの組み立て方、与件整理の効果的な話し方など、ビジネスコミュニケーションにおいてまだまだ工夫できる余地は大きい。「間」の活用は、その一つの突破口になるかもしれない。相手との対話をより深めていけるよう、この「間」という要素を意識しながら、提案や対話の質を高めていきたい。