前職の求人サイト運営会社からベイジに転職して、早いもので約半年が経つ。初めこそ業界や仕事内容などのギャップに驚くこともあったが、周囲の手厚いサポートに支えられながら非常に楽しく働けている。フルリモートとは思えないくらい上司や同僚を近くに感じられるのは、丁寧なコミュニケーションや情報伝達を大事にしているベイジならではの魅力かもしれない。
フルリモートが中心のベイジでは、大半のコミュニケーションがテキストで行われる。前職ではオフィス出社が中心だったので、この変化が転職時に感じた一番大きなギャップだった。しかし、だからこそ業務に必要なやりとりは全てログに残るというのが大きなメリットだ。
対面では些細な表情の変化もキャッチでき、基本的に円滑に業務が回るが、「言った・言わないの認識違い」「大事なやりとりが残っておらず再確認が必要になる」ということも多い。こうした失点が自ずと減っていくという点で、非常に助けられている。
一方で、自身の発言がテキストとして残ることにより、自己の課題も新たに見えてきた。
顧客とのやりとりをふりかえるためにSlackを読み返していて気付いたのは、自身のメッセージに「すみません」や「申し訳ありません」という言葉が頻繁に登場することだ。その場では円滑なやりとりのつもりでいたが、後から読み返すとその多さに違和感を抱く。こんなにも謝ってばかりいると、相手から「いつもミスしている人」「頼りない人」だと思われるのではないだろうか。そんな不安をAIに相談したところ、下記のような回答が返ってきた。
謝罪は相手に対して「自分(もしくは組織)の落ち度を認める」行為であり、誠意ある対応として評価される場合が多い。これにより相手との信頼関係を修復・維持しやすくなる。
ビジネス上のミスやトラブルが起きた際にいち早く謝罪し、誠意を見せることで相手の怒りや不安を和らげ、紛糾する前に事態の沈静化を図れる。また、クレーム対応でも謝罪が初動として適切に行われることで問題解決の糸口となる。
上司や顧客に対してミスを素早く認めることで、誠実さや透明性といった好印象を与える。これによりブランドイメージを損なうリスクを下げるだけでなく、かえって企業・個人の評判向上につながることもある。
頻繁に謝罪を多用すると、「いつも自分が悪いのか」「能力が低いのではないか」という印象を与えかねない。とくにテキストベースのコミュニケーション(メール・チャットツールなど)では、相手の表情や意図を汲みにくいために「謝る必要がない場面でも謝っている」と誤解されることもある。結果として相手の不安感や「頼りなさ」を助長する可能性がある。
トラブルが共同責任である場合に、自分や自社だけが謝罪を重ねると、本来相手にもある程度の責任がある場面でも「全てこちらに非がある」と誤解される可能性がある。ビジネス交渉時にも不利な条件を呑まざるを得なくなるリスクがある。
謝罪が習慣化していると、顧客や上司から「謝罪はするが解決策が提示されない」と不満が高まることがある。謝罪そのものに価値がある一方で、具体的な対策や再発防止策を示さなければ本当の問題解決には至らない。
私が漠然と感じていた懸念は、まさにこのデメリットに当てはまっていた。既に作家であるマージョリー・インガルの著書『Sorry, Sorry, Sorry: The Case for Good Apologies』をはじめとし、「謝罪は頻度とバランス次第で逆の効果を生み出す」とする文献も世に多く出されている。誠意をもって告げた謝罪でも、その回数が極端に多いとむしろイメージダウンにつながってしまう、という図式だ。
では、過剰な謝罪によるデメリットを軽減するにはどうすればよいだろうか。
まず第一にするべきなのは、その使用頻度を抑えることだろう。ミスを指摘された際には咄嗟に謝罪が口を突いて出てしまいがちだが、一度飲み込んで「ご連絡ありがとうございます」「ご指摘感謝します」といった表現にとどめてみる。それから一度謝罪を挟み、起こったミスの事象・原因についてまとめる。さらに具体的な改善策を添えることで、今後に向けた前向きなコミュニケーションへとつなげていく。口頭であれば「すみません」「申し訳ございません」は会話のクッション的に活用できるかもしれないが、テキスト上ではこれくらいのボリュームがちょうどよいのかもしれない。
また、些細な粗相をしてしまった際に使われがちな「失礼しました」という言葉も、「ご連絡が遅れました」「ご指摘ありがとうございます」といった具体的な言葉に変換できる。こうした言い換えにより、「いつも謝ってばかりいる」「頼りない・不安だ」という印象はだいぶ軽減されるだろう。
上記のようなデメリットを考えると、「そもそも謝罪が必要になるシーンをつくらない」という意識も持っておきたいところだ。完全な回避は難しいが、連絡の抜け漏れやケアレスミスといった「防げたはずのミス」で顧客の信頼を損なうのはもったいない。
進捗や課題が分かった時点で早めに報告・共有する。ミスとして表出していなくても共有する。とにかく、共有する。「何かおかしい」「ちょっと不安だ」と思ったタイミングで上司や先輩に「そういえば……」と話す癖をつけることで、大きな遅延やトラブルを未然に防げる。
仕事のゴールを把握できていなければ、やるべきことも浮かび上がってこない。やるべきことが分からなければ、スケジュールも決められない。まずは「この仕事をすることでどんなゴールにたどり着く?」「どのゴールに辿りつくためには、何をすべき?」と可視化することが大事だ。おのずと優先順位を常に確認できるようになるため、タスク漏れや遅れを未然に減らすことができる。
メールやチャット、議事録などのテキストコミュニケーションを上手く活用しよう。「結局このタスクは誰がやるんだっけ?」「この依頼のゴールは何だっけ?」という認識を、文字情報を基に相手とすり合わせる。これにより「言った・言わない」から生じる謝罪リスクも減らしていける。
謝意の表現はビジネスシーンを円滑にするために非常に重要だが、過剰になりすぎると相手に頼りない印象や不安を与えてしまう。「本当に必要なシーンで、原因と対策もセットにして」行うことを意識したうえで、ここぞ!というときに顧客に頼ってもらえるコミュニケーションを心掛けたい。