自分が好きなこと、したいことを口に出さない人というのは、色々な面で損をしていると思う。サンプルは僕の個人的な経験だけだが、思っていることというのは、口に出せば出すほど、実現可能性が高まると感じるからだ。
多分、したいことがあっても口に出さない人というのは、
というような発想をしているのだと思う。しかしこの発想をすること自体が、成功の機会を逸しているのではないだろうか。
例えば、僕は26歳のときに独立すると決意したが、それができるという根拠はまったくなかった。ただ、そうしたいと思っただけであった。
僕が独立したいという話は、その後転職した会社でも、いつも割とオープンにしていた。30歳を超えたあたりから35歳には独立したいと思うようになり、それを周りの人に話し続けていた。
結果、35歳で本当に独立することになった。そのタイミング自体はいろいろな要因の元に決まったことだが、自分で宣言していたことで、自己暗示にかかり、自然にそれに向けて行動を取っていってた、というのも大きい。
フリーランスとして独立してからは、やがては会社にしたいと公言していた。その時も、会社にできる根拠なんてものは何もなかった。会社を興すのに十分な人脈も営業のネットワークもなかった。
ただ、そう言ってると、自分も勝手にそれに向けて動き、周りの人も会社を作るための話をしてくれるようになった。
会社を作った当初、ほとんどが他の制作会社さんからの下請けだった。それはそれで良かったのだが、直取引ができる会社になりたい、とある時から口に出すようになった。その時点で、それができるという具体的な根拠もアイデアもなかった。ただ、そうしたいだけだった。
そして、頭で思いつくやるべきことをひとまずやっていたら、いつのまにか本当にほとんど直取引の会社になった。
会社を作った時には、10人くらいの会社にしたい、とも言っていた。やはり、根拠はなかった。ただ、そうしたいだけだったのだが、今は10人というのが、現実的に可能なところまで来た。今年10人以上は入れるオフィスに引っ越しをし、それは1~2年以内には実現すると思っている。
また、2年ほど前から、B2Bの仕事にシフトしていく、という話を社内にし始めた。そうしたほうがいい、という理由はあったが、それができることを証明する根拠はその時点では何もなかった。が、結局は今はそうなっている。
僕は今、成功する自社サービスを生み出したい、会社を20~30人規模の組織にしたい、などなど、将来やりたいことのいくつかを社内で口に出しているが、それがうまく行くという明確な根拠はない。ただそうしたいだけである。そして最初にすることは、それを口にすることだと思っている。
もちろん、口に出せば何でも適うとは思っていない。今さらメジャーリーガーになりたいといっても、それは実現しないだろう。物理的に絶対に不可能なこともある。口に出したけど実現しなかったことだっていっぱいあるし、そもそも大きなことは何一つ達成していないというのも事実である。自分の才能の読み間違えだって日常茶飯事だ。
でも、それでもやっぱり、口に出す、というのが、実現の第一歩だと思っている。
例えば、うちのデザイナーが「業界に名前を残すクリエイターになりたい」と、ずっと、強く、しつこく言い続けていたら、きっとそういう思いで一つ一つの仕事をするだろうし、そういう人が周りに寄ってくるだろうし、その実現の確率は、黙っているよりもずっと上がるだろう。
一方、「自分にはそんな大それたことは無理」「自分はまだまだなんでおこがましい」「そんなことをいうなんて10年早い」などと自分の評価を低く設定し、人に批判されないための防御策として「謙虚さ」を行使すればするほど、ゴールは遠ざかっていく。
根拠や能力は、後からついてくるものである。ときには公言することで恥をかくかもしれない。馬鹿にされることだってあるだろう。でも、口に出さずに恥をかかない人よりも、口に出して恥を経験する人の方が、目標達成にはずっと近い場所にいるはずである。その悔しさは、エネルギーにだってなる。
逆に、恥をかくかも、プレッシャーを受けるかも、などといつも守りの姿勢でいると、いつまでたっても目標に近づかない。したいこと、やりたいことは声を大にして、「私はこうしたい」「私はこうなりたい」と、毎日自分に言い聞かせるかのように、周りに対して口に出していくのがやはり得策である。