ベイジの『7つの行動原則』には、「ホスピタリティ〜びっくりするくらい気を利かせる」ちゅう項目がある。
以前の行動指針にも「プロフェッショナルは気が利く」っていう項目があったけど、働く上での気配りや配慮を求めるカルチャーを大切にしたい、ちゅうこっちゃな。
せやけどこれ、曖昧で感覚的で抽象的な話といわれれば確かにそうや。せやから、こんな疑問を持つやつがおるかもしれん。
でもな、なんでもかんでも定量的にすりゃええもんちゃう思うとる。特に組織の多岐に渡ることは、抽象的な方向性だけ示して、細部は自分の頭で考えてもらう方がええ。その方が結果的に組織の色々なことに反映されんねん。
ただその上でな。パソコン使ってキーボードバシバシ叩くような仕事してるもんの場合、「できるだけ相手にクリックさせへん」いうんは、割と分かりやすいヒントになる思うねん。
おっさんがもうちょい詳しく解説したる。
気ぃ利かんやつの代表選手が、メールの添付ファイル問題やな。
「いただいたフィードバックを反映したのでご確認ください」っちゅう文面だけで、あとは添付ファイルのパワポを確認させようするやつ、時々おるやろ。「しばいたるぞコラ」思う。おっさんだけやないはずや。100人中96人が思うで。
これやってるやつ、ええか、よう聴いとけよ。
こういうメール送るとな、どこ変更したかが分からんから、確認する側は添付ファイルをクリックして、パワポ立ち上げて、1ページずつスライドを見ていかなあかんねん。
もうこの時点でめんどくさいやろ?この説明読むだけでもめんどくさい。書くのもめんどくさい。大阪弁に変換するのもめんどくさい。
何が問題かって、確認する側は、更新してへん箇所も見る必要が出てくんねん。せやから、ぜんぶの変更箇所に気ぃ付かん可能性も出てくるわな。
さらに変更箇所が一目で分からんやつ、あるやろ。あれほんま最悪やで。
確認の手間がめっちゃ増えるし、確認の精度もめっちゃ落ちる。ついでにおっさんの評価もガタ落ちや。「あのおっさんちゃんと見てくれへん」言われてまう。あほか。おまえに付き合ってたらおっさん死んでまうわ。
こういう場合はな、「添付ファイルを見てください」やなくて、メールの文面の中で、具体的にどこ変えたかを明確に示すべきなんや。例えばこんな感じやな。
P2:お客様の社名を新社名に更新しました
P5:ご指摘に合わせて図のA社をB社に変更しました
P9:図表に注釈を加えました
P16:リード文の内容を見直しました
ほんでパワポの中に「ここを変えました」ってでっかい赤い矢印とかあったら最高やな。絶対見落とさへん。
似たようなことは、ウェブ制作とかシステム開発の仕事やと他にも色々あんねん。
おっさんらみたいな仕事はな、開発用のドキュメントとかをようさん作りよる。せやから、「このドキュメント見てください」いうて相手に言った方が楽なとき結構あんねん。ほんでつい、開発者用ドキュメントをメール添付でそのまま送ってまう。そんで「ご確認ください」ってお客さんに言ってまうねん。
これお客さん困るわな。「なんやこの初見のエクセルのバケモンは。え?なに?わし忙しいのに今からこれ見て確認せなあかんの?しばくぞコラ」って普通になるやろ。100人中97人そうなるで。
ちっこい字がギッシリ詰まった開発者用のWBS(Work Breakdown Structure=作業分解構成図、スケジュールの親玉みたいなやつやな)をそのまんまメール添付で提出して、「スケジュールを更新しましたのでご確認ください」は、絶対したらあかんやつ。やばい。「あいつあほやろ?」って絶対言われる。100人中98人に言われる。
デキるやつはちゃうで。お客さんが知りたい期間や期日だけを抜き出して、「添付を見てください」やなくて、メール文面に直接書くんや。こんな感じに。
戦略フェーズ:2月~3月
設計フェーズ:4月~5月
開発フェーズ:6月~8月
公開予定日:8月31日
※御社での原稿準備期限=6月中
これやったら、添付ファイルをクリックせんでも、知りたいことがすぐ知れるやろ?
相手がもっと詳細に知りたがる場合も想定して、一応WBSは添付しとく。でもデキるやつはWBSをそのまま見せへん。WBSのどこを見ればええかを、ちゃんとメール文面に書いとく。「御社の原稿の準備期間を詳しく知りたいときは、ID65~72をご覧ください」とかな。
こういう人と仕事するのは気持ちええ。あー分かってるなあ思う。息子くらいの年の子やったら、その子のおとんみたいな気持ちになる。ええ子やなあ、あめちゃんあげよか?って気持ちになる。でもおっさんリモートワークやからあめちゃんは直接渡されへん。せやからあめちゃんの画像を添付して送んねん。
話しずれた。元に戻るで。
パワポの場合もスケジュールの場合も共通するんは、相手のクリック数が変わるっちゅうことや。
添付ファイルをクリックする必要がなくなる。資料をページ送りするためにクリックする必要もなくなる。資料を隅々まで見るためにスクロールバーをクリックする必要もなくなる。スクロールバーの場合は、その後のドラッグもなくなるな。
つまりな、「どうすれば気が利くって言われるの?」ってのはな、「相手にできるだけ余計なクリックをさせない」を徹底的に考えたら、自然とそうなっていくもんなんや。パソコンを使う仕事の場合やけどな。
この話、メールだけちゃうで。チャットでもまったくおんなじや。
チャットで他の社員から何か質問されたときに、URL添付で「これを見てください」みたいに伝えるときあるやろ。これも要注意やで。
例えば、スプレッドシートとかな。略してスプシ。なんやねんスプシって。言葉の響きが屁の音と完全に一緒や。あほみたいな略語やな。でもおっさんも最近使うで。くっさ、いいながら。
また話ずれた。最近こういうの多い。意識が大和川に流れていきよる。
とにかく、スプシの表をURLだけ共有すると、質問をした方はURLをクリックしてその表を見んとあかん。しかもその表の中には、質問とは関係ない情報もようさん含まれてるはずや。それをわざわざクリックして、内容を紐解いて理解しろ、いうわけや。
なかなかの乱暴もんやでこれ。感じ悪い。「われ今めんどくさい思うてSlackの前でメンチ切っとるやろ?」いうて絡まれるで。100人中13人は絡んでくる。総務省調べ。
せやからこういう場合はな、表を作った側が質問者がほしがっている情報をピックアップして、Slackに直接書くんや。わざわざURLをクリックせんでもええようにな。
このちょっとでもクリックをさせへん一手間が、「気が利く」っちゅうことやで。
こういうことは個人に任せとったらあかん。ちゃんと若いうちから会社が教えとかなあかん。そうせんとえらいことになる。
おっさんが昔仕事で付き合ったお客さん、会う人会う人、変わった形のマウス使ってんねん。マウスの左クリックのところがな、えらい陥没しよるねん。マウスってだいたい左右対称な形やけど、この会社のマウスは左だけえらい陥没して、非対称なマウスになっとるんや。アシンメトリーいうやつやな。
みんなしてけったいな形のマウス使っとんなあ、お洒落でやっとんかなあ、思っとんたんやけど、ある日、その中の一人の社員に聴いてみてん。
「おたくの社員さん、みなさんえらいアシンメトリーなマウス使こうてはりますけど、これどちらのカリスマ美容師さんの仕事ですか?」って。
そしたら「ちゃいますちゃいます!うちの会社は気ぃ利かん人が多いんで、みんなマウスのクリック回数があほみたいに多いんですわ。せやからマウスの左側が自然とめちゃくちゃへこむんですわ!」いうてん。
こっわ!どんだけクリックしたらマウスの左側が陥没すんねん。おっさんてっきりカリスマ美容師がマウスをデザインしたから毛先みたいにマウスをアシンメトリーにして遊ばせてるんや、思うてたわ。
というか普通その前に壊れるやろ。なんで正常に機能しとんねん。機械工学の常識無視しまくっとる。こっわ。
これほんまの話やで。おっさん嘘つかへんからな。多分つかへん。たまにしかつかへん。100秒に3回しかつかへん。
まあせやから、会社で「気が利く=クリック減らす」いうことはしょっちゅう言わなあかん、ちゅうことやな。アシンメトリーのマウス使いたなかったらな。
クリックさせへん=気が利く=ついでに人気者になる、いう法則が使えんのは、仕事のやり取りだけやないで。実はSNSでもおんなじこと言えるんや。
フォロワーが多いアカウントよう見てみ。大抵はなるべくクリックさせず、そこで楽しませたり、役に立つこといったり、なんやかんや工夫しとる。本人は無意識かもしれんけどな。
例えばTwitter。イーロン・マスクな。カッコええな、イーロン・マスク。おっさんも一回一緒に働いてみたい。でも無理やからせめてテスラに乗りたい。
テスラカッコええな。あれ乗って渋谷のMIYASHITA PARKのルイ・ヴィトン のお店の前に乗りつけたらカッコええよな。でも無理や。おっさん富田林在住やからな。
「テスラはクルマじゃなく走るスマホなんです」いうやつもおる。いらんな。走るスマホはいらん。普通のクルマでええ。スマホは触るだけでええ。別にスマホには乗りたくない。やっぱりテスラはええわ。やめとこ。
あかんあかん、また話ずれてもうた。意識が仁徳天皇陵に吸い込まれよる。マグネットパワーや。
話戻すけど、例えばTwitterでブログをシェアする時。「ブログ公開しました。皆さん見てください」とだけ伝えるやつ。あれ下手くそやな。Twitter4級やで。
デキるやつはちゃうで。ブログの中から役立ちそうな部分をピックアップして130字くらいにまとめて露出させる。ほんで残りの文字数の中で、「さらに見たい人はこの記事をご覧ください」みたいに書く。この方がいいねやRTされる可能性が高まるねん。クリックせんでも情報にありつけるからやな。ツイート上のその文章に対して、いいねが付くわけや。よう考えれば分かる話や。
おっさんみたいなツイ廃になるとな、分かっとんねん。リンク先の情報は見いひん。全然見いひん訳やないけど、全員は見いひん。100人中60人くらいは見いひん。アメリカ国防総省調べ。
あれは見てるふりしとるだけや。いいねとかRTして「私もこれに精通してる1人です」ってアピールしたいだけやねん。
リンク先を読んでない人が多いんは、1万字以上ある記事に5秒でいいね付いたりすることからもよう分かる。1万字を5秒で読むってどんだけ速読やねん思う。せやない。そもそも読んでへんねん。
「ちゃんと読んでほしい」ってそのこと責める人おるけどな、おっさん責めへんで。懐深いからな。
むしろ読んでへんのにおっさんの記事やからええに決まってる、思うてくれてるわけや。かなりのファンや。富田林のけったいなおっさんにもファンがおる。ありがたい話や。これはあめちゃんあげなあかん。オフ会でリアルあめちゃんあげたい。そんでもっとファンにしたい。そっから有料サロンに引き摺り込んで情報商材売りつけて有り金ぜんぶむしり取りたい。
あかん、また心にもないこと言うてしもた。口からエクトプラズム半分くらい出とったわ。意識が西中島南方の北東方面を旋回しよる。
まあようするに、ファンでさえ、クリックすんのが面倒くさいんや。できればツイートだけで楽しみたい。ツイートだけでお得な情報をいただきたい。わざわざURLクリックして画面遷移するより、画像貼ってくれてその場で見せてくれた方がありがたい。これが受け手側の心理や。「ちゃんと見てほしい」いうんは、こっちの都合なんや。
実はこれ、Twitterのビジネスモデルやアルゴリズムとも関係しとる話なんや。Twitterとしてはせっかく滞在しているユーザーをTwitter内に留まらせたい。そらそうや。その方が広告とかに触れてもらえる確率あがるからな。
せやから外部に誘導するツイートはほんまはあんま嬉しくないんや。リンク貼り付けてるツイートは露出させにくくするアルゴリズムを仕込んでる、ちゅう話を小耳に挟んだこともある。
最近ニュースになっとった、Twitterで長尺動画が見れるようになる変更も、YouTubeみたいな外部のプラットフォームに逃がしたくないからやな。「Twitter内に留めておけ」いうてイーロン・マスクが宇宙空間から指示してる姿がよう見える。おっさんのエクトプラズムはスターリンクと常時接続できるからそんなんもお見通しや。
デキるやつはな、こういうTwitter社の背景と、ユーザーがクリックするのを面倒くさがる気持ちと、両方に対応しよる。せやから、なるべくクリックせんでもええ作りにするわけやな。
「なるべくクリックさせへん」いうんは、UIデザインの基本にもなっとる。
世の中のアプリとか業務システムとか社内システムとかでな、いちいちページ遷移せんと全容が掴めんUIとか、無駄にタブで格納したUIとか、よう見かけるやろ。これ全部いらんクリックが大量発生しよる。だから使ってて面倒くさい。気ぃ利かんなあ、思うわけや。
え?UIって何ですかって?UI知らんのか。それはやばいな。完全に学習エンジン壊れとるで。生きてて入ってくる知識ダダ漏れしてるやろ?すぐにクラシアン呼ばなあかんな。でも今はその必要はないで。おっさんが森末慎二になったる。
UIいうんは、「ユーザーと機械との接点」のことで、ユーザー・インティライミの略やな。よう覚えといてほしいから2回いうで。ユーザー・インティライミの略がUIや。ちなみにUIと一緒によう使われるUXは「ユーザーを最高の気持ちにさせる」いう意味で、ユーザー・エクスタシーの略や。
話戻すけど、こういう時のデザイナーの浅知恵はおっさん手に取るように分かる。シンプルなUIの方がユーザーに喜ばれるはずやから、できるだけ要素を隠したUIにしよう、っちゅう考えやな。
あいつらすぐにミニマルとかクリーンとか言い出しよるからな。「日本の映画のポスターは海外のポスターと比べて美しくない」「日本人には美意識が欠如してる」いう独自の自虐史観持ち出してちょいちょい炎上させよる。あほか。文脈ちゃうやろ。
多くの人にはどこの誰か分からん外人さんが載ってる説明不足のポスターなんか紙屑やろ。アカデミー賞とっとーととか全米が泣きよんしゃーとかそういう文字情報がなかポスター、誰が見るとね。そげな気配りあるから映画観るやつが1人でも多く増えよるんよ。映画のポスター作っとるデザイナーはよう分かっとる。それを批判しとるやつはなーんも分かっとりゃあせん。そげなこというデザイナーしゃーしか。おっさんは好かんばい。
キャナルシティの映画の話はまあええ。UIの話やけどな、要素が少ないほうが、見た目は確かにシュッとする。
せやけど、デザイナーが好きなシュッとしたミニマルデザイン、あれ一般人には顰蹙買うこと多いねんで。なんでもかんでもシュッとさせたほうがええみたいな発想はデザイナー脳やな。それはユーザー・インティライミとしては失格や。ナオト・インティライミが鬼の形相で激詰めしてくる事案や。
ユーザーとしてはな、シュッとしてるより多少ブサイクでも最初から全部ズラーっと並んでる方が見つけやすい。そういうことはようあんねん。ページ分割されたりタブで格納されたりしてると、中身が分からんようになる。ほんでクリックが増える。
「なんやこれちゃうやん!」「これもちゃうやん!」「またこれもや!」「はよ見せろやボケ!」ってなる。世界一おもんない黒ひげ危機一髪誕生の瞬間やな。
こういう業務システム、何千万とか何億とかかけて気ぃ利かん人間を機械化しとるようなもんやで。そんな金あるんやったらおっさんの情報商材買ってくれ。ほんま。
「おっさんのいうこと分かるけど、全部にそんな気ぃ使って仕事してたらキリないわ」「修正箇所全部メールに書いてたら仕事無限に増えるで」「禿げそう」とか思うてるやつがおるかもしれん。
仕事には制限時間があるな。そりゃそうや。だからどっかで割り切らなあかん。ほなどこで割り切るんや、っちゅう話や。
おっさんは「自分と相手の時間の総量」が一つの基準になる思うねん。
例えば最初の例にあげた添付パワポの場合やとな。こんな風に考えるんや。
添付だけのメール(計16分)
依頼者:所要1分
確認者:所要15分
添付+本文説明メール(計8分)
依頼者:所要3分
確認者:所要5分
みたいな感じになるやろ。内容を分かってる依頼者が情報を編集した方が、確認者も含めた全体の所要時間が減るわけやな。
逆に、短文では説明できんくらい複雑なこと報告する場合やと、こうなることもあるわな。
添付だけのメール(計31分)
依頼者:所要1分
確認者:所要30分
添付+本文説明メール(計40分)
依頼者:所要30分
確認者:所要10分
ここまでいくと、説明の負荷がだいぶ高い。せやから「添付を見てください」を基本とする。その上でできるだけ確認しやすくなるよう、数分で書ける範囲で補足説明する、が最適解になるな。
こんな風に、自分が使う時間と、相手が使う時間のそれぞれを頭に入れて、どこまで丁寧に連絡した方がええか、どこからは省略した方がええかの、塩梅を見定めるのが、デキるやつのやってることや。
もっとデキるやつはさらに「その人の時間当たりの金額」まで頭に入れてるで。確認者がハイパフォーマーで給料が高い場合、できるだけ依頼者側で時間を使う、みたいな判断を利かせるわけや。
まあでもそこまでいくとだいぶ難易度高い。だからまずは時間だけで考えるでええとおっさんは思う。
この、「時間を奪わないためにどうするか」っちゅうことで、「クリックをさせへんように」っちゅう視点が活きてくるわけやな。
大事なんは、相手の体験を解像度高く想像することや。自分が仕事を終える。自分が言われたことをする。そこにばっかり囚われてると、相手の時間を奪ってることに気ぃ付かんようなる。
自分がちょっと手間かければ相手の時間を大きく減らせるのにそれをせえへん。自分が楽をするために相手の時間を奪うようなコミュニケーションを取る。そんで「あいつは気ぃ利かん」いう評価になってしまう。
とにかく、相手の時間、手間を考えるんや。ヒントは「相手にクリックさせへん」「相手のクリック数を減らす」や。それを忘れんといたら、絶対「あいつは気が利く」いう評価に変わっていくはずやで。
知らんけど。