最近、コンビニなどで「タンパク質〇g」と大きく書いてある商品を見かける。
これは正に「ファクト型」のコピーライティングの良い例だと思う。
コピーを書く際には、単なる機能などの事実(ファクト)ではなく、顧客の便益や理想の体験(ベネフィット)を伝えるべきだ、と言われることがある。
しかし、どんな時でもベネフィット型のコピーが良いとは限らない。むしろ具体的な事実をそのまま書いてしまったほうが効果的なこともある。
ファクト型コピーとベネフィット型コピーの、それぞれの特徴を簡単にまとめると以下のようになる。
ファクト型コピー
〇:具体的な情報を早く伝えられるので、リテラシーが高い顧客に効果的
〇:商品に強い機能があるほど、その魅力的をダイレクトに伝えられる
✕:リテラシーが低い顧客は、事実から価値を読み取れない
✕:機能が他の商品に劣っていると、魅力を伝えにくい
ベネフィット型コピー
〇:リテラシーが低い顧客にも、価値を想像させやすい
〇:商品の機能が弱くても、他社との差別化を図れる可能性がある
✕:リテラシーが高い顧客には、抽象的で当たり前の内容になりやすい
✕:事実から内容を発展させる必要があるので、コピーを考えるのが難しい
たとえば、タンパク質15gのプロテインバーがあったとする。筋トレ・ダイエット目的で購入する人向けのコピーを、すごく雑にファクト/ベネフィットで書き分けると以下のようになるだろう。
ファクト型コピー:1本でタンパク質15g
ベネフィット型コピー:筋トレ・ダイエット時の手軽な栄養補給に
おそらく筋トレやダイエットに慣れ親しんでいる人であればファクトのほうが、馴染みの薄い人であればベネフィットのほうが魅力的に感じるのではないだろうか。
ベネフィット型のコピーは価値を想像しやすくなるが、そのぶん内容としては抽象的になっていってしまう。
さらに多くの場合、ベネフィットとして書かれることは、リテラシーの高い顧客には「当たり前」の情報になる。
先の例で言えば、筋トレにタンパク質が重要なのはわかってるから、具体的にどれくらい含まれてるのか早く教えてくれ、という話だ。
つまり、ファクトを書くべきか、ベネフィットを書くべきかは、顧客のリテラシーに合わせて判断しなければならない。
個人的な推測だが、最近「タンパク質〇g」と大きく書かれた商品が多いのは、筋トレ・ダイエットの知識が一般化して広く普及してきたからではないだろうか。
このように、どれくらいの知識を持った顧客を対象とするかだけでなく、時代に合わせて社会全体のリテラシーが変化することも考慮しなければならない。
ただしリテラシーの高い顧客が相手ならファクトが必ず効果的かというと、そうとも限らない。
ひとつ例を挙げるとすれば、ファクト型のコピーは単純勝負になりやすい欠点がある。
極端な話、「タンパク質15g」の商品の横に「タンパク質20g」の商品を置かれたら負けてしまう。
ベネフィット型のコピーであれば、上記の例のようにファクトが同等もしくは少し劣っていても、そこから導き出す価値を競合商品とズラすことで、勝ち筋が見える可能性がある。
ファクトとベネフィットを整理することは重要だが、実際にどれを書くかは、それぞれの長所/短所を踏まえて決めたい。