「顧客の成功」をなぜ忘れてしまうのか

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コンサルタント 高橋 慶

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「顧客の成功起点で考える」という指針を、社内でしょっちゅう聞く。その意識は頭のどこかに常にあるのに、実践となるとつい忘れがちになってしまう。

なぜだろう?と考えてみた。

1.「信頼を失いたくない」という恐れに振り回される

顧客の成功よりも、「しくじって信頼を失いたくない」という恐れが前に出ると、選択や意見を迫られる場面で、相手の成功を基準とした言動や振る舞いを選べないことがある、と感じる。

ビジネスパートナーとしての見え方に気を配る必要はある。しかしそれはあくまでも、「相手の成功に貢献する」という目的に照らし合わせたうえでの気配りであって、「信頼を失いたくない」という恐れは不要である。恐れはおもねりにつながり得るし、それが結果として成功を遠ざけてしまうこともある。

あと、他人が自分を信頼するかどうかは、自分にコントロールできることではない。信頼という極めて個人的な感情を他人に求めるのは、自信のなさからくる身勝手な願望だなと思う。

であれば、「誠実であること」「共に考え、共に働くこと」というラインだけを確実に守り、「どう見られるか」「しくじらないように」という恐れは、意識的に捨てたほうがよい。そうすれば、顧客の成功に対して本当に大事なことが何なのかについて考える余裕が生まれるはず、と思う。

2.恥と矜持で質を求める

コンテンツ制作などのクリエイティブ領域は、時間をかければよいものができるわけではない。「その時点で必要なクオリティとアウトプットはどのレベルか」を素早く的確につかみ、時間内にその地点に向かって手を動かしてまた直して…を繰り返すほうが、最終的なアウトプットの質は上がりやすい。

…と、頭では分かっていながら。実際に自分が手を動かす身になると、どうしても「あれもこれも」になりがちである。

「あれもこれも」は、一見、「顧客のために質の高いアウトプットを」という思考に基づいていそうでありながら、実のところは「このクオリティで出してよいのか」という自信のなさと、「こんなクオリティで出すなんて」という矜持の表れだと思う。

それも、「お客さんのために」という大義名分を背負っている分、単なる恥や矜持よりも厄介である。

繰り返しになるが、質を自分基準でジャッジするのではなく、使える時間と各時点で必要な質を最初の段階で的確に推し量り、その条件下で最善のアウトプットを出せるように意識したい。

これは筋トレと同じで、適切な訓練により少しずつできるようになると思うので、同じプロジェクトのメンバーには適宜「それ要らん」「いつまでにこのレベルで出せ」の視点からフィードバックをもらおうと思う。

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