専門家に向かって、その人の専門分野について自分の持つ知識すべてを話した経験があるだろうか。わたしはある。そして確信した。「これ、最強のインプットじゃん」と。
わたしは普段コンサルタントをしているが、ちょっとした事情から、ある案件にライターとしてアサインされた。その案件の顧客企業はニッチな商材を扱っており、原稿を書くにあたって知識をどれくらいインプットすればよいか悩んでいた。先方からいただいた資料や関連サイトなどを見て、掘れるところまでインプットをしたつもりだったが、どうも今ひとつ「自分は本当に十分理解できているのか?」感がぬぐえなかった。
そんなとき、折よく先方から「ウチの商材の良さをちゃんと知ってもらったうえでコンテンツを作ってほしいので、商材についてライターにレクチャーしたい」との申し出をいただいた。そのありがたい申し出に対して、最初は普通に話を伺おうと考えたが、「待てよ」と思いとどまった。
確かに専門家からレクチャーを受ければ、インプットとしては十分である。しかしいざコンテンツを作る段になった際、自分が「理解できた」と思っていることが本当に正しいかどうか、やっぱり不安が残るかもしれない。その不安を抱えたままコンテンツを作るのは、全然誠実じゃない。
「ならばいっそのこと、自分が今わかっていることを相手に全部聞いてもらって、間違っていたら指摘をしていただこう」と思い立った。そこで先方に、「話を聞く時間よりも、自分が話をして掘り下げてもらう時間に重きを置きたい」と伝えた。
結果、レクチャーは非常に有意義なものになった。先方はわたしの理解度が具体的に掴めたことで、修正すべき点やより理解を深めてほしい点に集中して指摘をくださった。わたしは自分の認識の正誤や足りないところを具体的かつ明確に知ることができたため、解像度がぐんと上がっただけでなく、「これで書ける」という自信にもつながった。
巷でもよく言われるが、アウトプットは最強のインプットだと思う。それも、その分野の専門家に対してアウトプットするといい。
「間違えたことを言ったら恥ずかしい」なんて思わなくていい。そもそもスペシャリストに敵うはずがない。むしろ自分の理解が不十分であることを前提として、「間違いがあれば教えてほしい」「より深く理解するためにはどこを掘り下げるべきか知りたい」という姿勢でフィードバックをお願いすれば、実りの多い収穫が得られるはずだ。
何かを「わかる」に不安を覚えがちな人は、ぜひ積極的に専門家へのアウトプットを試してみてほしい。きっと、理解がぐっと「自分のもの」になる感覚を得られると思う。