通知のマネジメントも自己責任の時代

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代表取締役 枌谷 力

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“アテンション・エコノミー”という言葉がある。膨大な情報に囲まれている現在、アテンション(注目・注意)が経済価値になり、多くの企業がアテンションの獲得にしのぎを削っている実態を表した言葉である。

まさに我々は公私ともども、「通知」というアテンションに囲まれ、それに反応して多くの行動を起こしている。その状況は、通知に支配されていると言っても過言ではない。自分の意思で通知を上手にコントロールしないと、まるでドラッグのように「通知を見たい」という欲求に溺れ、時間を無駄に使ってしまう

社内に導入しているSlackは、非常に優れたUXを備えたアプリケーションである。実はSlackのかなり初期に会社で使っており、その時には満足できず別のチャットに乗り換えたが、再度Slackに戻した時に、その進化に軽く驚いた。痒いところにまで手が届くようにアップデートされていたからである。しかしSlackのUXが抜群に優れているからこその弊害がある。それが「通知地獄」に陥ってしまうことである。

通知という機能の最大の問題は、「通知が来た時点ではそれが自分にとって重要かどうかの判断が付かない」ということだ。だから、来た通知は今すぐ見たくなる。通知を潰すのが自動的に実行する習慣になる。そのうち、メンションが飛んでないチャンネルまで見に行くようになる。最新情報を追うことが中毒のようになり、やがて未読を示す白い太文字まで追うようになる。

FOMO(Fear Of Missing Out)という言葉がある。常に周りの情報や行動についていかないと自分が置いていかれたり、チャンスを逃してしまったりするのでは、という恐怖心を表した言葉である。Slackの通知や未読を追いかける根底には、このFOMOもあるのかもしれない。

例えば、忙しいはずの人が、なぜか関係ないスレッドに反応していることはないだろうか。
例えば、精神的に余裕がないはずの人なのに、あれにもこれにも反応していることはないだろうか。

「社内でオープンに発言・発信・反応できる」というのは良いことだ。しかし上記のような反応はカルチャーではなく、通知中毒やFOMOによって起こってる悪しき習慣であるなら、何とかした方が良い。

自分でできる努力の一つは、「Slackを見ない時間を作る」である。冷静に考えれば、多くの人の仕事は、1分1秒を争うほどに緊急なことは、そうそう起こらない。であれば一層のこと、2時間に1回だけSlackを見る、その時に15分間だけ返信する、と決めてしまうのもアリだろう。それを仕事のカレンダーに入れてしまう。もちろん、何もなければその15分は他のことに使えばいい。

また、Slackはチャンネルごとに参加/退出が決められる。「関係ないチャンネルからは抜ける」も自分でできる努力の一つになるだろう。

さらに、皆でできる努力として、「できるだけメンションを減らす」がある。「あの人にも読んでほしい」「あの人にも知ってもらった方が良いだろう」と色々と保険を掛けようとして、様々な人にメンションを付けて投稿しているケースをよく目にする。

しかし、打合せ時間の周知など、絶対に必要な時を除き、メンションは絶対に知ってほしい1人だけにする、などのルールを課した方が良いだろう。周知が必要なら、メンションを受けたその一人が転送すればいい。こうしてみんなが一日に受け取るメンションが半分になるだけでも、生産性は随分と上がるのではないだろうか。

これ以外にも色々とありそうだが、こうして通知をコントロールするのも、タイムマネジメントやセルフマネジメントの一貫であり、その人のパフォーマンスや評価に間接的に影響を及ぼすものだ。通知に追われやすい時代を生きているという前提を理解し、通知に溺れない工夫をして、仕事もプライベートも賢く過ごしていきたいものである。

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