ウェブサイトの制作を支援する中では、顧客の気持ちを想像して、ヒントを得ようとすることがよくある。本当は実際に顧客の声を聞けたら一番いいのだが、それができない場合も多いからだ。
だが、あくまでも想像は想像でしかなく、上手くイメージできなかったり、見当違いなことを考えていたりもする。
では、本当の顧客心理を理解するにはどうすればいいのか。もう「自分が顧客になる」しかないのではないだろうか。
先日、とある法人向けサービスの利用を検討するために、ウェブで情報収集から問い合わせまでを経験したところ、自分が顧客になってみて得られる情報の多さを思い知った。
(BtoBでは自分が顧客になるケースは意外と少なく、私も法人向けサービスの導入担当者になるのは今回が初めてだった。)
普段はBtoBのウェブサイトを作る側が、いざ利用する側になってみると、こんなにも気づくことがある。
BtoBのサービスサイトを見て感じたこと
- ファーストビューのキャッチコピーは意外と読まれない
- キャッチコピーを読んでもよくわからないことが多い
- 情報収集段階だと本文はちゃんと読まない(候補を絞って検討したらじっくり読むと思う)
- とりあえず同業他社と何が違うのかをわかりやすく教えてほしい
- どの会社も同じようなことを書いていて、よくある言葉は刺さらない
- サイトを見ながら常に社内でどう説明しようか悩んでる
- サービスの特徴をひとことで言い表してくれるとめっちゃ助かる
- 大きな数字だけ出されても、それがどれくらいすごいのか判断できない
- 結局はサービス自体の知名度による印象にだいぶ引っ張られる
- 導線がわかりにくくて迷うとモチベーションが下がる
- (サービスにもよるが)サイトのビジュアルはあまり気にしてない
- いきなり問い合わせよりは資料請求させてほしいときもある
- 打ち合わせの日程調整ツール入ってると便利
- 個人的には電話よりメールからウェブ会議の日程調整してくれるほうが嬉しい
営業さんからサービス説明を受けて感じたこと
- 第一印象は大事だけど、話の内容が良ければ後から印象は変わる
- コーポレートサイトに載ってるような情報は事前に調べてくれるとありがたい
- 商談の最初にどんな流れで説明を進めるか教えてほしい
- こっちが知りたいのはサービスの内容そのものではない(それは資料見ればわかるから)
- どんな点がマッチしてるか、競合と比較検討するときの根拠を知りたい
- 資料を見ればわかる話を長々されると時間がもったいなく感じる
- 何を話すか考えてるのかもしれないが、無言の間があると気になる
- 前提とか背景の説明は意外性がないと「まあそうですよね」と思ってしまう
- なんでこの前提の話をするのかを伝えてくれると、当たり前っぽい話でも受け入れられる
- 正直がっつり競合の名前出して何が違うのか教えてくれると助かる
- ただし露骨に自社を褒められるとちょっと警戒してしまう
- 「営業としてはこんなこと言うべきじゃないけど~」は方便だとわかっていても好印象
- 「私が〇〇さんの立場だったらこうします」みたいな話も単純にありがたい
- 商談時のコミュニケーションで契約後に上手く付き合えそうかも推し量っている
完全に予想外なものは少なく、顧客心理のセオリーとして頭では理解している内容も多かったが、身をもって体験したことで解像度や重要性の認識が結構変わった。
顧客の気持ちになって想像するのと、実際に顧客になるのでは体験としての価値が全く違う。
マーケティング、デザイン、ライティング、セールスなどに携わっている方は、ぜひ自分が顧客になってウェブサイトを見たり、営業を受けてみたりしてほしい。自分の担当している商材と、顧客として体験する商材が少し違ったとしても、参考にできる共通点はあるはず。
BtoBは顧客になれるチャンスが少ないので、会社で新しいサービスを導入するときには上記のような職種から希望者を募ってリサーチを依頼するなどして、顧客になる経験を積める機会を意図的に作ってもいいかもしれない。