SNSでシェアされやすい記事の書き方と投稿の仕方×9

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ライター林崎優吾
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代表/マーケター/デザイナー/ブロガー枌谷力

頑張って書いたブログやオウンドメディアの記事が、SNS上でほぼ無反応だったりすると、「自分にはブログを書く才能がない…」「自分には文章のセンスがない…」などと、つい落ち込んでしまいます。

しかし記事がシェアされないのは、才能や内容ではなく、届け方の問題かもしれません。

この記事では、ベイジ社内で蓄積されている「記事がSNSでシェアされるための工夫」に関する知見をまとめました。SNSの中でも特に拡散性が高いTwitterでのノウハウを中心にしています。

記事の執筆にあたって、これまで数々の記事やコンテンツをSNSで拡散させてきたベイジ代表の枌谷に取材しました。そこで教わったテクニックを、ライターの林崎から皆様に共有します。

1. 認識しやすく興味を引くタイトルをつける

SNSでシェアされやすくするために最初に気をつけたいのは、何よりもタイトルです。ベイジでも、記事タイトルは公開ギリギリまで何度も修正するほど、いつも悩みながら決めています。それくらい重要な要素です。

多くの人は、画面を高速でスクロールさせながらTwitterを見ています。人は1秒で10文字を処理すると言われていますが、そこから計算すると、1~2秒、冒頭10~20字の文字だけを見て、そのツイートや記事を読む・読まないを判断していると考えられます。だからこそ、内容と読むメリットを一瞬で理解できるタイトルが圧倒的に有利なのです。

そのためタイトルを作る上で重要なのは、記事を象徴するキーワードをできるだけ前のほうに置くことです。こうすることで、わずかな時間でどんな記事なのか即座に伝えられるようになります。

また、タイトルはできるだけ具体的にしましょう。たとえば、「仕事がデキる社会人になるためにやるべきこと」というテーマは需要はありそうですが、このタイトルだと抽象的すぎて、誰のために何について書かれた記事なのか読み取れません。「読んだら得をしそうだ」「読んだら楽しそうだ」「これは自分のための記事だ」と一目でわからないタイトルは無視されてしまいます。

コーディングを助けるためにデザイナーができること』のように、タイトル内に具体的な想定読者(ターゲット)を入れると、「これはあなたのための記事ですよ」と明確に伝わるようになります。

ただし、ターゲットを特定すると、他の属性の読者が読まなくなるリスクもあります。ターゲットの縮尺を変えるバランス感覚こそ、マーケット感覚、ソーシャル感覚と言えるものですが、これはソーシャル上に記事を投稿しながら試行錯誤して身につけるしかありません。

なお、タイトルで興味を引こうとするあまり、大げさな表現を使うのはおすすめしません。目的は、記事をクリックさせることではなく、記事を読んで満足してもらうことです。内容とかけ離れたタイトルで無理やり人を集めても、ガッカリさせてしまうのであれば意味がありません。「釣り記事」と思われて、嫌悪感を抱かれてしまったら、むしろ読まれたことがマイナスになってしまいます。

まとめ

  • 記事を象徴するキーワードをタイトルの前のほうに置く
  • タイトルはできるだけ具体的にする
  • 想定読者(ターゲット)をタイトルに入れてみる
  • ただしターゲットを絞りすぎないように注意する
  • 煽りタイトル・釣りタイトルはつけない

つい読みたくなるタイトル、8つのパターン

  1. 問いかけ(例:BtoBの購買活動は本当に論理的・合理的か?
  2. お役立ち感(例:ビジネスに役立つ上手な文章の書き方11のコツ
  3. 徹底解説感(例:伝わる提案書の書き方~ストーリー・コピー・デザインの法則
  4. あるある・共感(例:パワポでやりがちな9の無駄な努力
  5. 数字(例:オウンドメディアに関する27の質問に2万字で回答します
  6. 期待感(例:仕事のストレスを軽減させる8つの思考
  7. 意外な事実(例:ウェブ制作会社はコンペで選んではいけない
  8. 気になる言葉(例:BtoBのダークソーシャルについて

すぐできる工夫:はてなブックマークの人気記事を見る

実際にバズった記事を観察してみると、ここで紹介した型通りではないタイトルも多く存在します。ここで紹介したのはあくまでセオリー的なもの、守破離でいうと「守」にすぎません。いつも同じ型にはめるのではなく、文脈や内容によって、セオリー通りにいくのか、あえて外すのかを、自分で決められるのが理想です。

まずは、日頃からSNSでバズっている記事をたくさん見るのがいいでしょう。そのインプット手段に最適なのが、「はてなブックマーク」です。

たとえば、書きたい記事のテーマを、はてなブックマーク上で検索して人気順で表示してみましょう。そうすると、どういった記事が人気で、どんなタイトルが付けられているか一目でわかります。はてなブックマークの年間ランキングも、魅力的な記事タイトルのいい参考になります。

はてなブックマークには独特の世界観やユーザーの偏りもあり、そこで人気だからと言ってTwitterやFacebookで拡散されるとは限りません。とはいえ、シェアされやすい記事のタイトルを手っ取り早く学べる、非常に身近な教材と言えます。

2. 一瞬でも目に留まるOGP画像をつくる

タイトルと同じくらい重要なのが、SNSで記事のリンクを張ったときに表示されるOGP画像です。Twitterのタイムラインを眺めると、1~2行のテキストで表示されるタイトルよりもOGP画像のほうが面積が広く、より目につくことがわかります。そう考えると、SNSでシェアされるためには、タイトル以上に力を入れるべきとも言える要素です。

OGP画像は、きれいに作ればいいというわけではありません。目に留まりやすいOGP画像の作り方にも、一定のセオリーがあります。

たとえば写真を使うなら、「スーツの男性が握手している様子」など、どこかで見たことがあるような写真は避けましょう。こうした特徴のない写真は、Twitter上では無視されてしまう可能性があります。

イラストを使う場合は、複雑でごちゃごちゃしたものではなく、シンプルで配色がハッキリしたものを選ぶといいでしょう。写真やイラストと合わせて、記事中に出てくる象徴的な図を含めるのも効果的です。

ちなみに時々、「OGP画像のデザインは統一したほうがいいのか?」という質問をいただきます。

ブランディング観点でいえば、統一されていた方が望ましいです。とはいえ、一般的なオウンドメディアの直帰率は通常90%前後、よほど熱心なユーザー以外は1ページだけ見て直帰します。つまり、他の記事のOGP画像との統一感に気づくユーザーは少ない、ということです。たとえ気がついたとしても、それが何の効果に繋がるかは未知数です。

こうしたこと考えると、「余裕があるなら統一した方がいいが、それで記事の公開が遅れたり、執筆者やデザイナーに負担がかかるのであれば、更新スピードを優先したほうがいい」というのが、私たちの回答になります。実際にベイジでも、SNS上で目に留まる画像であること、記事のテーマと親和性があることを最重視し、メディア全体の統一感はそれほど気にしていません。

まとめ

  • ありがちなストックフォトを使うのは避ける
  • イラストはシンプルで配色がハッキリしたものを使う
  • 記事中の図やキーワードを入れるのも効果的
  • 画像の統一感は、それほど気にしなくてもいい

すぐできる工夫:タイトルをそのまま画像に入れて作る

自分のデザインセンスに自信がなく、依頼するデザイナーもいない場合は、記事タイトルをそのまま画像にしてしまいましょう。

プロのデザイナーやライターは「画像内の文字とタイトルで重複していて気持ち悪い」と思うかもしれませんが、ユーザーはそんなことをあまり意識しておらず、単純に目立つほうの文字を見るだけです。写真やイラストを下手に使うより、画像内で大きく太く濃い書体のタイトルを見せたほうが、クリックを期待できます。

たとえば、才流さんが運営されているオウンドメディアのSAIRU NOTEは、タイトルがそのまま入ったOGP画像に統一されています。また、最近のnoteや、エンジニアのための情報コミュニティZenn、弊社が運営するベイジの日報では、タイトルからOGP画像を自動生成する仕組みを取り入れています。

OGP画像の一番の目的は、あくまで内容をわかりやすく伝えて、関心を持ってもらうことです。必ずしも、時間をかけて凝ったデザインにする必要はありません。画像を作る手間を省きつつ十分な効果を得たいなら、このように思い切ってタイトルそのものを画像にするのがおすすめです。

3. 本文を読みたくなる見出しにする

タイトルやOGP画像を見て気になって記事を読み始めた人は、文章を一文字ずつ丁寧に読み込んでいくというより、見出しを中心にざっと目を通すような読み方をします。

特にSNSから流入する人は、通勤や休憩などのスキマ時間に見ていて、冒頭から一文一文じっくり読む余裕がないことも多いです。ざっと見出しに目を通して、その時点で興味がなければ、詳細は読まずに離脱します。

「キャッチコピー(見出し)の役割は、本文の一行目を読ませることである」というのは、アメリカの著名なコピーライター、ジョセフ・シュガーマンの言葉です。さらに「一行目の役割は二行目を読ませることであり…そうして”すべり台”のように気づいたらスルスルと最後まで読んでしまうのが、目指すべき文章の形だ」とも語っています。

この考えを踏襲すると、文章を書くときはまず見出しを順番に並べてみて、タイトルから1つ目の見出し、2つ目、3つ目と、すべり台のように読者の興味が続く構成になっているかチェックするといいでしょう。

印象的な見出しを作るテクニックは、タイトル作りのコツと似ています。中身を読ませるために、タイトルと同様に見出しにも気を配ってみましょう。

まとめ

  • 本文を書く前に見出しを順番に並べてみる
  • すべり台のように興味がつながる構成にする
  • タイトル作りのテクニックを見出しにも応用する

すぐできる工夫:見出しを並べてツイートを作ってみる

Twitterでは、見出しをコピペして記事をツイートしている人をしばしば見かけます。「〇〇ができる5つのコツ」のような記事で特に多いですが、これを応用し、自分の記事の見出しだけを並べてみると、見出しに魅力があるのか、セルフチェックできます。

本文を書き始める前に、まずはタイトルと見出しだけを順番に並べましょう。それを1つのツイートだと思って眺めてみます。実際にTwitterの投稿フォームに入れてみると、より想像しやすくなるかもしれません。

それでツイートが拡散されるイメージが湧いたら、魅力的な見出しが作れていると自信をもっていいでしょう。見出しを並べた時点で、「なんか当たり前で普通のことしか書いてないな…」と思ってしまった場合、見出しに魅力がないのかもしれません。その状態でいきなり本文を書くのではなく、魅力的な見出しになるまで推敲してみると、結果的に魅力的な本文、魅力的な記事に仕上がる可能性が高まるでしょう。

4. 切り取りやすいフレーズを散りばめる

記事の中で心に刺さったフレーズがあると、コピペしてツイートするというのは、Twitter上でよく見られる行動パターンです。現在のnoteでは本文をドラッグすると、その場ですぐにシェアボタンが表示されます。コピペ&シェアをする人の行動を踏まえている、気の利いた機能ですね。

人には、こうした「切り取り欲求」があるため、心に刺さる名言・金言・パワーワード・キラーフレーズが散りばめられている文章ほど、シェアされる確率は高くなります。

ただ、この話の難しいところは、名言・金言・パワーワード・キラーフレーズを再現性を持って量産できない点にあります。タイトルで紹介した8つのパターンを応用すれば多少はそれらしいものが作れるかもしれませんが、確実ではありません。

名言・金言・パワーワード・キラーフレーズとそうでないフレーズとの違いは、内容の奇抜さというよりは、言い回しや言葉選びにあります。言っていることの内容は普通でも、言葉の意外な組み合わせや切り口の面白さで、名言・金言・パワーワード・キラーフレーズになりえます。つまり、これはクリエイティブワークです。

残念ながら、この能力は一朝一夕では身に付きません。SNS上に言葉を発信し続けて、肌感覚で掴んでいくしかありません。反応があるツイートとそうでないツイートの違いを意識的に観察し続けることで、この感覚が徐々に養われていくでしょう。

誰でもすぐに真似できることとしては、できるだけ文章を短くすることが挙げられます。長い文章は切り取りにくく、ツイートする時に編集の手間がかかります。文章が短ければ、気に入った一文をすぐコピペして、すぐツイートできます。文章は切り取りやすいよう、できるだけ短く切って書くようにしましょう。

まとめ

  • 本文の心に刺さった部分をコピペしてツイートする人は多い
  • 文章の中に名言・金言・パワーワード・キラーフレーズをできるだけ散りばめる
  • 日頃からTwitterを運用して、名言・金言のセンスを養う
  • 切り取りやすいように文章を短く区切る

すぐできる工夫:ツイートを連投するように書く

魅力的なフレーズを書くにあたっては、まとまった長い文章を書こうとするのではなく、ツイートを連投するような感覚で本文を組み立てていくのもおすすめです。

1つの段落を1つのツイートだと捉えると、「この部分はシェアされるだろうか?」「興味を引く言葉は入っているだろうか?」「この普通の言葉を名言・金言・パワーワード・キラーフレーズに変えられないだろうか」と細かく確認できるようになり、ぼんやりとした平凡な言い回しになるのを防げます。

また、140字ごとに話をまとめることで、文章は自然と短く端的になるでしょう。

5. 多種多様なフックを埋め込む

ブログ記事を書くときに、「特定の誰かを思い浮かべて書きましょう」とアドバイスされたことはないでしょうか。中には「簡単なペルソナを作って書く」という人もいるそうです。しかし枌谷は、こうやって特定の人物に絞り込んだ文章はシェアされる確率が下がる、と断言しています。

とはいえ、まとまりのない文章を推奨しているわけではありません。基本的には1記事1テーマです。ただし、テーマは一貫しながらも、できるだけ多種多様な人が関心を持てるよう、多面的な記事にした方がいい、ということです。この関心を持たれる引っ掛かりポイントのことを、枌谷は「フック」と呼んでいます。

たとえば、2022年の正月早々に公開されて、そこそこ拡散された以下の記事も、この考えで作られています。

2万字もあるこの記事は、シンプルなタイトルの通り、web3と社会正義に関する話で一貫してはいます。ただし、以下のような読者を想定して、このテーマにまつわる様々なエピソードやトピック、議題を散りばめた書き方をしています。

  • 歴史から語るスケールの大きな話が好きな人
  • ネット黎明期の話に懐かしさを覚える人
  • web2.0の話に懐かしさを覚える人
  • 世界情勢や海外ニュースに関心がある人
  • ブロックチェーンやNFTという言葉に反応する人
  • GAFAMの独占に疑問を持っている人
  • SDGsに関心がある人
  • 今の社会の在り方に疑問を持っている人
  • 日頃の仕事の中で矛盾を感じている人
  • 正義を振りかざして他人を批判する人に嫌悪感を持っている人
  • 組織づくりなどに興味がある人

事実、この記事に関するTwitter上のUGC(口コミ)を見ると、様々な切り口で言及されていて、狙い通りに近い反応が得られています。

もちろん、切り口を多面的にしつつ、記事としてのまとまりは必要です。そう考えると、これは高度なテクニックなのかもしれません。しかし、書くテーマの焦点はブラさず、それでいて多種多様なフックを仕込んだ方が、シェアされる確率が高まるという原則は覚えておくといいでしょう。

まとめ

  • 記事は1つのテーマに絞る
  • ただしそのテーマの中でできるだけ多くのフックを仕込む
  • 多種多様な読者を想像し、興味を引く内容を随所に織り込む

すぐできる工夫:同じテーマの記事を検索する

「記事を多面的に」と言われても、簡単には多種多様なターゲットを想像できないかもしれません。そんな時は、自分が書きたい内容と同じテーマの記事を検索し、他にどんな切り口があるのか調べてみるのがおすすめです。

検索してみると、上級者向け/初心者向け/肯定的な論調/否定的な論調/真面目な記事/面白おかしく書かれた記事/アカデミックな内容/カジュアルな内容/身近なエピソード/周辺の知識領域など、自分とは違った視点の記事、自分が想像できなかった想定読者の記事が見つかるはずです。

こうした記事をヒントにして、自分の記事をより多面的にできないか、検討してみてはいかがでしょうか。

6. 文字数8,000字以上の長文にする

文量が多く長い記事が好まれる記事なのかは賛否が分かれると思います。しかし、SNSでのシェアのされやすさという観点では、長文記事の方が有利なのは確かです。

実際、ベイジの記事、特に枌谷が書いた人気記事は長いものが多く、8,000字というのは短いほうで、中には4万字近いものもあります。

当然というべきか、Twitterではあまり見かけませんが、はてなブックマークでは「長すぎて読むのが苦痛」「3行ではよ」など、ネガティブなコメントもチラホラ見かけます。

しかし、枌谷はこのように断言しています。

「文章を3行で表現しろみたいなのは、ネット上で多くの人にコンテンツを届けようとした経験がない人の意見。せっかく書いた記事を1人でも多くの人に届けたかったら、短い文章を好む読者はターゲットから外し、長い文章を書くべき」

これは精神論や根性論ではなく、ソーシャルメディアのメカニズムがそうなっているから、とのことです。

TwitterのRTには、様々な種類の動機があります。「好き」「自己アピール」「応援したい」、時には「批判」「反論」のためのRTもあります。そんな動機のレパートリーの1つに「あとで見る」があります。

「とてもタメになりそうな記事だが今読む時間がない」という時、ブックマーク代わりのRTする人が一定数います。長文であるほど「あとで見る」目的のRTが増えていきます。Twitterのアルゴリズム上では、すべて同じRTとして扱われるため、話題のツイート(多くの人が反応しているツイート)となり、露出が増えていきます。

長文で読み切れないと、はてなブックマークに登録する人も増えます。そうして新着入り、ホットエントリ入りすると、TwitterのBotも反応して、Twitter上でさらに話題が広まります。これがある程度の勢いになると、FacebookやSlackにも飛び火し、大きなバズのうねりになっていきます。

さらに長期的に見れば、文章量が多い記事はSEOにも有利なため、検索で発見→SNSでシェアという流れが生まれる可能性を高めます。このように、ソーシャルを前提とする現在のインターネット環境は、長文が有利な仕組みになっているのです。

もちろん、長文と言ってもダラダラと長い文章をすすめているわけではありません。2,000字で収まる文章を8,000字に水増ししたような記事では、シェアされないでしょう。大事なのは情報密度を下げず、充実した内容のまま、筋肉質な8,000字にすることです。そのためには、以下の5つの観点で文章を肉付けできないか、検討してみましょう。

  1. 体系化:内容を体系立てて細分化できないか
  2. エビデンス:権威性があるエビデンスを引用できないか
  3. エピソード:関連する身近なエピソードを紹介できないか
  4. 周辺知識:触れられる周辺の関連知識がないか
  5. 主張:自分なりの主張を盛り込めないか

「短い文章を手早く読みたい」というのが人間の本能であり、長文にするというこのTIPSは、人の本能に反したものといえます。また実際には、数千字の短い記事がバズっていることは珍しくはありません。

そのことを踏まえて枌谷は、「短い記事でもバズるが、才能か運、もしくはその両方が必要で、いまいち再現性がない。一方で長文の記事によるバズは、丁寧に調査を積み上げて論理的に文章を構成できる人なら、わりと誰でも再現可能。つまり、短い記事をバズらせるより難易度が低い。自分が凡人だと思うのなら、記事を長くするアプローチを取ったほうがいい」と話していました。

まとめ

  • SNSでシェアされるのは長文の方が有利
  • 「あとで見る」目的のリツイートを誘発する
  • すぐに読めないくらいの量の便利記事にする
  • 中身の詰まった長文にする

すぐできる工夫:文脈を丁寧に説明する

先ほど文章を肉付けする5つの観点の話をしましたが、さらに付け加えるとすれば、意図や背景など、その結論や主張の文脈を丁寧に説明すると、内容が薄まらずに文章を長文にできます。

たとえば、「デザインはユーザーファーストを強く意識すべきです」という文章は誰もが理解できて、納得もできます。一方で「なぜこんな当たり前のことをわざわざ書いているのだろう?」という疑問も浮かびます。

そこで「デザインはユーザーファーストを強く意識すべきです。当然のように思えますが、売上や組織といった様々な制約が加わると、この当たり前から外れて、どんどん企業ファーストのデザインになってしまいます。だからこそ、改めて強く意識することが必要なのです」と文脈を補完すれば、よりわかりやすい文章になります。そして当然ながら、丁寧に文脈を補完していくと、文章は自然と長くなっていきます。

世の中には、難しいことを書いていないのに、よくわからない記事が存在します。それらの多くに不足しているのが、文脈の説明です。文章が短くなるほど、文脈が伝わりにくくなるというトレードオフが発生します。

文脈がわかっている読者には、丁寧に補完された文章を「まどろっこしい」「冗長」と受け取る人もいます。しかし、ほとんどの場合、それを上回るくらい「わかりやすい」と感じる読者が増えて、記事の閲覧数は上がると、枌谷は語っています。書いた記事を1人でも多くの人に読んでほしいのなら、文脈を補完して記事の間口を広げた文章を書くのがおすすめというわけです。

7. 文面を読みやすくデザインする

どれだけ面白い内容であっても、パッと見て読みにくいと感じたら飛ばされてしまうのがネットの記事です。つまり、中身を読んでもらいたいなら、パッと見のわかりやすさも重要です。特に全体的に長い記事であるほど、スラスラ読めそうな見た目が、読まれるかどうかに強く影響します。

読者がめんどくさいと思うのは、初めから終わりまでズラーっと長く単調に書かれた文章です。興味がある部分から拾い読みできるよう、内容のまとまりごとに見出しをつけて分割しましょう。また、記事を読み始めた時点で全体の構造がわかるよう、冒頭に目次もつけておくべきです。

先ほどの「4. 切り取りやすいフレーズ」でも触れたように、1つの段落を1ツイートに見立てて、140字くらいに収めて段落を変えると、自然と読みやすいレイアウトになるでしょう。逆にいえば、段落を変えず、何百文字も書き続けるようなレイアウトは避けるべきです。

デザイナーやエンジニアの中は「構造化された文章の方が読みやすい」と思いこんで、論文のように大見出し→中見出し→小見出しといった多階層の文章を書く人がいます。しかし、過度に階層化された文章は、文章の全体像を理解するために情報構造を把握しなければいけなくなります。これは結果的に読みやすさを阻害しやすいです。

内容次第では多階層化された文章のほうがいいこともあるのですが、基本的には「見出し→本文」のシンプルな構造か、せめて「大見出し→小見出し→本文」くらいに留めるようにしましょう。

また、パッと見の読みやすさには行間も関係します。行間が詰まりすぎた文章は、一目で見て読みにくく感じてしまいます。一般的には0.5~1文字分ほど空けると読みやすいとされているので、この数字を基準に、ブログ全体のスタイルを調整してみましょう。

なお、ずっと文字ばかりが続いていると読者は飽きてくるため、図や写真などの画像も随所に挟み込みましょう。文章と関係ない画像を無理に入れる必要はありませんが、書きながら「ここは図や写真が入ってもいいかも」という部分には、積極的に画像を挟み込んでいくといいでしょう。

まとめ

  • 内容のまとまりごとに段落を分ける
  • ひと段落を140字以内にまとめる
  • 「1-1-a」など複雑な構造にしない
  • 行間は0.5~1文字分くらい空ける
  • 適度に図や写真などの画像を挿入する

すぐできる工夫:原稿をスマホで見てみる

多くのブログ記事は、PCよりもスマートフォンで閲覧されています。そのため、スマホファーストで文章のレイアウトを調整するのがおすすめです。スマホで見て3~4行くらいで段落変えをすると、PCでは細切れに感じるかもしれませんが、長々とした重苦しい文章になるのは避けらます。

その他にも、見出しが2行になって読みにくくなったり、図に入れた文字が小さすぎて見えなかったりと、PC表示はわからなかった読み辛さに気づくこともあります。原稿がある程度できたら、一度スマホでもプレビュー表示して確認してみましょう。

8. 読まれやすい曜日と時間に公開する

ビジネス系の記事であれば、SNSからよく訪問される曜日と時間は、だいたい決まっています。できるだけ多くの人に記事を読んでもらうためには、そのタイミングに合わせて公開するのが鉄則です。では、その曜日と時間とはいつになるでしょうか?

以下は当社オウンドメディアの流入レポートで、Socialチャネルから流入を時間帯別に表示させたものです。

アクセスログ

ご覧いただくとわかるように、ピークは8時、9時、12時となっています。となると「8時、9時、12時のどれかに公開するのがいいのか」と考えるかもしれませんが、そうではありません。ピーク時間を一番多くカバーできる時間に公開するのが一番いい、という考え方になります。そのため、ベストは「8時公開」です。

では、曜日はいつがいいでしょうか。当社オウンドメディアのログを見てみると、月や記事投稿のタイミングによって多少変わりますが、だいたい以下のような順番で、アクセスが多くなっています。

  1. 火・水・木
  2. 月・金
  3. 土・日

となると、おすすめの曜日は火・水・木になります。ただし、テーマ的にバズる確率が高い記事なら、この中でも火曜日の公開がおすすめです。

なぜなら記事が運良く拡散されると、その勢いは3~4日は続くからです。しかし、木曜日に公開してしまうと、翌日の金曜日が終わってすぐ、ビジネス記事が見られにくくなる土日に入ってしまいます。火曜日であれば、水・木・金と3日間の平日が続くため、万が一その記事がバズった時に、その恩恵を最大限得られます。

というわけで、ブログ記事を公開するのに最適なのは「火曜日の朝8時」。これが長年ブログを書いてきた枌谷のたどり着いた結論です。

もちろん、あくまで一般的な傾向なので、平日の夜や土日にシェアする人が全くいないわけではありません。火・水・木の朝8時は、メルマガの配信時間に設定されていることも多く、競合が多い時間帯とも言えます。これをあえて避けることで、記事が目に触れる確率を高める、という戦略もアリです。最終的には、いろいろと試しながら自分たちなりの法則を見つけていくといいでしょう。

まとめ

  • SNSを見ている人が多いタイミングで記事を公開する
  • おすすめは、火・水・木の8時
  • 拡散する可能性がある記事は火の8時に公開する
  • あえて競合が少ない平日夜や土日を狙うのもアリ

すぐできる工夫:アクセスログを見る

記事の中でアクセスログのレポートを紹介しましたが、アクセスログを見ると、全体的な訪問の傾向や、意外な記事が予想外のタイミングで見られていることに気づいたりします。また、SNSでの集客と検索での集客の違いを掴むこともできます。

個人のブログであれば、アクセスログを見る必要はそれほどないでしょうが、会社のチームでオウンドメディアを運営する時などは、更新頻度や更新タイミングを決定する上で、アクセスログを活用しましょう。

ただし、数字は間違って解釈してしまうこともあるので、その点は注意が必要です。たとえば私たちが先ほど公開したアクセスログでは、火・水・木の8時・9時・12時が多く見られている、という結論になりました。しかし、そもそも記事の公開日時が決まっているなら、その周辺の時間に数字が偏っていきます。

このように、意図的な行動によって数字に偏りが生まれ、自然な数字が掴めなくなることもありますので、数字を見る時は、客観的に、冷静に、分析するように心がけましょう。

9. 記事内容を投稿に含める

記事を書きあげたら、いよいよSNSで公開です。この時の投稿内容も、記事が読まれるかどうかに大きく左右します。「ブログ書きました!」と雑に投稿するのではなく、記事が読まれる確率が少しでも高まる工夫をしたいものです。

そもそも人は記事を読んでから、いいねやリツイートをするとは限りません。ツイートの文面だけを見てシェアするユーザーも一定数います。そのため、ツイート自体も完結したコンテンツにしておくのが鉄則です。

たとえ記事を読まなくてもシェアをしたくなるような投稿にしておくと、まずはそのツイートが拡散されます。そこから記事の魅力によって、拡散スピードが決まっていきます。このようなメカニズムになっているため、記事拡散の初速を高めるために、ツイートの内容自体が非常に重要なわけです。

記事公開ツイートの基本は、内容の要約を書いてしまうことです。記事を読まなくても言いたいことがわかるようツイートにまとめてしまい、そのツイート自体に共感できたり、役に立つ情報が乗っていたりする状態を作ります。そうすると、もっと詳しく読みたいと思うユーザーが増え、記事への訪問に繋がっていきます。

要約ではなく、印象的なキラーフレーズをピックアップしてツイートに掲載するのもアリです。また、見出しがわかりやすく内容を伝える構成に仕上がっているのなら、それを箇条書きにして並べてみるのもいいでしょう。

まとめ:記事をSNSで投稿するときの注意点

  • 記事を読む前にいいねやリツイートをする人も多い
  • 本文の内容を要約してツイートに書くのが基本
  • 要約が難しい場合は印象的なフレーズを抜き出す
  • 見出しを箇条書きで並べるのもアリ

すぐできる工夫:ツイートを観察する

魅力的な記事紹介ツイートを書くためには、世のツイートを観察するのがおすすめです。

ついつい自分が、いいねやリツイートをしてしまった記事紹介ツイートを振り返ってみましょう。そのツイートと記事内容を見比べて、どう要約しているのか、どこを抜き出しているのかを観察するのは、いい勉強になります。記事内では言及していない実体験やトレンドワードと絡めて投稿するなど、要約以外のパターンも見つかるかもしれません。

また、執筆者ではなく読者がどのように記事をシェアしているかも参考になります。読者は、自分が印象的に感じた部分を切り取ってシェアすることが多いです。特にいいねやリツイートを集めているツイートを見ていると、どういう切り取り方をすると拡散されやすいのか、なんとなくの傾向が見えてきます。

補足① SNSとSEOはどちらが大事か?

アメリカの市場調査会社International Data Corporation(IDC)によれば、2020年に生み出された全世界の総データ量は約59ゼタバイトに達しています。これは2010年の約988エクサバイトの実に10倍にあたります。

世界中でこれだけのデータが、爆発的なスピードで日々発信され続けているのです。だからこそ、誰かの元に自分が書いたコンテンツを届けるには、単に良い文章を書くだけではなく、「届きやすくする工夫(デリバリーの工夫)」が必要なのです。

ブログやオウンドメディアを前提とすれば、文章を届ける主なデリバリー手段には、広告、メルマガ、SEO(≒自然検索)、SNSがあります。このうち、広告はお金がかかり、メルマガには仕組みや送付先のリストが必要なため、すぐにできる工夫となると、SEOとSNSということになるでしょう。

SEOのメリットは、狙ったキーワードの検索結果に上位表示できれば、それなりに長期間は安定して読んでもらえるようになることです。SNSでバズった記事も、1~2年単位で見るとSNSより自然検索からの訪問数のほうが上回ることも多いです。ただし瞬発力は弱く、多くの人に読まれるかどうかはキーワードの検索数にかなり依存します。また人気キーワードには競合コンテンツも多く、上位表示させるのは簡単ではありません。

(瞬発力が弱いと書きましたが、記事がバズると数日間は上位表示される傾向にあり、その意味の瞬発力はあります。ただし徐々に本来の評価に見合った順位に下がります)

SEOに対してSNSは、公開直後から多くの人に読んでもらえる瞬発力、拡散が倍々に広がっていく爆発力が魅力です。

ソーシャルグラフ(SNS上のネットワーク)に上手く乗せることができれば、1日で数千人から数万人単位で、一気に記事を届けられます。SEOで偶然見つけた記事と比べて、記憶に残りやすく、指名検索に繋がりやすい傾向もあります。

SEOとSNSは二者択一ではなく、両方を意識するのが理想です。なぜなら、SEOで見つかった良質な記事がSNSでシェアされたり、あるいはSNSで多くの人にシェアされて外部リンクが増えることで間接的にSEOに有利に働いたり、相互に関係しあうためです。

たとえば、本オウンドメディアの人気記事『伝わる提案書の書き方(スライド付)~ストーリー・コピー・デザインの法則』は、Twitterで2000件以上シェアされ、公開1週間で2万PV以上は閲覧されました。その直後から「提案書」というキーワードで検索結果の上位に表示されるようになり、結果として、現在までに約50万PVを記録しています。

このように、SEOかSNSかではなく、どちらにも効果的な文章を書くことが、インターネット上で記事をデリバリーさせるための基本的な考え方になります。

補足② 小手先のテクニックに溺れない

最後に、枌谷が話していた「テクニックよりも重要なこと」をいくつかお伝えします。

テクニックによる効果は完全には証明できない

この記事で紹介したテクニックは有用と考えられるものの、明確な効果が実証されたものではありません。SNS上でのシェアには、偶発性が強く働きます。同じ条件を再現できないため、ABテストも現実的ではないでしょう。つまり、成果と手段の因果関係を突き止めるのは、ほぼ不可能なわけです。

たとえば、あるブログ記事が広くシェアされたとします。それがタイトルのおかげなのか、OGP画像のおかげなのか、紹介するツイートがよかったからなのか、そもそも記事自体が魅力的だっただけで他の要素は関係ないのか、特定することはできません。

一方で、長年ブログを書いてSNSで発信していれば、「こう書けば読まれやすい」「こう投稿すれば反応が得られやすい」という大まかな傾向がなんとなく掴めてきます。

この記事で紹介したテクニックは、まさにそうした経験則によって培ってきたものです。確実な成果は保証できませんが、何も工夫しないよりは読まれる確率が高まるだろう、と受け取っていただければと思います。

マーケット規模の影響のほうが大きい

結局のところ、SNSでシェアされるかどうかは、どんなテーマで書くかによって大きく変わります。

たとえば、「一太郎のデータをNotionに移行する方法」という記事では、どんなテクニックを駆使してもシェアされないでしょう。なぜなら、一太郎をNotionに移行したいというニーズを持ったユーザーがそもそも少ないからです。

書いている記事の対象者数、あるいはマーケット規模を超えるほどの効果を、この記事で紹介したテクニックが与えることはない、というのは覚えておいてほしいです。

記事はバズればいいわけではない

記事がシェアされやすくなるノウハウを蓄積しながらも、枌谷は明確に「バズ至上主義」を否定しています。記事はバズればいいわけではない、という話はイベント等に登壇した際も必ず言及しています。

特にビジネス目的で書かれるブログ記事は、「マーケティング戦略と噛み合っているか」が重要です。いわゆるSNSでシェアされやすいテーマは存在しますが、それが会社やブランドと結びかないのであれば、拡散されても意味がありません。

何より大事なのは、記事を書く目的です。SNSで拡散させるのは手段にすぎません。

本当に伝えたいことを、わかりやすい文章でしっかり書く。その基本をきちんと押さえた上で、1人でも多くの人に届く確率を高める工夫として、ここで紹介したテクニックを活用してもらえると嬉しいです。

私たちは、お客さまの成功を共に考えるウェブ制作会社です。

ウェブ制作といえば、「納期」や「納品物の品質」に意識を向けがちですが、私たちはその先にある「顧客の成功」をお客さまと共に考えた上で、ウェブ制作を行っています。そのために「戦略フェーズ」と呼ばれるお客さまのビジネスを理解し、共に議論する期間を必ず設けています。

成果にこだわるウェブサイトをお望みの方、ビジネス視点で相談ができるウェブ制作会社がいないとお困りの方は、是非ベイジをご検討ください。

ベイジは業務システム、社内システム、SaaSといったウェブアプリケーションのUIデザイン、UXデザインにも力を入れています。是非、私たちにご相談ください。

ベイジは通年で採用も行っています。マーケター、ディレクター、デザイナー、エンジニア、ライターなど、さまざまな職種を募集しています。ご興味がある方は採用サイトもご覧ください。

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