マーケティング、デザイン、技術用語の解説

オウンドメディア

投稿日:
執筆者:
枌谷 力
ジャンル:
マーケティング

本来の意味

英語では【Owned Media】と表記され、「(企業が)自ら所有するメディア」を意味します。対になる言葉として、消費者やユーザが主体となって情報を発信するアーンドメディア【Earned Media】、広告のように対価を払うことで情報掲載が可能になるペイドメディア【Paid Media】が存在し、これら3つを総称してトリプルメディアと呼ばれます。

トリプルメディアという概念は、2009年に米国IT情報サイトCNET上に掲載された論文『Multimedia2.0』内で取り扱われたことから広まったと言われています。日本国内でも2010年ごろに社団法人日本アドバタイザーズ協会Web広告研究会がこの考えを紹介し、『トリプルメディアマーケティング』(横山隆治/インプレスジャパン)といった書籍が刊行され、デジタルマーケティング業界を中心に広く浸透していきました。

オウンドメディアには、自社で所有するメディアのすべてが含まれます。コーポレートサイト、ブランドサイト、製品サイト、サービスサイト、ランディングページなど、自社で保有し、自社が編集権を持っているWebサイトはすべてオウンドメディアです。さらにいえば、Webサイトだけを指すわけではありません。会社案内や紙のセールスツールなどもすべてオウンドメディアの一種です。

近年のビジネスの現場において、「うちもそろそろオウンドメディアをやろうと思う」という発言は、ブログ型情報発信サイトの構築を意味していることがほとんどですが、これは本来のオウンドメディアの意味からはやや外れた用法です。今までwebサイトも印刷物も一切持っていなかった企業でない限り、「そろそろオウンドメディアをやる」という状況は成立しません。

また、FacebookページやTwitterの公式アカウントをアーンドメディアに分類した企画書なども見かけますが、これもオウンドメディアに対するよくある誤解の一つでしょう。オウンドメディアの条件として、プラットフォームが自社保有であるかどうかは関係ありません。他社が提供するプラットフォーム上であっても、編集権を持ち、自らの意思で情報発信ができるツールはすべてオウンドメディアとなります。つまり、FacebookページやTwitter公式アカウントは、正しくはオウンドメディアに分類されます。

このように、オウンドメディアの解釈が本来の意味からズレて浸透している現状を考慮し、以降は、現場で一般的に使われる「オウンドメディア」=「ブログ型情報発信サイト」=「狭義のオウンドメディア」についての解説です。

狭義のオウンドメディア

狭義のオウンドメディアは、ライオンのLidiaなどに代表されるような、ブランドと関連するテーマを扱いながら、商材の宣伝ではない情報発信を行うことが多いです。規模の大小はあれど、主に以下のような目的で運営されてます。

  • 今はリーチできていない潜在顧客との接触機会の創出
  • 見込み顧客への有益な情報提供によるコミュニケーションの活性化
  • ブランドイメージの強化、もしくは転換
  • ユーザ行動のトラッキングや情報入力によるデータ収集
  • 既存顧客への有益な情報発信によるロイヤリティ向上

本来は様々なシーンで活用できるはずの狭義のオウンドメディアですが、2012年以降はWebサイトへの集客手段として大きな注目を集めるようになりました。その背景にあるのは、ペンギンアップデートと呼ばれる不自然な被リンクを排除するためのGoogleのアルゴリズム変更です。外部リンク購入による表示順位操作が行えなくなり、その代替手段として「オウンドメディア構築→コンテンツ生成→自然検索流入増」という手法が編み出されて広まっていきました。

この時合わせて広まった概念が「コンテンツマーケティング」です。コンテンツマーケティングも本来は「コンテンツを使ってマーケティングをすること」そのものを指し、具体的な手法までは規定しない言葉でしたが、この頃より「オウンドメディア上に大量にコンテンツを掲載して自然検索からの流入増を狙う手法」という偏った意味合いで使われることが増えていきました。この手法は「コンテンツSEO」と言われることもあります。

そして、自社でコンテンツ編集・制作能力がない企業が、お金で解決しようと安易にコンテンツマーケティング専門企業にアウトソースする自体が続発しました。その一部はコンテンツの質よりも安価で量を生むことを重視してクラウドソーシングなどを使い、自然検索の流入数が増加すればいいとばかりに、質の悪い記事を乱造していきました。その結果、「オウンドメディア運営やコンテンツマーケティングはお金ばかりかかって効果がない」という印象を持たれ、懐疑的な目を向けられることも増えていきました。

ただ、本来のオウンドメディアにおいてもその成否を左右するのはコンテンツであり、狭義のオウンドメディア運営が良質なコンテンツにこだわり、SEOの思想を組み合わせて施策化する考え方自体が間違っているわけではありません。オウンドメディア運営やコンテンツマーケティングが成果を生み出さないのは、誤ったターゲット設定、誤った使い方、誤ったKPI設定、つまりそれを取り扱う側の意識に問題があるためと考えられます。

オウンドメディアとコンテンツ

言うまでもなく、オウンドメディアには質の高いコンテンツが不可欠です。そのコンテンツは、ビジネスの中で培った知見とターゲットへの適切な理解を活かし、単なる製品・サービス提供以外にターゲットに有益な価値を提供できないか、という観点から作られるべきです。さらにそれらは、自社でチーム編成し、自社で企画・編集し、自社でコピーを作り、自社で公開されるのが理想です。それを自社で効果検証し、自社内にフィードバックできれば、オウンドメディア運営は単なる集客以上の価値をもたらすでしょう。

SEOの観点でいえば、ターゲットがよく使うキーワードをタイトルに含めるなどの軽微なチューニングは当然必要ですが、検索順位や自然検索での流入数を絶対的な指標とし、短期的な成果を安易に追求し、質にこだわらずコンテンツを乱造することは、結果的には無駄な投資に繋がることの方が多いと考えられます。検索の流入数ではなく、想定する対象者がその記事を読むことでどのくらい満足し、感心するか、ということに心血を注ぐのが本質的な対策です。

企業がオウンドメディア運営を行う場合、もっともネックになるのがコンテンツ制作です。しかし「すべて自社制作」を理想とし、できるだけそれに近づける努力をすべきです。リソースやスキル、スピードの面で、どうしても外部の支援を得なければいけない領域は、専門家のサポートを受けつつも、その知見やノウハウはできるだけ社内に蓄積していくべきです。また、外部に丸投げするのではなく、熱意と知見に溢れた優秀なリーダーを据え、そのリーダーを中心に自社できちんとコンテンツの品質を担保していくことが、成功するオウンドメディア運営に必要なことなのではないでしょうか。

参考書籍

『トリプルメディアマーケティング』(横山隆治)インプレスジャパン

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