直帰率

投稿日:
執筆者:
枌谷 力
ジャンル:
マーケティング

ある特定ページへの訪問総数のうち、その1ページだけでサイトを離れた訪問の割合です。この数字が高いページは、興味喚起されなかったために直帰しなかった問題があるページと判断される傾向があります。マルチデバイス化が進む近年においては、カスタマージャーニーベースでアトリビューション分析をしなければ、Webサイトや広告の真の効果は図れないといわれますが、直帰率はハンドリングや計測がしやすく、また直接的にKPI改善に繋がりやすい指標でもあるため、ページやサイト、コンテンツ、UIの質を推定する指標として現在でもよく用いられます。

直帰率はしばしば離脱率と混同されますが、離脱率はそのページの閲覧総数のうち、訪問の最終ページとなった割合です。そのため、訪問して10ページ目にそのページを閲覧して離脱したような人の閲覧もカウントされます。訪問があれば必ず離脱も発生するため、離脱率はページの質を推定する指標にはなりにくいですが、本来離脱すべきでないページの場合は、直帰率と同様にページの質を計測する指標として用いられます。

直帰率をどう評価すべきか

直帰率は確かに質を推定する分かりやすい指標ですが、サイト全体の直帰率の高い・低いを見て、一喜一憂するのは賢明ではありません。なぜなら、コンテンツの性質によって直帰率が高くても問題ないケースもあるためです。以下に、その具体例をいくつかご紹介します。

直帰率が高くても問題ないケース

訪問が多く集客に成功しているブログ型コンテンツは、自然検索やSNS経由で各ページにランディングし、1ページだけ見て離脱する訪問が増えます。そのため、直帰率が高くても大きな問題はありません。当社経験では、直帰率が80%を超えても正常値と捉えて良いことが多いです。

顧客サポートの一環として提供されるヘルプ系コンテンツも同様です。訪問者の悩みを解決する良質なコンテンツであるほど、その1ページで満足して直帰する確率は高まります。このようなコンテンツでは、直帰率が高い方が正常であるということも起こりえます。

このような集客力のあるブログ型コンテンツやサポート系コンテンツが大半を占めるWebサイトでは、サイト全体の直帰率が高くなり、コンバージョン率(CVR)は低くなりがちです。当然、これも問題ありません。もしこのようなWebサイトにおいて、直帰率やCV率からコンテンツの質を推し量りたいのであれば、ブログ型コンテンツやサポート系コンテンツを除いたページの直帰率から判断するのが妥当です。

直帰率が高くて問題になるケース

例えば企業名や商品名、ブランド名を使った、目的の明確な訪問(ナビゲーショナルクエリ)であるにも関わらず直帰率が高い場合は、そのランディングページにコンテンツもしくはUI上の大きな欠陥があると推測されます。近年は検索キーワードが見えなくなる傾向がありますが、ホームや製品ページなどで自然検索からの訪問における直帰率が高い場合には、コンテンツやUIを疑う要因の一つになりえます。あくまで当社経験での一般論ですが、30%未満では正常で、40%を超えると改善の余地があると推測されます。

広告からの流入は、直帰率が高くなりがちですが、高すぎる直帰率はやはり問題と考えられます。これも広告や商材次第ですが、当社経験では、70%を超える直帰率は大きな問題があり、50%を超える場合でも改善の余地があると考えられます。

なお、広告流入の直帰率が高い場合には、広告の質の問題、ランディングページの質の問題、広告とランディングページの相性の問題など、複数の理由が考えられるため、直帰率を最初の基準値としながら、広告種別毎の直帰率やスクロール量、ページの閲覧時間などを細かく見ていく必要があります。

直帰率をどう改善すべきか

直帰率の改善が、Webサイトを含むビジネス全体の課題・問題を根本的に解決することは少ないです。しかし、上記のような観点で分析した結果、コンテンツやUIに大きな問題が抱えられていると推測される場合には、ひとまず直帰率の改善にフォーカスするということはそれほど悪いことでもありません。人に例えるなら、知識やスキルを身につけるのではなく、身だしなみや話し方を変えるのが直帰率の改善です。いうまでもなく、不愛想で不潔な身なりで損をしている人にはこういった改善は有効です。

直帰率の改善方法はケースバイケースですが、以下のようなプロセスで改善を試みることが多いです。

  1. Webサイト全体の人の流れと数字の流れを図式化する
  2. KGIやKPIに悪影響を与えているボトルネックを洗い出す
  3. 訪問が多く、直帰率が高く、改善効果が大きそうなボトルネックを選別する
  4. UXの観点からページの問題点を洗い出し、仮説を立てる
  5. 仮説を検証するためのアイデアを洗い出す
  6. 有効なアイデアを選び、A/Bテストを実施する
  7. A/Bテストの結果を検証し、直帰率とKPI、KGIへの影響を比較する
  8. もっとも成果があった改善施策に統一する

なお、訪問が少ないWebサイトではA/Bテスト自体がうまく機能しない可能性があるため、その場合には仮説ベースで考えられる改善策をどんどん実行していき、改善前の状態と長期間比較し続けるような進め方をするケースもあります。