コンバージョン率(CVR)

投稿日:
執筆者:
枌谷 力
ジャンル:
マーケティング

Webサイトにおいて、あらかじめ設定された母数から目標(コンバージョン数)に至った数の割合を示す指標です。Webサイトの質を端的に表す指標としてよく用いられ、Webサイトにおける最も重要なKPIとされることも少なくありません。ただし、コンバージョン率を適切に扱うためには、以下の点の理解が必要です。

まず、母数の基準をページビューにするか、セッション数にするか、ユニークユーザ数にするかにより、コンバージョン率は変わります。そして、ページビューやセッション数がKGIと大きな相関関係がない場合、それらを母数としてコンバージョン率を計測して改善を加え続けても、その活動はKGI向上と結びつきません。

しばしば、競合サイトや成功サイトのコンバージョン率の情報をどこからか入手し、その数値を安易に目標に設定しているケースも見受けられますが、この母数の定義が異なっていると、数値はまったく参考になりません。(そもそもの話として、サイト構成もコンテンツ数もターゲット特性も異なる他社サイトのコンバージョン率は参考にならないことがほとんどですが)

もう一点、コンバージョン率は高い方がいいわけではない、ということも知っておく必要があります。

例えば、1日に1,000人の新規訪問があり、20件の資料請求があるwebサイトについて考えてみましょう。SEOやコンテンツ追加などのリニューアルを実施し、広告出稿をしなくても1日に10,000人が自然検索で訪問するようになり、資料請求数がコンスタントに100件に到達するようになったとします。

コンバージョン率を比較すると、リニューアルによって2%から1%に下がっています。しかし、事業上これは失敗といえるのでしょうか。資料請求数が5倍に伸びたわけなので、事業にとっては好ましい状況になったのではないでしょうか。

流入にそもそも問題があって、そこを重点的に改善できたwebサイトの場合、コンバージョン率の元となる母数が飛躍的に伸びます。それにより、コンバージョン率が下がることは珍しくありません。このようなケースを想定すると、webサイトのリニューアルや運用における目標を「コンバージョン率向上」に置くのは、必ずしも適切な目標設定とはいえないことが、理解できるかと思います。

特に「webサイト全体のコンバージョン率」については、ほとんど参考にならないと考えておいた方がいいでしょう。事業に対するwebサイトの貢献度を推し量る指標としてコンバージョン率を用いるのであれば、KGIとの相関関係が高いよりセグメントされたある特定条件下の母数を設定し、そのセグメントにおけるコンバージョン率の増減の推移を比較しなければなりません。こういった正しい見方が身に付いていなければ、コンバージョン率はプロジェクトを間違った方向に導くこともあります。