水前寺清子的Web制作のススメ

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代表取締役 枌谷 力

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僕がデザインのチェックをするときは、ここは設計、ここはデザイン、という区別はつけずにチェックしている。

戦略→企画→設計→デザイン→コーディング→システム開発といった、それぞれの職能を持った人による分業、フェーズ分けされたプロセスというのは、それはそれで非常に便利で、合理的なモノだとは思う。

しかし、Webサイトをそういう分類で区切る考え方は、あくまで作り手側の発想である。

Webサイトを使うユーザからすると、Webサイトは、一塊のWebサイトでしかなく、文章がいい、デザインは良くない、設計はまぁまぁ、などと分解して捉えることはほとんどない。もし、使いにくい、分かりにくい、と思ったなら、それがサイト構造の問題なのか、コピーの問題なのか、デザインの問題なのかは関係なく、Webサイト全体に対して、ユーザは思うわけである。

我々のような制作者は、モノ作りをする上で便利な「職能別の作業分担」は理解しながらも、一方で、その制作過程において、自らの職能を越えて、「一塊のWebサイトとしてそれはどうなのか?」という視点で常にチェックをかけ、疑問を投げかける姿勢でいなければならない。

職能だけでなく、プロセスに関しても同様である。そのユーザがWebサイトを訪れたその瞬間に、良いサイトになっていなければ、意味がない。であるならば、公開されるまでの期間、ユーザが良いと思わなそうなポイントが見つかったのなら、開発フェーズは関係なく、いつでも、柔軟に、前の工程に立ち戻ってでも作り直しをすべきである。

もちろん、あまりこればかりやっていると、プロジェクトがおかしくなってくるので、工程ごとに、その時点ではひとまず完成といえるレベルまでは持っていかないといけないだろう。ただ、それはあくまで「目途をつける」という話であって、工程ごとに、そのパートは完成でそれ以降もう触ってはいけない、ということを意味しているわけではない。

例えば僕はWebの仕事を13年以上やっているが、今でも、ワイヤーフレームで良いと思っても、デザインに起こすとそうでもない、という状況に出会うことがある。つまり、ワイヤーフレームは所詮、制作の途中経過を切りとったものであり、デザインになった時に、それがうまくまとまることを、完全には保証していないのである。

そしてもし、デザインを起こしたときに、コンテンツやコピーやワイヤーフレームに改変を加えないと、より良いモノにならないと分かったのであれば、それは絶対に、前に立ち戻るようなことになっても、手を加えるべきである。

このように、3歩進んで2歩下がる的な、時に前の工程に戻りつつも全体としてはしっかりと前進するような進め方をとることで、何重にもチェックがかかり、新しい視点のアイデアが加えられて、クオリティはよりアップしていく。

一方で、設計は自分のところが終わったからハイ終了、デザインは自分のところが終わったからハイ終了、コーディングは言われた範囲を作り終わったからハイ納品、というような、自分の担当範囲以外のプロセスには一切関与せず、他の工程に不可侵な進め方では、良いものには仕上がらない。

もし、専門でもない自分が、前の工程を今さら指摘などしたら、その担当者に迷惑をかける、などという遠慮がそこにあるのだとしたら、その誤った考えは正すべきである。そんな遠慮は制作者の都合であり、クライアントやユーザにはどうでもいい話である。また、その指摘による責任を負う必要もない。それが例え採用されない意見だったとしても、それもまた一つの貴重な意見だからである。

このような、単純な一方通行のウォーターフォールで進むわけではない、というクリエイティブの基本を理解したうえで、

  • 職能もプロセスも無視し、「一塊のWebサイト」としてチェックする。
  • 他人の役割の範囲でも、おかしいと思ったら指摘する。
  • 既に完了した工程でも、おかしい箇所は戻って直す。

という3つのことを、忘れずに心がけなければならない。

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