どれだけ理屈が通っていても、どれだけいい戦略でも、クライアントワークは最終的に成果物の仕上がりで評価されることが多い。
とはいえ、それはプロセスを軽んじてもよいということではない。クライアントが納得できるものを作るためには、都度発生する議論でクライアントを正しく導けることが重要だ。すべての土台になる前提の認識にズレがあれば、双方でコミュニケーションをとりながら1つひとつ潰していくべきだろう。
しかしプロジェクトメンバー内で綿密に認識をすり合わせながら順調に進めていても、突然の番狂わせを発生させるものがある。普段は忙しく現場にいらっしゃらない、決裁者の鶴の一声だ。
現場のご担当者と決裁者がコミュニケーションを取れる頻度は会社によって違い、場合によっては決裁者の意向をきちんと確認できていないこともある。それがミーティングで初めて明らかになり、決裁者から「思っていたのと違う…」というコメントをもらうと、制作側はもちろんクライアント側のご担当者もひやっとしてしまうだろう。
では想定外が起こった際に、制作側のメンバーはどういう立ち回りをするのがスマートなのだろうか?
気を付けたいのは、決裁者から出た想定外のご意向=自分たちの仕事に対する批判・不満と捉えないことだ。ダメ出しとして受け止めてしまうと、次にとる行動は「黙って受け入れる」か「前提が違うと否定する」の2パターンになりやすい。どちらに傾こうと、お互いに歩み寄れないままプロジェクトが進んでいく。
決裁者のご意向は絶対的なものではなく、あくまでもフィードバックだ。無駄に落ち込まず、そこから新たなインタビューを始めればいい。
認識や前提のズレが発覚したなら、その場で以下のような観点に基づいて要素を再構築できると理想的だ。
経験が浅いと想定外の事態に頭が真っ白になり、その場でこれだけのことを考えるのは難しいかもしれない。それでも相手に一歩踏み込んで真意を引き出せれば、「そこまでズレていない、すべてが無駄になるわけではない」と案外冷静に対処できるものだ。
アクシデントを減らすのも大事だが、もし起きてしまったときにもうまく対応できるように、クライアントワークに携わる人はこういった土壇場でのヒアリング力を身に着けておくとよいと思う。