「当たり前にやるべきことを当たり前にできている状態にする」
これはベイジがウェブサイト制作において大事にしている考え方だ。私は入社して半年、主に開発フェーズのディレクターとしていろんな職能の社員と働きながら、この考え方が会社の文化として根付いているのを節々で実感している。
私が入社した当時はリモートワークが主となっていて、半年間ほとんどのメンバーと直接会わない状況だったが、プロジェクトは問題なく進行できた。これはリモートワークが定着していたことに加えて、コミュニケーションに対する姿勢に助けられた面が大きい。
そしてその姿勢とは、誰しもが「当たり前」を省略しないというものだ。
今回はベイジの「当たり前」となっているコミュニケーション習慣を取り上げようと思う。
スムーズなコミュニケーションの鍵は、会話の前提を揃えることだ。もし会議においてお互いの前提が違うと、いわゆるアンジャッシュ劇場が始まってしまう。
ベイジでは「全員が同じ理解度ではない」という共通認識が自然と保たれている。だから全体に投げかけるときは誰でもわかるように前提条件や関連資料をつける習慣があるし、個別ミーティングでも最初に前提を確認するケースが多い。
「理解度にバラつきがあっても伝わるようにしよう」「メンバーの記憶力に甘えすぎないようにしよう」という意識が、スムーズなコミュニケーションに結びついているのではないかと思う。
ベイジではコミュニケーション効率をあげるための工夫が随所で見られる。
例えば、テキストだけではニュアンスの表現が難しい場合、チャットコミュニケーションに固執せず音声会話に切り替えることが多い。しかしただ「話せば早いよね」に頼るのではなく、できるだけ手短に、かつ分かりやすくできるような工夫をみんなが当たり前に意識している。
ちょっとした質問でもドキュメントを作り、ホワイドボードのように画面共有で全員で見れるように準備しているメンバーが多い。話した内容をドキュメントに追記していく様を見ながら会話すると理解がスムーズだし、次の作業のたたきにもなる。ドキュメントがない場合は作成中の画面や関連サイトを順番に見せながらの会話になるが、事前にブラウザのタブが並んでいて、説明を体系立てた様子が伺える。
いきなり会話を始めてしまうと結論の方向性も見当がつかず長引いてしまうが、話が整理されて話がまとまっていると5分程度の確認で済むこともしばしばだ。
コミュニケーションが時にはコストになってしまうことを認識していて、お互いの作業時間を浸食しすぎないように気遣う性質も相まって、コミュニケーション効率を考えることが当たり前になっていると感じる。
ベイジのメンバーは求めている回答に適した質問をつくるのが上手だ。ここでいう求めている回答とは、希望するYES/NOに誘導することではなく、必要な情報を得ることを指す。
友人からよく聞く仕事でのコミュニケーショントラブルは、質問した意図に合わない回答が返ってきてしまい「意地悪されている」と感じることだ。しかしよくよく聞くと、そもそも回答が得られる質問になっていないことが多い。
例えば「今あなたが手に持っている資料は何という名前で、どのタイミングで使うもので、使いどころを自分に教えてもらえるのはいつなのか」の意味をこめて「その資料は何ですか?」と聞かれても、到底真意は汲めないだろう。
一方でベイジのメンバーからは、何のために、どんな回答がほしいのか道筋を整えて質問しようという気遣いが感じられる。整えられた質問は回答も導き出しやすく、待たせたり、回答がだらだらと長文になることが少ない。
ベイジは穏やかなメンバーが多く質問しやすい雰囲気だとよく言われるが、回答しやすい質問づくりの習慣とあわさって、お互いにストレスなく会話できる環境になっていると感じる。
ベイジのメンバーは質問をする前に、目の前の事象だけにとらわれず、過去のドキュメントも調べている。自分で解決できる部分は自力で進め、過去の事例も参考にして質問を作るので、余計な質問も少なく、回答に困ったり時間がかかることが少ない印象だ。
ベイジでは業務に必要な情報や資料は徹底的に共有しているので、Backlogやクラウド、またチャットの履歴のどこかしらに必要な情報があることが多い。
その結果「過去に◯◯という事例はありましたが、◯◯について意見を伺いたいです」といった質問ができるので、回答者も何を補足すべきか、どう判断すべきかあたりをつけやすく効率が良い。
また誰かのふとした質問と回答が属人化の回避につながることもあり、Backlogのwikiに「◯◯という問題が生じた場合は、◯◯◯のように対応すること」といったドキュメントが追加されることもある。
今回はコミュニケーションにまつわるベイジの習慣を取り上げた。総じて言えるのは、高度なコミュニケーション技術が飛び交っているのではなく、つい省略してしまう作業を怠らない姿勢が身についているということだ。
こうした作法は私自身も前職での新卒入社当時に口酸っぱく言われたことがほとんどだが、身につくまでに時間がかかってしまい、迷惑をかけていた時期もあった(今でも抜けてしまうこともある)。それを全員が「当たり前」としてこなしている様子はすごいの一言である。
最後に半年ほどメンバーと対面なしでプロジェクトを進めた感想を述べると、環境さえ整えればリモートワークでも本人の雰囲気がわかるものだなということに驚いた。
つい先日プロジェクトメンバーと初対面したが、顔出しして会話する機会がほとんどなかったにも関わらず、印象の乖離がなく話しやすいなと感じた。会社としてコミュニケーションを活性化する取り組みを日々模索しているからかもしれない。
これからは徐々にオフィス出社の機会も増え、ハイブリッドワークへ変化していくはずだ。対面コミュニケーションのスピード感をうまく取り入れつつ、丁寧なコミュニケーションを続けて円滑にプロジェクト進行できればと思う。