コピーライティングで企業(もしくは商材)の独自性をどう伝えるか。他社と同じようなことを書いても、ユーザーを動かすことはできない。ウェブサイトのファーストビューなどに置くキャッチコピーでは特に、「その企業だから言えること」が求められる。
私はベイジに入社する前、求人広告のコピーライターをしていた。ぶっちゃけ、求人を出そうとしている企業の待遇や仕事内容は、ほとんど同業他社と大差ない。しかし、どうにか差別化しないと仕事を探している人が目を留めてくれないため、何度も頭を悩ませてきた。
その経験から、企業の独自性を打ち出すコピーを、私は3つのパターンで考えるようになった。
自分たちだけが言えて、他社には言えないこと。まさに独自性であり理想的な形だ。まずは諦めずに「自分たちだけが言えること」を探したい。
求人広告で考えるなら、業界内で圧倒的に待遇が良い、独自の制度や取り組みがある、特殊で面白い仕事が経験できる、唯一無二のスキルが身につく、一風変わった経歴の社員が多い…など。
そんな他社にはない強い事実が見つかったら、ストレートに伝えるのが良い。前職時代に、こうした事実は「高級鮮魚のようなものだから刺身で出すのが一番」と言われていた。まずは調理方法を考えるよりも、良い食材を探すのがコピーライターの仕事だろう。
「自分たちだけが言えること」を探そうとしても、どうしても他社でも言えそうな事実しか出てこないこともある。そうした場合の次善策として考えたいのがこのパターンだ。
他社でも言えそうなことには、「言えるけど言いにくいこと」も含まれている。普通の企業なら積極的には言いたがらないけれど、ユーザーには価値のある事実が狙い目だ。その中から自社ならハッキリ言いきれそうな事実を見つけられると良い。
前職時代の先輩が、工場の求人広告でこんなコピーを書いていた。
「言われたことを言われたとおりやるのが得意です」って、どうして言い出せなかったんだろう。
指示された作業を確実にこなすことが求められる仕事はたくさんある。そういった仕事が得意な人もたくさんいる。でも、普通の企業は「言われた通りやるだけでOKです」とは大々的に打ち出したがらない。だからこそ、この広告は同じような工場の求人の中でも目立ったのではないだろうか。
ユーザーからは「言えるかどうか」より「実際に言っているかどうか」しか分からない。なので、このやり方でも独自性を打ち出せるケースはあるだろう。
前述のとおり、ユーザーには実際に言われていることしか分からない。そこで「他社でも言えそうだけれど意外と言われていないこと」が見つかれば、それも独自性になる。
また同じ事実でも、別の視点から切り取ると違う価値が見えたりもする。それもユーザーにとっては、その会社の独自性として感じられる。いわゆる名作コピーと言われるものは、このパターンが多いかもしれない。
昔、ラーメン屋のアルバイト募集広告で、こんなコピーがあった。
卒業生の進路が、一流大学に似てきた。
ウチでバイトすれば成長できる、優秀な子が育ってきた、と言っているお店は結構あるだろう。おそらくこのラーメン屋と同じように、有名企業に就職した卒業生が多いお店もそれなりに存在するはず。だがその事実を引き出して、「就職に強い」という切り口で打ち出している求人広告は、他になかったのではないだろうか(しかも塾などではなくラーメン屋で)。
このように、ズバ抜けた強い事実がなくても、光の当て方次第で印象に残すことはできる。しかし、安易にこのパターンに走るべきではないと私は思う。そもそも考えるのが難しい上に、すぐに真似されて陳腐化しやすい。なので最終手段として持っておきたい考え方だ。
独自性をコピーだけで伝えるのは意外と難しい。そもそも、ハッキリと他社と異なる強みを持っている企業は多くないからだ。まずはストレートに表現しやすい「自社だけが言えること」を探しつつ、それが見つからない時は切り口や表現を変えて検討してみる必要があるだろう。