賛否が分かれる価値観が企業カルチャーを作る

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代表取締役 枌谷 力

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ベイジの日報は、世間一般の日報の定番である業務日報としての役割は希薄で、その日に感じたことを言語化して振り返る性質が強い。

この日報に関して何らかの発信をすると、「日報を書かせるような会社で働きたくない」「こんな会社嫌だ」というUGC(User Generated Contents:口コミ)がしばしば発生する。

こうしたUGCを目にするたびに私は、「適切な反応だな」と思う。

私たちの日報の取り組みに意味を見出せない方は、ベイジという会社と馴染まない可能性が高い。そういう方たちから興味を持たれない方が、採用でのミスマッチが起きにくい。

誤解されないようにもう少し詳しく書くと、日報を書く制度に従わせることに意味があるとは思っていない。

日報の意義は、「言葉で繋がる組織」を作るためである。その日の振り返りを言葉にする習慣が、言語化に抵抗がない組織、言語化に強い組織、読解力がある組織を作る。そして日々の社員の日報が、社員同士の文字によるコミュニケーションを生む。そのことが緩やかな相互理解に繋がる。あえて雑談の場を設けなくても、社内の空気がなんとなく伝わってくる。

一石二鳥どころか、一石五鳥から一石六鳥くらいの好影響があると実感しているため、日報を続けている。

しかし、こうした効果を証明する研究データがあるわけではない。私が経験則から感じてることにすぎない。だから「そうは思えない」「それなら他の手段の方がいい」という人がいてもおかしくはないと思う。

このように日報を批判的に捉える人は、少なくとも今の私たちの会社とは価値観が違うはずなので、「入りたくない会社」と認識しておいてもらった方が、お互いのためにいいと思うわけだ。

実は最近立て続けに、複数の人から「会社のカルチャーを作るにはどうすればいいですか?」という質問をされた。

カルチャーとは曖昧模糊としたもので、一言で「こうしたら作れる」という類のものではない。ただ一つ私の中では、「賛否が分かれる価値観を積み重ねるほど、その会社の個性、ひいてはその会社ならではのカルチャーができるのでは」という仮説を持っている。

今の私は、オフィスの清掃などは、専門の会社にアウトソースした方がいいと思っている。社員には掃除ではなく、業務と直結することになるべく時間を使ってもらった方がいい。その一方で、掃除は自分でした方がいいと考えている経営者もいる。

例えば王将フードサービスの故大東社長は、早朝から自ら掃除をすることで有名だった。その遺志を受け継いでいる社員も多いそうだ。しかし人によっては、そのことに合理的な理由を感じないかもしれない。

『餃子の王将』はセントラルキッチンを持たない、メニューを完全に統一せず店舗に任せるなど、あの規模の外食チェーンとしては変わった部分もあるが、結果的にそうした「セオリーから外れたその会社ならではのこだわり」の積み重ねが、『餃子の王将』のカルチャーや個性になっているのではないかと思う。

若い頃の自分であれば、「社員が掃除をするなんて嫌だ」と思っていたかもしれない。しかし会社経営を経験した今は、それもまたその会社の一つの判断である、と思える。

なぜなら、一見成果と直結しない不合理・非生産的なことが、組織の毛細血管を行き交う「血の濃さ」に影響し、組織に間接効果や相乗効果をもたらすことがよくあるからだ。

服装を統一する会社、髪型に口を出す会社、朝一番で全社員集まって企業理念を唱和する会社、色々な会社がある。それらは「絶対に正しい」とはいえないが、「絶対に事業に影響しない」ともいえない。私は自分の会社ではこうした取り組みを選択していないが、その会社にとって悪いことだとは、断言はできない。

価値観によって評価が変わる行為の意義を、定量的に証明するのは難しい。仮に証明できたとして、そのために膨大な時間がかかることが多い。合理的な理由を揃えて社員を説得する、なんてことをする時間が勿体ない。

「説得コスト」「説明コスト」という言葉があるが、価値観の違いによって評価が分かれることに対して、いつも膨大な説明や議論や説得のプロセスが必要になると、組織はスピードを失う。

だから、そのことに意味があると思える人たち、過剰な説明をわざわざしなくても通じ合える人たちと組織を作った方が、早い。その方が組織のカルチャーは濃くなるし、その価値観が結実する可能性も高まる。

社員の立場でいえば、会社の価値観を受け入れられるのなら参加し、受け入れられないのなら参加しない、がいいのだと思う。問題提起するくらいなら健全だが、「納得できないから従いません」「でもその会社には在籍します」となるのは、冷静な対応とは思えない。

この世には無数に会社がある。価値観が合うと思える会社で働く方がハッピーだ。建設的な意見交換の域を超えて、異なる価値観をねじ伏せて従わせようとするのは、お互いにとって不毛だ。

私はこんな風に考えているので、「どうやってカルチャーを作ればいいですか?」という質問には、この記事タイトルのような回答になる。

そしてベイジの日報制度に対して「こんな会社は嫌だ」と反応する方を目にしても、「採用戦略で不利になる」といったような危機感を覚えることは特になく、「賛否が分かれることを社外に発信しているわけだから、拒否反応が出てくるのは当然だな」と思うわけである。

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