【書評】『顧客起点の経営』は顧客理解に自信がある人こそ読むべき

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ライター 西岡 紀子

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自分はちゃんとクライアントを理解できているんだろうか?

クライアントのウェブサイトを制作しているときに、ふと不安になることがある。クライアントを理解するのが大切だってわかっているけれど、何を知れば理解できたことになるのだろう?

ベイジのウェブサイト制作の目的はクライアントの成功に貢献することだ。そのために必要な情報はクライアントの顧客(WHO)クライアントが顧客へ提供している価値(WHAT)。それらをウェブサイトで訴求する方法(HOW)を提案するのがベイジの仕事だ。

これまで自分なりにリサーチしてクライアントのWHOとWHATをインプットしようとしていたが、単なる情報収集にとどまっているような気がして、「これで理解したと言えるのかな..」とコンテンツ制作前に不安になることもあった。

マーケター・西村一希さんの著書『顧客起点の経営』では、企業のWHOとWHATを明確にするための実践的なアプローチが解説されている。なかでも大きな学びになったのは第3章「顧客戦略(WHO&WHAT)」で述べられている以下の点だ。

企業視点で「自社プロダクトは便益と独自性を提供している」と考えていても、顧客がそれを自分にとっての便益として捉えず、他の競合や代替手段に対して独自性を見いださなければ、その顧客と自社プロダクトの組み合わせに『価値』は成立しません。

顧客起点の経営』P101, 西村一希

つまり、商品やサービス自体には価値はなく、顧客が自分にとって価値があると認識したものが「価値」となる

これを学んで、ウェブサイトの制作前にインプットする情報が変わった。以前はクライアントの代弁者のような立場で「ウェブサイトで言うべきこと」を調べていたが、「顧客が見いだしているクライアントの便益と独自性」を探しに行くようになったのだ。いわば、顧客の成功につながるコンテンツを作るための、証拠集めだ。

具体的にはクライアントの事例記事を読み込むようになった。クライアントの顧客が見いだした価値は、顧客の言葉にもっとも表れている。商談に同席させてもらえたら、提案の何が顧客に刺さっているのかを観察する。顧客インタビューは顧客の行動と心理を掘り下げられる絶好の機会だ。相手が何に心を動かされ、どんな行動をとったのかを見つけていく。

こういったインプットを行うときには、2つの点に注意している。

まずクライアントに「御社の提供価値はなんですか?」と直接的な質問をしないこと。クライアントが考えている便益と独自性が、顧客にとっての価値とずれていることがあるからだ。

次はクライアントの顧客の言葉そのものを便益としないこと。たとえば「料金体系がわかりやすい」は、「コスト削減の見通しが立つ」や「社内にコストの正当性を説明しやすい」などの上位目的の手段であることが多い。

ウェブサイトにはさまざまな顧客が訪れる。「顧客のタイプ×彼らにとっての便益と独自性」の組み合わせがわかると、「このページは誰のためにつくるのか」「どんな情報を載せるべきか」「情報をどのように伝えるべきか」が見えてくるようになった。

クライアントを理解するためには何を知ればいい?その答えのひとつは本書『顧客起点の経営』で示されている「顧客理解」ではないだろうか。

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