クライアントのウェブサイト制作でライティングをするに当たって、アウトプットの質に差が生まれる大きな要因のひとつは、クライアントに対する解像度にある。
高い解像度なしには、クライアントのサービスが提供する真の価値を見出すことも、ターゲットに刺さる訴求を決めることも難しい。質の高いコンテンツをつくるためには、クライアントの事業やサービスについてはもちろん、エンドユーザーについても深く理解をしておくことが大切だ。
でもクライアントの解像度を上げるといっても、具体的にどうすればいいの…?とお悩みの方に、先日ベイジのライター勉強会で学んだ、顧客を知るための3つの攻略法を紹介したいと思う。
まず大切なのは、クライアントのサービスだけに詳しくなるのではなく、業界全体を広く見渡すことだ。たとえばデータ分析などで数字を解釈し意味を持たせる際に「比較」は欠かせないが、BtoBサービスの価値も比較対象があることによって、より明確になるからだ。
具体的には、まず最低10社程度の競合を調査する。そしてたとえば「クライアントのサービスは”速さ重視型”だな」というように「●●型」とポジショニングを定義できれば、エンドユーザーへ訴求すべき強みが自然と明らかになる。
注意したいのが、クライアントの”自己申告”を鵜呑みにしてしまうこと。たとえ「ウチのサービスの強みは高品質です」と説明されたとしても、客観的に捉えることが大切だ。実際にベイジではクライアントから「外部のパートナーに入ってもらったおかげで、自分たちの強みを正確に整理できた」とのお言葉をいただくことも多い。
クライアントのサービスはエンドユーザーのどんなペインを解決できるのか。それを理解するためには、エンドユーザーの仕事を知ることが必要だ。しかしまったく馴染みのない職種の場合だと、当たりをつけにくく、実態と異なる「頭の中でこしらえたペイン」になってしまうことがある。
こういうケースは「順序から知る」で攻略できる。たとえばエンドユーザーが「ECサイト運用担当者」だったら、以下のようにプロセスを分解して業務について学んでいくのだ。
これだけでもだいぶ「エンドユーザーが仕事をするシーン」を描きやすくなるし、困りごとを具体的に語れるようになるだろう。採用サイトや求人広告、就活生向けの解説記事などが、業務のプロセスを知るための手がかりにできる。
BtoBサービスのコンテンツに限らず、セールスライティングにおいて「こんなお悩みありませんか?」と問題提起をするのは定番手法のひとつ。マーケターの神田昌典さんが提唱するセールスコピーの型「PASONAの法則」でも、最初にくるのは「Problem(ユーザーの課題や悩み)」だ。エンドユーザーの日常を理解することで、この「お悩み」をリアルで生々しいものにできるはずだ。
ベイジでコンテンツを制作する際には、必ず原稿を社内レビューに出す。その際に、書かれている中身がふわっとしていたり、曖昧な表現になっていようものなら「これって他の会社でも言えますよね?」「何か言ってるようで言ってないですよね?」「当たり前のことしか言ってないですよね?」とレビュアー陣から総つっこみが入る。
クライアントやサービスについての知識に「深さ」が足りないと、こういうことが起きる。「細かさ」「詳しさ」と言い換えてもいい。これを避けるためには、自分で文章を書きながら「具体的には?」「それはつまり?」「それはなぜ?」とセルフつっこみを繰り返し、答えられない部分は整理をやり直す。
セルフつっこみの方法としては、5W1Hに沿って深堀りするのもいいし、トヨタ式のWHY5回などの掘り下げ手法も有名だ。
これら3つの攻略法を組み合わせることで、クライアントとエンドユーザーの解像度を上げることができる。
ビジネスでは何かにつけ「解像度をあげよ!」と言われるが、どうやったらいいのか分からない、と迷う方も多いだろう。そんなときにはこの3つの攻略法を思い出し、試してみていただきたい。
きっと、対象についての解像度が上がり、質問をされた時にも自分の言葉でスラスラと答えられる状態に近づくことができるだろう。