ネット上でたびたび揶揄される「圧倒的成長」という言葉は、個人的には嫌いではない。成長を目的にするのはなんか違うなと感じるが、結果として大きな成長が遂げられるほどの真摯さで仕事に向き合っていたい、とはいつも思っている。
よい仕事をするには、アウトプットに対するフィードバックが欠かせない。第三者からフィードバックを受ける際にどのようなことを意識しているか、以下にまとめてみた。
※ 以下、フィードバックする側を「レビュアー」と表現する。
フィードバックをもらうにあたってまず意識したいのは、アウトプットした形(=結果)の意図を完璧に説明できる状態を作ることだ。「何を意図してこの形になったか」があいまいなアウトプットにフィードバックをもらっても、表面的な修正に走りやすく、本質的な改善にはつながりづらい。意図と結果、検討のプロセスを説明できるアウトプットであれば、フィードバックを有意義に活用しやすくなる。
そもそも、意図が説明できないアウトプットは、自分自身がそれについてきちんと理解できていない場合がほとんどである。理解しているつもりでも、手を動かしてみると実は案外分かっていなかったということはよくある。「形になっているのだから理解しているはず」という思い込みは捨て、常に「理解がちゃんと形に落ちているか?」を意識したい。
効率的に質を引き上げるには、改善することで全体の質が底上げされるであろう要に対して重点的に指摘をもらうとよい。逆に言えば、特に時間が限られている場合、要以外への対応は優先順位は落としてもよいだろう。
レビュアーには「特にここが質を左右するポイントだと思うので、優先的にフィードバックをください」と具体的に伝えよう。「いや、そこよりもこっちが要だよ」という指摘を受けることもあるかもしれないが、何度か繰り返せば「要がどこか」の感覚がつかめてくる。そうすると、アウトプットの制作過程のどこに時間をかけるべきかも自然と分かるようになる。
またレビュアーとて暇ではない。特にアウトプットの量が多い場合は、フィードバックをもらいたい箇所を絞って伝え、なるべく相手の負荷を減らすことも心がけたい。
アウトプットに複数回フィードバックをもらう際は、何をどのように変えたのか、差分を一目で分かるようにするとよい。こうすることでレビュアーの確認の負担を減らせることに加え、全体最適にたどり着きやすくなる。
レビュアーも全知全能の神ではないので、時には部分最適と感じられるフィードバックを受けることもあるだろう。前回と今回の両方のバージョンが見えるようにしておくと、全体のバランスを加味したうえで部分をどうアップデートすべきかが見えやすくなる。
差分の明示にはもうひとつ利点がある。それは、レビュアー側のフィードバック精度の向上だ。フィードバックが相手にどう受け止められ、どう昇華されたかが分かると、伝えたい意図と伝え方が噛み合っていたか、レビュアー自身が見直す機会にもなる。より質の高いフィードバックを受けるためにも、「あなたのフィードバックをこう反映した」と具体的に示すとよい。
フィードバックを受ける際は、100%でなくてよいので、どこかしらに自信が持てるアウトプットを出すことが大事だと思う。自信の伴ったアウトプットとはすなわち、自分が目指す「良さ」が明確で、その良さを目指した結果である。自信が持てる状態で出すからこそ、フィードバックを受けることで「良さ」の認識が磨かれ、さらなる質の向上につながる。
「良さ」が曖昧なアウトプットにフィードバックをもらっても、どこを目指してどう改善すべきかが分からず、とにかく指摘を何とかすることだけに終始しやすい。そうすると、表面を直してもすぐに別の箇所で同じような指摘を受け、さらに自信を失う、という悪循環に陥ることもある。
小さくてもよいので、まずは「何が良いのか」を胸を張って説明できるアウトプットを出すこと。これが、仕事の質を高めるためのフィードバックをもらう第一歩だと思う。