ビジネスの現場で、「ゆるふわ提案」と呼べるような曖昧なコミュニケーションがしばしば見受けられる。これは単に選択肢を並べるだけの提案や、メリット・デメリットを羅列するだけの説明のことを指す。
提案型コミュニケーションとは、具体的な判断を提示するものだと思う。
まず、最も避けるべきは「A案とB案、どっちが良いですか?」というような単純な二択を迫るコミュニケーションだ。これでは、相手に判断を丸投げしているに等しい。提案する側として、自分の考えや判断を示さないこの方法は、プロフェッショナルとしては論外と言えるだろう。
次のステップとして、「A案のメリット、デメリットは~、B案のメリット、デメリットは~。ではどっちが良いですか?」というアプローチがある。一見、提案している風にも見えるが、これも提案型コミュニケーションとは言えない。なぜなら、ここでも最終的な判断を相手に委ねているからだ。
では、適切な提案型コミュニケーションとは何か。それは以下のような構造を持つものだと考える。
具体的には、こんな風に話を進めるのが良いだろう。
「A案のメリットが大きく、デメリットが小さくなる前提は~です。一方、B案のメリットが大きく、デメリットが小さくなる前提は~です。現状、~という前提だと考えているので、●案が合理的だと判断しました。ただし、~という前提について認識の相違や、現時点で把握できていない要素があれば、ぜひご意見をお聞かせください。」
このアプローチは、単なる選択肢の提示や情報を羅列しているだけではなく、判断基準を明確に示し選択肢を提示しているものだ。同時に、相手の知見や新たな情報を取り入れる余地を残すことで、より良い判断に繋がる可能性もある。
自分自身のコミュニケーションスタイルを振り返ることは大切だ。日々の業務の中で、私たちは知らず知らずのうちに「ゆるふわ提案」に陥っていないだろうか。常に自己の行動を客観的に観察し、改善の余地がないか考えることが、成長につながるはずだ。
提案型コミュニケーションは、単に選択肢を示すことではない。相手の立場に立ち、思考と明確な判断を示すことで、より生産的な議論と良質な意思決定を導くものだと思う。この視点を持ち続けることで、「ゆるふわ提案」を撲滅し、より価値のあるコミュニケーションを実現できる第一歩になると考える。